一つ、キリトがサチが限界に来る前に、すでに黒猫団をやめた。
一つ、低年齢プレイヤーを助けるギルドの中にゼルダ、ミファー、ダルケル、ウルボザ、リーバル、そしてユウキがいる。
一つ、とある物語を始まる切っ掛けが無くなった。
一つ、シリカの物語に関わるリンクとユウキ。
それではどうぞ。
転移門から町に出向くと、シリカがフリーになり、パーティー勧誘しにすでに人がいたらしい。
問題になりかけたが、シリカが丁寧に断り、俺は気にせず、キリトは苦笑、ユウキも微笑む。
俺はいまは『ピナ』を蘇生以外に興味は無い。
「ともかく、明日ここに集合しよう。お互い確認したいことがあるはずだ」
「………君は別れるのか?」
「ああ、何か問題があるか」
「できれば打ち合わせをしたいが」
キリトがそう言うが、こちらはあまり関わり合いたくないのが本音だ。
「悪いがアイテムの整備もある。俺は場所を知ってるから問題ないよ」
「………そうか分かったよ」
「またねリンクっ」
「それでは、また」
詳しい集合時間などを決めて、すぐに彼らと別れた。
◇◆◇◆◇
記憶を思い出す、シリカは確かに好きなキャラの一人だ。リズは確認していて、他に《閃光》も確認している。
だが詳しい話は、すでに磨耗して思い出せない。
ただ『エギル』と『アルゴ』は会話したことがある、彼らは店と情報屋をしているからだ。
歯を食いしばり、無理矢理記憶を呼び起こそうとするが、できなくなった。
「………もう前世の記憶は役に立たない」
そもそもSAO編では無く、重点的に見たのはユウキの物語かその前だ。
書籍もユウキのところで止まっている。彼女の死は、それほどまで心に刺さった。
(考えないようにしていたが、ユウキのいまはどうなっている)
早い段階で彼女の病気は治る、もしくばだいぶマシになったニュースは確認した。
確かに重い病気なのは変わらないが、助かる可能性はある。
確認した。
確認はしたんだ
だが、していないところはある。
(姉と母親か)
同じ病気の二人がどうなったか分からないし、知らない。
いい気になっていたのか、救った気に。
内心舌打ちし、世界を睨む。
(もう茅場、確か《血盟騎士団》の団長か。いまから殴り込むか)
無駄だ、GМである彼が、自分がそう簡単に死ぬようになにもしてないはずがない。
何をしてキリトは彼の正体を暴いた?
その瞬間はある、それまで待つしかない。
だが、
「………準備はするか」
何かある、これは物語で描かれる話なのだから。
この記憶だけは利用させてもらうしかない。
ディアベルはいまギルド《円卓》と言う名で、攻略組であり、黒猫も念のため彼らが狩り場にしていた迷宮区の危険地帯は潰していたおかげか、キリトが復帰しても彼らは健在だ。
ベータだの《亡霊》だのどうでもいい。
死ぬのも死なれるのもごめんだ。
備える為、急いでアイテム整理に出かける。
◇◆◇◆◇
こうして彼らと共に、フィールドを進む。
道はキリトも知っているので、彼女たちを案内しつつ、レベルを上げさせた。
「きゃゃあぁぁぁぁっ!?」
「うへえ、気持ち悪いよお………」
「落ち着いて、そいつ凄く弱いからっ」
「………」
危険なところは投擲のブーメランで叩き、彼女らは確実にレベルを上げている。
その間もキリトの妹の話とか、ユウキも含め色々話をしながらだが………
一人我関せずを貫くプレイヤーがいた。俺だよ。
「あの、リンクさん。どうしてそんなに武器を」
「ああ。サブならともかく、少し多すぎないか?」
「この方が早いんだ」
「早い?」
だがそれ以上は答えず、会話をそれだけで終わらし、鉄製のブーメランだけで戦う。そんな中フィールドを歩く四人。
「助かりますキリトさん、みなさん、ほんと………」
「どうした」
「い、いえ。少し嫌なことを思い出して………」
それはあるプレイヤーが自分の、大切なピナをトカゲとか言ったり、酷いことを言うプレイヤーがいるらしい。
だが、
「………MMOだけじゃなく、プレイヤーはたいてい、キャラを作る。自分をそのまま投影する奴はいない。最初の町で女性プレイヤーが男性になったことがあるだろ」
「はい………」
キリトの言葉、当日のことは二人とも思い出したくない情報、少しうつむくが俺が続けた。
「なによりこの状況だ、みんな仲良くゲームクリアを目指せればいいが、死にたくないし、戦えない奴もいる。そんな中、誰かを蹴落としてもキャラを強化したい奴も出る」
「それは………」
「なにより、人が死んでるかはっきり分からない以上、もう自棄になったりしてオレンジになる奴や、言い訳する奴も出る」
「………」
二人そろって脅し過ぎたか? いやそれでいいか。
キリトもなにか言いかけたがやめて、このまま続けた。
「一つはっきり言えるのは、このゲーム、ゲームクリア以外ログアウト不可であり、プレイヤーは………死んでるんだろう」
そうでなければ、このゲームは後から誰かがログインしている。あまりに酷いドッキリだ。
何より、前世の記憶から、被害者は出ているとはっきり分かっている。
それが、このゲームの事実だ………
◇◆◇◆◇
丘のところ、情報ではここのはずと思っていると、それらしいアイテムがあって、シリカが手に取る。
「シリカ、それは《プネウマの花》か」
「は、はいっ」
「なら後は心アイテムにその花に溜まる雫を振りかければいい。ここはエネミーがいる、町に戻って行うぞ」
「はいっ、ありがとうございます、キリトさん、ユウキさん、リンクさんっ」
「ははっ、ボクもピナを助けたかったからいいよ。それじゃ町に」
「ああ町に……、そこにいる奴、出て来い」
キリトもすぐ構える中、人が隠れられる場所を睨む。
その時、物陰から一人の女性プレイヤーが出て来る。
「あなた」
「シリカの前のパーティーの」
ユウキが驚きながら、俺は思考する。ここに来る時に、背後に気配は無かった。
ならば後をじっくりとかけて追いかけてきた、そうとしか考えられない。
「へえ、アタシのハンディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルを持ってるのね」
そんなもの伸ばしていない。
これはあの体験で得た技術なんだがな。
「………オレンジか」
「オレンジって、ロザリアさんは」
プレイヤーに攻撃したら犯罪として、オレンジカーソルになる。だが彼女はグリーン。
それでも抜け穴はある。
「………聞いたことある。グリーンプレイヤーが情報や、他のパーティーに入って、オレンジの仲間に誘導するって」
ユウキの言葉に正解と言わんばかりに、オレンジカーソルのプレイヤーが現れる。
そして元々の狙いはシリカが所属するパーティーだが、シリカが途中で抜けてどうするか考えていたら、シリカが貴重アイテムを手に入れに出向くと知り、変更したらしい。
グリーンとオレンジの敵プレイヤーに、俺とキリトは前に出る。
「下がってろ二人とも」
「け、けど」
「リンク、キリト数が、それにグリーンを攻撃したらオレンジにっ」
「そういうことさ、分かったらアイテム全部渡しなっ」
そう言うが、気にはせず、一つだけ確認する。
「一つだけいいか、お前たち、プレイヤーは殺したか?」
「はん? いきなりなんだい? どーでもいいじゃないか」
「なっ………」
ユウキは驚愕するが、彼らはこの世界での死が本当の死に繋がる保証も、法律も何もいと言い、気にも留めない。
それに………
◇◆◇◆◇
「そう、か……、ならいいか」
そう彼は、静かに告げた。
瞬間、彼が纏う雰囲気が切り替わる。
「? なにが」
「いや………、つまりだ。お前たちは殺されても文句は無いってことだよな」
そう言い放つと共に、ヒュンと言う音が鳴り響く。
それに全員が気づかず、次の瞬間、僅かな悲鳴と共に、グリーンプレイヤーが倒れた。
「………へっ?」
「まず一人」
なにも構えないように見えて、彼は構えている。
グリーンプレイヤーは麻痺が起き、背中にブーメランが刺さって、
「え、HPゲージがっ!?」
「な、なんでそん、そもそもお前、グリーンをこうげ」
きしているに、彼はグリーンのままだ。
「これは、リンク………」
俺が驚く中、それに無表情で語る。
「向かって放ったのはダメだが、戻る際のこいつは、俺が攻撃したと認識されないらしいんだ」
彼はなんてことが無いように、あまりにプレイヤーに対しての攻撃に、抵抗感無く呟く。
「えっ、あっ、武器を複数持つ《亡霊》っ。それにこいつ《黒の剣士》! こ、こいつらベーターじゃねぇかッ」
「レベルはお前らより高いし、スキルも戦闘のみに特化してる。んでだ」
そう言い、手を広げた。
「俺の手元のブーメランは何個だった?」
その瞬間、グリーンプレイヤーか一斉に倒れ、中にはゲージが半分以下、レッドに近い者も。
「お、お前」
「まさか、攻撃されないと思ったか?」
そう言い彼は前に出る、胸騒ぎがする。
「待てもういいっ、これ以上は彼らの仕事だっ」
「なに?」
驚く中、シリカもユウキもお互い。それと共に、後ろから何名のプレイヤーが現れた。
「えっ、リーバルにウルボザ、みんなっ」
「まったくこの子は………」
「やあやあ」
「やっぱりつけてたか《トライフォース》」
俺はそう言い、しっかりオレンジギルドを囲むプレイヤーに、ユウキは驚いていた。
その間彼はすぐに武器を回収して、ウルボザを見る。
「こいつらは牢屋行きか」
「ああ、悪いね。囮のようなことさせて」
「気にするな、詳しい話を聞かせてくれるならな」
◇◆◇◆◇
「ウルボザ、これって」
「どうも君は気づいたようだけど、いつからだい?」
リーバルはまるでシリカたちを守るように前に出て、不審な目で俺を見ながらキリトに聞く。
「元々俺が彼らの被害者に頼まれて、こいつらを監獄に送る為にここに来てたんだ。それでね……。ユウキは《トライフォース》のプレイヤーだから知ってるとばかり」
「そうだったんだ………」
「ごめん、君たちを囮にしたようなものだ。それに俺は、正直君のことを警戒してた」
「………そうか。それで《トライフォース》は前々からこいつらは捜査対象だったと」
どうでもいいことなので、キリトについてはもういい。問題はギルドの方だ。
「こいつらはあるパーティーを殺してる、その生き残ったプレイヤーに頼まれて調べてたら、シリカたち。君たち囮のような事させて済まない」
「い、いえ………びっくりはしましたけど、平気です」
少し落ち着いたからか座り込む。キリトは手を伸ばし、それを頬を赤くして手を置くシリカ。
キリトはユウキとシリカの安全第一で動いていただろうが、俺も警戒されたようだ。
まあ覚えがある所為でなにも言えないな。
俺はまだ状態を維持して《トライフォース》に警戒されている。
(俺が披露したのは投擲武器と言う、攻撃力が低い方法で彼らのHPゲージをレッドに変えたか)
だがそれにも理由はある。それは時間があれば、なんだろうが小石を投げつけて、投剣のスキルを鍛えた。
ブーメランの方も、前々から、
「君、前々からオレンジプレイヤーも狩ってるだろ? 同じ方法で脅して捕らえてたみたいだね」
そう方法を言わせない、俺の情報は言わないことで、監獄送りにしたプレイヤーはいる。
俺は俺自身の情報を隠しながらプレイした。
理由は一つ、茅場、ヒースクリフに目を付けられないようにするため。
だが俺はその為に、それ以外のプレイヤーから不審な目で見られる羽目になった。
(今回はそれが裏目に出たか)
「ともかくオレンジの捕縛はいいんだけど、君、やりすぎなんだよね」
「………善処しよう」
こうして今後の身の振りも考えないといけないことに頭痛を感じながら、町へと戻り、ピナは蘇生する。
◇◆◇◆◇
「リンク、もう行っちゃったね」
「はい……。ピナのこと、ちゃんとお礼言えたでしょうか」
シリカとユウキが、ピナ蘇生を見届けた後、即座に消えた彼を考える。
「あまりああいうのにかかわらない方がいいよ、彼はベータなんだから、ねえ」
キリトを見ながら口にするリーバル。
「リーバルっ」
ウルボザが睨みを利かせ、リーバルは平然と受け流すが、
「別にかまわない……。ただ」
キリトだけが疑問に思っている言葉を口にする。
「彼はベータテスターじゃない、彼は何者なんだ」
「? なに言ってる君」
「俺がベータなのは認めているよ。だからこそ、彼のようなプレイヤーは見たことも、それも噂ですら聞いてない。ほとんどのベータテスターがデータを取っている中で、誰にも関わらず、ソロを貫いていたのならなおのこと噂になる」
「けどね、投剣スキルだけでああもゲージ消せないよ。まあメインで、スキルが戦闘オンリーなら分からないけど、そんなソロプレイヤーは生きていられない」
エネミーの不意打ち対策も何もしてないプレイヤーがどうなるか、それは考えなくても分かる。
なにより彼は気配を消していたプレイヤーを察していた。キリトはそれに無言になる中で、ユウキは、
「けど、悪い人じゃないよ。ピナが蘇生するまで、側にいてくれた」
「はいはい、ユウキはこれだから………」
リーバルは困った顔をするが、キリトだけは、
「そうだな。俺は、正直彼を警戒していた。アイテム狙いか、彼らの仲間か。だけど彼の行動は不自然過ぎて、違うと思ったよ」
「やっぱり、ピナのことを心配してたんだね♪」
「はいはいはいはい、僕が悪者ね。分かった分かった」
「リーバル……」
悲しそうにするユウキに、ウルボザは頭を撫で、シリカは今後のことをどうするか考え、キリトも攻略へと戻る。
「………また会えると良いな~」
ユウキはそう微笑みながら、後で一人レベリングを叱られることから、現実逃避していた………
◇◆◇◆◇
「………だんだんソロ活動でも目立つか」
静かにエネミーを狩る。
狩るエネミーは、一定の時間が来ると蘇生して、また狩るの繰り返しが基本。
だがそれでは身体が鈍る。
だけど、
「ふんッ」
エネミーの中に、仲間を呼ぶと言うことをするエネミーがいる。
これは、新たにエネミーを作り出して寄こすと言う意味であると知ってから、蘇生を待ちせず、狩り続けられた。
迷宮区ではアラームトラップからエネミーが大量に出ると言う事態もある。
この方法なら、多くの経験値が手に入ると共に、感覚は鈍らない。
俺があの体験で得た力は二つ、一つは頭の切り替え。
戦闘、休憩、探索、日常と頭の中全部を切り替えること。
そして感覚、それか集中力。
スローモーションのように世界が遅くなり、空間を把握し、自分は普通に動ける。
子供の頃は時間が短く、連続使用は不可。何度吐いたか分からない。
だが、その結果がこのおかしなレベリングを可能にしている。
「集中はまだ持つな、ならまだ仲間を呼んでもらうぞ。経験値より素材はいくらあっても足りないからな」
フードから覗く目、そこにいるのは勇者ではないのは、自分が一番分かっている。
プレイヤーが死ぬかもしれない、そんなのどうでもいい。
魔物を狩り続けた彼にとって、敵の命なんて考える要素が無くなってます。
このリンクこの先どうなるのか。
それでは、お読みいただきありがとうございます。