Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第14話 温泉と不思議な気持ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は祝日。

いつもなら俺は翠屋のバイトがあるのだが今日から高町家+月村家とアリサそして俺で海鳴温泉に行くことになっている。

 

その為朝からいつもより少しだけ騒がしい。

まずはいつも通り桃子さんと朝食を作ってそのあとなのはを起こしに行く。

 

なのははフェイトと戦った後から色々とアッチ関連で悩み過ぎている。

今回の温泉で少しでもゆっくりしてくれればいいのだが……

 

 

「なのは?」

 

「あ、うん起きてるよ」

 

 

おや珍しくなのはの部屋に声をかけただけでなのはが出てきた。

もしかして楽しみであまり眠れなかったのか?

 

 

「おはよなのは、ユーノ。なのはは珍しくこの時間に起きれたのか」

 

「おはようユウさん、ちょっと楽しみで眠れなくて……」

 

「キュー」

 

 

階段を降りながらなのはと話す。

やっぱりか、気持ちはわかるけどな。

 

 

「アリサとすずかはもう少しで来るみたいだからそれまでに朝食をたべちゃえ」

 

「はーい」

 

 

なのははトコトコと食卓の方に歩いて行く。

さて、俺は一回部屋に戻って準備しなきゃな。

 

 

「あ、そういやはやてにもメール打っておくか」

 

 

一昨日一緒に本屋に行ったがその時に温泉に行くことを話しそびれていた。

いつもなら明日ははやてと会う日だから会えない事とお土産は何が欲しいかという内容でメールを打っていく。

 

 

「よし、送信と」

 

 

まだ8時前だしはやても寝てるだろう。

とっとと服とかカバンに詰めて準備を終わらせなければ。

と服を詰めているとツァイトがメールを受信した音を発する。

 

 

「おお、すぐ返事がきた…」

 

 

はやても割と朝に弱いはずだが……なのはと言いはやてといい珍しいな今日は。

えっと何々?

"温泉かぁ羨ましいわ。お土産はユウさんのセンスに任せるで。楽しんできてなー"

 

うーん……はやても誘えばよかったか?

ちょっと後悔しつつはやてには了解と送っておく。

まぁ今度はやては何処か別の場所に連れて行こう。

 

 

「ユウくーんそろそろ準備できたかい?」

 

「あ、はーい!」

 

 

士郎さんからのお呼ばれ。

そろそろ出発かな?

大きめのカバンといつも使ってるショルダーバッグを斜めがけにして下に降りる。

一応忘れ物がないかショルダーバッグを確認するが財布、携帯、カギに本と大丈夫そうだ。

 

 

「それじゃ大きいカバンの方は車に乗せちゃうね」

 

「お願いします」

 

「うん、そろそろ月村さんの人たちも来るからなのはたちも呼んできてくれるかい?」

 

「了解です」

 

 

士郎さんにカバンを車に積んでもらう。

さてなのはたちを呼びにいくかな。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ出発しようか」

 

あの後すぐに月村家とアリサが到着し、今は出発前。

さて俺はどの車に乗ればいいんだ?

 

 

「おっはよーユウくん」

 

「あ、忍さんおはよう」

 

 

後ろから肩を掴まれ振り向くと笑顔の忍さんが居た。

この人がすずかの姉で恭也の彼女さんだ。

 

 

「何か迷ってたみたいだけど、どうしたの?」

 

「ああ、俺はどちらの車に乗ればいいのかなって」

 

 

目の前には移動用の車が2台。

一つは士郎さんでもう一つは月村さん家の車。

好きな方に乗っていいと言われたが逆に困っている状態だったり。

 

 

「んー……だったら私と乗る?あっちの車」

 

「ああ、それでも……」

 

 

と続けようとして左手が引かれる。

ん?と左を見るとなのはが少し膨れて俺の手を引いている。

その後ろではアリサがもう…と言いつつ俺を見て、すずかが何やらニコニコしている。

 

そのなのはたちを見て忍さんは"あ、なるほどねー"なんて言いながら少し離れる。

なんだ?どういうこと?

 

 

「なーんだそういう事ね。それじゃまたあとでね?ユウくん」

 

「え?え?」

 

「ユウさんはこっちに乗るの!」

 

「ちょ、なのは?」

 

「ユウは私たちと乗るって事でいいじゃない」

 

「ふふ、ユウさんと私もお話したいし一緒に乗りましょ?」

 

 

アリサやすずかまで?

まぁ別に俺はどっちの車に乗ってもいいのだが何故なのはは少し怒っていたのだろうか?

 

というわけで俺となのは、アリサ、すずかは士郎さんの運転する車に乗る事に。

恭也と美由希は忍さんたちの少し大きい車の方へ。

 

そうだな、とりあえずなのは達の邪魔にならないように一番後ろに座るか?

運転席に士郎さんで助手席に桃子さんが座っているから2列目に3人で3列目に俺が座れば問題ないだろうと3列目の窓側に座る。

 

 

「あれユウさん後ろに座るの?」

 

「ああ、ここしかないだろ?」

 

「私たちの所に座れますよ?」

 

 

2列目のすずかが横を空けてくれるがすでに小学生とはいえ3人が座っている為俺が座ってしまえば狭いよな。

 

 

「いや狭いだろ?」

 

「何言ってるのよ?さっきユウと話したいからこっちに呼んだのにそこに座ってたら意味ないじゃない」

 

「話くらいできるだろう?」

 

 

そういうとアリサがはぁ……わかってないわねとため息を吐く。

んん?俺なんか変なこと言ったか?

 

 

「まぁユウのそういう所は私は嫌いじゃないけど……とりあえず前に座って」

 

「あ、ああ….分かったよ」

 

 

まぁ3人がいいなら俺も拒否する理由は……狭いくらいしかない。

 

 

「えっと誰の隣に座ればいいんだ?」

 

「そりゃユウが選べばいいんじゃない?」

 

「そうですよユウさんが選んでください」

 

 

と言われて、なら1番最初に空けてくれたすずかの隣、窓側に座ろうとすると何やら視線を感じる。

 

 

「むぅ……」

 

「えっと……?」

 

 

なのはさんがむくれていた。

今何か俺はなのはの機嫌を削ぐような事をしてしまったか?

 

 

「若いわねぇ……」

 

「ユウくんの困ってる姿はなかなか見ないから僕は新鮮だよ」

 

 

と前で笑いながら話している士郎さんと桃子さん。

笑ってないで助けてくださいよ……

 

 

「ユウさんこっちに座りませんか?」

 

「だけどすずかがなのはと喋り辛いだろ?」

 

「大丈夫ですよ、それに」

 

 

よいしょとすずかが俺の膝をまたぎ窓側の方に移動してくれる。

 

 

「ほら、こうすればなのはちゃんともアリサちゃん、ユウさんともお話出来ますから」

 

 

と俺の膝の上に軽く乗り胸に頭を預けてくる。

おおたしかに。

 

この体勢ならフェイトと何度かしたから慣れているし、違和感もない。

そんな中、ついフェイトの事とあの島での出来事を思い出し、すずかとフェイトを重ねてしまう。

 

あの子は今は何をしてるんだろうか?

 

あれから一度だけ念話が来て以来話を出来ていない。

この頃はジュエルシードも見つかっておらず、フェイトと戦わずに済むことに安心している反面、もう一度会いたいと思っている自分がいた。

 

 

「えっと……ユウ、さん?」

 

「ん、なんだ?」

 

「どうして私の頭を撫でてるんです?」

 

「へ?……あ!ごめん」

 

 

ああ……また俺の悪い癖が。

すぐに退けようとするが、

 

 

「えっと、もう少し撫でて欲しいなーって」

 

「え?わ、わかった」

 

 

えへへと笑っているすずか。

なんだ怒ってるわけじゃなかったのか。

と、反対側から何かを抗議するように手を引っ張られる。

 

 

「っと、どうした?」

 

「……私とアリサちゃんを無視し過ぎ」

 

「翻訳すると私にも構って欲しいってことよ」

 

 

そんなこと言ってないもん!とアリサに反論するなのは。

そんなにすずかばかりに構ってたかな…

 

 

「はは、それじゃそろそろ出発するよ?」

 

 

士郎さんから出発コール。

ゆっくりと発車する車に揺られ出す。

確かここから2時間くらいかかるんだっけ?

前の席では士郎さんと桃子さんが完全に2人の世界に入っている。

うーん……仲良い夫婦だな。

 

ああいう関係は男として憧れてしまうのはしょうがないよなぁ……俺もいつか父親になるんだろうか?

それなら士郎さん達みたいにずっと仲睦まじい関係のパートナーが欲しい。

 

 

「ふぁ……」

 

「なのは眠いの?」

 

「うん、少し夜更かししちゃって」

 

 

えへへと笑うなのは。

そういや今日は早起きだったな。

 

 

「別に時間もあるし寝ててもいいんじゃないか?」

 

「え?でも……」

 

「別にあっちについてから遊べばいいじゃない?」

 

「うん、今のうちに寝てもいいと思うよ」

 

 

うーんと何かを悩んでいるなのは。

なんだ?枕とか無いと寝れないタイプか?

 

 

「別に俺の膝の上とか枕がわりにしていいぞ?昨日もそれで寝てたし」

 

「え?」

 

「は?」

 

 

すずかとアリサが何かを驚くように俺の顔を見ている。

今度はどうしたんだ?となのはの方を見るとこっちは少し赤くなって固まっている。

表情豊かだなこの子たち。

 

 

「……寝る」

 

 

と言って俺の膝の上にぼふっと倒れてくるなのは。

とりあえずこの前みたいに、軽く頭を撫でていれば、かなり眠かったのか、すぐになのはの寝息が立ち呼吸が安定しだした。

 

そしてずっと感じてる左右からの視線。

アリサは何処か驚いてるような感じですずかは不思議そうになのはと俺を見比べている。

 

 

「どうした?」

 

「ユウの前だとなのはってこんなに素直というか……」

 

「なのはちゃん甘えん坊?」

 

「?」

 

何を言って……ってそういえば士郎さんが言ってたな。

 

なのはって俺の前以外だと全然甘えたりしないと言うかワガママな一面もないって。

それなのに俺は2人の前であんなこと言ったからなのはもふて寝を始めてしまったのか。

 

確かに同年代の友だちにそういう自分の見せたくないであろう一面をバラされたようなもんだからな。

 

ちょっと悪いことしたかな。

 

 

「ねぇ、ユウ」

 

「ん?」

 

「普段のなのはってユウと一緒だとこんな感じなの?」

 

「んー……俺と2人だとって感じかな」

 

「へぇ……なんか少し意外かも」

 

「でもなのはちゃんってユウさんが一緒だと何時もより子どもっぽい気がするな。

今日も車に乗る前にあんな風にユウさんの方に突撃して行った時は少し驚いたもん」

 

 

やっぱりそうなのか。

俺の膝で眠るなのはの顔を見る。

静かに寝息をたてながらこちらのシャツの裾をギュッと握っている。

 

ふと車の外を見ると海沿いを走っているおかげで綺麗な海岸が見える。

今度はなのはたちを連れて海に行こうかな?

そんな考えがよぎる。

 

 

「そうだ、なら2人から見た普段のなのはの話を聞かせてくれよ」

 

「ん、いいわよ」

 

「それならこの前私の家に遊びに来たお話からしようかな」

 

 

アリサとすずかから聞く普段のなのはは俺の知ってるなのはとはだいぶ違った。

 

 

「俺の知ってるなのはとはだいぶ違うな」

 

「でしょ?逆に今のなのはが私たちからすればかなり新鮮よ」

 

「うん、びっくり」

 

「まぁ確かにな」

 

「今度はユウの話を聞かせてよ?この前とかなんか妙に楽しそうというかいい事あったみたいだったし」

 

「そういえばアリサちゃんと翠屋に行った時、ユウさん普段より楽しそうだったね」

 

「アレは……そうだな、新しい友だちが出来たから少し浮かれてたんだよ」

 

 

そこから温泉に着くまではアリサとすずかとの話をしているうちにあっという間だった。

普段見ないなのはの一面や学校の話などとても面白いモノばかりだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて到着して今は車を止めたところなのだがまだなのはが起きない。

余程眠かったのかすやすやと可愛い寝顔のままだ。

 

 

「うーん起きないわね」

 

「まぁとりあえず俺がおぶって行くよ」

 

「ごめんね、ユウくん」

 

 

よいしょとなのはを背中に乗せる。

もうこれも何回目だろうか?

それになのはを背負う時って大抵意識ないよな。

 

 

(ユウー……)

 

(ん?ユーノか)

 

 

そういやユーノは恭也たちの方に連れてかれていたな。

 

 

(助けて……)

 

(また美由希とかにめちゃくちゃにされたのか)

 

(うん、もうヘトヘトだよ…)

 

 

そう言ってこちらに駆けてくるユーノひょいひょいと俺の肩に乗ってくる。

 

 

「ユウって動物にも好かれるんだ」

 

「その子がそこまで懐いてるのなのはちゃん以外は初めて見たかも」

 

「ん……まぁな」

 

 

ホントは喋れて疲れて俺の方に逃げて来たとは言えないよな。

 

向こうの車の人たちも降りて来たみたいで合流する。

? 恭也が俺の方を見ているがどうしたんだろうか。

 

 

「どうした?」

 

「いや……なのはは寝てるのか?」

 

「ああ、疲れてるみたいだからとりあえず俺が背負ってる」

 

 

ふむ、と何かを考える恭也。

後ろでは士郎さん、桃子さん、美由希がそんな恭也と俺を何処か面白そうに見ている。

 

 

「俺がなのはを背負ってもいいか?」

 

「え?別に構わないけど……」

 

「よしなら……」

 

 

といいすぐに俺の背中のなのはをおぶろうとするが……

 

 

「あ、なのはユウくんの事ギュッと握ってる」

 

「これは無理そうだね」

 

 

なのはは俺のシャツの肩の部分をギュッと握って離してくれない。

これは士郎さんが言う通り無理そうだ。

 

 

「むぅ……」

 

「ほらそんなムクれないで行くわよ恭也」

 

 

忍さんに引かれ連れて行かれる恭也。

 

 

「恭也も相変わらずなのはが好きだな」

 

「そうねぇ…普段からもう少しなのはにあんな風に接してあげればいいのに」

 

 

士郎さんと桃子さんが何やら話しているがよく聞こえなかった。

まぁいいか、そろそろ俺も移動するか。

 

 

「アリサ、すずか行くぞー」

 

「うん」

 

「はーい」

 

 

トコトコと俺の後ろをついてくる2人。

なんか何処ぞのゲームのパーティーみたいだな。

 

 

 

「そういや士郎さん、部屋って何人部屋なんですか?」

 

「えっとね、6人部屋を2つ借りてるよ」

 

 

そういいながら受付からもらって来たであろう鍵を2つ見せてくれる。

 

 

「そうだね、僕と桃子とユウくんは同じ部屋にしようか?せっかくの機会だしたまには僕もユウくんと男同士の話をしたいしね」

 

「了解です。ならあと3人は…」

 

「私もユウさんと同じ部屋がいいなぁ」

 

「なら私もすずかとなのはと一緒がいいし、そっちに行こうかな」

 

 

といった感じで3人が決まった。

横で聞いていた忍さんたちも特に異論はないらしく部屋に向かう。

 

 

「それじゃ部屋で少し休憩したら温泉に行こうか?」

 

「はい、それまでになのはは起こしておきます」

 

 

ついでに疲れて寝てしまったユーノもな。

 

 

「おお、いい部屋ですね」

 

「だろう?浴衣はそっちにあるから準備しようか」

 

 

部屋は和室でさすが6人部屋と言うべきかかなり広い。

窓から綺麗な景色が見える。

これは温泉にも期待が膨らむな。

 

 

荷物を置き浴衣を準備し始める。

うーんこういうのは着たことないから大丈夫か?

そんなこんなしているうちにもう20分もたつ。

そろそろなのはを起こすかな。

 

 

座布団を軽く引いて寝かせているなのはのほっぺたを突く。

おっ、少し反応した。

 

 

「なのはちゃん起きました?」

 

「んにゃ今起こしてるとこだよ」

 

「爆睡してるわね……」

 

 

横にすずか、後ろにアリサが来た。

どうやらなのはを待っていたみたいで2人は温泉に行く準備は出来ている。

 

 

「おーいなのはー置いてくぞ?」

 

 

「んにゃぁー……」

 

 

猫かコイツは?

試しに腹を撫でてやるとまた変な声を出した。

 

 

「ふふ、なのはちゃんって寝起き悪いんですね」

 

「いつもはもう少し良いんだけどな」

 

 

どうしたもんかな?

となのはをいじっているとゆっくりと体を起こすなのは。

 

 

「うぅん……ユウ、さん?」

 

「おう」

 

 

まだ呂律が回ってないのとぼーっとしてるから寝ぼけてるなこれ。

 

 

「えへへ……」

 

「おいおいまたか?」

 

 

抱っこのポーズをとるなのはを抱き上げる。

この前もこんなことあったよな。

 

 

「……あれ?」

 

「お、目が覚めたか?」

 

 

ご機嫌だった顔から少しづつあたりを見回してだんだん目に正気が戻ってきている。

 

 

「起きたなら降ろすぞ?」

 

「あ、うんもう着いてたんだね」

 

「おう、追加でいうならなのは以外はみんな温泉への準備万端だ」

 

「え!わ、私も準備しなきゃ!」

 

 

慌ただしく俺から降り服を取りに行こうとするなのは。

しかし降りようとした瞬間に固まる。

 

 

「あ、アリサちゃんとすずかちゃん…」

 

「今日は面白いものばかり見れて飽きないわね?すずか」

 

「ふふ、あんまり意地悪いっちゃダメだよ?アリサちゃん」

 

 

そんなこと言いつつすずかも楽しそうに笑っているところを見るに結構楽しんでるな?

まだ俺の腕の中で固まってるなのはを揺さぶる。

 

 

「おーい今度はどうした?」

 

「………」

 

「もうなのはったら恥ずかしくて再起不能になってるのね。ユウくんなのはは私が連れて行くから大丈夫よ」

 

 

 

と桃子さんがなのはを連れて行く。

それじゃまた後でねとアリサすずかも着いて行く。

 

 

「ユウ、俺たちも行こう」

 

 

と恭也に言われ俺も温泉に向かう。

あ、ユーノはアリサが連れてった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと温泉に浸かる。

少し高めの温度の温泉は俺のコリや疲れを癒してくれる。

つい気の抜けた声を出すと隣に入っている士郎さんと恭也とハモり顔を見合わせ笑う。

 

 

「いやー気持ちいいなぁ……これで日本酒とかあればまたいいんだけど」

 

「父さんはすぐに調子に乗って酔うんだからあんまり飲み過ぎるなよ?」

 

 

と親子らしい会話をする2人。

にしても2人とも凄い体だな。

引き締まってるのは服の上からでもわかっていたがここまで鍛えてるのは裸じゃないと分からない。

恭也は普段から鍛えてるのは知っていたが士郎さんがここまでモリモリだとは知らなかった。

 

 

「そういやユウは最近どうなんだ?」

 

「何がだ?」

 

「俗に言う"なんかあった?"って奴だよ」

 

「あぁ……最近は特にこれと言って特質した事はないと思うけど」

 

 

なんかあったか?

いや魔法関連ならバリバリあるっちゃあるがこの2人に話せる内容ではないので割愛。

 

 

「前と比べて休日とか遊びに行ってるじゃないかユウくん」

 

「ああ、仲のいい奴でも出来たか?」

 

 

ふと関西弁で寂しがりやの文学少女と大人びてるが子どもらしい一面を見せて甘えてくる魔法少女が頭をよぎった。

そういや話してなかったな。

 

 

「まぁそんな所ですかね、面白い奴ですよ」

 

「そうなのか?せっかくだから話してくれよ」

 

「ああ、僕も気になるな」

 

「えっと別に構いませんけど…」

 

 

そこからははやてとの出会いの話や得意な事、おっちょこちょいで面白い奴だと。

フェイトのことは魔法系を全部割愛しつつ話していく。

 

 

 

「ってな感じでめちゃくちゃ可愛いやつであんな妹とか居たら俺甘やかしまくってると思いますよ」

 

「なるほどなー僕もなのはとかそうだからユウくんのそれはお父さんに近いかもね」

 

「ああ、聞いてると娘自慢にしか聞こえない」

 

「まだ子どもがいるような歳じゃないですよ」

 

 

 

まだ16だぞ?俺。

 

 

 

「でもその話を聞いたらなのはが嫉妬しそうだね」

 

「あいつは最近ユウにべったりだからな、まぁ少し俺も寂しいというのがあるが」

 

「僕も親としてはユウくんとなのはを見てると少し嫉妬してたり……ね?」

 

 

なんして2人して急に黒いオーラを俺にぶつけ出したんだ?

 

 

「まぁ確かにこの間、少し話したら凄い面白く無さそうな顔してましたよ」

 

「え、話したのかい?」

 

「はい、なんか妙に怒ってると言うか……拗ねていたんで、妬いてるのか?って聞いたら"うん"って言ってましたよ」

 

「そのあとは大丈夫だったのかい?昨日の夕飯の時は2人ともそんな感じしなかったけど」

 

「まぁ、そのあとなのはには俺の気持ちをちゃんと話したら機嫌を直してくれましたよ」

 

「………ユウ、ちょっと詳しく聞かせろ」

 

「え?別にいいけど……」

 

 

そこから何があったか細かく話していく。

 

なのはに話した俺の新しい友だちの内容と状況、それからなのはの様子を細かく丁寧に。

 

最初の方は黒いオーラ全開だった士郎さんと恭也も後半になるにつれて何故か俺を残念な物を見るような何か哀れむ表情に変わっていった。

 

 

「……ってな感じですけど」

 

「うーむ…何というかそれは…」

 

「ああ、なのは勘違いしかけただろうな」

 

「えっと……?」

 

 

何やら士郎さんは遠い目をしつつ何か過去を思い出してるような顔を。

恭也は少し苦い顔をしている。

 

 

「ユウくん、何か相談事とかあったら言うんだよ?」

 

「ああ、俺も父さんもそれなりに"そっち"系のトラブルは経験してるからな」

 

 

何か勘違いされてるような……凄く優しい顔をした2人に肩を組まれる。

 

 

「だが、なのははあげないよ?」

 

「え?は、はい」

 

「逆にユウはなのはの事どう思ってるんだ?」

 

 

こうポジションと言うか関係性というか?と恭也に聞かれる。

うーん……これまた難しい質問だな。

 

 

「どうなんでしょ、最初はしっかりしてて年上の俺の事を助けてくれるくらいの子ですから面倒見のいい子だなーって印象でしたけど……」

 

「最近は変わってきたのかい?」

 

「はい、なんか凄い甘えてくるし、別に俺も嫌じゃなくてどちらかと言うと嬉しかったりもするんですが、何だろう?少し歳の離れた妹とかいたらこんな感じかなーみたいな」

 

「ユウくんはそういう視点かぁ……」

 

 

あー……なるほどね、と2人とも何となくは分かってくれたみたいだ。

 

そこからは男同士特有の話やこれからの話、はたまた趣味など語り合った。

少しのぼせそうなくらいは風呂に入ってたなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じくらいの時間の女湯の方ではまた別の意味で盛り上がっていた。

 

 

「んで、なのは?」

 

「うん、どうなの?」

 

「2人とも何か顔怖いよ…?」

 

 

温泉で私は今、ユーノくんを持ったアリサちゃんとすずかちゃんに問い詰められている。

えっと……何のこと?

 

 

「ユウとのことに決まってるでしょ?」

 

「うんうん」

 

「あ、それ私も気になる」

 

 

いつのまにか忍さんまで増えていた。

えっと……ユウさんのことって何?

ますます頭にハテナが浮かぶ。

 

 

「もしかして本当に私たちが聞きたいことが分かってない?」

 

「うん…」

 

「しょうがないわね、すずか説明!」

 

「え?えっと……なのはちゃんってもしかしてユウさんの事好き?」

 

「え?うん」

 

 

ユウさんのことが嫌いならもっと違う態度を取ってしまっているだろう。

そもそも家に一緒に住んでいる時点で嫌いなわけがない。

 

 

「もうそうじゃなくてLoveの方で好きなんじゃないのっていってるの!」

 

「私もそれ気になってたな」

 

 

アリサちゃんの言葉につい頭が真っ白になる。

Love?ラブ、らぶ!?

 

ついこの前の事を思い出してしまうが、あの時自分はどう思っただろうか?

つい残念だなとlikeの方と言われて不思議な感覚になったのを覚えている。

 

 

「なのは?」

 

「なのはちゃん?」

 

「え、えっと……分からないかな…」

 

 

うん、今は分からない。

これが私の中で1番しっくりきた。

アリサちゃんはなにそれーと言っていたが分からないものは分からないんだ。

そう答えると今まで傍観していたお母さんと忍さんがこちらに来る。

 

 

「じゃあさ、なのはちゃんはユウくんが他の女の子といてなんかムカムカしたりとかない?」

 

「え?えっと……ある、かな?」

 

 

そう答えると忍さんはなるほどねと言ってお母さんに視線を送る。

お母さんは何か優しそうな表情で私に語って来る。

 

 

「なのは、気持ちっていうのはねいつ変わってもおかしくないの。

お友だちとして好きだったのがいつの間にか……なんて事もあるのよ?」

 

 

「?うん」

 

 

お母さんが何かを伝えてくれるのは分かるがまだ私には理解できていない。

 

 

「今は分からないかもしれないけど、もし感じた事の無い気持ちが溢れたりしたらその感情に向き合うのも大事な事なの。

後悔だけはしないようにね?」

 

 

「……うん、覚えておくね」

 

 

お母さんが言ったことを忘れないように心に置いておく。

気持ちが変わるのと受け止める、だよね?

 

 

「それに私的にユウくんなら安心して任せられるのよねー」

 

「?」

 

 

なんの事だろうか?

忍さんが"弟かぁ…"と言っていたがよくわかんないや。

 

 

「なのはちゃん」

 

「どうしたの?」

 

「もしも困ったこととかあったら私たちに相談してね?」

 

「 ? うん、ありがとう」

 

 

ホントにどうしたんだろう?

 

さっきまでの会話にそんなに私を心配するような事があったのかな。

うーん……

後でユウさんにも聞いてみようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお疲れ様でした。

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