ユウキの勇者   作:にゃはっふー

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やはりこの物語はALOだけにしようと思います。

それではどうぞ。


第19章・世界樹

「色々あった」

 

「聞きたくないな」

 

 ミファーはユウキの側でダイブし、俺はゼルダの大屋敷で部屋を借りてログインしている。

 

 故にゼルダ家の捜査状況は報告されるのだ。

 

 ともかく内容からしてまずは、

 

「………僕らの方で調べたんだけど、やっぱり黒か」

 

「マジでか」

 

「正直ブランクあるから、偽情報かなって思うくらいに。もう強行してもいいんじゃないかって」

 

「それは」

 

 少しばかり焦りすぎている。まあ向こうも分かっているようだ。

 

「分かっているよ、強行すれば約300人のプレイヤーはログアウトできなくなる可能性があるからね」

 

 リーバル、ウルボザ、ダルケル。そしてゼルダの父親は苦々しい顔をしていた。

 

 そう、現状場所が分かっても、決定的な証拠が無ければいけないし、なにかしら動けば警戒され、その分彼女たちの危機に繋がる。

 

 ゼルダは金目的だから、他のプレイヤーより安全かも知れないが、そんなことは関係ないのだろう。優しそうだからな。

 

 ともかく決定的で、主導権をこちらで握らなければいけない。

 

 その為に彼らは現実でゼルダ救出のために動いていたら、

 

「もう総合電子機器メーカー『レクト』のフルダイブ技術研究部門で、SAOサーバーの管理人。んで調べてみたらまっくっろけっけ」

 

「面白いくらいに裏の、フルダイブ技術で人の感情、記憶、意識をコントロールできるかって研究内容らしい」

 

「しかもアスナちゃん、この事件の切っ掛けの子ともこのまま意識が取り戻さなきゃ、彼女の裕福な家の養子縁組になる予定」

 

「聞いていて吐きたくなる」

 

「無理に詰め過ぎたわけじゃないね」

 

 いまは食事を取り、フルダイブ時間を伸ばす準備をしていた。

 

 だがそこまで黒なら、

 

「後はゲーム世界だけど、あのゲーム《グランドクエスト》はクリア不可能かも知れない。その理由は」

 

「転移させたプレイヤーの管理か、そっちも聞いたよ。まあ協力者とか出たからいいけど、目的は忘れてないよね」

 

「キリトが一番よく分かってるよ」

 

 それにリーバルも何も言わなくなり、いま《世界樹》の町にいる。

 

 そして食べ物を詰め込み、時間を見る。そろそろみんなと合流か。

 

「ゲームでもしも問題が起きたら、君たちのことは任せてくれ。私が責任を取る」

 

 ゼルダの父親がそう宣言してもらい、それに静かに頷く。

 

「そうならないように、まずは潜りますよ」

 

 そしてミルクを飲み干して、ログインするために退室する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトたちと別れていた、あの後キリトがかっこよく大金をケットシー・シルフ連盟にプレゼントして、金が無いため安宿をリーファと共に借りているはず。

 

 広間でユウキ、ミファー、そしてピクシー三人。後はキリトたちを待つ中、ストレアがにやにやとしていた。

 

「リーファ、キリトのことが好きなのかな?」

 

「キリトにはアスナがいるだろ、まあよく分からない」

 

「えぇ~リンク、そゆとこちゃんと分からないとモテないよ~」

 

「そうですね、少しは周りを見てくださいね」

 

 そんな中、キリトたちがやってきて、すぐに行動に移る。

 

 町の中は中立地区らしく、色々なプレイヤーがいて、そして、

 

「あれが《世界樹》」

 

 巨大な巨木があり、設定ではあそこに妖精王と、無限に空を飛べる妖精がいて、最初に謁見した種族を仲間に転生させる。

 

 キリトが俺を見て、木登りできないかと、SAOで外周の支柱に上ったことでも思い出したのだろうか?

 

 結局それも侵入禁止エリアの為できず、飛んでいても飛行限界でダメ。

 

 ここに来る切っ掛けになった、数珠つなぎになって肩車して、枝まで届きそうになった話があるが、GМがすでに手を打ってそれも不可能になった。

 

 根元まで近づいたとき、四人のピクシーが反応する。

 

「どうした」

 

「リンク反応だ、この先にいる」

 

「それは」

 

「ボクらで反応するプレイヤーって」

 

「ゼルダさんとママですっ」

 

 それに全員が一斉に木の頂上を見たとき、一人の男が飛び立つ。

 

「ばっ、あのバカはッ」

 

 急いで全員が飛び、キリトを追う。

 

 雲海を越えて、木の枝に近づいたとき、システムの壁がプレイヤーを阻む。

 

「くそっ、俺は行かなくちゃいけないのにッ」

 

 後ろからキリトを羽交い絞めにし、飛行時間を俺が肩代わりする。

 

 すぐに意図に気づき飛行をやめ、何度もシステムの壁に触れ続けるキリト。これだけじゃだめだった。

 

「ユイちゃんストレアプレミアティアっ、警告モードで呼びかけて見てくれ、もしかしたらなにか反応があるかもしれない。なんでもいいからゼルダたちにこっちのことを伝えたいっ」

 

「はいですっ」

 

「分かったよっ」

 

「任せてください」

 

「分かった!」

 

「キリト、俺にしがみつくなりして飛行時間を稼げッ、いざとなれば蹴り飛ばしてもいい」

 

「おうッ」

 

 こいつ迷いなく言いやがった。まあいい。

 

 こうして長く空に留まろうと、躍起になっている。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 途中で落ちてしまった、野郎マジで蹴り飛ばして少しでも時間を稼いだ。

 

 最悪の落下だけは、ユウキとミファーが支えてくれて助かる。

 

 しばらくして、キリトがすぐに落ちて来た。

 

 それにキリトはすぐに、話しかけて来る。なにかあったようだ。

 

「みんな聞いてくれ、アスナが俺たちにシステム管理用のアクセス・コードが渡された」

 

「マジか!? ストレアっ、コピーしてそれをリーバルさんに。もしかしたら外で必要になるかもしれない」

 

「分かったよ」

 

 作業内容を聞き、ユイちゃんがすぐにストレアとやり取りを始める。

 

 ユイちゃんを通して、カードキーをコピーしリアルの方に転送する中、すぐに、

 

「キリト、これからは」

 

「リーファと別れて、俺たちで正門から入る。彼女とはもう話を済ませている」

 

 それを聞き、キリトがかなり急ぎ過ぎているが、下手に慌ててない分、逆に扱いづらい。

 

 冷静なのはミファーとユウキか。

 

「大丈夫でしょうか、話を聞く限り、四人だけでは無謀です」

 

 ミファーの言う通りだ。一種族一丸で出向き、それでも攻略されない内容に挑むのだ。ケットシー・シルフの連合を持つのも手だが、それも時間が惜しい。

 

 そう考えていると、僅かに笑うキリトがいた。

 

「別に命が取られるわけじゃない、それにいまこうしているだけで発狂しそうなんだ。頼む、止めないでくれ」

 

「………誰が止めるかバカ」

 

 今回ばかりは仕方ない。

 

 時間が惜しい。向こうが動いたことは、下手をすればなにか動きか変化があったのかもしれないのだ。

 

「行こう」

 

 ユウキの言葉に、全員が頷き、正門から堂々と殴り込む。

 

 そして入り口に来ると、クエスト発生と確認ボタンが出て、さっそく受託し、中に入る。

 

 ドーム状に広がる、無駄に長い白い空間。

 

 樹の内部はその根か蔦の床、半球形のドームとなっている天幕では、ステンドガラスのような入り口らしきものが、

 

「行くぞっ」

 

 キリトが先走り飛び上がり、ユウキが続くが、

 

「ユウキは俺らが落下したら回収、ミファーは下で回復待機ッ。これはキリトを先に行かせれば勝ちだッ!」

 

「!? 分かったよっ」

 

「はい!」

 

 ここの勝利条件なぞ知らん、キリトを先に向かわせればいい。

 

 ユイちゃんが先ほど手に入れたものがある。安心して彼らを先に行かせられる。

 

 それにキリトに遅れて続くと、無数の騎士のような天使のガーディアンが次々と現れた。

 

「こいつは………」

 

 これは確かに過剰防衛過ぎると内心舌打ちした。

 

 だがキリトが咆哮するように先へ、先へと進む。

 

「ちっ、追いつかないッ」

 

 切り替える。

 

 幾万の魔物を殺し続けた戦士へと。

 

 魔なる生き物たちとの闘い、戦士たちと培った技術の粋を。

 

「スゥ」

 

 全て切り替え解き放つ。

 

 いまこの瞬間、ここは仮想世界では無い。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「凄い」

 

 卑怯とも言えるほど、タゲが一手に、戦闘を進むキリトのみに集中する。

 

 弓矢すら持つガーディアンがキリトを狙うが、

 

「セイハァァァァァァァァァァァァァァッ」

 

 剣で兜を貫き、それを投げ飛ばし、無理矢理槍や弓矢、キリトの死角から来る攻撃の盾にする。敵プレイヤーを盾にした戦法だ。

 

 何度か被弾する中、リンクは懸命にもキリトを先へと進めた。

 

 だが、

 

「ダメだよキリト……」

 

 それじゃダメ。

 

 リンクの動きなんて無視して進んでいた。

 

 いつまでもリンクに守らせてるだけじゃ、

 

「無理だっ」

 

 ユウキが悲鳴にも似た声を出した、だがキリトには、いまの彼には届かない。

 

 それでもリンクは、気持ちが分かる。

 

 大切な何かが手を伸ばせば届くのだから………

 

「全く………やるしかないよなアァアァぁぁァァアぁぁぁッ」

 

 狂ったように二人の剣士が空へと吠えた。

 

 目の前にいる敵を斬る者。それを利用し、仲間を先へと進ませる者。

 

 だが一人は我を見失っている。

 

「がっ」

 

 ついに矢が彼の足を貫き、天幕へと手を伸ばしたが届かず、彼は蘇生待ちになり、炎と化した………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 惨めだった。

 

「キリトォォォォォォォォォォォォ」

 

 無数の死角から、無限に湧くガーディアンの中、俺の残り火を掴み上げ、空へと吠える彼が眩しかった。

 

 時には全身を使い、バネにして貫いた敵を投げ飛ばし、手首を利用した剣捌き。

 

 彼だけがこの瞬間を、ただのゲームではない真剣な、あの世界のものとして捕らえて戦った。

 

 死んでもまたやり直せる? 笑わせる………

 

 彼の強さはなんなんだ。

 

 いまだ俺の炎を握りしめ、守るようにガーディアンの波を斬り払う彼の強さは、

 

(アスナも、ゼルダも彼にとってそれほど大切な人か?)

 

 違う。

 

 彼はなんで………

 

 その時、一人の風の妖精が現れてくれた。

 

「キリト君リンク君もうだめッ」

 

「チイィィィィィィィィィィィ」

 

 そう舌打ちしながら、エンドフレイム化した俺を渡し、肉壁のように連なるそれらを睨みながら滑空する。

 

 背後から呪詛のような魔法詠唱が聞こえるが、彼はガーディアンの残骸を投げ込み、盾にして防いでドームの外に出た………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「がっ、くっは」

 

「リンクっ」

 

「リンクさん!?」

 

「俺はいい、蘇生待ちのキリトを」

 

 だが蘇生アイテムは、

 

「私が持ってますっ」

 

 頭を押さえ、切り替わりの限界点ですぐに切り替え、沈静化を始める。

 

 ただひたすら敵を討つ状態はさすがにきつい。

 

 蘇生したキリトは、無言のまま、それでも静かに、

 

「ありがとうリーファ……。でも、もうこんな無茶はしないでくれ。俺は大丈夫だから」

 

 キリトはそう言い、全身から汗が出てきそうな俺へと近づく。

 

 いまのゲーム機器、アミュスフィアだったか。それならきっと、俺は安全装置で強制ログアウトするほど、心拍数は半端ない。

 

「リンク悪い、少しで良い、教えてくれお前の強さをっ」

 

 そんな俺の両肩を、必死に、すがるように掴むキリト。

 

「キリトさん落ち着いてっ、いまリンクさんはつか」

 

「それでもッ!! 彼の強さがいまは欲しいんだッ」

 

 止めるミファーを引き離し、彼はいまにも泣きそうな顔で、悲痛な顔で俺を見る。

 

 俺の強さ? なにバカなことを言ってるんだ。

 

「キリト、俺の強さなんて、お前はもう持ってる」

 

「システム的な意味じゃないんだよッ、あの場で戦い続けられたお前の、あの日々を戦い抜いたお前の強さが、俺が欲しいんだ………」

 

 絞り出すように声を出し、ふらつくように俺の両肩を掴み続けるキリト。

 

 その様子に誰もなにも言えなくなる。

 

「頼む、俺ができることならなんだってやる、だから」

 

「キリト落ち着けっ、いまのお前じゃ………だめだ」

 

 きっと無理だ。こいつは、彼はもう持っている。

 

 俺はただチートで手に入れた、生まれる前から付属される品物だ。

 

 なにもないところから勝ち取った彼に比べれば、いや違う。

 

 大切な者がかかるいまなら、必ず俺の先を行く。

 

 だけどいまは……… 

 

「無理でもやらなきゃ、俺は、俺はもう一度会いたいんだ……。もう一度………」

 

 そして、

 

 

 

「もう一度アスナに………」

 

 

 

 残響のように響く悲痛な声に、俺はなにも言えなくなる。

 

 俺が何か口にしようとしたとき、リーファの様子に気づく。

 

「リーファ?」

 

「………いま………いま、なんて……言ったの?」

 

「ああ………、アスナ、俺の探している人の名前だよ」

 

「でも、だって、その人は………」

 

 目に見えるほど動揺するリーファ。

 

 何がどうなっているか分からず、困惑する三人。

 

 そして、

 

「お兄ちゃんなの………」

 

 まるでそうあって欲しくない叫び声のような声に、キリトははっとなる。

 

「スグ? 直葉………」

 

 まるで全てに絶望したように、キリトを見るリーファ。それがどういう意味か分かるのに時間がかかった。

 

 だが世界は止まらない。

 

「酷いよ………あんまりだよ、こんなの………」

 

 彼女はログアウトを真っ先にして、キリトの叫びも届かず、彼もまたすぐにログアウトした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「………どっちが《亡霊》だか分からない」

 

「………」

 

 町のテラスで静かに妹を待つキリトに、俺はそう告げる。

 

 彼からリアルを聞かされた。

 

 十の時、自分の戸籍表示に抹消記録印があるのに気づいたらしい。人のこと言えないがどういう幼年期だ。

 

 それから兄妹、妹である彼女とのすれ違いが始まり、祖父が無理に剣道をやらせようとして、妹が自分の分も剣道続けるからと言ったり、自分はパソコンに逃げたりと。

 

 多くのことがあり、すれ違い、このような形で出会った。

 

「俺に言っても、リーバルさんたちに記録されてるからな」

 

「あの人は、からかうことはあっても、言いふらす人じゃないだろ」

 

 いまユウキたちは席を外してもらっている。

 

 俺とキリトはテラスで静かにしていた。

 

 空を見ながら、静かに、

 

「俺が強いと言ったな、俺は怖いだけだ」

 

「怖い………」

 

 それは本音だ。

 

 どれほど手を伸ばしても届かないものを、俺はたくさん体験した。

 

 勇者の輝かしい物語の裏、数多の血と涙があったことを、それでやっと知ったほど。

 

「俺がどれほど迷宮区のトラップを開放しても、俺がどれほど長くフィールドに留まろうとも、人の死は止められなかった」

 

 神様から優遇された分際で、なにもかも救えなかった役立たず。

 

 それが俺だ。

 

「………」

 

「だからこそ………届くものぐらいは伸ばしたい。死ぬのも死なれるのも嫌なだけだ」

 

「………」

 

「お前も持ってるはずだ、俺よりも。アスナがかかっているからこそ」

 

 そして静かに、

 

「俺は少しユウキたちと町を回る。少しでも装備を良くして、今度こそお前を空に届かせる」

 

「きみは………」

 

「俺はただ、できることをがむしゃらにするしかないから」

 

 偽物はそれくらいが似合いだ。

 

 そう思いながら静かに飛ぶ。

 

「《世界樹》の前で」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 偽物には意地がある。

 

 狂気に似た日々であった。

 

 終わらす気は無い、あれがあるから、助けられた命はあるはずだ。

 

 キリトの分もそろえ、静かにしていると、

 

「ねえリンク」

 

「どうした」

 

 ユウキ、ミファーたちみんなと共に回る中、ユウキが呟く。

 

「リンクはやさしいんだね」

 

 ユウキはそう微笑み、俺の手を握る。

 

「ボクね、リンクの手が暖かくって、優しくて、嬉しかった」

 

 そう言いながら、俺の手を両手で握りしめる。

 

「ボクの病気のこと、伝えるのが怖かった。だけどリンクは気にしないで触れてくれた。ボクの病気、あそこまで回復したの、実は最近なんだ」

 

「ユウキは真っ先に、あなたに会いたい。そうお姉さんやお母さん、先生にも言って、大変だったんですよ」

 

「ボクの手を握ってくれて……ありがと………」

 

 それは、

 

(………ああ)

 

 日向の中、輝く彼女は、俺の知る彼女だ。

 

 だが彼女の笑顔はまだ守れていない。

 

「………まだゼルダを助けていない」

 

 そう言い、その手を引き抜き、彼女の温度を感じた手を握りしめて、

 

「全て終わらして、みんなで会おう」

 

 俺はこの子のためなら、もう一度………

 

 この眩しい笑顔の為なら、もう一度地獄を見てもいい。

 

 勇者の偽物でもいい。

 

 だから………

 

 全てをまた、この瞬間に引きずり出す。

 

「うんっ♪♪」

 

 そう、彼女に誓いを立てた………




ユウキの勇者、再度黒の剣士と共に目指す。

それではお読みいただき、ありがとうございます。
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