それは暗闇の中動き回る。第61層は昆虫が多く、溶け込んでいたり、毒が得意なものや、硬いものと多い。
だがそれよりも………
そのエネミーはプレイヤーの気配を探して、森を彷徨う。
指笛でエネミーにこちらに気づいてもらうが、たいていは下で音が鳴った辺りをうろつく。
その間、木々を飛び移り、確実に背後を取る
一匹、また一匹静かに消されていく。
エネミーが彼を見つけるのは、
「エンド」
終わるときだけだった………
◇◆◇◆◇
「………」
森がうっそうとしていて、虫が多い故にむしむしランド。全体的に見れば美しい湖が広がるが無視して森に潜む。
「木々の上の生活にも慣れて来たな」
木々を飛び移り、昆虫よりも上の位置を取り、集めて狩る。そんな日々で………
「?」
フィールド未開拓地らしいエリアにたどり着き、遺跡のようなところだった。
遺跡らしい遺跡と言う印象であり、入口があり、続いている。
ここのフロアボスは、現在パターンを把握されている最中、ここは関係ない。
「………まあいい」
リンゴもどきを齧り、中に入っていく。
罠はあった、だが解ける類であり、気にせず進む。
出て来るエネミーも狩りながら、その様子とパターンをチェックする。無論、情報屋に売るため、わざわざ時間をじっくりかけて………
こうして一週間ほど遺跡を確実に攻略していると、
「水晶……、ここが遺跡の奥地か」
奥に巨大な水晶の固まりがある、石舞台のような場所。
舞台を囲む欠けたりしている石の柱、なにかの儀式をする場所なのかと思いながら、その舞台の上に上がった。
その時、クエスト発生が起き、ウインドを覗く。
クエスト名《女神の聖女》と言う、謎のクエスト。
魔物に捕らわれた聖女の救出と書かれていた。
何も考えずイエスのボタンを押すと、入ってきた入口が塞がれ、どこからかエネミーの雄たけびが響く。
そして頭上の天井が割れ、降って出てきたのは、
「なっ」
それは《ヒノックス》に、頭を切り替える。
なぜだのなんでだのは後回し。
一つ目の巨大な魔物が現れ、即座に距離を取る。
まずはこれを倒す。切り替え並び、目を見開き、集中力を高めた。
その瞬間、周りの景色が広がり、時間が遅くなる。
こちらを見てすぐに向かってくるが、
「斬る」
瞬間、その目にブーメランが抜刀の如く放たれ、その目を押さえ、尻餅をつく。
この辺りまで一緒だからと言って油断はしない。戻ってきたブーメランを確保しつつ《双剣》で戦いだす。
ラッシュを決め、起き上がるとすぐに距離を取り、ブーメランを投げる。
ゲージは三つ、いまので最初のゲージ、三分の一は削れた。まだ向こうの方が余裕。
(ダメを受けるのは危険だ)
そしてブーメランを投げるが、目を手で覆い隠すヒノックス。
そのまま切り裂いても意味が無いし、刃に付けた毒も効かない。
右手で片手剣を持ち、左手はフリー、盾にして戦うか。
「なら」
眼を隠すのをやめた瞬間、即座に腰の弓を左手で持ち、右手で右腰の矢を掴み速射する。
大きな目玉に刺さり、尻餅をつく。
「悪いが確認済みだ」
この世界で弓矢ははっきり言えば難しい。
矢が真っ直ぐ飛ばないと言う設定で、あまりに距離があると、おかしな方向に飛ぶ。
だから矢はギミック解除や、囮だったり、ともかく戦闘以外が主な方法。
その矢の変則にも決まった法則があり、それを把握するのに時間がかかったが把握した。
こうなればもうパターンだ。
起き上がるたびに距離を取り、様子を見ればいい。
そうしていればゲージが一つ消し飛ぶ。
『ガアァァァァァァァァ』
瞬間、ゲームでは無かった速い動きで両手で叩こうとしたが、
「現実ではあった」
バク転してそれを避けて、そのまま目に射撃。
苦しみ尻餅をつくが、今後は瞬発な動きに注意。
その動きも、集中している俺なら即座に対処できる。
「じり貧か、いつものことだ」
スライディングして足元をすり抜ける際、両足の筋を斬るように二刀流で斬り、すぐに盾片手剣に替える。
怒り狂って何度も地面踏む。
その様子に経験の中で戦った奴そっくりだ。
「鈍いんだよ」
そう言ったら突っ込んできた。
こいつもそうだったようで、それをバク転して背中に乗り、そのまま駆け背後を取る。
振り返ると目玉を狙い、すぐに何度も斬りかかった。
ゲージが一つ減った。
怒り狂って、近くの柱を握り、壊して構え出したヒノックス。
「それは無かったな」
雄たけびと共に向かう中、より感覚を研ぎ覚ませた。
ぶんぶんと振り回される欠けた柱を躱しながら、速射を繰り返す。
「まどろっこしい」
瞬間、右手の剣を左手に投げ渡し、刀を、
「セイ」
放たれる前に刀が鞘ごと発光する。
「ハっ!!」
スキル《抜刀術》で、即座に放たれた斬撃を食らい、柱を落とし、尻餅をつく。
硬直の間、動けずにいたが、
(こいつは硬直が少ない)
すぐに《双剣》へと切り替え、連撃を食らわす。
「消し飛べえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ」
ゲージを一気に消し飛ばし、ポリゴンへと変わるヒノックスを確認した。
◇◆◇◆◇
「イベントボスエネミーは倒したが、水晶か」
切り替え、戦闘から探索へ。世界も元の動きに変わった。
ともかく考える思考を奥に置き、まだ解放されない入口を見る。
別の入口もクエストクリアの表示も無いため、水晶へと近づく。
すると、突然水晶に亀裂が走り、即座に構えると、
「!?」
水晶が割れ、裸の女の子が一人、中から現れた。
なにこれ?
即座に切り替え、落下する少女を確保する。
「お、おい」
「………」
黒髪の少女。それにクエストクリアとウインドを見る。
「クエストクリアだと、ならクリア報酬は」
そう思い、ウインドなどを確認すると、俺は目を丸くする。
テイマーのような職業のプレイヤーは知っている、シリカとピナ。シリカとピナのシステムの関係も情報で。
クエストの中には一時的にNPCがパーティーに入ることもあるらしい。
だが彼女はNPCなのは理解できるし、カーソルはそうだが、どういった扱いだ?
「ともかく、茅場はなにを考えてるんだ」
俺には無縁であるはずの、パーティーのステータス、HPゲージを表示される場所に、仲間キャラクター『』があった………
◇◆◇◆◇
俺はともかく、少女を背負って遺跡を後にした。
即座に町へのルートを確保する。時間帯は深夜、プレイヤーに見つかれば間違いなく誤解される時間帯。
染みついた能力で足跡も物音も作らずに、NPCの宿に入り、部屋を借りて中に置く。
いまは適当な衣類アイテムを装備、着せてから来たが………
「空欄なのはどういう意味だ? サポートNPCがクエスト報酬? なにがどうなってやが」
その時、頭の中の引き出しで、ある話を思い出す。
この世界の舞台《アインクラッド》の創世に、二人の女神がこの《浮遊城アインクラッド》を作った物語。
まさか………
「聖女と言う単語じゃ、現時点ここまで………」
ともかく、ベットは彼女に渡して、壁に背を預け、座り込む。
「早朝、もしくば彼女が起きるまで就寝」
そう呟き、目を閉じ、頭を切り替えた。
◇◆◇◆◇
幻影の彼が斬りかかる。
「ハッ」
何度も剣がぶつかり、盾で防ぎ、彼が身軽に剣を避け、隙間を縫うように斬りかかる。
それを繰り返しながら、最後に切り裂かれたとき、目が覚めた。
「………頭の中くらい勝たせろ」
そう言いながら、少女の様子を覗き込む。すやすや呼吸はしていて、少しだけ安心した。
すぐに調理場を確認して、料理をすることにした。人数は二人分。
アイテムストレージを確認して《魚入りミルクスープ》とパンを作ろうと準備し出す。
「~~~♪」
鼻歌を歌いながら料理をしていると、背後から気配を感じる。
「?」
殺気では無い為、普通に振り返ると、
「………」
急ごしらえで着せただぶだぶ服の女の子がそこにいた。
早くどうにかしないと俺は監獄へと送られてしまう。
◇◆◇◆◇
「おいしかったです」
彼女は素直にそう言い、俺は彼女から情報を得ることにした。
そしたらなんと言うか、自分は力を使い果たした女神とのことだ。
自分は《聖大樹》と言う二本の巨木に仕える二人の巫女、その一人。
だが争いが起きて、争いを止めるため大地を空へと切り離した。この辺りは設定だな。
だが肝心なのは、
「ですがわたしは女神としての力を失い、その全ては魔法石として、この浮遊城のどこかにあるでしょう」
「その辺はいい、なぜあそこにいた」
「力を無くした私は、魔物に水晶の中に閉じ込められていました。そこを貴方が救ってくれた」
そう言いながら、いまの君はどういう状態か聞くと、
「もう女神として、聖女、巫女の力は僅かしかありません」
その力の内容に頭が痛くなる。
ともかくだぶだふ服の美少女はまずい、色々まずい。何度も思うがこのままでは俺は監獄行き。
話を聞いてまとまった情報は、パーティーサポートNPCとしか思えない。
「ともかく飯を食い終えたら服買おう」
目のやり場が無いしな。
もぐもぐと頬を膨らまして食べている少女を見て、資金を頭の中で計算する。
◇◆◇◆◇
ミファーとユウキは最前線の町、そこの物流を確認しに、町に出ていた。
買い物の為もあるが、彼らは物流を把握は大切だ。ポーションの物流の把握と、結晶を確保。
そう言った物から前線で使われている装備も確認しておきたい。
「あれ?」
「どうしたのユウキ?」
「あれ、リンク」
マントを羽織った誰かの手を取るリンクがそこにいて、衣類を扱うNPC店へと入る。
「知り合いかな? ミファー姉ちゃん」
「うんいいよ、私も気になるから」
嬉しそうに微笑み、ユウキは店へと走っていく。
その様子を微笑ましく見ながら、後を追う。
そして、
「………」
ユウキの冷ややかな無表情な顔は初めて見た。
「? ごきげんよう」
「………」
そこには服を着せているリンクがいて、自分は凍り付く。
綺麗な素肌の少女はインナーすら着ておらず、リンクは適当なそれらを手に持っていて………
「………監獄ってどうすれば送れるのかな」
ユウキからとてつもなく冷ややかな声が響いた。
◇◆◇◆◇
「そんなクエストが………」
「後から情報を売りに、情報屋に出向く」
後から聞かされたが、信じられない二人。
だが連れていた少女がNPCであり、他の仲間NPCとは違う様子に驚いていた。
「ともかく、こいつの装備は助かった」
武器防具は自分が用意したが、他の衣類は彼女たちに用意してもらった。
「レベルはどうなんですか」
「………この後、全部を預ける気は無いが、協力してくれるのなら公開する」
彼は周りに神経を張り巡らせ、聞き耳を立てている奴はいないか確認する。
「協力とは」
「こうなったらこいつらの面倒を見る。NPCでもな」
その言葉に嘘は無く、町でもフードはつけていて、片手剣と盾は外していない剣士はミファーを見る。ユウキは心配そうにミファーは、
「大丈夫です、例えNPCでも、誰かの大切なものを踏みにじる気はありません」
はっきりと告げた彼女の目を見る。
リンクはしっかりと見た後、
「分かった」
レベルはそう簡単には開かせられない。巫女としての力だけでなく、彼女は攻略組と変わらず、現在最大レベルよりやや下。
まるで攻略組を参照にして組まれたようで、黒はサポートに特化していた。
だが問題はそこでは無い為、彼女たちのギルドリーダーがいる場所に移す。
リンクはともかく、ギルド《トライフォース》に協力を求めた。
町では武装しても盾と剣だけ、金髪は目立つからフードはたいてい装備。
これからどうなるか。とりあえずユウキの誤解は解けるのに時間がかかりました。
お読みいただきありがとうございます。