ただいま現世。さよなら前世。   作:生肉トング

4 / 8
4話

それは突然体内に現れた。

 

須藤はゲホゲホと咳こみ胃から食道にかけて上がってくる異物を感じた

喉奥と口内に絡みついた糸のような束を苦労して吐き出す

手のひらに出したそれは繊維のような動物の毛が寄り集まってできたものだった。

 

シュトヘルが死ぬ前に飲んだ二胡の弦。

 

それを握りこんでジャケットの内ポケットに入れた。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

痛いのと疲れたので尻もちをついて須藤はそのまま寝転がる。

路地裏の埃やら砂やらが服に付いたがあまり気にならなかった。

 

周りの惨状を気にもせず女性は用は済んだとばかりに背を向けて歩き出した。

その背中に声をかける

「おねえさんこうゆう時もし呼ぶなら救急車?霊柩車?それとも警察?」

 

着物の女性は冷たい視線で振り向いた。

「なんでもいいだろ。最初に目が覚めたヤツがどうにかするさ。そこのやつの目はもうダメだろうけど誰も死んでないし」

周りは死屍累々。

目から血を流した人や刃物で切られ血を流している人、そこの女性に昏倒させられた人が倒れている。

 

そっかー死んでないのか

 

「おまえそんなこと気にするのか?」

「怪我人をそのまま放置は悪いことです?それ以上に死人をそのまま放置はもっと悪いことです」

「どの口で言うんだか」

はっ!っと女性に嘲笑だか冷笑だかされてしまった。

 

「ヒトゴロシか」

彼女の独り言程度の音量で囁かれた言葉はしっかり耳に入った。

シュトヘルは耳いいんだよなぁ鼻も勘もいいし。

 

「おねーさんもヒトゴロシ?」

 

むくりと起き上がる

 

「――――1人殺すのと2人殺すのは違うよ」

 

そうっすかね?と相槌をして話を続ける

「実は俺、先ほど母親に殺されそうになってそこで殺しちゃいましてもうどこにも行くところが無くてですね」

どうしましょう?

これからどうします?という顔をして彼女を見る。我ながら待てを言われた犬っぽい。

 

日本の警察は優秀だし逃げるにしても都会はマズいかなぁ。山とかどうだろう。

邪魔されたらまたやってしまおうか..まぁなんでもいいか。

1人殺すも2人殺すのも同じじゃあないか。

 

思考が濁る。

 

 

 

 

 

両儀式は青年を冷静に観察していた

人間離れした反応速度、情緒不安定な思考、青年が纏っていた黒い靄のようなもの。

タチの悪い魔術師に催眠か洗脳かされたか、性質の悪いモノに憑かれたか呪われたか。

先ほど根元らしきもの殺したが、また新たに不浄のものが青年の身の内から湧き出している。

これは根本的な治療が必要だろう。

 

 

「おねーさん前世って信じる系?」

濁った眼。外側は鉄と砂埃の匂い。しかし彼の身の内からは死臭がする。

腕を伸ばされた。縋るように救いを求めるように。

 

「助けて、助けて欲しいんです。どうすればいいのかわからないもんで。」

 

言葉の途中から茶化すような声音になったが心底困ってはいるようだ。

 

 

「...ついてこい。そいうのに詳しいのが知り合いにいる。困ってるなら専門家に聞くのが一番だろ。」

思いがけず優しい言葉をかけてしまったが本音として“おまえみたいなの野放しにしとくと何するかわかんないしな。”である

 

 

 




野放しにすると一定期間で数人~数十人単位の死体が増える。


次回説明会
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。