ユウキの勇者   作:にゃはっふー

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第14章・意地

 ギルド《アインクラッド解放軍》は内部分裂しかかっていた。

 

 元々大勢のプレイヤーで安全にプレイするための集った集まりだが、リーダーが放任主義のこと、多くのアイテムの秘匿、横流しなどが相次ぎ、主導権を失い始めた。

 

 その中で『キバオウ』と言うプレイヤーが自分と共感する幹部を纏め、治安維持と言う名の恐喝行為を初め出す。

 

 だがそれらは全て、アインクラッドから解放すると言う意味であり、備蓄を集めるだけではダメだった。

 

 つまるところ、実績が無い組織に貴重なリソースを提供できないと言う声を抑えきれなくなってきたのだ。

 

 彼らは一応、攻略組として活動していたが、25層で方針を変えて最前線に出なくなった。

 

 だから一部の恐喝紛いのことをし続けたツケを払う声が高まる。彼らの次の方針は治安維持と組織強化だったが、治安維持は《トライフォース》がすでに行っていたため意味はなく、もう抑えきれなくなったようだ。

 

 故に、前にあったボス攻略戦の強行だが、それは一歩間違えは無惨な結果になると言うもの。

 

 それらを大手ギルドであり、自分らと同じ主義でありながら、確実な成果をたたき出す《トライフォース》に凶弾され、本来のギルドリーダーが力を取り戻し始め、彼の力が徐々に失われ始めてきた。

 

「それでこの、隠しダンジョンにギルドリーダーを騙して、丸腰で転送か。んなことしても《軍》が終わるだろう」

 

 キバオウと言う男は、隠しダンジョンの情報を隠し持ち、結晶アイテムを使用して、丸腰のギルドリーダーをこのダンジョンの奥へと監禁した。

 

 だがそれは悪手である。

 

「はい。あなたの言う通り《トライフォース》と言う、はっきりと実績を持つギルドに何度も忠告などの警告を受けてます。すでに多くのプレイヤーから見放され始めているいま、意味のないことです」

 

 それでも《軍》があったのは、多くのプレイヤーを抱えていることと、いま丸腰で危険地帯の唯一の安全地帯にいる『シンカー』の人徳だろう。

 

 それが無くなれば、ゼルダは躊躇いも無く《軍》を潰す。

 

 彼女は少なくてもその辺りはしっかりしている。治安維持、組織の強化、ちゃんとした実績。

 

 数しか取り柄の無い組織と、他組織と繋がりをちゃんとしている彼女らでは天地の差。

 

 彼女がこのことを知れば、キバオウ一派は、全SAO組織によって潰される未来しかない。

 

「また敵か」

 

 そんな話を聞きながら、その隠しダンジョンへ救出隊として出向いている。

 

 新たなエネミーにすぐに動く。

 

「ハッ」

 

 現れた敵は瞬間、抜刀で切り裂き、中にはこの一撃でポリゴンに変わる。

 

 それで無事でも、キリトの《二刀流》がすぐに消す。

 

 このような作業に、アスナが心底、

 

「貴方のソロとしての強さは」

 

「初撃投擲のブーメランか抜刀によるファーストアタック。次に片手盾、暗黒、二刀流のどれかにする。周りが囲まれていたら槍で薙ぎ払う」

 

「ソロとしてすでにそんな流れが」

 

 アスナが驚く中、その中で一人、アスナとキリトから離れたくないがためについて来た少女が微笑む。

 

「お兄ちゃん、強い」

 

「パパも強いぞっ」

 

 その子は『ユイ』と言うが、少しおかしい。事情があるのだろうから、いまは深く聞かない。

 

 ともかくここは隠しダンジョン《黒鉄宮》。

 

 キバオウが独占しようとした隠しダンジョンだが、レベルが高く断念していたところを利用したらしい。

 

 出て来るのも、高レベルだが、

 

「しゃがめ」

 

 その一言で槍を取り外し、周りに光の軌跡を作り、薙ぎ払う。

 

 それに《二刀流》が追撃したり、キリトだけで対処したりと、

 

「………やっぱり、あなたとキリト君が組めば、100層も夢じゃないかも」

 

 アスナが不意にそう呟く。

 

「買い被るな」

 

 そんな様子に、まだ会話をする余裕はある。

 

 アイテムもドロップする中で、キリトが《スカペンジトードの肉》をアスナに捨てられ、ユイちゃんと『ユリエール』さんが苦笑してしまう。

 

 その様子に、少し驚く。

 

「な、なあリンクっ。リンクもドロップしただろ!? カエルの肉っ、意外とうまいんだって」

 

「絶対に調理しませんっ、あなたも捨ててくださいっ」

 

「い、いや、その前に………。お前ら《結婚》したのか」

 

 それは《結婚システム》。相手のアイテムストレージ共有やステータスを確認できたりする。

 

 相手がプロポーズメッセージを送り、受託すればいい。

 

 つまりはそう言うことだ。

 

 二人は赤くなり、ユイちゃんが、

 

「パパ、ママ、トマトみたいっ」

 

 こうして何とも言えない中で、先に進む。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ユリエールのフレンドマーカーを確認して奥に進むと、

 

「安全地帯の光」

 

「プレイヤー一人、グリーンだっ」

 

「シンカーーーー」

 

 キリトは索敵スキルで確認し、ついに走り出すユリエールを追う一行。

 

 その先に一人の男性プレイヤーがいた。

 

 間違いなく安全地帯らしき場所で、

 

「ユリエーーーールっ、来ちゃだめだっ」

 

 その時、俺の世界はスローに入る。

 

(フッ)

 

 彼女を捕らえるは、黒いボロボロのローブを纏う、大剣使い。

 

 その一撃が彼女を狙って振り下ろされるが、そこにタックルの応用で、ホルダーのまま槍を突き放ち、防ぐ。

 

「ぐっお」

 

 だが受け止めた剣撃はかなり重い。

 

『………』

 

 ただ無言の剣士に対して、静かにホルダーから槍を取り出し、なにがなんでも振り下ろされてはいけないため、無理矢理にでも剣を弾く。

 

「セイッハッ!!」

 

 吹き飛ばすと、黒いそれは一気に距離を取り、大剣を軽々と片腕で持ち、明らかにシステムによりカバーされたエネミーだ。

 

 だが次の瞬間、槍が耐久性が消え、ポリゴンの塵へと変わる。

 

「なっ、耐久性はまだあったはず」

 

「急いでユイちゃんと共に安全地帯へっ」

 

 アスナの指示でユリエールはすぐに我に返り、ユイちゃんを連れて安全地帯へ。

 

「キリト、こいつ」

 

「ああ、かなり危険だ。俺の識別スキルでもデータが見えない。たぶん、強さ的には90層クラスだ………」

 

 死神のようなそれはすぐにこちらへとタゲを取る。

 

 獲物は両手剣、ボロボロの布を巻き、全身を覆う死神のような姿。

 

 すぐにするべきことを考える。

 

「………キリト、アスナと共に結晶で帰れ」

 

「!? なにを」

 

「あの子を置いていく気かっ、お前ら二人は邪魔だ。俺が一人で戦う」

 

 それが一番のベストだと、俺の選択肢が言う。

 

 ここでこのメンバーからゲームオーバーを出すわけにはいかない。

 

 なにより、俺自身がソロ活動が長い。一人で十分対処できると考え至る。

 

「バカなことを言わないでくださいっ」

 

「バカ、バカか。んなもん、このゲーム始める前からだッ」

 

 その瞬間、俺は返答を待たず、大剣使いへと斬り込む。

 

 相手の両手剣、俺でもそんな速さでは無い。細剣並みの速さで振るわれるその一撃を、

 

(切り替えろ)

 

 瞬間、全体のスピードが遅くなる。

 

 この程度の死は慣れた。

 

 そして、

 

「デッヤアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――」

 

 金属音が鳴り響きながら、この場にくぎ付けにする。

 

「凄い」

 

「これが、トップレベル………」

 

 脳が壊れるほど使用し、視界から、全ての情報を読み取り対処する。

 

 見るだけでは足りない。

 

 音もニオイも肌で感じる風ですら全て利用しなければいけない状況。

 

 慣れていた。

 

 一瞬一瞬、停止してスローモーションになる攻撃の対処。

 

(大剣以外じゃ、耐久力を考え盾しか防げない。相手の仕方はダークなどの人物戦でボスクラス。キリトはアスナ共々安全圏近く)

 

 僅かな剣に映る後方を確認し、二人の位置を見ながら、大剣で凌ぐ。

 

 大剣を弾き、片手剣がその喉元を捕らえる。

 

(この一撃を食らわせて、のちに安全圏へ)

 

 そう思っていた瞬間、フードから紫色の髪と、

 

「ッ!?」

 

 もう涙が枯れ果てた女性の人型がそこにいた。

 

 泣いている人間との戦闘に、俺の思考が疑問に止まる。

 

(しまっ)

 

 世界の速さが元に戻り、大剣がえぐり込まれ吹き飛ぶ。

 

「リンクさんっ」

 

「リンクッ」

 

 吹き飛んだ瞬間、完全にレッドゾーンまでHPが削れた。

 

「逃げろバカッ、早く」

 

 そして身体を起こすとき、着ている防具もホルダー全て、短剣までポリゴンの塵へ変わる。

 

 大剣も転がり落ちて、すぐに周りを確認する。

 

 安全圏に全員いて、その間に彼女がいて近づいて来た。

 

「………ははっ、笑う」

 

 手元の武器は刀だが、受け止めたりすれば必ず壊れ、そのまま斬られるだろう。

 

 もう手段が思いつかない。

 

「笑えるかっ、いますぐい」

 

「来るなって言ってるだろキリトッ、アスナやユイを置いていく気か」

 

「ッ!?」

 

 悲痛な顔が見えた。

 

 だけどそれ以上に、

 

『………』

 

 俺よりも酷い顔の少女がそこにいた。

 

 ローブの隙間から覗く顔は涙は枯れ切った目で、薄紫の髪もボロボロだ。

 

 僅かに口が開き閉じる。いまから俺を倒すと言うより、殺される少女のような顔。

 

「………お前」

 

 酷い顔だ。この顔は知っている。

 

 あの体験の中で見た。

 

 絶望に泣いている者の顔。

 

「………」

 

 その時、ある少女の顔が過る。

 

 病気に苦しみ、それでも生きた少女。

 

 俺の目的はなんだっけ………

 

 息を吸い、吐き、静かに構える。

 

 俺は勇者では無い。

 

 無いが、

 

「助けてやるよ」

 

 僅かに残る武器は心もとないが、唯一残った刀を構えた。

 

 その言葉に、僅かに目に光が差し込んだ気がした。

 

 だがすぐに消え、大剣を構えた。

 

「………行くぞ」

 

 瞬間、激突する剣舞の中で………

 

 ――助けて――

 

 攻撃を受け流すように捌きながら、声が聞こえた気がする。

 

 だから俺は思いを込めて、斬り込む。

 

 ――助けてみせる――

 

 ――無理だよ………もう消して、私を消して……お願いだから――

 

「断るッ」

 

 キィィンッと言う音と共に大剣と刀が激突する。いつ砕けてもおかしくない。

 

 だが、彼女へ迫るようにつばぜり合いする。

 

「俺は死ぬのも死なれるのも願い下げだ」

 

 ――貴方は………――

 

「それだけは変える気は無い、変えてたまるかッ!!」

 

 止まらない、一撃と回数が足りなければ終わる。

 

 死ぬ。

 

 本当に俺は何をしている。

 

 俺はなんだ?

 

 答えが欲しい。

 

 だからこそ………

 

 瞬間、またあの笑顔が頭を過ぎる。

 

(………はは)

 

 剣をバク転で避け、剣に向かって、ソードスキルを構える。

 

(これが偽物の意地だ)

 

 叩き付けるように刀が激突した。

 

 折れた刃先が俺の真横を回転しながら通り抜き、手の感覚が消える。

 

 そして振りかぶる彼女を見ながら、

 

「………たすけて」

 

 初めて彼女の口かそれを聞き、

 

「ああ」

 

 即座に足元に転がる両手剣を足で蹴り飛ばす。

 

「………ぁ………」

 

 その勢いで浮いた大剣を掴み、

 

「デエェェェェェェェェェェェェ―――」

 

 スキル《暗黒剣》が輝き、大剣同士が激突した。

 

 粉々にお互い砕け散る両手剣。

 

 武器破壊。本来エネミーでもあり得るかと言えば、あるかどうかわからない。

 

 だが彼女はどこか違う、それに賭けた。武器が先に壊れる。一か八かの賭けに、俺は勝った。

 

 その光景に、解き放たれたように微笑む彼女を抱き止め、静かにその顔を見る。

 

「大丈夫か」

 

「………」

 

 彼女の瞳から、一筋の涙が流れる。

 

「………思い出した」

 

 そうユイちゃんが呟くと共に、戦いは終わる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その後ユイちゃんに言われるがまま、とある立方体、コンソールに彼女を近づかせ触れさせた。

 

 いまはもう大丈夫と、シンカーたちは帰して、いま詳しい話を聞く。

 

「アタシ………、そう、システムから解放されたんだね」

 

 目を覚ました彼女、彼女たちは《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》と言う存在。

 

 一号のユイ、その次に『ストレア』として活動する、はずだったらしい。

 

 だがカーディナルが突如予定にない命令を下したため、プレイヤーのメンタル状態のモニタリングすることになる。

 

 その命令はこのゲームが始まった時、茅場がGМ権限で使用した可能性がある話。

 

 命令内容はプレイヤーへの干渉禁止。

 

 その結果最悪な事態へと変わる。彼女たちはプレイヤーのメンタルケアが目的と言うのに、彼らに干渉してケアできず、ただ絶望、恐怖、怒りの感情を見続けた。

 

 義務だけがあり権利が無いエラーだけが貯まる彼女たちの中、ストレアは、

 

「アタシはその中で一番エラーが貯まり、カーディナルに何度も命令の撤回を申請し続けた。そんな中、ここ『ソードアート・オンライン』のコンソールの警護を強制的にさせられた」

 

 ご丁寧に事件当日ログインしなかったプレイヤーの未使用アカウントを使用し、新たなシステムとして、緊急アクセスの為のコンソール警護させていた。

 

 それでもエラー、本来の役割をしながら。

 

 そしてユイちゃんもまた限界が来ているとき、キリト、アスナと言うプレイヤーたちの触れ合いに魅かれ、彼女たちに干渉したいがため、壊れた状態で実体化したらしい。

 

「ストレア、他の子たちは」

 

「………アタシたち以外のプログラムはすでにエラーが貯まりすぎて、カーディナルにデリートされてる」

 

「そうか………」

 

 そしてユイちゃんの願いはパパとママの側に居たい。

 

 だがもう終わりと告げる。

 

「なっ」

 

 カーディナルに放置されていたプログラムだが、ストレアの件もあり、二人はエラーとして処理される。

 

「リンクさん、ストレア、妹を助けてくれてありがとうございます」

 

「なにをバカなことを言うっ、ふざけるなカーディナルッ」

 

「もういいんだよ……。最後に、貴方たちのようなプレイヤーと触れ合えて、アタシたちはもう」

 

「ユイちゃんっ」

 

 消え去ろうとする二人に、キリトと俺はキレた。

 

「カーディナルッ、いつもいつも思い通りなると思うなッ」

 

「キリト俺が専門だっ、だが要領を考えてお前も待機しろっ。二人のデータを俺たちのクライアントプログラムの環境データの一部、二人をシステムから切り離す。ローカルメモリに保存する」

 

「分かったっ」

 

 そして消える前に彼女たち、キリトがユイちゃん。俺がストレアの心を手に入れ、プログラムから切り離した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「………二人とも間に合ったし、俺の装備全壊以外万々歳か」

 

「悪い、君だけに任せて」

 

「気にするな」

 

 これからしばらく前線には出れそうにないが問題ない。

 

 キバオウとか言う一派の問題も解決し、全ての問題が解決したのだ。

 

「レイン、俺の武器一式を頼んでる鍛冶師に、ここで手に入れた鉱石素材で武器一式を頼んでくるよ。ホルダーも新調しないと」

 

「少しアイテム交換しようぜ。こっちは武器も防具も新調しないからな」

 

「ああ、なにがいい」

 

「できれば」

 

「キリト君?」

 

 アスナの睨みに、すでに尻に敷かれているキリトを見る。

 

 そんな会話をし終え、俺はレインに頼み込むために、彼らと別れた。

 

「………はあ」

 

 空を見ながら、ただ思う。

 

「どーにかしたぞ、勇者『リンク』」

 

 そう宣言したが、彼はなんて言うか分からない………




ほんの少しの小さな意地。

お読みいただきありがとうございます。
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