正直、イライラしている。
だが切り替えてから、レインの店に行き、武器防具の整備を確認していた。
「どう? 新しいのは」
「………問題ない」
そう言いながら、もう街中でも全部武器定位置に置き、静かに考え込む。
「ったく……、ヒースクリフも余計なことを」
新たな攻略組として、情報が流れ、話題にされた。
「………」
武器を渡し、資金をちゃんと受け取りながら、仏頂面でレインが彼を見る。
「生憎と、まともに寝る時間だってここで過ごすときと、他人と飯食う時以外削った結果だ」
それに心配されていることを察して、目をそらしながら答える。
彼が言うのは嘘だ。明らかにそう分かる仕草に、彼女は悲しそうに、
「………死ぬよ」
「死なないよ」
そう言って出ようとしたら、バンッと前に現れ、壁を叩かれた。
「こっちが心配するって言ってるのっ! 良い加減にしてよっ」
「………レイン」
「わたし、あんたのこと気に入ってるんだよ? わたしの武器を色眼鏡無しで見て、気に入ってくれて………。もう馬鹿なレベリングしないで」
「………」
「このままじゃあの子、ユウキだって」
その瞬間、切り替わったように雰囲気が変わる。
レインはそれに、彼がユウキを特別視している。前々から少しばかりそれは感じ取っていたが、いまので確信した。
「………悪いな」
そう言って出ようとしたが、その腕を掴まれた。
「フレンド登録、しないと今度から倍価格」
「………」
渋々と言った様子で大人しくして、フレンド登録後、部屋から出る。
町の中、空を憎々しげに睨む。
「最悪だ」
◇◆◇◆◇
55層、荒れに荒れていた。
「アァァァァァァァァァァァ、アアァ、アアァァァァァァァァァァ―――」
頭が痛い、おかしくなるくらいに戦闘方法が駆け巡る。
目につくエネミーをただ最速で倒しながら、意味もなく暴れていた。
「アアアァァァァァァァァァァァァ」
手あたり次第にエネミ―を狩り、これはただの八つ当たり兼、俺の思考切り替えだ。
茅場晶彦がすぐそばにいた。
あれを殺させれば、ユウキを助けられたのに。
そう、俺は結局奴を殺す機会は無かった。だが頭の中で、それが微かに残る。
「くそがッ」
そう言いながら、最後の一体を斬り殺すと、
「!?」
「………」
ミファーが悲しそうにそこにいた。
◇◆◇◆◇
叫び声のように荒々しい声を出して暴れていた。
我ながら落ち着かず暴れ過ぎていて、やっと冷静に戻れたようだ。
「じっとしててください………」
「こんなの、自動回復スキルで十分だ」
「それでも」
回復アイテムが使われながら、大人しくしていた。
いまはその辺りの岩場に座る。ここは植物の少ない乾いた荒野、座る岩はその辺りにある。
「………あなたはなんでユウキを気にかけてくれるんですか」
「………」
危険なところを聞かれた。
前世の記憶から、彼女のことは知っていると言えばいいのか。
いや、もう理由は思い出せないくらいおかしいな。
「………別にいいだろ」
「否定はしないんだね」
「………」
やはり危険なところだった。
そして傷が癒えて、しばらく二人っきりになる。
「あの、私ここの薬草を取りに来たの。一緒に行きませんか?」
「………分かった」
頭が狂いだしている。いまは落ち着かせるためにも、一人は危険だ。
こうしてミファーともフレンド登録し、共にフィールドを歩く。
◇◆◇◆◇
しばらく頭を冷やすはずだった。
謎の奇声と悲鳴が聞こえなければ、
「これって?」
瞬間、静まり返った沸騰が再加熱した。
爆発的に壁を蹴り走り、完全にミファーを置いて行く。
流れる景色、遠のく声………
そして、
「っ!?」
流れる景色の先に獲物がそこにいた。
蹴り飛ばし、ギリギリで少々太った男がHPゲージが残り、キリト他一人のプレイヤーが麻痺状態でいた。
そして制服を見ながら、俺は頭を切り替える。
だが予測通りPKの現場であり、俺の怒りの吐口。
「んで、仲間同士のいざござにしては、悪趣味この上無いな」
そこにいたのは《血盟騎士団》のプレイヤーたち。PKを仕掛けたオレンジ含めて四名。その中に、
「お、お前っ」
彼ことキリトいて、そちらの方を見ると、彼はすぐに叫ぶ。
「彼奴が麻痺毒を俺たちに、解毒結晶を」
「ああ」
すぐに結晶をポーチから取り出そうとするが、すぐにオレンジプレイヤーが斬りかかる。
だが、
「遅い」
瞬間、その腕を斬りおとすように斬撃を放つ。
ポリゴンの腕が斬り落とされ、俺は驚愕する相手を見る。
元々取り出す気は無く、こちらへの誘発のために芝居だ。
「すまないが少し待て、取り出す時間が無い」
そう言い、剣を構え、静かに前に出る。
「き、みは」
「お、おま、くそが《亡霊》っ。こんな、こんなところでウロウロしてるんじぇねえよッ」
向こうは後ろに下がるが、武器を持つ手はいま斬り落とされ、別の武器は無い。
虚勢を張るものの、後ろに下がるしかできない相手に、消して逃さないように武器を構えた。
「生憎亡霊らしく、罪人でも狩りに来たかった。テメェ、オレンジギルドか」
ギルド《血盟騎士団》の制服だが、斬り込んだために、服の耐久性を斬り、あるエンブレムがあらわになる。
「そ、それは、ラフィンコフィンっ!?」
「ま、まさか。復讐の為にっ!? いや、そんな、クラディールっ!?!?」
そんな犯罪ギルドを聞いたような聞かなかったような………どうでもいい。
「ああうっさいうっさいうっせえぇぇぇんだよ脳筋がッ」
クラディールとか言われた男は確実にこちらを睨む。
「テメエの所為で計画がぶっ壊れだ亡霊ッ」
「だからどうした」
片手剣と盾を構え、静かにしていると、それに喉を鳴らして笑う。
「知ってるぜ亡霊。お前人殺せないよな~、そうだよなふつ」
その瞬間、斬り殺すように突きを放ち、それに反射的にどんなに無様でも避けた男。
クラディール。そう呼ばれた男は青ざめた顔でこちらを見ていた。
「な、なん」
「………リンク?」
「………ははっ」
その時の俺は、
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――」
おかしなくらい笑った。
「どーせテメエは仲間から俺が殺しはしないとか聞いてるんだろうが、テメエは殺しはするんだろ? ならされない道理はどこにある?」
「お、おま、お前」
殺される、そう思ったのだろう。
彼はすぐに尻餅を付き、下がる。
「お、お願いしますっ。死にたくないんですっ、も、もうこれ以上のことは、お願いしますこの通りッ!」
そう言い命乞いする中、俺は静かに構えを外し、
「あめぇぇぇぇぇぇんだよ亡霊ッ」
瞬間、落ちていた剣を拾い、斬りかかるそいつに、
「どっちが?」
カンッと言う音と共に、そいつの武器が弾かれ壊れ、その顔に盾で吹き飛ばす。
「俺が殺しをしなかった理由を教えてやろう。子供が側にいたから、それだけだ」
吹き飛んだそいつは、また自分が騙されたことに気づいているのだろうか? いまはどうでもいいことか。
そう言い放ち、静かに俺は歩き出す。
「ま、待ってくれっ。い、いまの、いまのも魔がさしただけですっ」
「二度目の不意打ちか。古典的過ぎてもう笑いすら起きない」
オレンジをいくら攻撃しても、オレンジにはならない。
なら………
その時、一人の女性が駆け寄ってきた。
「リンクっ!?」
彼女が現れたとき、俺はふとっそちらを見た。
その瞬間を逃すほど、彼は弱くない。
隠し持っていたのだろう短剣を取り出し、最後の隙を突く。
向かってくる白刃に対して………
「だから笑えないっての」
見ずにそう言い、その腕を掴み、体術で投げ飛ばす。
地面に激突する瞬間、彼は起き上がるがレッドゾーンの自分のHPを見て愕然となると共に、
「解毒結晶」
ゆっくりそう言いながら、手の中のそれを見せつけながら使い、消える様子を見せた。
キリトたちがすぐに起き上がり、回復結晶をレッドゾーンの男に渡す。
「君は」
「………ミファーがいるから殺さない」
そう静かに言い、回復した彼らに囲まれ、クラディール。ラフコフのメンバーは捕まった。
だが、
「………いなかったら、な………」
その言葉がそいつの精神HPをゼロにはした。
◇◆◇◆◇
「疲れた」
現行犯の男は町に完全に意識が消え、結晶で牢獄に送り終えたあと、残ったメンバーで詳しい話などするため、町まで戻る始末。
どうやらキリトの入団テストだが、こんな事態では日を改めるか、もういいかのどちらからしい。俺には関係ない。
頭が痛い。
もうイライラしているのか、なにがしたいか、分からない。
どこか宿でも取り、休むとするか。
ギルドのいざござの後始末を終えて、静かに帰ろうとしたとき、
「リンクっ」
そう、あの声、
(………まったく)
どこかこの声に安堵している。
この声を聞くたび、何かが壊れる。それか、直るのだろうか?
「ユウキ」
嬉しそうに駆け寄るこの少女。
なんだおれ………
なにが目的だっけ?
やはり思い出せない。
思い出せないが、
「つっかまえたっ♪」
そんな笑顔のユウキに捕まった。
◇◆◇◆◇
「ラフコフの生き残りね、大変だねどうも」
ギルド《トライフォース》。今回ミファーからオレンジの件を聞く幹部たち。
「まあね。それで《黒の剣士》と《閃光》。あとはリンクは」
リーバルたちがいる中、彼がそう訪ねた。ミファーからの報告を受けるゼルダは、
「ここの一室をお貸ししました。いまは休んでいます」
「ま、まさか気が狂っていたなんて。やっぱり僕、彼嫌いだよ」
「リーバルっ」
「ウルボザやダルケルはいいのかい? ユウキが彼の傍にいて」
ゼルダの静止を無視し、リーバルはそう言うが、ダルケルは腕を組みながら髭をさする。
「俺は、どっちかと言えば、ユウキが彼奴を引き留めてる。そう感じるな」
「まあ、あんたは見てないけど、今日の彼奴の顔は、そういう顔だったよ」
「ふ~ん、ま、保護者がいいならいいけどね僕」
そして彼は久しぶりに休んでいる。
それを考えていたゼルダは、ドアがノックされたことに気づき、中に入れた。
そこにはプレミアとティアがいて、彼女らは
「リンクは」
「いま部屋で休んでいます」
「ならわたしたちも」
「ダメですよ、一緒に寝たら」
そんなことを話しながら、ユウキもはしゃいでいるところがあるから、注意しないといけない。
さすがに一緒は無いが、朝早く行きそうだと、ゼルダはため息をつく。
◇◆◇◆◇
眠る彼は死んでいるかのように眠っていた。
やはりと言うか、プレミアたちだけでなく、ユウキまで我が儘を言う為、ミファーが心配して様子を見る。
顔にかかる金髪を少しだけ払い、その様子を見た。
きっと優しいのだろう。
自分が着た途端、冷静に戻った。そんな様子だ。
「………」
眠る彼を少しだけ見続けると、少しだけ胸の奥が暖かくなる。
それにはっとなり、このままいる訳にはいかないため、少し頬の赤い彼女はすぐに部屋を出ていく。
彼は眠ったままだった
◇◆◇◆◇
一週間後、俺は引き止めるユウキたちから逃げて、迷宮区を根城にしていた。
俺は相変わらず、迷宮区を根城にしているのが性に合う。
だが、
「メッセってこんなに多いもんなのだろうか」
ユウキ、レイン、ルクス、ゼルダ、ミファーからメッセが酷く届く。
キリトにメッセの数はどんなん?と言うのを送ってみる。なんのことだと返ってきた。
ユウキはアスナとも仲が良いから、察してほしい。なにがにあの後、メッセし合う仲なのか。
「………最近、切り替えが緩い」
戦闘の思考、相手に対する思考、日常の思考。
切り替え切り替え切り替えていたそれらが、最近がたつきが目立つ。
(これが勇者じゃない偽物の限界か。笑えねえ………)
勇者じゃないくせに勇者を望んだ者の末路は、きっと異常者だろう。
これが終わったら、俺はどうしようか。
ん?
終わりはどこだ?
目的はなんだっけ?
「笑えない………」
なんでここにいるんだっけ?
何のために力を得たんだっけ?
「………あそこに行くか」
そうこうしながら、俺はある場所に出向いた。
◇◆◇◆◇
そこは『生命の碑』。プレイヤー全ての名前が刻まれ、横線の数だけ死亡者がいることを現す。
「………」
ここにいるのは死んだ者たち。
もしかすれば助けられた者たちもいるだろう。
(果たして俺は正しいのかどうか)
そう、俺は転生者で、なにかしら行動できたのではないか?
「………俺は正しいか」
夢を見た。
また彼と戦う、または彼が戦った者たちとの戦い。
闘争の中で、何度死を体験したか分からないが、もうなにがしたかったか分からない。できることはしたはず。
だから?
分からない答えの中、俺は時々見に来てはぼーとしていた。
そうしていると、
「リンク?」
「? キリト、アスナに、誰だ」
そこにいたのは小さな、小さな少女と、女性プレイヤーだった。
まあ厄介ごとかと、内心ため息をつく………
ユウキの笑顔が、彼の救い………
お読みいただきありがとうございます。