Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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エクストラミッション=間話。sts編のどこかで起きているちょっとした小話です。

※つまり主人公とヒロインがイチャつくだけ。


sts エクストラミッション 鬼教導官とのスイートな1日:前編

 

 

 

 

「なのはさんがワーカホリック気味、ですか?」

 

「そうなんよ……お休みもしばらく取ってへんし、少し心配なんよね」

 

 

とある日の夜。

 

滅多にない休暇前日ということで、本来は明日までだった報告書が今日中となり、ギリギリになってはやてさんへと提出しに来てみれば、そんな相談をされた。

 

いくら休日と言っても管理局を大元にする起動六課では、一度に全員を休ませるのは難しい。

 

そこで交代制での休暇申請を取り入れて、今回からそれが実施されたわけなんだけど。

 

 

「なのはちゃん、"みんな優先でー"なんて言って、気づいたら休み取ってなかったんよね……」

 

 

なんと我らが隊長にして、教導官なのはさんがお休みを入れずにひとり働き続けようとしていたらしい。

 

薄々気づいてはいたけど、俺たちの指導に自分のデスクワーク、さらには別の任務の出動をする姿を見かけるなのはさんが、ろくに休めているはずがない。

 

 

「ホントに仕事の虫というか、オーバーワーカーというか……それで、なんで俺にそれを?」

 

「ん? んー、深い意味はないんやけど。ユウくんならなんとかしてくれるかなーって」

 

「雑すぎますよ……というか休みを取ってない人をどうにかするなら、ここでは1番上のはやてさんが勝手に休暇を入れればいいじゃないですか」

 

 

そもそも休みを取るのは義務のひとつでもあるので、ここのトップであるはやてさんが一言、休めって言えば全て解決じゃないか?

 

てか、法律とか詳しくないけどさ。本人の意思云々の前にずっと働いているという事象そのものが、よろしくないことな気がする。

 

ほら、世間体とかあるし。もっと言えば何かの拍子にこれが責任問題にでもなって、誰が悪いんだーってなれば、ここの1番上であるはやてさんが困るはず。

 

俺の言いたいことがわかっているようで、苦笑いを浮かべているはやてさんを見るに……なるほど。

 

 

「それはわかっとるし、なんなら明日お休みにさせたんやけど……」

 

「自分の部屋で仕事をする可能性がある、ですね」

 

「そういうこと。それじゃ意味あらへんのよね」

 

 

仕事に真剣なのは嬉しいんだけど、と言葉を続けた呆れ気味のはやてさんの顔には心配も含まれていた。

 

なるほど、明日が休みかぁ……。

 

 

「うーん……スバルたちはまだ休みは先だし……誰かなのはさんとお休みが被ってて仲のいい人にどこかへ連れ出して貰えばいいのでは?」

 

「それが明日だとユウくんとなのはちゃんだけなんよ。他にもいるけど、数日の申請でとっくに出てるしな」

 

「へー……数日もお休み取れるんですね」

 

「普段はあんまり休めへんけど、まとまった休日を取ること自体は珍しくないよ? 1日しか申請を出さんかったのはユウくんだけやし」

 

 

まぁ、1日すら出さんかった隊長さんがおるから困ってるんやけどね? と再び困ったようにため息を吐くはやてさん。

 

俺としても、普段からお世話になっているなのはさんの現状を聞いてしまったからには、なんとかしたい。

 

 

「とりあえず、なのはさんに話を聞いてみます。せめて1日くらいゆっくりしてくださいって俺からも言ってみます」

 

「お願いなー。ユウくんが言ってくれるなら、それなりに効くやろうしね」

 

「別にそんな事ないと思いますけど?」

 

「それがそうでもないと思うよ? とりあえずよろしくな」

 

 

少し微妙そうな顔をして、去っていくはやてさんを見送ってから、どうしたものかと考える。

 

別に仕事をすることが悪い、と言っているのではなく、それが原因で倒れちゃったりしたら元もこうもない……それがはやてさんの言いたいことなんだろうけどさ。

 

 

「ガス抜きくらいはしなきゃ、パンクするよなぁ」

 

《いくら慣れていてもストレスは溜まるものです。マスターも最近は疲れ気味でしたし、どこかでゆっくりされる予定でしたよね》

 

「そうだな。適当に部屋でだらけるか、ミッドチルダの街でも見てこようかなって」

 

《でしたら、それになのはを誘えばよろしいのでは? もちろん彼女の都合次第にはなりますが》

 

「えぇ……」

 

《嫌なんですか?》

 

「そんなことないけどさ……断られた時のショックがね?」

 

 

苦笑いとともに言葉を濁されて断られるビジョンが頭に浮かび、気分が滅入る。

 

というか、なのはさんとかフェイトさん、はやてさんも男性関連の話題は結構シビアのものをよく聞いていたし、休日に俺からお出かけのお誘いをしても十中八九、断られるのがオチだろう。

 

あれだけの綺麗どころだから、本曲で別部隊にいた時もたくさん誘われていただろうに、そっち系の噂は一切無いのが証拠だ。

 

 

《チキン》

 

「うっせ」

 

《普段からお世話になってるんですから、声くらいはかけましょうよ。はやてにも頼まれていますし、誘うだけならタダです》

 

「でもタダほど高いものは無いという言葉がな?」

 

《少しくらい高いものの方が質はいいです。貴方もなのはと関係を深めたいと思ってはいるんでしょう?」

 

「そりゃ、任務もあるしな。……うーん、行くだけ行ってみるか」

 

《はい、それがよろしいかと。予想ですが貴方が危惧しているようなことは起こらないと思います》

 

 

アインスとの会話で渋々ながら向かうのは、なのはさんとフェイトさんの部屋。

 

六課に来た初めのころは、生活していた部屋だし迷うこともなく目的地へと到着する。

 

……まぁ、誘うだけなら別になぁ。

 

少し躊躇しつつもコンコン、と扉をノックすればすぐに返事が返ってきた。 

 

返事とともに扉が開かれて、ラフな格好のなのはさんがキョトンとした顔で現れる。

 

 

「はーい。あれ、ユウくん? どうかしたの?」

 

「こんばんわ。今って時間大丈夫ですか?」

 

「うん。特に何もしてなかったし、今日は私ひとりだから」

 

「フェイトさんはまだ本局に?」

 

「そうなんだよー、明後日までだったかな」

 

 

入って入ってーと部屋の中に招かれて、少し雑談。内容はちょっとしたことばかり。

 

会話をしつつ、なのはさんの様子を見ながらチラリと机を確認してみれば……やはり俺が来るまで何かの資料を作成していたのか、作業中のまま止まった画面が表示されていた。

 

こりゃ、はやてさんの予想通りくさいな。

 

 

「それで、ユウくんはどうしたの? 寂しくなっちゃった?」

 

「だから子ども扱いしないでくださいよ……」

 

「えへへ、ごめんね。でも本当に何かあったの? ユウくんの方から私の部屋に来るのって珍しいよね」

 

「あ、えっと……」

 

「?」

 

 

よくよく考えてみれば、なのはさんたちから俺の部屋に遊びに来ることはあっても、俺から行ったことはない。

 

別に意識してなかったけど、今この部屋には俺となのはさん2人きり。あれ、なんか緊張してきた……?

 

 

「もぅ、どうしたの?」

 

 

ツン、と頬を突かれた感触で泳いでいた目が前へと定まる。

 

視線の先にはテーブルへと乗り出して、頬を突いてくる困ったような微笑みを浮かべるなのはさんの顔が、思ったよりも近くにあった。

 

うぐ……なんか変な雰囲気になりかけてる……? まずい、早いこと誘って断られよう。

 

 

「あの、なのはさんって明日はお休みですよね?」

 

「そうだよ。はやてちゃんがお休みにしてくれたんだ。……あれ? なんでユウくんが知ってるの?」

 

「はやてさんから聞いたんですよ。それで、何かすでに予定とか入っていたり……?」

 

「たまった分の書類とか作っちゃおうかなって」

 

「それ、休みじゃないですよね?」

 

「にゃはは……でもほかにすることもないし、私以外はみんな訓練とかあるから、遊びにもいけないからね。何もしないで1日終わっちゃうのはもったいないでしょ?」

 

 

………む、なのはさんは俺が休みなの知らないのか?

 

 

「え、と……よかったらなんですけど」

 

「うん?」

 

「明日は俺と過ごします?」

 

「………………ふぇ?」

 

 

俺の言葉の意味が理解できなかったのか、ふにゃふにゃの鳴き声がでて、ポカンとした顔になった教官さま。

 

なんとも間抜けな顔だな、おい。こんな顔見たことないぞ。

 

それから数秒たったくらいだろうか? 少しずつ頬に赤みが刺して、もじもじとし始めたなのはさん。

 

……思っていたリアクションと違うもので、ちょっと嫌な予感。

 

 

「ユウくんも、明日お休みなの?」

 

「たまたまですけどね」

 

「だから、私を誘ってくれたの?」

 

「一応、お時間があれば、くらいですけど。何か予定があればお気にせずに」

 

「だ、大丈夫! うん、大丈夫!!」

 

 

妙に気合の入った返事ですね。なんか様子おかしくない?

 

それにどんどんモジモジ度が上がっていくし、目線もあっちこっちへと挙動不審のようになっている。

 

どれくらいそれが続いたか、少し落ち着いたなのはさんが、意を決したように口を開く。

 

 

「あの、聞きたいことというか、確認なんだけどね?」

 

「はい」

 

「これって、私とユウくんのふたりだけでってこと?」

 

「そうですね、他に誰もお休みはいませんし」

 

「…………ぅ」

 

「なのはさん?」

 

 

より赤みを増すなのはさんを見て、頭にハテナが浮かぶ。なんだろう、本当は体調が悪いのかな。

 

無理はさせられないと、断りの言葉を入れようとした時、先に彼女の方から少し弱った声音でまた確認がとられる。

 

 

「そ、それってさ」

 

「はい」

 

「で、でーと……ってこと、かな?」

 

「はい?」

 

「私、そういうの経験ないけど……それでも良かったら……」

 

 

でーと……デート? あれ、なんかおかしい気がする。

 

目をぐるぐるさせて混乱したなのはさんに、少し焦り始める。

 

 

「あ、あの?」

 

「別にお誘いをもらったことがないとかじゃないんだけどね!?」

 

「別にこれはデートとかじゃなくて……」

 

「男の人と2人きりでお出かけするなら、やっぱり好きな人とが良いというか……でも私、ずっと想ってる人がいてね!?」

 

「聞いてます? あれ、おーい?」

 

「昔からずっとなんだけど、もう会えないと思ってたから、あれでもその人は目の前に? え? あれ!?」

 

「ちょ! なんでそんな目を回してるんですか⁉︎ 煙、頭から煙出てますって!?」

 

 

ばたんきゅー。

 

混乱した末にキャパオーバーになったのか、パタンと机に上半身を倒れ込ませた上官さまに慌てて駆け寄る。

 

おいおい、まだ目がぐるぐるしてるじゃん……てか、何をこんなにテンパっているんだ。

 

恐る恐る声をかけてみるけど。

 

 

「なのはさーん? 聞こえますー?」

 

「へにゃぁー……」

 

「……ダメだこりゃ」

 

《思ったよりそっちの耐性がないようですね。……ふむ、男女の付き合いは今までに無さそうですか》

 

「何を考察してるんだ、お前は」

 

《ひとまず休ませてあげましょう。……普段は少し距離を取りがちな貴方から迫れば、こうもなりますか》

 

「別に壁とか作ってるつもりないんだけど」

 

《なのはたちから誘われて行くことはあっても、マスターから誘うことはないでしょう。そういうことです》

 

「?」

 

《……はぁ》

 

 

それから少しの時間を経て復活したなのはさん。まだ赤みがかった頬を隠すように、少し俯いたままの彼女からの言葉は。

 

 

「……ユウくんがよかったら……一緒に、ゆっくりしたいな」

 

「…………え、と。了解です」

 

「………うん。……楽しみに、してるね?」

 

 

上目遣いで、緊張したようにオッケーをいただいてしまったとさ。

 

 

………お部屋デートって、マジ?

 

 

 

 

 

 






ほのぼのした特別なお話シリーズ、スタート。不定期ですがちょこちょこ挟んでいく予定です。

第一弾はTwitterの方でリクエストをいただいた、なのはさんとの小話。

このシリーズは糖分マシマシなので、ちょっとだけ注意です。

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