第65並び66層、古城のようなエリアを、それはいつものように狩りをしていた。
現在66層、多くの攻略組やプレイヤーがマップを作ったりして、攻略している。
マップの情報や、モンスターのパターン情報は売買する。故に彼もここにいた。
「さてと」
アストラル系、つまりオバケなどのモチーフモンスターが多いフロアで、意外と阿鼻叫喚が響き渡る。
そんな中俺はいつも通りであり、念のため銀製にしたりする程度。
初撃は抜刀かブーメランかくらいで、その後攻撃を変える。
周りに多数いるのなら槍を振り回し、前にいるのなら二刀流。大型なら大剣で、始めてみるのなら盾と片手剣。
様々な情報を得てから倒し、闇夜に溶け込む。
格好は本人の感覚では《ハイリアシリーズ》に似た、コートの装備。
懐には多数の投擲武器があり、アイテムも隠し持つ。
いつものように《亡霊》は亡霊エネミーがウロウロするエリアをうろつくのだった。
◇◆◇◆◇
(………攻略組か)
部屋の死角、身体を隠し長い槍を持つ。
その視線の先には《血盟騎士団》が前に進んだり、マップ製作していた。
(そう言えば《閃光》はいない………)
彼女とユウキの友情はどうなるんだろうか? それを考えると、いまの状況で母親と向き合うとか以前の問題過ぎて、どうなるか分からない。
頭を切り替えよう。
静かに物音を立てずに、彼はその場を後にした。
◇◆◇◆◇
彼女《閃光》の『アスナ』はオバケ系は苦手だ。
攻略になんか行きたくない。
そうして以前のように顔を隠し、それでも何もしないことはできないため、町近くのフィールドを歩く。
「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない―――」
その様子こそ怖いと誰かが言いそうだが、誰も言うものはいない。
そして彼女はエネミーですら怯えていた。彼女の方が格段に高く、出会ったら光速で倒して撃墜はしているのだが………
「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない―――」
そうしていたら、
「あれ、ここどこ?」
迷った………
◇◆◇◆◇
メッセを飛ばす。
「助けて助けて助けて助けてたす、きゃーーーーーーオバケーーーーーッ」
メッセを三桁ほど飛ばして、キリトに連絡を取ろうとするアスナ。
本人はもう病的なほどの量なのに、場所は一向に送られてこないため、フィールドを駆け巡りながら、送られるメッセの処理をしていた。
悲鳴を上げながら、アストラル系エネミーを余計に呼び出して、悲鳴を上げながらフィールドを駆ける。
その悲鳴に多くのプレイヤーが悲鳴を上げる。
◇◆◇◆◇
「やっ、はっ」
ユウキがレイスを切り裂き、プレミアが細剣で突き、レイン、ルクスが片手剣が交差して切り裂いた。
今回もルクスは別パーティーだが、行動を共にする。
そして今日はユナの側に《血盟騎士団》のノーチラスもいて、レベリングしながら進む。
白いワンピースのような衣類のミファーはゼルダを見る。
「ゼルダ、だいじょうぶ?」
「ええ………。ふう、やはり銀製でなければダメージが少ないようですね」
「うん。今回はノーチラスくんがいるから、だいぶ楽だね」
「わたしは出番が無いな~」
「あたしもです、ピナは大活躍ですけどね」
シリカもまた、そのパーティー加わり、ピナと共に行動している。
いまだ各々から渡された装備、ユウキ共々愛用できていて、シリカはその装備を身に纏い、こうして前線階層付近で、パーティー戦をしていた。
ピナもみんなと仲が良く、メンバーを再度確認するゼルダ。
自分、ミファー、ユウキ、シリカ、フィリア、レイン、ルクス、ユナ、ノーチラス。
そしてやはりと言うか、最近注目を集めるNPCプレミア。パーティー人数を越えて連れて来られる彼女は、戦闘してなくてもレベルが上がる。
(おそらくは、本来クエストクリアした彼のレベルを基準にしてるんでしょうね)
その男、リンクは時々彼女の前にふらりと現れ、装備の確認やお小遣いを渡しに来る。
ユウキもその事もあり、プレミアと組むようになり、彼と関わることが増えた。
リーバルは相変わらずで、ダルケルとウルボザは、それでも変わらない彼のソロ活動に心配している。
悪い人では無いのだが、彼は一人を選びすぎている。それはゼルダたちの感想だ。
「あれ?」
「どうしたのユウキ」
ミファーが首をかしげると、ユウキは、
「いやなにか悲鳴が」
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そう言い悲鳴を上げながら、彼女たちの下に現れた《閃光》に、全員が驚くと共に一斉に走り出した。
◇◆◇◆◇
「ごめんなさいっ」
「い、いえ」
「このエリアのエネミーは怖いですからっ」
そう言い、フィールドを走りかけた彼らは、フロアを確認してた。
「ゼルダ、この辺りはまだ未開拓だと思うよ」
「ルクス……、まだ結晶は使えますから、ここからはマッピングやフレンド相手の位置で場所を確認しましょう」
ゼルダたち《トライフォース》は多くのフレンド登録をして、自分たちの位置把握を利用してのマップ製作を得意としている。
これは《血盟騎士団》も信用できることであり、アスナはメッセを飛ばし続けた。
「あ、あの、そろそろメッセ飛ばすのは」
「だってだってっ、キリト君ぜんっぜん来ないんだもん!」
「ふ、副団長? いくらなんでも飛ばし過ぎです………」
手の動きだけが高速で、ソードスキル並みに飛ばされている。
「アスナさん、怖いの苦手?」
「うっ、うう~」
「そ、それは私も苦手ですよ。オバケは仮想と分かっていても、急に出てきますし」
「うう~………ノーチラス君、分かってるよね」
「は、はいぃっ」
急に鋭い目つきになり、黙るように言われ、ユナは苦笑する。
「ううっ、アスナさんとキリトさん、どういった関係なんでしょうか」
「頑張ってシリカ」
「はい、ルクスさんも」
「わわわ、わたししししは」
そんな会話の中、ゼルダは周りを確認するが、少し距離があった。
「やはり知り合いは遠い位置ですね」
そう呟くと、
「いえ、近くに彼がいます」
そうプレミアが言い、それにルクスとユウキが食いつく。
「それってリンク?」
「りり、リンクさんが側に!?」
「お、落ち着いて。プレミア、分かりますか?」
ミファーの問いかけに、指さす方角は、
「壁だね」
「壁……、って、この壁」
フィリアが何か気付いて、調べると、ぼこっと言う音と共に、壁が開いた。
「隠し扉っ」
「さすがトレジャーハンター!」
「へっへーんっ」
得意げのフィリアと共に、プレミアは、
「地図の位置から、この先にいます」
「正直先に進むのは危険ですが、このメンバーなら問題ないですね」
ゼルダはそう言い、先に進むことにした。
隠し扉は階段で、少し薄暗く、全員で進んでいく。
少し奥へと進むと、落とし穴と言うか、亀裂がある。
「これは………」
そしてロープが柱に結ばれ、亀裂の下に続く。
「位置は重なってます」
「それでは、彼はこれを使って下に?」
彼らはしばらく考えた後………
◇◆◇◆◇
「暗いな………」
下に着いた俺の感想は、たいまつ程度の灯りで、道は先はある。だが少しばかり奥が見えない。
トラップがきついなと思いながら、俺は揺れるロープに気づかず、カンテラに火を灯したりして、準備していたら、
「うわあーーーーーーっ」
上から何か聴こえると共に、ロープがポリゴンに変わった。
「ロープの耐久性が!? そもそもいまのこっ、えっ!?!」
上から何名か、プレイヤーが落下してくる。
一人はすでに受け身の耐性だが、他は、
「くそっ!!」
瞬時全ての武器を外し、俺は着地する男以外全てのプレイヤーをキャッチしては下して次へと繰り返す。
「エンドっ」
そう言い抱き止めたのは、赤毛の少女。
「平気か」
「は、はひ………」
ともかく、全員は即座に助けることができて、帰り道は無くなった。
◇◆◇◆◇
「結晶は不可、道はトラップ系と思われる道しか無しか」
「すいません、ロープが切れたのは私たちの所為です………」
「いまさら言っても仕方ない。ともかく」
槍をメインに切り替え、その刃先に油を染み込ませた布を巻き、たいまつも用意。
カンテラも用意して、ゼルダ、アスナに持たせた。
「このカンテラ、明かりの範囲が広い………」
「あとはたいまつだ、エネミーにタゲを取られやすくなるが、この暗さじゃ、気付かない方が危険だ。いま火を点ける」
手慣れたもので、火をすぐに点け、槍の布にも点けた。火を移してだいぶ明るくなる。
「ピナは索敵スキル持ちか、この暗さじゃシリカは短剣よりたいまつを。光源担当はレベルの低い奴と、高い奴。前衛と後衛。後衛はカンテラ持ち一人に二人付いてくれ」
そう言いながら、不満が無いが、
「慣れてるね、指示」
「まーな、考えるのが好きなだけだ」
レインにそう言いながら、ともかく話はここで区切り、奥へと進む。
◇◆◇◆◇
槍の刃先、耐久性を削らないように火を点け、灯りと共に、床を叩きながら慎重に進む。
カンテラを盾の手に付け、右手で火の点いた槍を持つ。
「とはいえ戻ったら整備だ」
「………はあ」
レインがため息を付き、フィリアとルクスはまあまあと話しかける。
奥に進む中、エネミーはいないかわりに、トラップが多く。
アスナはユウキの後ろにずっといる。
「落ち着いてくださいアスナさん……」
「だって、もしもここでエネミーが出たら………キリト君はなんで来ないのっ」
「副団長、さっきから思ってましたが、階層は伝えてるんですか?」
「ノーチラス君ナイスっ、キリト君早く来てッ」
そして今度は隠し扉の件を忘れ、彼に送信し続けることを彼女は知らない。
リンクは気にせず、息を殺し、物静かに進んでいた。
「静かに」
そう唐突に告げストップする。光源で先を照らすと、
「壁になにか?」
壁はただの古いレンガ作りの壁。
だがフィリアが目を凝らしてよく見ると、
「! この壁っ、レンガを使って隙間に穴があるっ。矢か槍が飛び出るトラップだよ」
フィリアの言葉に、リンクは壁際に近づき、微かに調べる。
「手伝う?」
「君はピナと共に襲撃を警戒してくれ。俺は」
少し大きめの石をストレージから取り出し、投擲スキルでショートする。
矢が一斉に放たれ、次に二射を放ち、反応が無いのを確認し、
「俺が先に行って、トラップが発動しないか確認する。返事が来るまで来るな」
「分かりました」
矢が発射されてからタイムラグがあるのを確認して、彼は今度は火が付いた石で投擲。
明かりのおかげで矢が放たれ、どこが安全か確認しつつ、次に進む。
進む彼を見ながら、フィリアは感心していた。
「手慣れてるよ彼。光源が向こうにも設置してから進むなんて、かなり慎重かつ、少し強引に進んでる」
そしてガコンと言う音の後、問題が無くなり、彼が戻る。
以下のようなトラップを繰り返しながら、先へと進む。
そして、
「待て」
「声?」
リンクとフィリアだけがそう言い、ユウキたちは耳を傾けた。
「なにも聞こえませんが」
「フィリアは聞き耳スキル伸ばしてるからね」
「きゅあ」
「ピナも。索敵に反応です」
先ほどの光源の石で、先を照らしてみると、扉がある。
「扉………索敵は」
「敵……ではありません。プレイヤーです」
「さてと、問題は何色かだ」
その言葉にユウキが僅かに下がる。その姿を見たアスナは、やっと本調子に戻る。
「貴方たちは後ろに下がっていて、ノーチラス君は彼女たちの護衛。オレンジ並びレッドだった場合、私たちが対処します」
「あっ………」
「だいじょうぶ、ここまで守ってもらったから。あなたのこと、ちゃんと守るよ」
アスナはユウキにそう語り掛け、扉を見る。
「開けるぞ」
そしてリンクは扉を開ける。
「っ!?」
そこにいたの、グリーン・カーソルのプレイヤー。
「あなたたち」
「《月夜の黒猫団》」
そして彼らだけの物語は動き出す。
◇◆◇◆◇
「アスナっ、どこだ。アスナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
一方、階層を走り回る《黒の剣士》がいた。
彼のことをいま彼女は、完全に忘れているとも知らずに………
キリトくん大変だな。
それではお読みいただきありがとうございます。