ユウキの勇者   作:にゃはっふー

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ちょっとした日常回。


第10章・アルゴの調査

 それはフィールドを練り歩く。

 

「………」

 

 61層は通称虫ばかり、一応湖があり綺麗だが、昆虫系は多い。

 

 虫型素材も多く、小型は素材扱い。それに気づかれずに採取しては次に移動。

 

 草陰など、色々な物陰に溶け込むようにして、中腰で移動する。

 

 色々パターンはあるが、花だったり、樹に止まっていたりするのを静かに取るだけ。

 

 時々大型が出るが、その時立ち上がると共に弓矢、すぐに片手剣二つなどで対処。さすがに大剣などは仕舞って戦う。

 

 そんなやりくりを繰り返し、しゃがんだまま歩き、静かに確実にアイテムを確保する。

 

 そして、

 

「?」

 

 声を出さず、気配を殺し、それに気づく。

 

 別のプレイヤーが一人、同じように採取活動をしていた。

 

(情報屋アルゴか)

 

 特徴からそのプレイヤーが誰であるか分かる。彼女が扱う情報ではベータ情報以外なら、自分のステータスも売ると豪語する者。

 

 確かバカな奴がスリーサイズ聞こうとしていると噂が立つ、女性プレイヤー。なんだかな………

 

 蝶々採取アイテム。それを取ろうとして近づき、失敗して遠くに飛ばれている。

 

 ついにあーーーーーーと叫び出して走り出す。

 

 そんな様子に呆れ、もうここでの採取はできないと移動を開始する。

 

 静かに、気配を殺して………

 

「この辺りにリンクがいます」

 

「リンクはここにいる」

 

 静かに気配を最大まで殺す。

 

 少しだけ顔を草陰から出すと、そこにユウキ、プレミア、ティアがいる。

 

 ティアが入ってから、彼女とプレミアの二人で、俺の位置を特定し、ユウキがアタックを仕掛けて来ることが多々ある事態になった。

 

 ティアの方は攻略組レベルなこともあり、この二人はかなり目立ちながら、中層プレイヤーたちを助けたりしていた。おかげで彼女たちに言い寄る男性プレイヤーもいるらしい。

 

 そんなことはさておいて、彼女たちは攻略組と大差ない。三人だけのパーティーで十分か。

 

「今日こそリンクとフレンドになるぞー」

 

「「おーー」」

 

 気配を殺し、風景と同化して、彼女たちが探索に集中した瞬間、このフロアから脱出するため、転移結晶の準備に入る。

 

 ここ最近転移や回廊の消費率が高くて、大変だな………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「おヤ? 君は《トライフォース》ノ」

 

「あれ? おねーさん、ボクらのこと知ってるの?」

 

 それはもう走って捕まえようとしていたアルゴ。ユウキたちに気づき、そのパーティーメンバーをよく見る。

 

「まあネ、おねーさんは情報を集めるのが得意だからナ。キミらが《トライフォース》に入ったって言うNPCカ」

 

 プレミアと、成長したティアを見て少し驚く。

 

 大剣を背負うティアにも驚くが、プレミアも十分強い。

 

 NPCであることと、美少女や美女であることからも人気があるし、なにより攻略組と大差ない強さは目立つ。

 

「情報屋? だったらリンクがいないか知らない? ボクら彼とフレンド登録しに来たんだ」

 

「アア、成長する、ティアだったカ。は確か、彼奴が《トライフォース》に預けたって話だったナ。悪いがその情報は売れない、知らないからナ」

 

 アルゴがそう言い、あれ?と全員が首をかしげたら、ティアは驚く。

 

「もう別の場所に、転移結晶を使われたっ」

 

「えぇーーーーっ。また逃げられた………」

 

 もうとぷんぷんと頬を膨らますユウキ。気づいているのか避けているのか分からないが、ユウキは少し頬を膨らます。

 

 そんなユウキを、

 

「ほほーう、ユウキはリンクとフレンドになりたいのカ」

 

「うんっ、ボク、リンクのことが好きだからっ♪」

 

 それは情報屋の前で言うには、少しばかりまずいことだった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「いらっしゃいっ」

 

 エギルの店、武器は一式仕舞いやってきたリンク。

 

 スキンヘッドの黒人男性が経営していて、彼に採取したアイテムなどを売買する。

 

「んじゃ、商談成立だ」

 

「ああ」

 

 彼はあまり考え無しにアイテムを売る。必要ないし、お金も少しあればいい。

 

 装備などはドロップ品から選んだり、レインの店で整える。それでなぜアイテム集めばかりするかと言われれば、必要とするプレイヤーがいるから。

 

 資金、自身の強化よりも、別プレイヤーの強化が目的だ。彼自身はすでにカンストしたようなものだ。少なくてもプレイヤースキルはすでに他と違う。

 

「たまには喫茶店の方も利用してくれよ、お前はある奴と違ってお得意様だからな」

 

「酷い言い方をするな………」

 

 そう言い、そこには座り、飲み物を飲んでいた《黒の剣士》キリトがいて、お互いここを利用しているらしい。

 

 たまには食事もいいか。そう思い、手軽なものを頼み、席に座る。

 

 フードを外し、金色の髪と碧眼が目立つ。

 

「前々から思ったが、お前さんハーフだけど、かなり目立つな」

 

「ああ、よく言われる」

 

 そして食べ物を待っていると、また誰か来た。

 

「いらっしゃい」

 

「おおっ、いたいた。キリの字っ」

 

 彼は《風林火山》の『クライン』。彼がキリトの席へと近づいていく。

 

「おい見たか、掲示板」

 

「なんだ? もうフロアボスを見つけたのか」

 

「いんや違う。これこれ」

 

 そう言ってキリトのテーブルに紙を広げ見せたそれに、

 

「なんじゃこりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 キリトが悲鳴を上げ、水を吹きかけた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 エギルは料理を持って来て、彼も驚く。

 

 俺は簡単な料理、スパゲティみたいなもん受け取りを、消えないうちに口の中に流し込む。

 

「おい静かにしろキリト、いまはお前以外にも客がいるんだぞっ」

 

「だって、こんなん。君にも関係あるぞ」

 

「?」

 

 エギル以外、そんなに会話もなにもしていないはず。急に話しかけられてもな。

 

 そう思い、俺はそれを読み上げた。

 

「なになに………。これは『SAO新聞』?」

 

「SAOの色々なことが書かれたもんだよ」

 

 SAO、このゲームは情報が大事だ。

 

 罠、エネミーパターン、トラップ。フロアボスや最近のアイテム流通まで多種多様。

 

 情報はどうしても切り離せず、日々プレイヤーから求められている。

 

 まあ、中にはシリカファンクラブなど、怪しい情報まで扱う奴がいるが………

 

「まあ大事なこと………なにこれ?」

 

 俺もまた首を傾げて、エギルが受け取り、それを読み上げる。

 

「『全男性プレイヤー当選、美人美少女党選挙』………なんじゃこりゃっ!?」

 

 それはSAOの女子プレイヤーの明らかな盗撮写真が記載されたものであり、シリカやアスナはぱっと見でいるし、レインなどもいた。

 

 ユナもまたいて、横にノーチラスへの怨嗟も書き込まれている始末。

 

 こうして見ると、多くの知り合いが掲載されているが、それはいまは置いておく。

 

「しかも投票者についてのコメント欄と相手を」

 

「なになに………」

 

 知性のお嬢様ゼルダ、聖女ミファー、元気妹系ユウキ、マスコット少女シリカ、ミステリアス少女プレミア、大人の魅力を持つ少女ティア………

 

「いや~………《トライフォース》が多いし、しっかり《閃光》にも入ってるな」

 

 そうなのだ。ほとんど知り合いばかりであり、ユウキなどに至ってはVサイン。これは後でゼルダから説教だな。

 

 だが問題はそれでない。無論、ユウキからお兄ちゃんと呼ばれたいなど抜かすアホもいまは問題では無い。後でギルドに根絶やしにされるだけだ。

 

「これ、俺らも入れたことになってるのか」

 

 そう、全男性プレイヤー投票とか書かれているが、俺たちがこんなアホなことな付き合う道理は無い。

 

 そもそもほとんど活動時間を迷宮区に回す俺に、こんな情報は知ることは無いのだ。

 

「えっ、お前ら投票してないのか? 俺はウルボザさんかミファーさんとか、結構悩んだんだぜ」

 

 さも当然のようにクラインは言うが、俺とキリトは嫌な顔をする。

 

「………俺もこれに参加したことになってるのか」

 

 キリトが顔を覆い隠し、天を仰ぐ。

 

 こんなん女性プレイヤーから白い目で見られるのが確実なこと、誰かがするか。

 

 気にしても仕方ないと、エギルの料理を食べていると、

 

「あっ、お前ら、やばいかも知れないぞ」

 

「ん?」

 

「誰と誰が」

 

「キリトとリンク、ほれ」

 

 それは下の項目で『悲報、我らの女神《黒の剣士》キリトと《亡霊》リンクに好意あり』と………

 

 俺とキリトが顔を合わせるようにそれを見た。

 

「「ふっざけんなあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」」

 

 そこには俺がユウキ、レイン、ルクス、プレミア、ティア、ミファー、ゼルダ。

 

 キリトはアスナ、シリカ、サチ、リズベットと色々書かれていた。

 

 怨嗟の声はともかくとして、これは完全なとばっちりが確定している。

 

 どうするの俺ら?

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「まずユウキに投票したプレイヤーを牢獄に入れましょう」

 

「ゼルダ、落ち着いて」

 

 ゼルダはフィリアに押さえつけられ、新聞を握りしめた。

 

 いまユウキは運が良い事か、このことを知らない。

 

 シリカやルクスたちみんながいて、全員が投票されていた。

 

「わた、わたしがリンクとできてるって。誰よこんなこと書いたのッ」

 

 レインは激昂し、シリカは真っ赤になり、自分とキリトの写真が大きく取り扱われている。

 

 キリトだけは町中の写真が使われているが、リンクだけは似顔絵。彼は町で見かける機会はほぼ無い。写真を用意できなかったのだろう。苦肉の策と書かれていた。

 

「私は………ううっ」

 

「ルクスはまあ本当だからいいんだけど、ミファーはどうなんだろう?」

 

「ミファーはともかく、私まで彼のことをとか、嘘もここまで書くなんて」

 

 ゼルダはすぐに塵へと変え、静かに武器を構える。

 

「けど実際、お嬢様は彼のこと気にかけてるじゃ………。ごめんごめん睨まないで」

 

 リーバルの軽口に、ゼルダは鋭い眼光を光らせた。

 

 一行は呆れ、ユウキも彼のことが好きとか書かれている。

 

「ユウキはそう言うのではないのです。もしもデリケートなユウキがこれを見たら」

 

「ま、まあすんなり受け入れそうだけどな」

 

「まあね」

 

 ダルケルとウルボザは苦笑しながら、プレミアとティアも、

 

「わたしたちはリンクのものです、ですから問題ありません」

 

「いや、その言い方まずいからね」

 

「? 事実だ」

 

 こんなことも出回れば、本当になにかことを起こすプレイヤーがいるかもしれない。

 

 いまだって、彼女たちのファンクラブ。または結婚の申し込みなど、彼らからすればふざけたことがあるのだから。

 

 プレミアとティアはともかく、レインは、

 

「彼奴とっちめて、この風評を消さないとッ」

 

「あーレイン、それ逆効果………」

 

 レインもお怒りで、フィリアがまあまあまあまあと落ち着かせていた。

 

 そして一方そのころ、黒猫と鍛冶師と《閃光》も、恥ずかしさの余り、これを書いたプレイヤー狩りを始めていた。

 

 攻略組やギルドで目立つ女性プレイヤーはしっかりとコメントが書かれていて、いま男性プレイヤー狩りが始まろうとしている………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「《黒の剣士》はどこだあぁぁぁぁぁぁ《圏内戦闘》じゃあぁぁぁぁぁ」

 

「ちくしょう、ちくしょう《亡霊》めッ」

 

「なんでこいつらばっか、ちくしょうがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「シリカたーーんーーーーーーー」

 

 外ではバカな男性プレイヤーが町中で獲物を構えながらうろついていて、キリト共々こそこそしていた。

 

 そして、

 

「よお二人サン、また珍しい組み合わせだナ」

 

 情報屋アルゴの下へと向かって、会っていた。

 

「アルゴ、良いから答えろ」

 

「この情報、お前がばらまいたんじゃないだろうな?」

 

 彼らはある種の信頼から、情報源を決めつける。

 

 だがそれに落ち着いてくれと言いながら首を振るアルゴ。

 

「やめてくれヨ。オレっちは裏付けもない情報は売らないゼ」

 

 だけどと、

 

「別にいいじゃないカ? モテるってことはいいことだロ?」

 

「いま町中で《園内戦闘》を完全無意味に仕掛けられそうになってるのにか」

 

「この悪質な情報をばらまいたバカは知らないか」

 

「その情報なら………」

 

「待て」

 

 喋り出そうとしたアルゴを手で止め、リンクが急に止め、静かに、

 

「まずその情報を誰に売った」

 

 その言葉を聞き、アルゴはしばらく黙り込み。金を受け取り、

 

「《閃光》」

 

 そして町中で悲鳴が轟く。

 

 すでに粛清が始まったようだ。

 

 どこからか悲鳴が響き渡り、キリト君はどこおおおおおと言う叫び声も聞こえた。

 

 彼はいま青ざめ震えあがり、これにレインの激昂した顔が過り、頭を痛める。

 

「………迷宮区に籠ろう」

 

「途中まで一緒でいいか」

 

 なぜか次は自分たちと思い、彼らは迷宮区にそれぞれ逃げ出した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ううっ………こ、これ、冗談とか思われてる? それとも本気? はふうぅぅ」

 

「きゅう」

 

「シリカもルクスも落ち着いて」

 

「店来たらとっちめてやるんだからッ」

 

 真っ赤になるルクスとシリカ。レインが燃える中、周りが落ち着かせていた。

 

 ミファーは少し恥ずかしそうにするが気にしていない。ゼルダは戦力を整えていく。

 

 そんな中、ユウキがやっとこの騒ぎに気づいた。

 

「? これのどこがダメなの?」

 

 そう首をかしげて聞いて来たため、場は少し停止した。

 

「えっと………」

 

 フィリアはゼルダが《閃光》に手を貸しに出かけていることもあり、正解を必死に考える。

 

 いまユウキの扱いを間違えれば、自分にもとばっちりだ。

 

「これはね、大好きは大好きでもね。だ、男性としての好きってことを言ってるの」

 

 さんざん悩んだ挙句、正直に話すことにした。

 

「………そうなんだ」

 

 ユウキのその反応に普通たとほっとするフィリア。

 

「ま、まあこんな情報、真に受ける男子なんていないから、心配しなくていいよ」

 

「あっはは、別にいいよ。ボクは好きだもん、リンクのこと」

 

 気にしてなさそうに言うユウキに、本当にほっとするフィリア。

 

「それじゃ、ボク部屋に戻るね」

 

「? うん?」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 部屋に戻った後、

 

「あれ………」

 

 ドキドキと胸が鳴っていた。

 

 顔が赤い気がして、リンクがこれを見てどう思ったか凄く気になる。

 

「あれ、あれれっ」

 

 その場に座り込み、だんだん心音が聞こえて来る。

 

 扉に寄りかかり、座り込む。

 

 頭の中で、ボス攻略戦などの戦うリンクがフラッシュバックしていく………

 

「なんで、なんでボク………あう……あうあう………」

 

 自分が抱く感情に戸惑いながら、ユウキは自問自答し続けた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 外周を囲む支柱みたいなところ、一人のプレイヤーが張り付いていた。

 

 迷宮区ではエネミーとプレイヤーがいるから、この辺りにいれば会う可能性は無い。

 

「ん?」

 

 張り付きながら、妙な気配を感じ、もうしばらくここにいようと決め込む。

 

 のちに、この記事を書いたプレイヤーは《閃光》たちによってとっちめられ、騒ぎになる。

 

 なお、情報を売った情報屋は最後まで不明………




どこのどなたが売ったのだろうね。

目立ちますがリンクは迷宮区で時たま見かけるレベルで珍しいものです。

それではお読みいただき、ありがとうございます。
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