サイレンの音。けたたましく鳴ってる。
私の意識が浮上していく――――
『当施設内に、所属不明ネクストが侵入。直ちに迎撃せよ』
知らない声。機械的で冷たい。キライ。
でもこれ、私に? じゃあ行かなきゃ。
目を開けると、暗闇。
でも沢山のモニターから発せられる光が見える。ぼんやり。眩しい。
いまシートに座ってる。いつの間にかここに。身体は固定されてるみたい。
まるでお母さんのお腹の中にいるような、慣れ親しんだ感覚。包まれてる感じ。
手が、何かを握ってる。これは……操縦桿?
知ってるヤツだ。なら大丈夫。いける。
私は口では無く、脳内でAMSに指示する。――――起動。
『被験体○○○号、相手は一機だ。
君がやれ、少しでも時間を稼ぐんだ』
頭の中に、光と映像が流れ込んでくる。
言語は無い、でも不思議と分かる。作戦内容と、状況と、オーダーを確認。
目標の位置情報、敵機体の所載、自機の状態、確認。
ゲートロック解除、拘束具パージ、オールグリーン。
出撃。メインブースターON。前進。
ガレージを脱出した、飛行する。
轟音が響く。身体にGと振動。それと共に、心に全能感が満ちてく。
繋がってる。この子と。問題なく動く。
一緒。私達は同じ物よ。ふたつでひとつだ。
強く感じる。分かる。
私は――――生きている。
今、この瞬間だけは。
「?」
敵機、目視で確認。距離1600。接敵する。
現在標的は、右腕武装のレーザーブレードにて施設を破壊中の模様。
けれど。
「いったい……なにを?」
思わずボソリ。久しぶりに、私の口が動いた。
状況不明。現状の理解に戸惑う。このAMSすらも解析に窮している様子。
――――え、下手くない?(キョトン)
なぜ貴方は、
そして何故、ノーマルやMTじゃなく、止まっている無機物を相手にブレードをスカるの?
なんで、そんな闇雲にブンブンやるの? ロクに当てられないの?
『だぁぁーーっ! 今日は機体の調子が悪いぜぇーっ!
なんにも思い通りいかねェーーッ!!』
FCSの故障かぁ? ちゃんと整備しとけよなアイツらぁー!
そんな情けない言い訳が、無線を通して耳に届いた時……。
「――――っ」
私は目覚める。パッと頭の中の霧が晴れるように。思わず。
そう。いま目にした、あまりに衝撃的な姿に……。
「あ! そのヘタクソな操縦は、
何してるんですか、こんな所で?」
『ッッ!?!?』
◆ ◆ ◆
「いやー。私グーパンで倒されるネクスト、初めて見ました」
「るっせぇよチキショォォーー!!!!」
私が乗っていたのは、施設に置いてあった練習機。
何の武装も積んでいなかったものですから、
するとダン・モロさんのセレブリティアッシュ、〈ドゴーン!〉と吹っ飛びましてね?
そこからマウントポジション取って、ゴスゴス殴りまくってやったら、なんと何にもさせずに勝つことが出来たんですよ。ビックリ。
私達の教科書にはありませんが、意外とこの“飛び蹴り”ってヤツが、今後の白兵戦のスタンダードになるかも?
だって、めっちゃ使い勝手良かったですもん。もうブレードとか振ってらんないです。
ホワッチャーイ!
とはいえ、今もダン・モロさんはバッチリお元気ですし、私のネクストが徒手空拳であった事も幸いし、大した怪我もしていません。
あくまでセレブリティアッシュの動きを制し、少しばかりお話をする時間を稼いだ……といった感じでしょうか。
ちなみ、現在私達はネクストを降り、彼のガレージにてお茶を頂いているところ。
あのAMS研究所での交戦から、既に2時間ほど経過していますかね?
「信じらんねぇ、まさかお前がいるとは……。
大した防衛設備もねぇって聞いてたから、楽なミッションだと思ってたのに。
なんて日だチキショウ……」
「えへへ」
ガックリ! と項垂れるダン・モロさん。絵に描いたような落ち込みよう。
いくらネクストとはいえ練習機、しかもなんの武装もしてない相手にボコられたのですから。左手のライフルとか私に取られてましたもんね、逮捕術よろしく。
「つか、マジなんで居たの? すげぇビビッたんだが……。
あっこって、なんかの研究所だろ? なんでリンクスのお前が」
「ダン・モロさんも、ブリーフィングを聞き流してミッション行くタイプですか。
とりあえずやれば良いんだろ? オペ子が説明してくれるさ。みたく」
いま自分が何と戦ってるのか、解ってない。何をしているのか理解してない。
多いんですよねぇ、そういうリンクス。かく言う私も、昔そうでしたが。
「まぁ細かいことは置いといて……、来てくれて助かりましたダン・モロさん。
実を言うと、そろそろあそこから出るつもりでいましたので。ちょうど良かったです」
まさに渡りに船。ダン・モロさん操るセレブリティアッシュの施設襲撃に乗じて、私はあの研究所から脱出することに成功したのでした。
奪ったライフルを、彼が搭乗するコックピットの辺りに突き付けて、無理やり言う事を聞かせてやりましたからね。「大人しくしなさい」って。
端的に言えば、私は彼と共に施設を破壊し、そこを脱出した後、機体をそこらへんに乗り捨て、セレブリティアッシュに相乗りさせて頂きました。
ここは、いつもの酒場の近くにあるダンモロさんのガレージですし、これにて無事に我が町へ帰還です。借金とかもう知りません(キッパリ)
というか、彼が受けたミッションは研究所の襲撃というよりも、“エイ=プールの殺害”こそが真の目的だったのではないかと……。
アルテリアが襲撃されたという、こんな大変なご時世に、企業同士で小競り合いをする理由が分かりませんし。わざわざ本社でも軍事施設でもなく研究所を狙うという意図も、それくらいしか思いつきません。
まぁ恐らく、「念には念を」と考えたのでしょうね。どんだけ邪魔者なんですか私。
「ダンモロさん、ここ一週間ほどで起こったニュースを、詳しく教えて頂けませんか?
ネット端末もお貸し頂けたら、有難いです」
そう、出来るだけ柔らかな声を意識して、お願いをしました。
心はフラット。視界はボンヤリ。意識は
きっと一皮向けば、私の中身はもうズタボロでしょう。
その実、自動音声を喋る機械と、なんら変わりはありません。
けれど、長年かけて処世術として習得した“仮面”を被り、ダンモロさんと対話しました。
少しでも、人らしく見えるように。
◆ ◆ ◆
「――――オッツダルヴァやないかい!!(絶叫)」
私は気づき、真実へ辿り着いた。
「なにが“てるみどーる”ですかっ! こんなもん乙樽やないか!
なにを申し訳程度に、逆脚乗っとるんですか! アホかぁ!(怒)」
なにが感情フラットだ、とばかりに叫びます。いつもの口調もかなぐり捨てて。
「えっ、これ王子なの……? マジで言ってんのかよ!?」
「ええ。実はこの人、牛丼屋で名乗ってたんですよ。
私はマクシミリアン・テルミドールだ! って。
どっかで聞いたことあると思ったら……」
散々ナニカサレタ弊害ですね。もう記憶がグシャグシャで……。
でも、あの時クヌギくんが言っていた【てるみどーる】という人物は、かの牛丼王子に相違ありません。
ヤツこそが、いま世間を騒がせている、最悪の反動勢力のトップだという事。
私達は、ネットニュースのページを見ながら、冷や汗。
詳しくは聞きませんでしたが、恐らくジュリアスさんが所属する団体というのも、このORCA旅団なのでしょう。
確か「世界の基盤をひっくり返す」とか言ってましたからね彼女。
「でも王子って、あの後“第8艦隊”か何かのミッション行ってよぉ。
そこでスティグロに水没させられた~って聞くぜ?」
「わざわざ茶番をやり直したんですか。しかもまた水没って……」
なにやら“水没”という物に、得も知れぬ拘りがある様子。
私には彼が理解出来ません。
「ここ最近は、ずっと王子が、あの坊主の僚機やってたんだよ。
けっこう相性良いみたいでさ。二人でガンガン依頼をこなしてたが……。
けど牛丼野郎がゴボゴボいった後、
どこ行ったんだ~、ってみんな心配してたら、突然あの事件だよ」
アルテリア・ウルナ、およびカーパルス襲撃――――
それをやったのが、あの見間違えようもなくファニーな機体、【AN BREAD MAN】であるとの事。
これには世間も度肝を抜かれたそうな。私がいる施設の人達も、ガヤガヤ騒いでた位ですからね。
「なんでもORCAってのは、テロ集団みてぇなヤツらしいが……ここにクヌギが居るぅ?
いや有り得ねえって! まだ10才かそこらだぜ?!」
有り得ないも何も、既に情報は出揃っています。
私達がどう思うかなど関係なく、あの子は今も“活動家”として、ネクストを駆っている事でしょう。
あのオッツダルヴァ……いえマクシミリアン・テルミドールの右腕として。
「ここを見て下さいダン・モロさん。
つい先日も、ORCAの保有する“衛星軌道掃射砲”とやらを破壊に向かったネクストチームが、クヌギくんのACにより撃退された~とあります。
三大企業の総力を挙げた合同作戦だったようですが……残らずクヌギくんに、とっつかれたと」
「パねぇな坊主。今に始まった事じゃねぇが……」
恐らくは、カラードのトップランカ―達を、惜しみなく投入したハズ。
これは世界的な危機なのです。もう是が非でもという、なりふり構わぬ作戦だったのでしょう。けどそれすらもクヌギくんは……。
実質的に、あの子を止められるACは、この世に存在しないということ。
たとえ何機がかりで挑もうと、クヌギくんには勝てないというのが、これで白日の下で証明されたワケです。
それどころか、いま何機くらい残っているのでしょうね? カラードのネクスト戦力は……。
同じACで勝てないとすると、考えられるのはAFをぶつける手。
けれど、あの子の武装は“
たとえ何体揃えようが、限りなく勝ち目は薄いでしょうし、下手すれば会社が傾きかねません。
その損害額は元より、主力AFという保有戦力を失えば、管理者たる企業の力は地に墜ちるでしょうし。なによりライバルである他社に好きなようにされてしまう。
果たして、軽々しくそんな手を取れるかどうか……。少なくとも自分の所からAFは出さないでしょう。
ならば弾切れを狙おうとばかりに、MTやノーマルなどの通常戦力を差し向けたとて、それは本末転倒という物。
ACの強さなど語るまでも無く、これを打倒するのは無理というものですし、そもそも彼は今ORCAにいるのです。雑魚の露払い役を一機用意すれば、それだけで事足りる。
私や王子がやっていたように、です。
考えれば考えるほど、恐ろしいですね。極まった個というのは。
成り行きとはいえ、私はこれほどの子を身近に置き……いえ“力”を持っていたのかと思うと、背筋が寒くなる想いです。
そりゃあ誰も彼も、私をなんとかしようとするハズだ。ただの保護者気分でいたのは、とんでもない事でした。
比喩ではなく、今あの子は世界を壊そうとしている。
もし私が企業の立場なら、戦うのではなく“対話”という手段を取ります。
なんと言っても、あれだけみんなでワッショイし、御神輿みたいに担ぎ上げていたクヌギくんが、実質的に企業を見限った形なのです。
もう統治者の威厳とか面子とかは、ボロボロでしょう。もしかしたらAFを墜とされる事なんかよりも、よほど痛手だったかもしれません。
ORCAどうこうは置いといても、なんとか彼と和解・懐柔し、再び手元に置くことが出来ないものかと、そう考えるでしょう。
もしくは……搦め手ですか?
私にやったように、戦い以外のあらゆる手段を以って、あの子をどうにかしてみるとか。
お金や報酬をちらつかせたり、誑かしたり、人質を取ったり、またはACから降りている時を狙って暗殺したり。
あるいはその全てを?
「なんという……こと」
愕然としました。
私がシャバを捨てて引きこもっている間に、このような状況になっていたとは。
目の前が、暗くなる。
「あの子が、危ない――――」
何を思うより、まず最初に浮かんだのが、それ。
世界情勢だとか、アリエナイとか、何故とか、そんなことは今いいんです。
クヌギくんが危ない。殺されてしまう……。
それだけを思う。脳内でアラートが鳴り響く。
いつもACに乗っている時に聞く、機械的な警告音が、止まらない。
だめ、駄目、ダメ。
そして、決して抗えない命令が、私の一番深い所から下される。
これ以外はもう、なにも考えられない。
――――
「お、おい大丈夫か? 真っ青じゃねぇかお前……」
ハッと意識を戻すと、こちらを覗き込んでいるダン・モロさんの顔。
「ちょっと横になるか? ソファーくらいあるからさ。
あんなトコに居たんだ、お前いま身体がよぉ……?」
それとも飯か? なんか買って来よっか!?
そうダン・モロさんがオロオロしながら、私を気遣ってくれます。
ミッションを邪魔された挙句、カージャックならぬACジャックまがいの事をされたというのに、なんとお人好しな。
こんな時だというのに、私はそれがおかしくって……。
「いえ、どうぞお気遣いなく。
それよりも、ダンモロさんは行かなかったのですか? 先のORCA討伐のミッション」
「えっ!? いや俺ぁ……忙しくってよ!
多分その日は、たまたま別の依頼があったんじゃねーかな~? アハハ!」
ああ、呼ばれなかったんですね。
総力を挙げた一大作戦だったハズなのに、「ダン・モロはいらん」と。
まぁおかげで私は彼と会えましたし、あの研究所から出る機会も得たのです。
もしダン・モロさんが来なければ、きっと私は今も、夢現の中で
「あれ? なんかメールが来てやがるぜ。
こりゃあ……企業連からぁ?」
誤魔化すように咳払いした後、モニターに向き直った彼が見つけたのは、一通のメッセージ。
彼にリンクスとして出動を要請する、依頼の文章でした。
「ショタっ子を見守る淑女の会? が保有する新型AF【
……って! なんだこりゃあーっ!!!!」
ダン・モロさんのおっきな声が、ガレージに木霊しました。「できるかぁ!」と。
◆ ◆ ◆
国家解体戦争以前――――
喪女たちは、新たなフロンティア“オネショタ”を巡って激しく争い、ただ余所の女のストーキングとか、情報収集とか、連れ去りとかを妨害するためだけに、致命的な無人兵器【アサルト・セル】が開発された(?)
それは、クッソ醜い争いの激化に伴い、やがて
結果、人類は自ら、宇宙への途を閉ざすことになる。
マクシミリアン・テルミドールは
それが、
こんなしょーもない事のために、いま人類は種として閉塞し、この惑星で壊死を迎えようとしている……。
国家解体戦争も、リンクス戦争も、ランクマとか依頼とかコジマ汚染とかクレイドルとか、あとオーメルとかGAとかインテリオル・ユニオンとかも、全てこの罪を隠匿するためにあった。本当クソッタレな事に。
であれば、我らORCA旅団の戦いは、この罪を清算するためにある。
正直やりたくないし、すんごいメンドクサイ。もう涙が出るくらい情けない事だが、致し方無し。
犠牲なき解決の機会は、とうに失われている。
「いつまで争っとんねん。なんでそんな事すんねん」というくらい、彼女らは一心不乱に、ショタっ子を求め続けたのだから(怒)
ゆえに、贖罪に痛みが伴うならば、それは甘んじて受け入れなければならない。
それが、
◆ ◆ ◆
――某所――
04-7952 THERMIDOR
04-1675 NEO NIDUS
04-6933 JULIUS EMERY
04-8082 MALZEL
「老人達と、淑女達は、取引に応じたよ。
後はビックボックスに哀れな走狗を迎え、クラニアムをナンヤカンヤするだけだ」
「おー、ええ感じに進んどるじゃないかメルツェル。
老体にムチ打った甲斐があるわぃ」
「ああ、よくやってくれたよ銀翁。後で酒でも届けさせよう。
ともかく、それでクローズ・プランは第一段階を遂げる。
めでたしめでたし、というワケさ」
「……で、分担はどうする?」
「それか。
ではクラニアムをテルミドール、お前に。
ビックボックスは私……でどうだ?」
「お前が?
相手は恐らくダン・モロか、キルドーザーあたりだろうし」
「ウチのヴァオーだけでも良いくらいだ。残り物リンクスの相手など。
一応は、私も付き添うつもりだがな」
「なぁ……ちょっと良いか二人とも?」
「おや、どうしたジュリアス。なにか問題かね?」
「さっきからクヌギきゅんの姿が見えないんだが、どこへいった?
あの子がいないと、なんだかソワソワしてしまって……」
「ん、伝えていなかったか?
これは、かの淑女の会から【不干渉および共闘の密約】を取り付ける為だ。
所詮ヤツではORCA足り得ん」
「飛車を切った形だが、散々働いて貰ったしな。最早あの子も不要だ。
人類に、黄金の時代を――――」
◆ ◆ ◆
「――――私を
自動的に、私が喋り出す。
「行きましょうダン・モロさん。
あねサラーを破壊するんです」
躊躇は無い。考えるまでも無い。
私のすべき事は、それだ。
「いや無理だろ!? 新型アームズフォートだぞ?!
んなもんヤベェに決まってるじゃねーか!! ムリムリムリ!!」
きっと例の“未確認AF”のトラウマでしょう。ダンモロさんが扇風機みたく首を横に振ってます。
これは企業連から直々の依頼。その重要度は他と比べるべくも無い。
確かにカブラカンとかソルディオス砲とか、それらの相手も非常に危険度が高いでしょう。でも今回は、きっと桁違い。
もう是が非でも受けて貰うとばかりに、相場の倍近い金額が提示されてますし。
ま、どうせこれ受けたらダンモロさん死ぬでしょうし、ワンチャン払わずに済むかもしれませんものね(毒)
関係ないけど、この依頼文から漂う必死さ、そして「よりにもよってダンモロに」という切羽詰まった感じが、現状の拙さを物語っています。
もうホント、カラードにはロクなリンクスが残ってないのでしょうね。彼に依頼せざるを得ない位ですから。
そして案の定、ダンモロさんは渋っている。
普通に考えたら、こんなの出来るワケないのですから。
彼にとってジャイアント・キリングは奇跡の親戚であり、特攻機に乗るのと大差ない所業なのです。無理もない事。
けれど……。
「私がいます。貴方を守りますから。
お願いですダン・モロさん」
退くワケにはいかない。絶対に。
恐らく、そこにクヌギくんも居るハズだから……。
「ミッションを連絡します――――
淑女の会が保有するAF【おねサラー】を破壊して下さい(ええ声)」
「ッ!?」
私は意識して声を作り、企業連の仲介人さんの“声真似”をします。
「クヌギくんは、まだ10才にも満たない、幼い男の子です。
そして彼女らは、単なるメンヘラ集団に過ぎず、生かしておく価値はありません――――」
「似てる! エグイくらいッ!
まるで
私がたまに酒場で披露する持ちネタなのですが、まさかこんな所で役立つとは……。
強気で、冷淡な声。有無を言わさない雰囲気。
こんなの断れるものなら断ってみなさい! 逃がしませんよダンモロさん!
「貴方のセレブリティ・アッシュにしか出来ないミッションです。
卑劣な暴力集団の、息の根を止めて下さい――――」
「やめろ! 怖ぇよ!
行くから! 受諾すっからぁ!(必死)」
言質は取りました。やったぜ☆
「つかお前、僚機って言ってもよ。ネクストはあんのか?
確か聞いた所によると、前にヴェーロノーク全損したって……」
「あ」
そうだ、私のヴェーロノークって、壊れちゃったんでした。
しかもユニオンに取り上げられ、所有権まで……。
これでは、とても僚機どころでは……。
「ダンモロさん、セレブリティアッシュ
それ売っ払えば、TELLUSを買い直せるかも」
「――――ヤダよ! 俺が出られなくなるだろッ!」
思い切って頼んでみましたが、なしのつぶて。
一瞬「こいつを殺して奪うか?」という考えが頭をよぎりましたが、これまでのダンモロさんとの思い出が、私を人に繋ぎ止めます。命拾いしましたねこの野郎。
それにしても、まさかこのような問題が……。
出撃したくとも、肝心のネクストが無いなんて。どんだけ貧乏という物は、私に付きまとうのか。
ちなみにですが、ヴェーロノークの元となったTELLUSを一式買おうと思えば、大体200万Cくらいかかります。とてもじゃないけど、そんなお金ありません。ダンモロさんもそうみたいです。
「この人の臓器を売っても、せいぜいライフルの弾代くらいでしょうし。
これは参りましたね……」
「なぁ、今なんか言った? 俺をナニカスル算段してない?」
いいじゃないですか! あんな残念アセンの機体!
それにダンモロさんなんて、生きてても仕方ないでしょ!? 私にネクスト下さい!
と……それを口にしたら、人として終わりですので、私は黙って「うむむ」と唸ります。
どうにかならないものか。お金、お金、お金……。
もう泥棒とか、強盗とか、そんな物騒なアイディアしか浮かんできませんが……。
「あーっ!!」テッテレー
そうだ、私にはアレがありました!
青天の霹靂めいた閃きに、ズガーン! と雷が落ちた心地です。
「ダンモロさん、車を出して下さい。
おっきなトラックが良いです。ACパーツを運べる位の!」
身体が熱い。何かに突き動かされてる。
私はその熱と衝動のまま、彼の背中をグイグイ押して、走り出しました。
ボロボロの身体なんて、気にせずに。
◆ ◆ ◆
「――――出来ました! 新生ヴェーロノークです!!」
まるで、ロボットアニメ中盤における、機体乗り換え。
私は新たに手に入れたACの前で、「ばんざーい!」と両手を振り上げます。
「お前……スゲェな。
まさか半日かそこらで、AC一式を買い揃えちまうとはよ」
隣には、目をまん丸にしたダンモロさん。彼には今日一日、さんざん付き合わせちゃいましたし、感謝してもしきれません。
「わらしべ長者作戦、か。
あのとき買った肩武装が、ネクストに化けるとはなぁ……」
「ええ、私も驚きました。
まさか倉庫で埃を被っていた
急いで私のガレージに向かい、そこで取ってきたのが、あの雪の日にクヌギくんと買ったショルダーユニット。
私はいつもASミサイルを肩に装備していましたので、結局これは一度も使う事がありませんでした。でもヴェーロノークに取り付けていなかったおかげで、これだけは被害から免れた。
機体の大破によって壊れる事も無く、また私が個人的に購入した物だった事もあり、ヴェーロノークと一緒に取られることも無かったのです。
私がASミサイルしか使わないのは有名ですし、これ倉庫の隅っこでシートかけてあったので、きっと盲点だったのでしょうね。うひひ。
そして前述の通り、LALIGURASにプレミアが付いていた事も、幸運でした。
なんでもこの肩武装は、そのあまりの
けれど、手に入らないとなれば欲しくなるのが、人の情という物。捨てる神あれば拾う神ありです。
私はこれを普通に売り払うのではなく、足を使って知り合いの所を周る事で、高く買い取ってくれる人を見つけたのでした。
もうこれ手に入らないよ~。貴重だよぉ~。と商人みたいな売り方をして、大金ゲットです♪
加えて、それを元手とし、さっきも言った“わらしべ長者作戦”を敢行。
レアそうなパーツを買って、それを高く売ったり、またちょっと高めなパーツと交換したりを繰り返すことで、最終的に新品のネクスト一式を買い揃える金額を得ることが出来たのでした。
もちろん腕部は、愛用のA06-AURORA。腕武器VerのASミサイルです。
そしてこれは、ちょっとしたアレンジなのですが……思い切って背中武器にはCP-49。いわゆる“三連ロケット”を積んでみました。
これはAMS研究所での訓練&ナニカサレタ効果で、私自身のスペックが激上がりした事による物。
腕武器Verに比べて、少し使い勝手が悪いと感じていた背中ASミサイルではなく、「なんかコレなら出来そう!」と個人的にしっくり来ていた三連ロケットを、代わりに採用してみたのです。
普通の射撃武器よりも、何故かこっちの方が当たるっぽいんですよ。私の場合……。
元々ノーロック戦法という、変態的なネクスト操縦をしてきた効果ですかね?
そして、せっかくですので、この機会に内装もイジりました。
ヴェーロノークはリンクス戦争時代から、相も変わらず使い続けていた機体なので、当然もう古くなっている。今の時代、これよりも良いパーツが沢山存在しますから。
まずはジェネレーターを、MAXWELLではなくRIGELに変更。
そして実はず~っと物足りなさを感じていたBBのSCHEATを、ARGYROSに変えました。
これでマシ機のACに距離を詰められる事なく、安心して引き撃ちが出来ますね。ホッコリ♪
まぁ実は、これより良さげなパーツも、結構あったりしたのですけど……。
でも悲しいかな、機体構成を変えるにしても「出来るだけインテリオル系列で」という意識が働いてしまった私は、立派な社畜なのでしょう。
あんな“騙して悪いが”的なことをされておいて、未だに義理を立てるのですから、人の心とは度し難いものです。
まぁなんだかんだ言っても「育った水が一番」というヤツですよ。
後はチューンの内容を変更。長年の傭兵生活で大量に獲得したFRSメモリを、もう大人げないまでにつぎ込んで、各種能力を大幅にパワーアップさせたり。
また肩武装と同じく、今まで倉庫で埃を被っていた沢山のスタビライザーで、機体のバランスを整えたくらいですかね?
余談にはなりますが、前にユニオンから頂いた私専用のコア背部用スタビは、既に一般のリンクス達にも出回っていまして。
今日わらしべ長者作戦をやった時に、とある心ある傭兵さんから「お前と言えばコレだろ。ついでに持ってけ」と、ご厚意で頂くことが出来たのです。
今このACの背中にも、しっかりとあの羽みたいなスタビが、装備されているのですよ。
機体自体は別物だけど、あの子の魂を受け継いだ感じがします。
そんなこんなで、新生ヴェーロノーク 爆 誕 で す ☆
私はお手製のエンブレムを、この子の左肩にペタリ。
そして「うんしょ!」とコックピットに乗り込み、あの研究所の実験機を乗り捨てる時、密かに拝借しておいた“私専用のAMS”を、パイルダーオンとばかりに差し込みました。
「いつも思うんだけどよぉ……。
なんかAMSの基盤って、
「そうですよね。グイッて差し込む方式ですし」
今の時代、こういうのは珍しいかもしれません。
なんか辞典みたくぶっといカセットですし。きっとこれ100メガショックくらいあります。
「ダン・モロさんの方はどうですか? 新しい機体は」
「おう、万全だ! テンション上がるぜ!
なんたって、あの
実はですね? 先ほどクヌギくんのガレージにもお邪魔して来たのですよ。今はもう誰も居ませんでしたが。
そこでかっぱらってk……いや使っていないのならと拝借してきたのが、あのアンノウンさんの忘れ形見である、ホワイトグリントと呼ばれる機体。
これが、今回お願いを聞いて頂いたダンモロさんへの、私からの前払い報酬となっています。
なんでも聞く所によると、彼の愛機であるセレブリティアッシュは、昔のコミックヒーローを模した機体なのだとか。
そんな少年の心を忘れないダンモロさんが、我らが英雄の機体ホワイトグリントに食い付かないワケがありません。「ヒャッホー!」ってなモンです。
もうこれを貰える、これに乗れるとなった時の、彼の喜びようったらありませんでしたよ。おめめをキラキラさせてましたものね。
「つかよ、ライフルとアサルトってのは、流石に多いんじゃねーかな?
やっぱ俺的には、右手にレザブレを持t
「ダメです(キッパリ)」
お前はもうレザブレを握るな。黙ってダブ鳥しとけ(辛辣)
そして、せっかく強武器と名高き通称“グリミサ”があるのですから、是非それを使って下さい。お願いですから。
適当にロックオンして、3秒に一回くらいポチポチしとけば、たとえやってるのがダンモロさんだとしても、かなりの戦力になるハズ。
僭越ながら、さっき私がミサイルの使い方を、耳にタコが出来て「うぎゃー!」ってなっちゃうくらい叩き込んでおきましたので、きっと大丈夫だと思われます。多分。
きっとレザブレというのは、彼にとって譲れない拘りなのでしょうね。「ヒーローって言ったら剣だろ」みたく。
でも今回ばかりは、このミッション中だけは、ホワイトグリントそのままの装備で行って貰おうと思います。私めっちゃ先輩風ふかせて説得しました。
「そうだぞお前ぇー! エイプーの言うこと聞いとけぇー!
んな事だから、いつまで経ってもランク28位なんだぁー!」
「ほら、キルドーザーさんもこう言ってるじゃないですか」
「いやコイツに言われたくねぇって!!!!」
隣に並んだ機体のコックピットから、なんか髭ヅラのガラの悪いオッサンが、高笑いしながら降りてきます。
彼の名はチャンピオン・チャンプス。でも呼びにくいので、みんな「キルドーザーさん」と呼んでいます。もしくは解体屋でしょうか?
ちなみに、彼も今回のミッションの僚機をやって下さいます。
知人の所を周っていた時に、たまたまお会いしたので声をかけてみたら、二つ返事で了承。
「ドスの敵討ちだぁー! 淑女の会のヤツラめぇーっ!
アイツから受け継いだ、この“KIKU”で、絶対にとっついてやるからなぁーーっ!!」
そう、キルドーザーさんは今、燃えているのです。
なんでもドスさんが、淑女たちが所有するAFに破れたそうで、病院送りにされちゃったのですよ。
とっつき三羽鴉として、親友の仇を取る。そしてクヌギを取り戻す。
報酬の為ではなく、私達と同じ志を以って、このミッションに協力して下さるのでした。
「流石はエイプーだぁー! お前にアセンの相談をして良かったぜぇーっ!
まさか背中グレを、SAPLAに変える手があったとはなぁーっ!」
「ええ。こちらの方が機体負荷が低いし、実は弾数も多いんです。
使い勝手だって上なんですよ♪」
まぁ少しばかり入手困難なパーツですし、キルドーザーさんがご存じなかったのも、無理はないです。
実は腕のドーザーのみならず、グレも大好きなこの人。意外と当て方も上手だったりするので、SAPLAを担げば鬼に金棒というヤツです。
「私のチョイスで恐縮ですが、内装周りもイジらせて頂きました。
もしミサイルを降ろすのであれば“社長砲”を担ぐ、という手もあるのですが……」
「うーん。そりゃあ流石に
ドーザーと一緒で、あれ担ぐにゃあ、相応の覚悟がいんだろうからよ。
ま、今回は遠慮しとくわ! がっはっは!」
俺にはKIKUがある。こっちで生きてくぜ!
そう豪快に高笑い。新生キルドーザーにご満悦の様子です。
関係ないですが、なんかカラードランクの下位陣が、劇的に強化されてしまった感。
これからリンクスになる新人さん達は、さぞ大変でしょうね……。あのミセステレジアさんに負けないくらいの“ランク詐欺”です。
「――――出撃はマダカ? 俺のコジマが漲ってイル! はよセイ!」
「おい、誰だよコイツは」
「知らねぇぞ俺ぁ」
「あー、その人も拾ってきたのですよ。
みんなのヒーロー“アクアビットマン”さんです」キッパリ
説明しよう! アクアビットマンとは(以下略)
とりあえず、なんか暇そうな顔していたこの人も、ついでに誘っておきました。
そりゃー売れ残るよな~、こんな状況でもお声かからないよな~、と妙に納得してしまいましたが……。でも彼の機体が誇るコジマライフルの攻撃力は、他の追随を許さない強力な物。
きっと何かの役に立つ(ハズ)と思い、ご参加頂いたのでした。
まぁなんか、ミ○キーの帽子を被ってる、ロクに言葉が通じない感じのぶっ飛んだ御仁ですが。でもここに居るのは変人ばかりなので、きっと大丈夫でしょう(適当)
「ぱ……、パートナー。
フラジール単騎でも、敗率はほとんどアリアリアリ……」
「あらら、まだ寝てて良いですよCUBEさん?
出撃までには、時間がありますから」
「おい、こいつも拾ってきたのかお前」
そして、ガレージの傍らにあるソファーに寝そべっているのは、かのAC【フラジール】を操るリンクス、CUBEさんです。
彼も淑女の会のAFに破れ、なんでも精神崩壊を起こしたので
機体も買ってあげましたし、新生フラジールとも言うべきアセンもバッチリ。
特にあのクソッタレなガリガリ腕部には、通称“黒板消し”と呼ばれるハンドミサイルを持たせて、その弱点を補っておきました。
これで以前よりは、多少マシに戦える事でしょう。
「その変態共はともかく、私も早く行きたいぞ。
なぁ、良いだろう
「駄目ですよジュリアスさん、これダンモロさんの依頼なのですから。
ちゃんと条件は守らなければ、報酬貰えなくなっちゃいます。
ささ、こっちに来てコーヒー飲みましょう?」
そして、この“おもちゃの兵隊”とも言うべき軍団のエースを務めるのは、言わずと知れたジュリアス・エメリーさん。
クレイドルでも類を見ないほどピーキーな機体を乗りこなす、天才女性リンクスです。
なんでも彼女は、怒りに任せて
もうプンプン怒りながら、私のもとへ来てくださいましたよ(白目)
すまん、クヌギきゅんを取られた。お前に申し訳が立たん……。
そう沈痛の面持ちで、私に頭を下げてくれましたが、きっと彼女は私のかわりに、クヌギくんを守ってくれていたのでしょう。
少なくとも、彼女はそのつもりでいた。いつか私がORCAへ来たら、一緒にクヌギくんのお姉さんをやるんだと。
しかしながら、事後報告でクヌギくんの身柄が淑女の会へと引き渡された事に、憤慨。
メルツェルさんや牛丼王子をフルボッコにし、その悲願を
戦わずして、ORCA消滅しちゃった☆ てへ♪
「なんか、僚機がエライ事になってる件……。
こいつら全員、俺のミッションに?」
「そうです、貴方が率いるんです。
今この時より、【ダンモロ旅団】の旗揚げですよ! ヒューヒュー☆」
よろしく頼むぜぇー、団長ぉー!
お前を守ロウ、俺のコジマガ。
そのためのフラジールです(蚊の鳴くような声)
団員となった仲間達から「やんややんや」と囃し立てられ、ダンモロさんは何とも言えない表情。
あたかも壊滅したORCAの代わりとばかりに、ここに新たな反動勢力【ダンモロ旅団】が結成されたのでした。
今に見てなさい、ショタっ子を見守る淑女の会!
ココガ! お前の! 墓場デスヨ!
――――戦争だァ! 我らにはそれが必要だァ!(ノリノリ)