それでは第10話、どうぞ!!
ムサシアイコンを手に入れるため、タケルと早苗が冥界を目指して守矢神社を出た頃、幻想郷の技術家たる河童たちへの指導を終えた神奈子は、守矢神社に戻るべく妖怪の山の上空を浮遊していた。結界で外界と隔てられた幻想郷では、外の世界の発達した技術を知っている神奈子のような人物は貴重なのである。
「にしても、携帯電話ねぇ...ついに幻想郷もここまで来たか。」
神奈子は腕組みをしながら満足そうに笑みを浮かべたが、今日進捗を報告してくれた河童の気がかりな言葉を思い出す。
(「でも...最近、にとり姉の様子がおかしいんですよねぇ...自分のラボに籠もりっきりで。それ自体は珍しくないんですけど、僕がラボを覗きに行ってみたら、なんか目がヤバそうな感じで...」)
河城にとり...手先の器用な種族である河童の中でも、特にその才覚を発揮する技術者のリーダー的存在。面倒見もよく、後輩たちからはにとり姉と呼ばれて慕われている。幻想郷の技術発展に対する貢献も多大なものがあり、それ故に、神奈子も気をかけずにはいられないのだ。
「まぁ...とりあえず、帰って考えるかね...」
こんな上空で考えてても仕方がない、と神奈子は帰宅を最優先にして飛行速度を上げる。予想以上に長い間考え込んでいたようで、すぐに守矢神社の鳥居が見えてきた。ふわっと境内に降り立った神奈子は、風で乱れた髪を適当に直し、諏訪子に声をかけつつ居間に上がる。
「おーい、帰ったぞ。」
「おっ!おかえりー!どうだった、河童の方は?」
まだ居間でゴロゴロしていた諏訪子は、神奈子の声を聞きつけて目を爛々とさせながら河童の状況を尋ねる。彼女も新しいものに目がない性格で、河童の技術革新には興味津々なのだ。神奈子は同居人、もとい同居神の楽しげな顔に微笑む。
「次は携帯電話だってさ。もうシステムの構築は完了目前らしいぞ。妖力とかを溜め込んで、選択した対象の携帯に念力の類いを飛ばせるようにするんだとさ。ま、技術化されたテレパシーみたいなもんだね。」
「ほへ~!相変わらず河童たちの考えは斬新だね~!」
携帯電話の話に足をパタパタさせて楽しむ諏訪子。それを横目に部屋を見渡した神奈子は、早苗たちの姿がないことに気づく。
「ん...?早苗とタケルは、出かけたのか?」
「そーだよ。アイコンを探しに行ってくるってさ。」
神奈子の問いに答えた諏訪子は、頬杖をつきながらにんまりと笑顔を浮かべ、言葉を続けた。
「神奈子や、神奈子や。帰ってきたついでに、お茶とお煎餅を持ってきておくれ。早苗がいないと、頼む人が居なくてねぇ。」
「なんで婆さん口調なんだ...容姿との不釣り合いが過ぎるぞ?少し待ってな、用意してやるから。」
諏訪子に謎な口調で頼まれた神奈子は、やれやれといった仕草をしながら台所へ向かう。その時、居間の隅に置かれた今は意味を持たないテレビの画面の奥で蠢いていた蜘蛛に、彼女たちは気づいていなかった...
「城戸...おい、城戸っ!城戸ぉーーーーーーっ!」
モンスターに貫かれた背中からはとめどなく血が流れ、もう目が開く気もしないし、蓮の叫び声もほとんど聞こえない。
死ぬ。そう確信した俺は、沈んでいく意識に身をゆだねる。それから少しして、聞き覚えのない2つの声が聞こえてきた。
「ど...治...う?」
「もち...じゃ。わら...かか...」
朦朧とした意識の中ではろくに聞き取ることも出来ず、俺の意識は深い暗闇の中に落ちていった...こうして俺──城戸真司は死んだ。死んだはずだったんだ。だけど...
「おーい、城戸!城戸真司!起きろ!」
「ん...うぅん...」
闇に沈んで消えていくはずだった俺の意識は、誰かの声によって呼び覚まされた。目覚めた俺はゆっくりと立ち上がり、まだはっきりしない意識のまま、辺りを見渡す。どうやらここは山間のようで、緩やかな傾斜地に樹木が青々と生えている。気絶する前の都心部とは、似ても似つかない光景だった。
「あれ...?なんで...俺、死んだはずじゃ...?もしかして...俺、夢でも見てたのかな...?」
放心状態で呟いた俺は、慌ててポケットを探る。だが、内側の布を引っ張り出してもくしゃくしゃになったコンビニのレシートくらいしか出てこない。
「ない...俺の...」
「"カードデッキ"、だろ?」
「えっ!?」
俺の言葉を遮り、探し物の名前を見事言い当てた声の主は、近くの木の上から飛び降りてきた。スタッと華麗に着地した革ジャンスタイルの青年は、ポケットから薄い黒箱のようなものを取り出して、突然俺に向かって放り投げる。
「ほれっ!」
「うわっ...と!これって...!」
それをなんとかキャッチした俺は、裏表逆になっていた黒箱を裏返した。そこには──
──"これからよろしくな!"という直筆のメッセージが入っていた。
・・・・・・はぁ!?
「お近づきの印だ。俺の特製チョコレートだぜ?」
「いやチョコレートかよッ!?」
俺の鋭いツッコミを聞いて、革ジャンスタイルの青年は「ははっ!目は覚めたみたいだな!」と朗らかに笑う。そして、再びポケットに手を突っ込むと、さっきと同じように薄い黒箱を取り出し、俺に放り投げた。今度こそ、俺は箱を危なげなくキャッチし、また逆さになっていた箱を裏返すと、そこには龍の顔を象った金のエンブレムが刻まれていた。
「カードデッキ...!」
嬉々として呟いた俺の耳で、キィィィィンという鋭い耳鳴りが起こる。それは、戦いの合図だ。俺を駆り立てる音が聞こえる方、救うべき人が居る場所へと俺は咄嗟に駆け出すが、ふと青年に振り返る。
「っと、あんた名前は?」
「俺は闇月影光だ。またな、城戸!」
「あぁ!」
影光と名乗った青年は、気さくに手を振って別れの挨拶をくれた。俺も手を振り返して再び駆け出したが、そこで影光が俺の名前を知っていたことが引っかかり、もう一度振り返る。だが、そこには穏やかに揺れる木の葉の影が広がっているだけだった...
淹れたての緑茶が注がれた二人分の湯呑みと、青龍の里で名のある老舗のせんべい屋の醤油せんべいを乗せた木製のお盆を持って居間に戻った神奈子は、自分の目を疑った。居間の角に置かれたテレビの画面から、一本の手が伸びていたのだ。助けを求めるかのように小刻みに震える腕は、少しずつ画面の中に引きずり込まれていく。何度も目を凝らした神奈子が見たのは、画面の奥でもがく諏訪子の顔だった。
「諏訪子ッ!!」
知己の友が苦しむ顔を見た神奈子はお盆を取り落とし、足下に零れる緑茶を気にもとめずに駆け出す。神奈子は、テレビから伸びる一回り小さな手に必死で手を伸ばすが、その指先が掠めた瞬間、諏訪子の腕は一気に画面の中に引きずり込まれ、画面は何の変哲もない漆黒に戻ってしまった。
「おいっ!諏訪子っ!諏訪子ッ!!」
動揺を隠せない神奈子はテレビを揺さぶりながら諏訪子の名を繰り返して呼ぶが、彼女の声が帰ってくることはない。焦燥に駆られる神奈子は、届かなかった自分の手を握りしめ、拳を思い切り画面に叩きつけようとする。
「ちょ、ちょっと待って!」
その拳が液晶に激突する寸前、守矢神社に駆け込んできた真司が神奈子の手首を掴んだ。怒りの矛先を失った神奈子はいきなり現れた真司を怪訝な顔で見るが、そんな神奈子の目を気に留めず、真司は言葉を続ける。
「あんた、誰かがこの中に吸い込まれたのを見たのか!?」
「あぁ!?お前、なんで知ってるんだ!!」
逆ギレ気味に返す神奈子をよそに、真司は「なら、間違いないな。」と呟くと、神奈子の手首から手を放した。水色のダウンジャケットのポケットから、影光から受け取ったカードデッキを左手で取り出し、難を逃れたテレビの画面に向けて突き出す。
「ん...?あれ!?ベルトは!?なんで何も起きないんだよ!?」
「ベルトだって...?まさか...!!」
ペシペシとカードデッキを叩き、もしもーしと声をかける真司の肩を勢いよく掴み、神奈子はテレビと同じように彼を揺さぶる。
「お前、仮面ライダーか!?」
「ええっ!?あんた、なんで知ってんだ!?」
さっきの神奈子と同じような反応を示す真司の肩を放し、神奈子はゆっくりとテレビの画面に向き直る。暗闇の広がる画面に、引きずり込まれる諏訪子の顔を浮かべた神奈子は、ぎゅっと拳を固めて呟く。
「なら、間違いないな...お前、名前は?」
「えっ...城戸真司だけど?」
「真司か。真司、私はこの中に引きずり込まれた諏訪子を助けたい...お前なら、それが出来るのか?」
荘厳な雰囲気を醸し出し、真剣な眼差しで問いかける神奈子の言葉に真司は息を呑み、コクリと頷いて言葉を紡いだ。
「あぁ...!俺はそのために...人を守るためにライダーになったんだからな!!」
「なら、力を貸してくれ!」
「えっ!?」
ニヤリと笑って叫んだ神奈子は、豪快に真司の肩に腕を回し、肩組みのような体勢から真司を自分の体に押し付ける。その際、神奈子の豊かな胸元に顔を埋める形になり、真司は「ふぼふぁ!?」という変な声を上げながら頬を真っ赤に染める。それが反映されたかのような赤い閃光が守矢神社一帯に走り、光と化した真司は神奈子と一体となる。
「おっ...!お、おっ...!おっぱ...!ってうぉぁぁぁ!?なんだこりゃぁぁぁっ!!?」
「動揺してる暇はない!さぁ、行くぞ!真司!!」
「あぁ、もう!こうなったら...やるっきゃない!!」
シンクロを果たした真司の気合いを入れる声に合わせ、胸元を赤く輝かせる神奈子は、先の真司に倣ってカードデッキをテレビ画面に向けて突き出す。すると、画面に写った神奈子の腰に、バックル部分にスペースのある銀のベルトが浮き上がり、反転して現実世界の神奈子の腰に装着される。そして、神奈子は右手を左斜め上へとまっすぐ伸ばす。
「「変身っ!!」」
自分の内の真司と共に叫んだ神奈子は、龍のエムブレムが正面にくるような形で、ベルトの空きスペースに左から勢いよくカードデッキを押し込む。すると神奈子の両脇と正面に虚像が出現し、回転しながら神奈子に迫る。三つの虚像が神奈子に重なった瞬間、神奈子は言葉通り変身を果たした。胸元にあしらわれた黒い鏡を中心に四本の細い注連縄が斜めに出現し、それぞれ首筋と腰で結ばれる。それによって四つに区切られた神奈子の服は、首回りと腰回りが赤、左右が銀と黒に変化し、肩と腕、すねに相当する部分のスカートに黒いアーマーが装着される。そして、セミロングの髪は黒くなり、横に切れ込みの入った銀の兜を被った神奈子の瞳は赤く染まる。
背負った大きな注連縄を赤い龍のデザインに変えた神奈子は、戦いを終わられるために戦い続けた龍の騎士、仮面ライダー龍騎を模した姿に変身したのだった。
「っしゃあ!」
「ん、なんだそれ?まぁ、今はそれどころじゃないか...はぁっ!!」
真司の気勢に首を傾げつつ、神奈子は自分を映すテレビ画面の中へと飛び込んだ。神奈子が降り立ったのは、無数の鏡が並ぶ異次元空間、ディメンションホール。そこで、運転席を覆う大きなスクリーンが特徴の三輪車両、"ライドシューター"に乗り込み、起動する。
「絶対助ける...!堪えてなよ、諏訪子ッ!!」
ディメンションホールに響いた神奈子の叫びは、爆走を開始したライドシューターのエンジン音でかき消された。神奈子が目指すのは、ディメンションホールを抜けた先の、すべてが反転した鏡の世界──
──怪物と欲望が渦巻く、"ミラーワールド"。
「くっ...!なんなの、コイツ...!!」
「キシィ...!!」
一方、ミラーワールドに引きずり込まれた諏訪子は、すべてが反転した守矢神社の境内で、首や手首、その小さな身体の至る所に粘性の糸を巻きつけられていた。その糸の主は5mを超える巨体を誇り、機械的なデザインが特徴の蜘蛛の化け物、"ディスパイダー"。その巨体に見合う口から伸びる何本もの糸が、諏訪子の身体を拘束し、徐々に引き寄せている。
「(まさかコイツ...わたしを食糧にする気か!?しかも、よりによって蜘蛛だなんて、冗談じゃない...!)」
自らがディスパイダーの口に向かわされていることに気づいた諏訪子は、身体をよじらせて糸から抜け出そうと試みる。だが、その手応えを感じたディスパイダーは更に五本の糸を吐き出し、諏訪子の首に二本、頭部に三本を巻きつける。ディスパイダーに背を向けた状態で首に糸を巻きつけられ、諏訪子はきつく首を絞められる。
「...うぁ...かはっ...死ねる...か...!」
諏訪子が抵抗すれども、少しずつその時は近づいてくる。そして、口元に諏訪子を迎えたディスパイダーは、その大口を目一杯に開く。諏訪子が自らの末路に唇をかみしめた、その時──
「だぁぁぁっ!」「させるかっ!」
──テレビ画面から飛び出してきたライドシューターが、ちゃぶ台を吹き飛ばしながら居間でドリフトし、境内のディスパイダーに向けて突撃を開始したのだ。居間から飛び出したライドシューターの前輪がディスパイダーの頬に相当する部位に激突し、ディスパイダーは火花を散らしながら後退する。
「キィィィ...!」
「今だっ!!」
ダメージを受けたディスパイダーが牙をかみしめたことにより、諏訪子を捕らえていた糸が切れる。それを好機とみた神奈子は、着陸したライドシューターのスクリーンを開け放ち、残った糸のせいで動けずにいる諏訪子のもとに向かう。
「大丈夫か、諏訪子?」
「神奈子...!その姿、まさか...!」
「話はあとだ!早くその子をミラーワールドから出さないと!」
「あぁ、分かってる!」
真司の言葉に頷いた神奈子は、諏訪子をお姫様だっこして居間のテレビへ向かう。だが、それに気付いたディスパイダーは獲物を逃がすものかと、神奈子の背に向けて糸を鋭く練り上げた針を口から無数に発射する。それを察知した神奈子は、その場で回し蹴りを放って針を弾き飛ばした。
「チッ...!自分の巣にかかった獲物は逃がさないってか...!」
「え~っと、神奈子さん...だったか?ひとまず、"アイツ"に任せよう!」
「なるほど、"アイツ"ね。」
そう言ってニヤリと笑った神奈子は、諏訪子を背後に下ろし、ベルトに収められたカードデッキに手を伸ばす。そして、デッキの表面の切れ込みから、背中の注連縄の龍と瓜二つの龍が描かれた一枚のカードを抜きだした。"ADVENT"と書かれたそのカードを、神奈子は左腕に装備している龍の頭部を象った手甲、"ドラグバイザー"のカバーをスライドして表れたスロットに挿入し、カバーを元に戻す。
『ADVENT』
神奈子が一連の動作をしている間に、ディスパイダーは再度針を発射したが、ドラグバイザーの電子音声を合図に飛来した紅の龍──"無双龍ドラグレッダー"によって、その針は弾かれる。神奈子の周りを旋回したドラグレッダーは猛々しく咆哮し、ディスパイダーに突撃。諏訪子を脱出させるため、妨害行動を開始した。この場をドラグレッダーに任せた神奈子は、再び諏訪子を抱きかかえて、テレビ画面に飛び込んだ。
「わわっ!あれ、糸が...?」
ディメンションホールを抜け、神奈子たちがミラーワールドから帰還した途端、諏訪子の体にまとわりついていたディスパイダーの糸は粒子となって消滅した。諏訪子を居間の座布団に座らせ、神奈子はしみじみと呟く。
「消えた...遅かったら、諏訪子もこうなってたかも知れないのか...」
「あぁ...でも、この子はここに居る。救えたのは、あんたのおかげだ。ありがとう、神奈子さん。」
自分一人では変身すら出来ず、救えなかったはずの諏訪子を救えた事実に、真司は静かに感謝を述べる。その言葉を聞いた神奈子は、フッと優しく微笑んだ。
「まったく...そういうのは、ヤツを片付けてからだ。行くぞ、真司!」
「へへっ、そうだよな!」
「神奈子!あの怪物へのお仕置き、頼んだよ?」
「あぁ、任せときな。百万倍で返してきてあげるよ!」
「「っしゃぁ!」」
もう一度、今度は二人で気合いを入れた神奈子と真司は、再びテレビ画面に飛び込んだ。神奈子がミラーワールドの守矢神社に戻ると、境内ではドラグレッダーとディスパイダーの戦闘が繰り広げられていた。ディスパイダーの放った針を、ドラグレッダーは口から放つ火炎で相殺。急接近したディスパイダーの振り下ろされた鋭利な足を小さく旋回して弾き飛ばしたドラグレッダーは、体勢の崩れたディスパイダーの腹部に突進をかまし、戻ってきた契約者の下に帰還した。
「待たせたね、化け物蜘蛛!」
「覚悟しろよぉっ!」
名乗りを上げた神奈子は、緩く湾曲した剣の描かれたカードをデッキから抜き出し、ドラグレッダーのカードと同じ手順でドラグバイザーに挿入し、ドラグバイザーのカバーを元に戻す。
『SWORDVENT』
電子音声を合図にドラグレッダーの尻尾だけがコピーされ、ソードベントのカードに描かれていた剣──"ドラグセイバー"が神奈子の手元に召喚される。神奈子はドラグセイバーを軽く一振りし、ライドシューターのスクリーンを踏み台にして高く跳躍。急降下しながらディスパイダーに切りかかるが、ドラグセイバーの刃は強固な外郭に弾かれ
てしまう。
「蜘蛛のくせに硬いな...なら!」
体勢を整え、元の場所に着地した神奈子は、ディスパイダーの放った針をドラグセイバーで切り捨てていく。だが、針の一本が右手を掠め、神奈子はドラグセイバーを取り落としてしまった。それを見たディスパイダーは、神奈子に無数の針を放つべく、大口を目一杯に開く。
「今だッ!」
だが、それこそが神奈子の狙いだった。空中のドラグセイバーの柄を旋風脚で蹴り飛ばし、ディスパイダーの口の中に投じたのだ。ドラグセイバーは柔らかい口内に深々と突き刺さり、ディスパイダーは声にならない悲鳴を上げる。ディスパイダーの隙を作った神奈子は、勝負を決するべく、デッキと龍の同じ紋章が描かれたカードをデッキからを引き抜き、ドラグバイザーに挿入してカバーを戻す。
『FINALVENT』
ドラグレッダーが周囲を旋回する中、神奈子は両腕を前に突き出して腰を深く落とす。その両腕を右に移し、息を吐いて気を溜めた神奈子は、ドラグレッダーと共に上空に飛び上がる。幾度となくその身を捻り、神奈子が跳び蹴りの姿勢を取った瞬間、ドラグレッダーは彼女の背に猛炎を放った。炎によって爆発的な推進力を得た神奈子は、真司と共に雄叫びを上げる。
「どぉりゃぁぁっ!!」「はぁぁぁっ!!」
ドラグレッダーの炎を纏ったキック──"ドラゴンライダーキック"を受けたディスパイダーは全身を発火させ、木々をなぎ倒しながら山林に突っ込み、爆散した。着地した神奈子は、燃え上がる山林を背に──
「
──悪戯な笑みを浮かべた。
ディメンションホールを抜けて神奈子がテレビから現実世界に帰還すると、「おっ、お帰り~!」と諏訪子が出迎える。さっきまで死線を彷徨っていたとは思えないほど気の抜けた声で笑う諏訪子に、神奈子は呆れ半分、安心半分で微笑み、ベルトからデッキを抜いて変身とシンクロを解除する。
「うおっ!?戻れた!ってぎゃぁ!!」
神奈子の中から抜け出した真司は、その勢いで足をもつらせて顔面からすっころぶ。会って早々にドジを踏む真司を見て、諏訪子は楽しげに笑い声を上げ、神奈子はやれやれといった仕草で、彼に手を差し伸べる。
「ほら、立てるか?」
「いてて...ありがと、神奈子さん。」
真司の手を握って立ち上がらせた神奈子は、彼から名前を呼ばれたことで、まだ自己紹介をしていなかったことを思い出した。
「そういえば、まだちゃんと名乗ってなかったね。私は八坂神奈子。まぁ、ざっくり言えばこの神社に祭られてる神様だね。ちなみに、そこの諏訪子も神様だ。」
「そーだよー!」
「うえっ!?神様!?嘘だろ!?神様が目の前にいるってことは...まさか、ここは天国ぅ!?」
「落ち着け、真司。お前のことも、私たちのことも、話は座ってからだ。」
神奈子の一声に従った神奈子と諏訪子、真司の三人は居間の机を囲んで座り、それぞれの情報を共有した...
木の陰からその光景を窺っていた影光は、フッと静かに微笑む。その背後に青い光で縁取られた穴が開き、そこから黒い時計のようなデバイスと水の入ったペットボトル持った白の少年が姿を表した。
「さすがは神様、まさしく無双の戦いぶりだな。」
「お疲れ様、影光。ごめんね、真司のこと任せちゃって。」
「いいって、気にするなよ。デッキ預かってたのは俺だったんだしさ。」
白の少年が労いの言葉と共に差し出したペットボトルを受け取り、影光は一口、水を飲む。その間に、白の少年が持つデバイスが変貌を遂げる。
『龍騎』
ベースが赤、前面の円形パーツが銀に染まったデバイスは、龍騎の名を告げた。変化したデバイスを眺める白の少年は、楽しそうに呟く。
「始まったね...彼らの時間が。」
「あぁ。戦いは、まだまだこれからだ...!」
不敵な笑みを浮かべた影光は、ポケットから一つのカードデッキを取り出す。その薄黒く染まったデッキの正面には、禍々しいデザインをした黒龍のエムブレムが刻まれていた...
その夜、ミラーワールドの焦げ付いた山林で粉々になったディスパイダーの欠片が結集し、ディスパイダーの上部から異形な人間型の上半身が生えた怪物──ディスパイダー・リボーンとなって再生を果たした。自らを討ち果たした神奈子への復讐に燃え、憎しみのこもった咆哮をミラーワールドに響かせるディスパイダー。だが、その瞬間──
『FINALVENT』
──空からまっすぐに急降下してきた黒いドリルのようなものに脳天から貫かれ、再生したディスパイダーは一分も経たずに粉塵へと帰化することになった。ディスパイダーと入れ替わりに山林で佇む少女は、ディスパイダーの亡骸から浮き出た光の球を見つめる。徐々に天へ昇っていく光の球を、少女の背に垂れるマントが変化したコウモリのようなモンスターがその身に取り込み、そのまま夜空に飛び去っていく。その姿を見送った少女は、テレビ画面に映る現実世界の神奈子に目をやる。
「まさか、守矢の神がライダーになるとは...」
ボソッと呟いた少女だったが、即座に小さく首を振り、拳を強く握りしめる。
「それでも、戦わなければ...!」
今度は決意のこもった声で呟いた少女は、神奈子をキッと睨みつけ、闇夜に姿を消した。
~次回予告~
「俺は葛葉紘汰!アーマードライダー"鎧武"だ!」
「あぁ、もう!なんで変身できねぇんだよぉ!?」
「紘汰さんっ!私に、力を貸して下さい!!」
「「変身っ!!」」
『オレンジアームズ!花道!オンステージ!!』
「ここからは私たちのステージです!」「ここからは俺たちのステージだ!」
第11話 ~冥界!オンステージ!?~
キャラクター・アイテム紹介コーナー!
~八坂神奈子~
守矢神社に祭られている神の二柱が一人で、"乾を創造する程度の能力"の持ち主。乾とは八卦で天を意味し、天候などを自由に操ることが出来る。基本的にフランクかつ豪快な性格で、早苗を父親のような立場で見守っている。ミラーワールドに連れ去られた諏訪子を救うべく、真司とシンクロして龍騎の力を得た。
~城戸真司~
仮面ライダー龍騎として戦っていた青年。外の世界ではOREジャーナルという会社で記者をやっていた。バカを地でいくタイプで、良くも悪くも真っ直ぐな性格。OREジャーナルの編集長である大久保大介曰わく、「祭りの取材に行って、気づいたら神輿担いでるタイプ」。また、何にでも首突っ込まないと気が済まないらしく、その情熱が人を動かすことも多い。
~龍騎(神奈子)~
真司とシンクロした神奈子が、龍騎のカードデッキを使って変身した姿。契約モンスターは「無双龍ドラグレッダー」。神奈子と真司の性格ゆえに、ワイルドな戦い方が目立つ。また、背中の注連縄がドラグレッダー風になっているのが特徴。多種多様なアドベントカードを駆使し、状況に応じた戦法を取れる。必殺技は、ファイナルベントのカードをベントインして発動するドラゴンライダーキック。
第10話、いかがでしたでしょうか?これで遂に7人目ですね!少しずつ見えてきたライダーの影...ディスパイダーを葬った少女の正体は!?
ところで、幻想郷での年号って西暦でもいいんでしょうか?幻想郷自体に暦があるのかな...?活動報告の方に意見BOXを作成しますので、上記の質問の回答や、ご要望などを頂けると嬉しいです!ただし、ご要望を全て反映するのは難しいと思いますので、あらかじめご了承頂きたい...!
それでは、チャオ!