あれから数日、俺となのははアースラでは臨時局員として働いていた。
この船では俺となのはは戦闘員として扱われ、先ほど反応があったジュエルシードを封印し終えた所だ。
この場所の人たちはプロという事もありかなり強力なバックアップをしてくれたおかげで今までにないほどスムーズに集まっていく。
既になのはとユーノは帰還しており俺は少し野暮用を済ませたところだ。
ここ数日て慣れた転移を使いアースラに戻ってくる。
「ユウ、帰還しました」
「あらお疲れ様、順調みたいね」
「お疲れ様ーユウくん」
ブリッジに入るとリンディさんとエイミィが声をかけてくれる。
エイミィは俺と同い年という事もあり割と友好な仲になっている。
「コレでここに来て回収できたロストロギアは2つだね」
「ああ、ここのバックアップは本当に凄いよ。的確に指示出ししてくれるから俺も楽させてもらってるよ」
それほどでもーなんて言っておちゃらけているが現場になれば別人かと思うくらいの明確で的確なアドバイスをしてくれる。
「さてユウくん、昨日話したと思うけどこの後なのはさんと一緒に測定に行ってきてね」
「はい、わかってます」
簡単に言ってしまえば健康診断のようなものと魔力の貯蔵量や他に何か能力がないかなどを調べるらしい。
「それにしてもユウくんもなのはさんも優秀だし将来は管理局に来てくれれば助かるんだけどね」
「はは……考えておきますよ」
ここ数日アースラに乗ってからリンディさんたちからのスカウトの話が時々出てくる。
なんでも戦闘員というか管理局はかなり人手不足らしく俺たちを雇いたいとか。
リンディさんたちの世界では就職は早くから出来るらしくクロノはまだ14歳だとか。
凄いよな、その歳でかなり上の方らしいから。
「ユウ、こっちだ来てくれ」
「ん、了解」
クロノに呼ばれアースラ内を歩く。
アースラ内の施設は様々で風呂や食堂、個室はもちろんの事、訓練室や保健室的なものまであった時は少しびっくり。
まぁ様々な場所に対応できるようにって事なんだろうけど一般人の俺からすれば驚きばかりだった。
少し歩くと訓練室に着く。
どうやらここで色々調べるみたいだ。
「なのはは?」
「ああ、彼女なら後から来るから気にしないでくれ」
「わかった、なら最初は何をすればいいんだ?」
「まずは身体調査だ。別段特筆したことはしないから気楽でいい」
簡単な身体測定やアレルギーの有無などを行っていく。
「君は何処かで鍛えていたりしたのかい?随分と身体つきが良い方だ」
「そうなのか?まぁ話したと思うけど俺昔のこと覚えてないからわからないんだけどな」
「そういえばそうだったな、しかしこの鍛え方は僕たち管理局の訓練でシゴかれたのかってレベルだ」
そんなにだろうか?
自分の身体を見回すが見慣れているせいでよくわからない。
「まあ良い、次は魔力質の検査と測定だ、セットアップしてくれ」
「ああ、なんでもいいか?」
「む、そういえばユウは複数のバリアジャケットがあるんだったな」
どうするかと考えているクロノ。
別に全部試してもいいんだが……
「とりあえずだが今のままで魔法を使えないか?軽くでいいからクラスだけ測ろう」
「クラス?」
「ああ、魔力量と技術でクラスわけできるんだ」
そういうと軽く説明してくれるクロノ。
ランクは複数ありBを超えていれば凄いらしい。
ちなみにクロノはAAA+らしく段違いなのがわかった。
「そういえばなのはの方は先ほど測ったがAA+で貯蔵魔力は僕の知ってる中で一番多いかもしれない」
「へぇ……凄いな」
「ああ、アレで魔法を使い始めて間もないなんて信じられない。紛れもなく天才の部類だよ彼女は」
なんて苦笑いしながら話すクロノ。
なのはって凄いんだな、元々魔力が多いのはユーノから聞いていたがクロノまで認めるとなるとまた別格の印象を受ける。
「さてユウの魔力量から測るぞ」
「ああ、よろしく頼む」
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アレから10分ほどだったがまだ俺の測定が完了しない。
俺の魔力量を測っているのだが何やらクロノが怪訝そうな顔をする。
機械の数値で出ているのだが俺の方からは見えない。
「どうした、何か不調か?」
「いや……測れているんだが、コレだと色々おかしくてな……」
おかしい?
「ここ数日僕もユウと一緒に戦っているからある程度の魔力量は把握してるつもりだったが何回測り直しても低すぎるんだ」
「そうなのか?」
「ああ、僕の予想ではAは超えていると思ったんだがC-なんだ、君の魔力量は」
「はは、低いな」
やっぱ才能ないのかなーなんて笑っているとクロノがまた怪訝そうな顔をする。
「これだと普段のキミの戦闘時と噛み合わなすぎる。それに初めて会った時のあの魔力量とも……」
「そんなにおかしい事なのか?」
「ああ、ハッキリ言って異常だ。この事に関して他の誰か、なのはやユーノに何か言われたことはないかい?」
ふむ、何かあっただろうか?
……あ、そういえば。
「そういやユーノがレアスキルだなんだって……」
確か俺のリンカーコアが他の人と違うんだっけ?
魔力の色もおかしいって言ってたし。
そう話すと詳しく教えてほしいとクロノに言われ、ユーノに受けた説明をそのまま話す。
「僕も聞いたことがない。他人の魔力を自分の中のリンカーコアに入れて染めるなんて……だから時折観測時になのはと君が区別つかなくなったのか」
「そんなに珍しいのか、コレ」
自分の胸を指してクロノに聴くと何やら呆れている。
「はぁ……なんでレアスキルだなんて大層な名前が付いていると思う?それは多分君にしかない特別な能力だ。他に例を見たことない」
「って言われてもな……俺には才能ないんだろ?ランクもクロノの何個も下だし」
いくら凄い能力でもそれを活かせられなければ意味がない。
そう話すとまた呆れた顔をするクロノ。
「僕の予想が正しければ君が本来の力を発揮できるのはあの特別なバリアジャケットを身に纏ってからだ。あのデバイス返すぞ」
そう言って俺のデバイス渡してくる。
そういや解析したいからって預けてたんだっけか。
「どうだったんだ、何かわかったか?」
「ああ、"何もわからない"事がわかったよ」
「へ?」
何もわかない事がわかった?矛盾してないか、それ。
「君のそれは僕たちの技術ですら解読不可だ。技術者は"まるで何年も未来から持ってきた異物"なんていってたぞ」
「そりゃまた大袈裟に聞こえるけど……」
「大袈裟なものか。ここにいる技術者は優秀な者ばかりだぞ?ジュエルシードが過去からのロストテクノロジー、ロストロギアならユウの持つそのデバイスは全くの反対で未来からの異物だ」
少し恨めしそうにこちらにいってくるあたり相当時間をかけて解析したが全く情報を得られなかったのだろう。
「それにそのデバイスのAIがかなり複雑なロックをしていて閲覧権限すら得られなかった。……というか何処か封印されてるみたいだったよ、まるでブラックボックスだ」
そこまで言われて俺の持つ"コレ"の異様性がフツフツと感じ始める。
あ、そういやもう一つ預けてたものがあった。
「クロノ、魔力メモリは?」
「ああ、すまない」
そういって渡してくる2つのメモリ
俺の手に帰ってきたメモリを見つつクロノが続ける。
「ホントにそれもよくわからなかった。調べてみれば中身はほんの僅かな魔力だけで気になったのはそれが他人の魔力だったというくらい。
他は殆ど分からなかったよ。
……君、ホントは未来人なんじゃないか?」
ジト目で俺を見てくるあたり本気で時間を無駄に使ったことを後悔しているのだろう。
「はぁ……まぁ調べさせて欲しいといったのは僕たちだし文句も言えないんだがな。
一応確認なんだがそれのデータを上に報告しても構わないか?」
「ああ、別に困る事もないしな」
わかった、協力感謝すると言いつつデータを何処かに転送している。
さて、次はセットアップしつつ魔法を使うんだっけ?
「よし、ここからの測定は記録してもいいか?」
「ああ、構わないよ」
「ありがとう、それと今ここの映像はリアルタイムでブリッジに流れてるけど気にしなくていい、単純に艦長やオペレーター、技術者が見たいだけらしいからな」
「構わないけど、暇なのか?」
「まぁ今は特に反応もないしみんな君のその力に興味津々で手についてない馬鹿者までいるんだ。……全く」
そう言って何処か愚痴気味になるクロノ。
苦労してんだな。
そんな話をしていると誰かがこの施設に入ってくる。
「ユウさーん!」
「お疲れ様、ユウ」
「なのは、ユーノ。そっちは終わったのか」
「うん、だからユウさんの方に来ちゃった」
許可はちゃんと貰ってるよ!と2人とも真っ先にクロノに報告するあたりよく分かってる。
「それにボクがいた方が何かと便利でしょ?ユウの魔法に関する事は一番近くで見てるし」
「たしかに君が居てくれれば助かる。今からセットアップ状態で観測に入るから……」
と何やら難しい話をしている2人。
俺にはわからないのでシャットアウトしなのはと雑談し始める。
「なのは、凄いんだってな」
「そうみたいなんだけど……なんだか実感なくて」
「まぁ急に言われてもなぁ……」
なのはの方は砲撃や戦闘など割と多種多様の診察をしたらしく、空戦向きだとも言われたと言っていた。
「ユウー始めるよー」
「ああ、わかった!それじゃ行ってくるよ」
「うん、いってらっしゃい」
さてとりあえず何から始めればいいんだろ?
「とりあえず君が1番はじめになったバリアジャケットになって欲しい」
「了解、ブラスターだな」
俺はいつも通りメモリをデバイスの背中部に差し込み起動させる。
《mode1・Blaster Nova》
「セットアップ」
セットアップするたびに感じるなんとも言えないこの感じ。
自分の中に何か入ってくる、コレが俺のリンカーコアになのはの魔力が入ってくる感覚なんだろうか?
「ふむ、やっぱりそのバリアジャケットは彼女のモノに似ているが違うものみたいだな……」
「うん、なのはとユウのバリアジャケットだと性質というか根本は似ているけど中身は別物だね」
難しい会話だ。俺には理解できないので完全に聞き流していく。
「それじゃあ魔力量を測るから少しじっとしててくれ」
「ああ」
もうこの作業も何回目か、特に身体に違和感などはないがじっとしてるのは苦手な方なのでなかなかにしんどかったりする。
測定できたのかピピッという音がする。
「ああ、少し待ってくれ今結果が出るから……」
「これ……やっぱり」
なにやら画面を見た瞬間難しい顔をする2人。
今度はどうしたんだ。
「魔力ランクAAA……一気に跳ね上がったね」
「ああ、やっぱり君の言っていた通り増加しているみたいだ」
どうやら先ほどの測定とは違う結果だったらしい。
「ユウ、君のレアスキルに名前をつけるとしたら"調和結合"とでも言うべきかな」
「調和結合?」
「ああ、僕もそれでいいと思う」
ユーノが解説してくれる。
俺のスキルは自分以外の魔力やそれに類似する魔力に関係したものを自身の魔力の波長(魔力色)と調和させて合体、つまり結合させる事が出来るのでは?との事。
「まだ詳しくは分からないけどもしかしたら他にも出来る事があるかも知れないね。例えば他の人の魔力の色を変えたりとか……」
「まぁ今は残りの計測を済ませよう、ユウ続けてくれ」
「了解」
そこからは通常のフォルムを計測していく。
ブラスターがAAAランク、セイバーがAAランクと高水準だ。
次はブレイズフォース。
ソードエディションがAA+でスピアーがAA、そしてその2つを使用したマルチモードがAAAランクだった。
「ここまで高ランクだと笑えてくるね、とういうかキミは1人で何フォームになるつもりだ」
とクロノに言われるが俺だってこんなにあると変身の時どれにするか迷うんだぞ?
と言ったらそうじゃない馬鹿者と言われてしまった。
「そういえばまだあるだろう?あの黒くなるやつ」
「あーアレか」
「「それはダメ!」」
オーバードライブの話をし始めるとなのはとユーノの声が揃う。
まぁアレ使って何回か倒れてるしな。
「何かマズイのか?」
「そういや説明してなかったな……」
そこからオーバードライブの仕組み、ハイリスクハイリターンな事をクロノに話す。
「なるほど、だからあの時あんな動きができたんだな」
「そういう事だ。まぁ変身するだけなら多少は大丈夫だけど……」
ちらっとなのは達を見るとブンブンと顔を振っている。
NGみたいだ。
「観測だけでもしたいのだが……」
「うーん……まぁ少しなら大丈夫だろ」
「もう!ダメだって!」
「別に戦闘しなきゃ痛みとかもないって言ったろ?少しだけだから」
そう言ってなのはとユーノを説得する。
一応使うつもりは無いけど必要になった時にこのデータは必要なのがわかっている。
なんとかなのはを説得し少しだけという約束で使用許可を得た。
「むぅ……」
「はは……それじゃ計測してくれ」
了解とクロノが返事をしたのでオーバードライブを起動する準備をする。
……やっぱり緊張はするんだけどな。
あれから数日、全く触れていないがあの時の痛みを覚えている。
「オーバードライブ」
《Over Drive 》
自分の中にあった壁が壊れる感覚がする。
俺の魔力が別のモノに変わっていく。
「よしそのまま動かないでくれ…………よしもういいぞ」
「ふぅ……」
オーバードライブを解除する。
手を握ったり足を動かすが特に痛みや変な感覚は無く問題ない。
「……コレは…」
「ん?出たか」
なにやら固まっているクロノとユーノの方に向かい後ろから画面を確認する。
測定不可?なんだこれ。
「今度こそ故障か?」
そういうとクロノが俺の方を少し真剣に見ながら説明してくれる。
「……違う、この測定器は少し古いものでSランクまでしか測れないんだ。
もしそれ以上のランクならこの表示になる」
「つまり……ユウのオーバードライブ中の魔力ランクはSオーバー……!?」
「それ、凄いのか?」
と言うと前の2人がずっこける。
そして俺を心底呆れたような目で見てくる。
え?何?
「ホントにユウは……」
「君の気持ちが少しわかったよ、この馬鹿者と戦ってきたというのだから……」
なんか仲良くなってない?この2人。
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場所は変わり食事の時間となっている。
ここでの食事は別段マズイという事もなくむしろ俺には割とあっている気がして気に入っていたりもする。
……とはいえ桃子さんやはやての料理が少し恋しくなりつつあるのもまた事実。
「となりいいかい?」
「んぐ、クロノか。構わないよ」
実は男同士という事もありクロノとの交流がなのはやユーノ次くらいにここでは多かったりする。
「さっきは色々驚かせてもらったよ、あの映像を見ていたクルー達も顔を引きつらせながら笑ってた」
「そりゃまた……」
「誰のせいかわかってるのか?」
なんて溜息を吐きつつスープを口に運ぶクロノ。
「あのオーバードライブだったか?アレには一定の魔力ランク以下の人間に恐怖を抱かせる能力もあるみだいだ」
「へーそうなのか」
「へーって……まぁいい。どうやらBランク以下はみんな怖がってあの姿を直視すらしたくないレベルだったらしいが、今のキミをみてみんな毒気を抜かれてしまったようだ」
そう言って周りを見渡すとここで知り合った人たちが俺に手を振ってくれる。
ふむ……何かしただろうか?
「自覚していないようだから僕から言うと君は天然記念物級のお人好しだ。ここに乗っている人間の数はかなり多いはずなんだが……この数日だけで君に助けられたと何件報告が来てると思う?」
「あー…別に気にしなくていいのに」
はぁ…そんな性格だな君はと言って俺とつるんでくるあたりクロノもかなりのお人好しだと俺は思うけどな。
「まぁいい、今はジュエルシードの反応もないしゆっくり休んでくれ。仮にも今キミたちはアースラの乗員メンバーだからね、倒れられると僕たちの責任になる」
そう言いつつ何やらお菓子のようなものを俺に投げ渡してくる。
「なのはとユーノもそれなりに疲労しているみたいだ。それでも持って息抜きでもしてくるといい。……まぁ君からは疲労の色が全く見えないんだが……」
そう言って他にもチョコレートのような物も渡してくる。
やっぱりクロノの方がよっぽどお人好しじゃないか?
「それじゃ僕はそろそろブリッジに戻るよ。ユウ、君も急に知らない場所で慣れない事をしているんだ疲れはいつ来るかわからない。
ちゃんと休んでおけよ」
そう言って去っていくクロノ。
ああいうのはなんて言うんだっけ……忍さんに教えてもらったんだが……
「相変わらずツンデレだねぇクロノ」
「あ、それだ」
急に現れたエイミィに同調する。
「まぁクロノの言う通り疲れはいつ来るからわからないんだよ?ちゃんと休んでね」
「休んでるぞ?」
そう言うとふふふと笑いながら小声で
「休憩時間に魔法の特訓してるの監視カメラでブリッジから見てるよー」
……バレてたのか。
「わかったよ、今日は大人しく休んでる」
「うむ、素直なのはよろしい。それじゃあ!」
そう言って何処かにいくエイミィを見送る。
俺も食い終わったら大人しく休むかなぁ…
ここまでお疲れ様です。
割とスタックが溜まってきたので毎日投稿出来てますねw
と言いつつこのお話が最後のスタックだったり……
それではまた!
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