Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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無印
第1話 出会いは突然


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___風を切る音が聞こえる。

 

 体は重く、まるで自由落下でもしてるみたいだ。

 

 

「っ……?」

 

 

 

 少し瞼が重い。心地よい微睡みから無理矢理起こされる感覚。

 

 ……それにしても体が重い。

 

 身体の中の大事な何かがごっそりと減ってるような感覚。つい、今の今まで何か大切な事をしていた気がするのだが、どうも思考がハッキリとしない。

 

 そもそも自分はいつ眠りについたのだろうか?

 

 

「……………え?」

 

 

 誰かの声が聞こえた。幼く高い声。

 

 何処か聞いたことのあるような、だけど初めて聞く何とも言えない声。この矛盾した考えに少し苛つきながら瞼を完全に開ける。

 

 

 そこには

 

 

「…………………」

 

 

 ぽかーんと口を開いたまま此方を凝視してくる少女が1人。

 

 背丈は小さく、茶髪にツインテール。白い学校の制服のような服装。そしてヘンテコな魔法の杖のようなモノをギュッと握りしめている。

 

 キミは何処の魔法少女かね。

 

 

「…………………」

 

 

 ここまで約10秒。ふむ、顔は整っているが間抜けな表情の所為で少し残念。

 

 そしてこの子の事を何処かで……そんな思考をしていると。

 

 

「……えっと、なのは? そろそろ正気に戻ってくれると、僕的にも助かるんだけど…」

 

 

 目の前の少女以外の声が聞こえた。

 

 はて? と周りを見渡す。

 

 今更気づいたが、ココは何処かの公園のようだ。………しかし、何かが決定的に違う気がする。

 

 まるでこの公園だけが別の場所に切り離されているような、そんな感覚。

 

 

「あ、あの……えっと……」

 

「…………ん?」

 

 

 どうやら今度は、目の前の少女からで間違いなさそうだ。

 

 

「……あの……」

「………………」

 

 

 何だろうか? 言葉の続きを待つ。

 

 

「えっと……」

 

「………………」

 

「うぅ………」

 

「…………………」

 

「あぅ………」

 

 

 何故そこで涙目になるのだろう。……とりあえず、名前くらいは聞いた方がいいのだろうか。

 

 

「えっと、キミは?」

 

「えっ!あっ……えっと、私は高町なのはです……」

 

「そっか」

 

「……あの、貴方は?」

 

「俺は、……………?」

 

 

 __違和感。なんで俺は今自分の名前が出てこない? そもそも、ここはどこで俺はどうしてここにいる?

 

「…………?」

 

目の前の少女が不思議そうに見つめて来る。 名前……名前……?

 

 

「………ユウ、ユウだ」

 

「ユウさん、ですか?」

 

「ああ」

 

 

 名前は少し思考すればパッと出てきた。しかし、他の事が何かに蓋をされたように出てこない。

 

 少し気持ち悪い。

 

「あの……聞きたいことがあるんですけど、さっきのは?」

 

 さっき? さっきのとは一体なんのことだろう?

 

 頭にハテナを浮かべていると、目の前少女がコクコクと頷いている。

 

「………うん、そうだね。あのユウさん、少し付き合って欲しいんですけど、大丈夫ですか?」

 

 

 何か彼女の中で考えが纏まったらしい。正直、自分の名前以外わかない状態で1人になるのも心細い。

 

 

「ん、大丈夫だ。 何処か場所でも移すのか?えっと……」

 

「………? あ、なのはで大丈夫ですよ。」

 

「じゃあ、よろしく頼むなのは……?」

 

 

 なんだろう、また違和感。始めて呼ぶ筈の名前なのだが、異様に呼び捨てが慣れない。

 

 

「はい!じゃあ行きましょう。」

 

 

まぁ、とりあえずはこの違和感を気にしないようにしておくか。

 

 

 

それにしても。

 

なんで俺は名前以外わからないのに。__こんなにも、落ち着いているんだ?

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 1週間前の話、私こと高町なのはは魔法使いになった。

 

 出会いは偶然の偶然。

 

 不思議な声が聞こえて、フェレットのユーノ君と出会って、それであの夜、あの病院の中で始めて魔法を使った。

 

 なんでもユーノ君の大切なもの、ジュエルシードが海鳴市に散らばっちゃったらしい。ジュエルシードは危ないもので人の願いや想いを捻じ曲げて叶えちゃうの。

 

 そんなジュエルシードを封印して集めていくのが今の私のする事、したい事。

 

 そして今日もそのうちの一つを封印し終わった時にそれは起こったの。

 

 

「………ふぅ、封印完了」

 

「お疲れ様、なのは」

 

「うん、ありがとうユーノ君」

 

 

 これで二つ目。ジュエルシードは全部で二十一個もあるらしいから、これからもっと頑張らなくちゃ!

 

 

「それじゃ、回収しなきゃ……?」

 

 

 あれ? 封印した筈なのに…なんで光り出してるの!?

 

 

「ユ、ユーノ君!?なんか光だしたよ!?」

 

「僕にもわからない……なんで……」

 

 

 私は焦って距離を取る。とりあえず、封印をし直さなきゃ!

 

 

「とりあえず何が起こるかわからないから、様子を見るんだ、なのは!」

 

「うん!」

 

 

 その一瞬、されど一瞬。私たちは目を離してしまった。

 

 

「きゃ!?」

「うわ!?」

 

 

 光が一気に結界内に広がる。あまりの眩しさに咄嗟に目を閉じてしまう。

 

 

「…………っ!」

 

 

 少しづつ光が収まっていく。ジュエルシードは………え?

 

 

「…………………え?」

 

 

 ジュエルシードがあった筈の場所には。

 

 

「…………………………」

 

 

 黒髪でジャージ姿の男の人。

 

 あれ? ちょっと待って。ジュエルシードは? というかこの人はいつのまにか目の前に現れたの? ここ、結界張ってたよね?

 

 目の前の男の人が起き上がり、目を開く。少し眠そうで目は灰色。

 

 えっと、まずは冷静にならなきゃだよね?

 

 とりあえずはえっと、えっと、あうあう……

 

 

「……えっと、なのは? そろそろ正気に戻ってくれると、僕的にも助かるんだけど…」

 

 

 ユーノ君の声で少し落ち着く。

 

 そ、そうだよねとりあえずは自己紹介とかした方がいいよね、うん。

 

 目の前の人はなにかを探すように公園の中をキョロキョロしている。

 

 と、とりあえず私から話しかけなきゃ!

 

 

「あ、あの……えっと……」

 

「…………ん?」

 

 

 うわぁ……やっぱり年上の男の人だと緊張するよぉ……

 

 

「……あの……」

「………………」

 

 

 ジッと私を見てくるお兄さん。き、緊張が……

 

 

「えっと……」

 

「………………」

 

「うぅ………」

 

「…………………」

 

「あぅ………」

 

 

 誰か助けてぇ!! 少し涙目になってると

 

「えっと、キミは?」

 

 

 ! 落ち着いて……落ち着いて……

 

 

「えっ!あっ……えっと、私は高町なのはです……」

 

「そっか」

 

「……あの、貴方は?」

 

「俺は、……………?」

 

 

 何かを思い出すように考え出すお兄さん。どうしたのだろう?

 

 

「………ユウ、ユウだ」

 

「ユウさん、ですか?」

 

「ああ」

 

 

 ………少し様子がおかしかったような? でも名前は答えてくれた。ユウさん、ユウさん。

 

 よし、自己紹介は出来たから次こそ本題。

 

 

「あの……聞きたいことがあるんですけど、さっきのは?」

 

 

 そう、ジュエルシードの事。ユウさんが現れた場所にあった筈のジュエルシードが無くなってしまっていた。

 

反応も感じないし……さっきの光が原因以外にないよね。

 

 

「…………?」

 

 

 あ、あれ? ユウさんがなんのこっちゃって顔してる……

 

 

(なのは、とりあえずは何処か落ち着いた場所で話を聞くのがいいと思うよ?)

 

(そうだよね、なんだかユウさんの反応が可笑しいし、場所を移すよ)

 

(それがいいと思う。ユウさんから魔力を感じるし、もしかしたら魔導師かも)

 

(え!?ユウさんが?)

 

(うん、その辺とか含めて話を聞くのがいいと思うよ)

 

(わかった、とりあえず提案してみるね)

 

「あのユウさん、少し付き合って欲しいんですけど、大丈夫ですか?」

 

「ん、大丈夫だ。 何処か場所でも移すのか?えっと……」

 

 

 どうしたんだろう? あ、そっか。

 

 

「あ、なのはで大丈夫ですよ。」

 

「じゃあ、よろしく頼むなのは……?」

 

 

 なんで疑問形なんだろう? とりあえずは悪い人ではなさそうだし、行くなら私の家か翠屋かなぁ…… 。




今回はここまでで。
次回は明日か明後日には更新します。

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