東方時哀録   作:シェイン

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こんにちは、シェインです!実は、今回から台本形式に移行することにしました。途中で書き方を変えてしまい申し訳ありませんが、こちらの方がより良いものを書けると思いましたので、何卒ご了承下さい!

それでは、どうぞ!


第14話 ~寺・イン・ライナー~

「なんとも奇怪な噂ですね...」

 

ぼそりと呟いた長髪の女性──"(ひじり)白蓮"(びゃくれん)は、手にした湯呑みの緑茶で喉を潤した。柔らかな日差しにもたらされ、白蓮が平穏を享受しているこの場所は、彼女が住職を務める寺──命蓮寺の縁側。青龍の里の外れに居を構え、立場の弱い妖怪たちのために開かれている寺院だ。

 

「そうですよね!?里から夜な夜な人が居なくなるなんて、きっとなにかの異変ですよ!」

 

ピョンピョンと跳ねながら白蓮に噂を語る犬耳の少女──山びこの妖怪である幽谷(かそだに)響子(きょうこ)は、爛々と瞳を輝かせた。聖は、自らの教えの信者である響子のハイテンンションな様子に困った笑顔を浮かべる。そんな聖の背後から、水兵服を纏ったショートヘアの少女──舟幽霊である"村沙(むらさ)水蜜(みなみつ)"が姿を見せた。

 

村沙「そんなに大層なことかな?里の人間が居なくなるなんて、妖怪に食われたり、襲われたりで日常茶飯事な気がするけど...」

響子「まぁ、そうだけど...夜中に真っ黒なコウモリ男が現れて、人を攫ってる...なんて噂もあるんだよ!?」

 

山びこらしい大きな声量で、噂を語る響子。聖と村沙は顔を見合わせ、噂の正体が異変と信じて止まない彼女に困った顔をする。そんな中、ゴシックスピーカーと化した響子の声に誘われ、命蓮寺の面々が聖の下に集まりだした。

 

星「コウモリ男、コウモリねぇ...パッと思いつくのは、あの目に悪い洋館の吸血鬼だけど、とても男には見えないか...?」

 

虎を想起させる金と黒の髪、頭に乗せた花のような飾りが印象的な少女──毘沙門天の化身である寅丸(とらまる)(しょう)

 

ナズーリン「あのねぇ、ご主人...西方に位置する紅魔館の連中が、わざわざ青龍の里まで出てきて人攫いする必要がありますか?」

星「あっ、確かに!さすがは私のナズ!いい子!」

ナズーリン「まったくご主人は...抱きつかない!スリスリしない!!」

 

星を"ご主人"と呼び、その主人になでなでされているネズミ妖怪の少女──二本のダウジングロッドを用いた、ダウジングを得意とするナズーリン。主人が従者に叱られる光景も、彼女たちの主従関係では平時のことである。

 

一輪「う~ん...やっぱり、近頃出没している怪物騒ぎの一端なのかしらね...」

雲山「一輪...なにがあろうと儂が守るけぇ、安心せい。」

一輪「...恐れている訳ではないのですが、その時は頼りにしますね、雲山(うんざん)。」

 

幻想郷に漂い出した不穏な気配を憂い、不安げな表情を見せる尼のような格好の少女──"入道使い"という稀有な妖怪である雲居(くもい)一輪(いちりん)。そんな一輪の傍らに控える、厳つい顔と拳だけで浮遊する見越入道──雲山。集った村沙たちを見渡し、噂話に花を咲かせる彼女たちに聖は言葉をかける。

 

聖「皆、それぞれ考えはあるでしょうが、里の人々が行方知れずなのは事実。捨て置くことは出来ません。少々気がかりな話もあることですし、私たちで少し探りを入れて...」

 

聖が今後の方針を伝えていた時、突如として、空にぽっかりと"穴"が開いた。渦巻くようなその"穴"に目を奪われた聖の視線につられ、周囲の面々も一同に空を見上げる。皆の視線が空の穴の一点に集まった瞬間、穴から鉄製のレールが流れ出した。しかし、空を走るそのレールはどこか歪んでいたり、欠けていたりと欠損が多く、まともな状態とはとても言えないものだった。

 

聖「あら、何事でしょう...?」

 

聖が奇異な現象に首を傾げる中、穴から延びたレールに従い、白を基調とした"列車"が現れた。歪なレールを走る列車は、車体をがたつかせなが空をぐるぐると泳ぎ始める。次から次と起こる異常事態にざわめく境内だったが、怒涛の展開はまだ終わりではなかった。

 

制御を失ったレールが捻れながら地面へと伸び始めたのだ。敷かれたレールに従う列車は、ぐるぐると回転しながら真っ逆さまに降下し──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──この幻想郷の大地へと墜落した。凄まじい轟音が響き、土煙が空に立ち上る。縁側に腰掛けていた聖は咄嗟に立ち上がり、状況を確認するために列車の墜落した方向へ視線を向けた。だが、妙蓮寺からら墜落現場まではそこそこに距離があり、とても視認は不可能だった。

 

星「あ、あれは一体...!?」

聖「星...百聞は一見に如かず、という言葉もあります。ここで思惑を巡らせていても仕方がありません。とにかく、現場を見に行くことにしましょう。」

 

突然な異物の到来に、驚愕を隠せずにいた星を諭した聖は、皆を先導して列車の墜落現場へと向かう。軽く助走をつけてふわりと浮き上がり、列車が墜落した位置を特定するべく上空から辺境を見渡す。

 

聖「ひとまず、墜落による火災は起きていないようですね...」

 

列車の所在と周辺状況を把握した聖は、そこに向けて真っ直ぐ飛行する。所々焦げ付き、煙を上げながらも着地した列車にたどり着いた聖たちは、ゆっくりと着陸した。列車を近くでじっくりと観察すると、先頭車は真ん中から割れた赤い桃のようで、窓は横に長い六角形という珍しいデザインが施されている。

 

一輪「これは...随分と奇抜な乗り物ですね...」

村沙「そう?空飛ぶ列車なんて、悪くないじゃん!いいセンスしてるよ!」

星「乗り物ということは、誰か乗っているのでしょうか?」

響子「聞けばすぐ分かりますよ~!お~い!おはよ~ございま~す!!」

 

星の言葉を聞いた響子は、列車に向かって大声で挨拶する。これは響子のアイデンティティのようなもので、彼女が掃除している石階段は彼女の元気な挨拶がいつも響いている。だが、響子の隣に並んでいたナズーリンは、彼女をキッと睨み付けた。

 

ナズーリン「アンタはまた考えなしに...!外界からの侵略者だったらどうするつもり!」

響子「えっ...う、うそ!?ま、まさかね...?」

雲山「じゃが、これが儂らにとって異物であるのは間違いねぇぞ...得体の知れねぇ敵やも知れん...!」

 

拳を固めた雲山の渋く重苦しい声に、一同の空気は一気に張り詰めた。しかし、聖だけはゆったりと穏やかな笑みを称え、列車の扉を見つめていた。その時、プシューという排気音を立てながら、扉がゆっくりと口を開き──

 

「おいお~い!どこだよここ~!」

「"デンライナー"もすっかり壊れちゃったし、あの坊やに手痛くやられちゃったねぇ...」

「これは...泣けるでぇ!」

「あぁ~!ねぇ熊ちゃん、見て見て~!わんちゃんとネズミさんがいる~!」

 

──四体の怪人が列車から降りてきた。それぞれ、赤い鬼、青い亀、金の熊、紫の龍のような彼らの姿を目の当たりにした響子は、今までで最も声を張り上げて叫ぶ。

 

響子「お、おぉ...鬼だぁぁぁぁ!!?」

モモタロス「誰が鬼だ!俺は鬼じゃねぇ、"モ・モ・タ・ロ・ス"だ!てめぇ、喧嘩売ってんのか!?」

響子「ひぃぃぃぃっ!?」

 

鬼と呼ばれたことに過剰な反応を示した赤い鬼──"モモタロス"に凄まれた響子は、聖の背に隠れる。モモタロスはずいと響子に詰め寄ろうとするが、彼の肩を青い亀──"ウラタロス"が掴み、それを阻止した。

 

ウラタロス「ちょっとセンパイ...その娘が怖がってるじゃない。そんな乱暴だから女の子にモテないんだよ?」

モモタロス「んだと、このスケベ亀!お前と違って、俺はそんなことばっかり考えて生きてねぇんだよ!」

ウラタロス「いやいや、ご冗談を...センパイはいつも何も考えてないでしょ?」

モモタロス「ほぉ...上等じゃねぇか!ちょうどいい、お前の軟派な甲羅でストレス発散させて貰おうか!」

キンタロス「おい、モモの字!デンライナーちゃんと調べんと、ハナに...zzz」

リュウタロス「わ~い!ケンカだ、ケンカだ!やれやれ~♪」

 

いがみ合いを始めたモモタロスとウラタロス。それを止めるかと思いきや、立ったまま居眠りを始めた金の熊──"キンタロス"。そして、小突き合いに発展した二人を外野から煽る紫の龍──"リュウタロス"。現れて早々にドンパチ騒ぎを始めた異形の四人組に、妙蓮寺の面々は警戒を更に強める。緊迫した状況下、列車から更に人影が現れた。

 

「モモタロス、ウラタロス...やめなよ、こんな時に...」

モモタロス「良太郎、邪魔すんな!この亀をいっぺんひねりつぶしてやる!」

ウラタロス「やめときなよ、センパイ。せっかく女の子たちがお出迎えしてくれてるのに、みっともないじゃない。」

モモタロス「みっともねぇだと!?」

 

列車から降りてきた見るからに気弱そうな青年──野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)は、そのままモモタロスとウラタロスに割って入り、小競り合いの仲裁にかかる。その最中でふと顔を上げた良太郎は、この喧騒を静かに見守っていた聖と目が合うと、申しわけなさそうに小さく微笑んだ。彼の微笑みに合わせ、聖も女神のような笑顔を浮かべる。

 

聖「ふふ、こんにちは。とんだ災難に見舞われたようですね...怪我はありませんか?」

良太郎「へ...?あ、ありがとうございます。僕は大丈夫です...慣れてるというか、なんというか...」

 

戸惑いながらも良太郎が返事をしたとき、列車の落下によって幹が脆くなっていた木の一本が、傾いた自重で真っ二つに折れた。倒れ始めた木は良太郎の頭に向かって速度を上げていくが、不運にも木の折れる音は騒ぎに紛れ、モモタロスたちは気づくことが出来なかった。

 

聖「はぁっ!」

 

しかし、木が良太郎の脳天に直撃する寸前、察知していた聖の咄嗟なムーンサルトキックによって倒木は天高く蹴り飛ばされた。華麗に着地した聖は乱れた髪を整えると、良太郎に向き直る。だが、彼女の人間離れした動きを見た良太郎たちは、ポカーンと口を開けたまま沈黙してしまう。そんな彼らに、聖はなんということも無く話を続けた。

 

聖「...それで、あなた達の身に一体何があったのですか?よろしければ、教えて頂けませんか、良太郎さん?」

良太郎「あ、あぁ~、はい...じゃあ、立ち話もなんですから、"デンライナー"で...」

モモタロス「おい、良太郎...こいつ、ハナクソ女みてぇなことすんな...」

聖「どうかしましたか?え~っと、モモオニさん?」

モモタロス「だ~か~ら、俺は鬼じゃねぇっ!!」

 

そうして妙蓮寺一行は、突如幻想郷に墜落した列車に乗車することになった。

 

過去か未来か...時間を超越する時の列車、"デンライナー"に...

 

 

 

「うぅ~ん...いたた、ひどい目にあったなぁ~...」

 

聖たちがデンライナーに案内された頃、少し離れた山間で一人の少女が起き上がった。不気味な紫の傘を携えた赤と水色のオッドアイの少女の名は、多々良(たたら)小傘(こがさ)。巡り合わせの悪いことに、普通に歩いていたところにデンライナーが墜落し、盛大に吹き飛ばされてしまったのだ。さらに追い打ちをかけるように、聖が蹴り飛ばした倒木が起き上がった小傘の後頭部に激突する。

 

小傘「うぎゃっあ!?な、なんで...木が飛んでくるのぉ...!?」

 

せっかく立ち上がろうとしたにも関わらず、出鼻を挫かれてしまった小傘は、頭に出来たたんこぶをさすりながら地面に突っ伏す。小傘が自らの非運に撃沈した時、彼女の頭上に金色に輝く球体がふわふわと現れた。球体は少しの間小傘の周囲を旋回すると──

 

 

 

 

 

──彼女の背に飛び込んだ。

 

小傘「でも、この不運も...天罰なのかなぁ...」

「お前の望みを言え...どんな願いも叶えてやろう。お前が払う代償は、たった1つ...」

小傘「え...?」

 

どこからともなく聞こえてきた妖しげな声に、小傘は慌てて顔を上げる。しかし、いくら辺りを見回そうとも声の主は見つからない。その代わりに、地につけた両手に違和感を感じた。

 

小傘「す、砂...!?」

 

小傘の足下に、大量の砂が広がっていたのだ。砂は小傘の身体からとめどなく溢れ出て、その面積を広げていく。小傘がその奇怪な光景に唖然としていると、砂が寄り集まって人の上半身のような形を固め始めた。やがて人型を完成させた砂の塊は、怯える小傘に囁いた。

 

小傘「なっ、なにこれ...!?」

「もう一度言うぞ...お前の望みを言え...どんな願いも叶えてやろう。お前が払う代償は、たった1つ...」

小傘「どんな...願いも...?」

 

声を震わせ、砂をぎゅっと握りしめた小傘は、ふと顔を上げる。そして、砂の塊──"イマジン"の悪魔の囁きに応えてしまったのだった...

 

 

 

 

聖「そうですか...では、あなた達は時の運行を守るために戦っているのですね。」

良太郎「はい。見た目はあんなですけど、モモタロスたちも僕の仲間なんです。」

聖「見た目など、些細なことですよ。最も大切なのは、その者が宿す心なのですから...」

 

デンライナーの食堂車に案内され、そこで良太郎から話を聞いた聖は、彼に優しい笑顔を向けた。聖が聞いた内容は、良太郎たちが時間を乱そうと目論む輩から時の運行を守っていることや、モモタロスたちが人のイメージを借りて姿を得るイマジンという存在であること。そして、このデンライナーが時を超える列車であるということだ。

 

モモタロス「ほぉーら、わんころ!鬼が来たぞー!がおー!」

響子「ひぃぃぃぃ!!」

 

一方、モモタロスは怯える響子を脅かし、追いかけ回していた。モモタロスから逃げ回っていた響子はとうとう耐えられなくなり、デンライナーから飛び出していってしまった。大人気などまるで持ち合わせぬモモタロスは、デンライナーの外まで追いかけようとしたが、その前に白い服を纏った少女──"ハナ"が立ちふさがった。

 

ハナ「やめなさい、このバカモモ!」

モモタロス「うごぉっ!?」

 

ハナはモモタロスの腹部に正義の鉄拳制裁を加え、モモタロスはたちまちダウンする。いつも通りモモタロスを成敗したハナは、申し訳なさそうに聖を見た。

 

ハナ「うちのバカがすみません...響子ちゃんの様子、見てきますね。」

聖「あら...じゃあ、よろしくお願いしますね。」

モモタロス「うぅ...犬に勝てたと、思ったのに...がくっ...」

 

食堂車から出て行ったハナの背中を見届けた聖は、母性に満ちた笑顔でしみじみと呟く。

 

聖「なんとも気立ての良い子ですね。まだ幼いというのに、毅然としていて立派です。」

良太郎「ハナさんのことも、話せば長くなる事情があるんですけど...聞きますか?」

聖「はい、ぜひ!この齢になっても、知るということは楽しいものですからね!」

 

穏やかな聖と良太郎が話に花を咲かせる中、命蓮寺の他の面々はイマジンたちと交流していた。

 

ウラタロス「いやぁ~、すっごく美人だよね、水蜜さん。僕とお茶でも、どうかな?」

村沙「お断りします。お茶の相手は他の人で間に合ってるの。」

ウラタロス「あらら、釣れないねぇ...でも、そんな君も魅力的だよ。」

村沙「はぁ...あんまりしつこいと沈めますよ?」

ウラタロス「それも良いかもね。2人で海のように深い夜に沈んでいこうか...」

村沙「はぁっ!?」

 

キンタロス「ほぉ、あんた毘沙門天なんか。詳しくは知らんが、たいそう強い神様だったらしいな。」

星「えぇ!えぇ!そうでしょう!そうでしょう!代理とはいえ、私はその毘沙門天に見初められた実力者で、宝搭を無くしてばかりの間抜けなどでは...って、聞いてます?」

キンタロス「zzz...」

 

リュウタロス「うわぁ~!ねぇねぇネズミさん!これなに?杖?」

ナズーリン「あっ、こら!わたしのダウジングロッド!いつの間に...!返しなさい!」

リュウタロス「えへへ~!やだ~!」

 

皆がそれぞれに団欒を囲む中、食堂車の中で取り残された高貴な白色のイマジン──"ジーク"が一人呟く。

 

ジーク「う~む...なぜ私には誰も話しかけないのだ?」

 

デンライナーでイマジンたちと出会い、誰もが騒がしく過ごしていたその時...

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

耳をつんざくような、ハイトーンの悲鳴がデンライナーにほとばしった。その腹に響いてくるほどの声量は、響子のものに違いないと直感した聖は、口を開くより早く立ち上がる。それと同時に、伏せっていたモモタロスも起き上がった。

 

モモタロス「...良太郎!イマジンの臭いだ!クソッ、デンライナーの焦げ付いた臭いのせいで気づけなかった!」

良太郎「...っ!モモタロス、行くよ!!」

モモタロス「おうっ!!」

聖「私も行きます!」

 

悲鳴を聞きつけた聖たちは、連れ立ってデンライナーを飛び出す。地面に降り立った三人は、モモタロス先導のもと一心不乱に駆け出した...

 

 

「ほぉら、早くビビって泣き喚けよ...それとも、痛いのが欲しいのかぁ?」

 

怯える響子を庇うようにして立つハナは、じりじりと迫り来る、紫の身体と胸部の一つ目が特徴的な化け物──"アンブレライマジン"を気丈に睨みつける。その反抗的な視線を受けたアンブレライマジンは、けらけらと笑い声を上げた。

 

アンブレラ「ケハハッァ!いいねぇ、その強情さ!お前みたいなガキほど、なぶり殺しにする甲斐があるってもんだぜぇ!」

ハナ「なんでイマジンが...あんた、何が目的!」

 

鬼のような剣幕のハナに問われたアンブレライマジンは、大げさな仕草とともに語りだす。

 

アンブレラ「そりゃもちろん、気の向くままに楽しく殺しをすること...なんだがな。残念ながら、契約は単純な殺しじゃないんだよなぁ...まっ、俺は拷問もウェルカムだ!まずは、お前らで楽しませて貰うか~ッ!!」

 

そう狂気的に言い放ったアンブレライマジンは、胸部の眼球の下から巨大な舌を伸ばし、ハナたちを絡め取ろうとする。人智を超える化け物に襲われた響子は死を覚悟したが...

 

モモタロス「させるかよッ!!」

 

駆けつけたモモタロスがアンブレライマジンの前に躍り出ると、黒い模様の入った赤い剣──モモタロスウォードで舌を弾いた。ハナたちを横目に確認したモモタロスは、モモタロスウォードをアンブレライマジンに向ける。

 

モモタロス「この野郎、子どもを狙いやがって!ハナ、わんころ!さっさと逃げろ!!」

響子「う、うん...あ、ありがと...!」

 

モモタロスに逃げるよう促された響子は小さくお礼を告げて、ハナと共に走り出す。モモタロスに追いついた良太郎と聖は、彼の左右に並び立った。聖は変わらず穏やかな表情を浮かべているように見えるが、その瞳の優しい光には陰りが見えている。

 

聖「あなた...なぜ響子を狙うのですか?」

アンブレラ「なぜ、か...妬ましいんだよ、のうのうと生きてる奴らが!だから、殺す。一匹残らず...なァ!!」

聖「そんな...そんな身勝手な理由で尊い命を奪おうなど、決して赦されることではありません!!」

 

アンブレライマジンの自己中心的な言葉を聞いた聖は、声を荒げてアンブレライマジンを叱責する。だが、そんなことはどこ吹く風と言わんばかりに、アンブレライマジンはため息をついた。

 

アンブレラ「ハァ...いい人ぶったお説教は結構だ!さっさと殺ろうぜ!!」

モモタロス「上等じゃねぇか!俺は最初からクライマックスだ!行くぜ、行くぜ、行くぜ~!!」

 

アンブレライマジンが痺れを切らし、舌を鞭ようにしならせて放った縦方向の攻撃を左右に分かれて回避する聖と良太郎。舌を前転でかわしたモモタロスは、モモタロスウォードを振りかざしてアンブレライマジンに突撃する。モモタロスの太刀を両腕で防いだアンブレライマジンは、モモタロスとぶつかり合いながら林の奥へと入っていく。

 

良太郎「あっ、モモタロス!」

聖「な、なんて野蛮な...」

 

果敢に攻め込むモモタロスを見た良太郎は、黒色のパスケースのようなもの──"ライダーパス"と銀を基調としたベルト──"デンオウベルト"を懐から取り出し、腰に巻きつけた。そして、ライダーパスを構えて呟く。

 

良太郎「変身...!」

聖「えっ?」

 

はっとした聖の視線に気づくことはなく、良太郎はデンオウベルトの特徴的なバックルにライダーパスをセタッチする。しかし、何も起こることはなく、良太郎は慌ててデンオウベルトをゆする。

 

良太郎「あれ...!?な、なんで...!?」

聖「良太郎さん!突然で申し訳ありませんが、落ち着いて聞いて下さい!」

良太郎「ひゃ、ひゃい...」

 

心当たりを覚えた聖は良太郎の両肩をガッと掴み、良太郎の目を見つめた。

 

聖「この世界、幻想郷に訪れた仮面の戦士...仮面ライダーと呼ばれる存在は、戦士としての力を失うそうです。その代わり、運命で結ばれた幻想郷の者に力を授けることが出来る...その相手は、きっと...」

良太郎「聖さん、ですか...?」

聖「...はい。おこがましいかも知れませんが、あなたは私に新しい始まりをもたらしてくれる人...そんな気がするのです。」

 

聖は、なんの根拠も有りはしない自分の言葉に少し恥ずかしそうに、しかし慎ましく微笑んだ。その顔を見た良太郎は釣られるように笑うと、小さく頷く。

 

良太郎「たとえ何も分からなくても、それは何もしない言い訳にはならない...だから、僕は聖さんを信じます。聖さんの言う、"運命"を。」

聖「良太郎さん...ありがとうございます!必ずや、あの異形の凶行を止めましょう!」

良太郎「はいっ!」

 

互いに意志を固め、心を通じ合わせた良太郎と聖は、手のひらを重ね合う。すると、良太郎は白い輝きに変化し、聖の中に融け合っていった。良太郎の輝きを纏った聖は、シンクロとともにその右手に移ったデンオウベルトを腰に巻きつける。

 

良太郎「え...!?な、なにこれ...!?でも、とにかくやらなきゃ...!」

聖「えぇ、参りましょう!」

 

志気を高めた聖は、左手に握られたライダーパスを構え、大きく息を吸う。そして、良太郎と心を合わせ、一つの言葉とともに一挙に吐き出した。

 

聖・良太郎「「変身!」」

 

聖がデンオウベルトのバックルにライダーパスをセタッチすると、バックルのサークルから半透明なエネルギーが放出される。そのエネルギーが聖の全身を包み込むと、聖の装いが変化した。ウェーブがかった髪は黒く染まり、額には金色で縦長のアクセサリーが装着され、インナーは銀に。足には銀のブーツを履き、髪と同様に瞳は黒く染まっている。

 

時の番人たる戦士、仮面ライダー電王。その中でも"プラットフォーム"と呼ばれる形態を模した姿に、聖は変身したのだった。

 

聖「あら...!上手く変われたようですね!では、モモノスケさんの助太刀に向かいましょう!」

良太郎「あの...モモタロスです。」

 

良太郎の控えめな訂正を貰いながら、聖はモモタロスの後を追って駆け出した...

 

 

一方、アンブレライマジンと林にもつれ込んだモモタロスは、閉じた傘のようなデザインのブレードとモモタロスォードをぶつけ合い、激しい剣戟を繰り広げていた。距離を取ったアンブレライマジンは、狂気的な笑い声を上げる。

 

アンブレラ「ケハハッ!いいねぇ、()りがいのあるヤツじゃねぇか!お前も俺と同じ...殺戮や蹂躙に逸楽を見いだしてんだろ?」

モモタロス「うるせぇ!お前なんかと一緒にすんな!俺は、かっこよく戦うことが好きなだけだ!お前みたいに弱いやつを襲って勝ってもな、ちっともかっこよくなんてねぇんだよ!!」

聖「ハァッ!」

 

アンブレライマジンへの憤りを露わにしたモモタロスが勢いよく駆け出した瞬間、彼の背後から気勢とともに飛び込んできた聖が、アンブレライマジンの顔面に膝蹴りを打ち込んだ。

 

アンブレラ「ぐおっ!?」

 

虚を突いた攻撃でアンブレライマジンを大きく吹き飛ばし、着地した聖。彼女の腰に装着されたデンオウベルトを目の当たりにしたモモタロスは、驚きの声を上げた。

 

モモタロス「んなっ!?おい、なんでお前がベルト着けてんだよ!?良太郎はどうした!」

良太郎「モ、モモタロス!落ち着いて!僕は大丈夫だから!」

モモタロス「ぎゃー!?女から良太郎の声がー!!ま、まさかお前...良太郎を喰っちまったのか!?」

 

どこぞの童話のような想像をしてモモタロスが戦慄する中、地面に転がっていたアンブレライマジンが立ち上がる。それを見た聖は、モモタロスを放置してアンブレライマジンと向き合った。

 

聖「動揺するのも分かりますが...ひとまず、あの異形を下しますよ。」

モモタロス「はぁ!?俺に命令すんじゃねぇよ!」

アンブレラ「おい、女ァ!いいところに割りこんで来るんじゃねぇ!殺されてぇのか!!」

 

戦いを邪魔されたことに怒り心頭なアンブレライマジンは、舌を横凪に振りかざして聖を襲う。しかし、聖はジャンプして舌を避けると、それを足場にしてアンブレライマジンに突撃。懐に潜り込み、腹部に肘うちを打ち込む。

 

アンブレラ「うごっ...!」

聖「まだまだ序の口ですよ!さぁ、覚悟なさい!」

 

あまり表情には出さなかったが、響子を襲ったことに憤怒していた聖は、肘うちに怯んだアンブレライマジンに怒涛の連撃を見舞う。顎に掌底を打ち込み、姿勢を低くして足払いをかける。浮き上がったアンブレライマジンの腹にムーンサルトを叩き込んで上空に打ち上げると、自らも木の幹を蹴って追撃。空中で何度もアンブレライマジンに足技を見舞った後、聖は踵落としでアンブレライマジンを撃ち落とした。地面にひびが入るほどの衝撃で叩きつけられたアンブレライマジンは、フラフラしながらも立ち上がる。

 

アンブレラ「ぐうっ...!?なんて強さだ、この女...!」

モモタロス「すげぇ...」

 

モモタロスたちが感嘆の声を上げる中、地面に降り立った聖はアンブレライマジンにゆっくりと歩み寄ると、優しく語りかける。

 

聖「これに懲りたら、あのような悪事はもう止めるのです。私は、あなたを殺めるつもりはありません。私たちは皆、等しく生きる者同士ではありませんか...」

アンブレラ「等しく生きる者...か。あぁ、あんたの言うとおりかも知れねぇ...俺が間違ってたぜ...」

 

聖の言葉に心を打たれたのか、アンブレライマジンはがっくりとうなだれる。それを見た聖は、膝をついたアンブレライマジンに手を差し伸べた。

 

聖「大丈夫...過ちは償えば良いのです。さぁ、あなたも手を取り合い...」

アンブレラ「...なぁんてな!」

 

聖の言葉に絆されたふりをして、不意打ちを狙っていたアンブレライマジンは、ブレードの間合いに入った聖に鋭い突きを放つ。しかし、聖は冷たい表情で瞬発的にブレードを受け流し、アンブレライマジンの腕を抱え込む。

 

聖「やはり、妄言でしたか...残念でなりませんね。」

アンブレラ「チッ...!なら、奥の手だ!!」

 

その言葉とともに、アンブレライマジンの胸部の瞳が輝き出す。やがて瞳から光線が発射され、近接していた聖に直撃した。衝撃でモモタロスの近くまで吹き飛ばされた聖は、激しく地面を転がる。

 

聖「くっ...油断しました...!まさか、あんな技を持っているとは...!」

モモタロス「おい、大丈夫か!?クソッ...卑怯なことばっかしやがって!!」

アンブレラ「ケッハァッ、いいザマだなぁ!安心しろよ!あんたの望み通り、み~んな平等にぶっ殺してやるからよぉ!!」

聖「外道とは、まさにあなたのような者を言うのでしょうね...!」

 

怒りを露わに立ち上がった聖は、アンブレライマジンを目指して駆け出した。だがその直後、聖は足がもつれて転んでしまった。その瞬間、地面に伏せった聖は気づいた。自分の身体が、"異常なほどの疲労"を感じていることに。足や腕に力を込めて立ち上がろうとしても、どうにも力が入らないのだ。

 

聖「なぜ...!?か、身体が...上手く...!?」

良太郎「はぁ...はぁ...ひ、聖さん...ちょっと...待って...」

聖「(まさか、良太郎さんの体が私の動きに耐えられずに...!?)」

 

良太郎の激しい息切れに気づいた聖は、自分の平常を逸した動きが良太郎の体に大きな負担を与えていたことを理解する。今まで激しく動き回っていたにも関わらず急に転倒した聖に、モモタロスは駆け寄った。

 

モモタロス「無理すんな、馬鹿野郎!俺を呼べ!お前の中に良太郎がいるなら、なんとかなる筈だ!!」

聖「で、ですが...!」

モモタロス「うだうだ言ってる場合じゃねぇだろうが!さっさとやれ!!」

 

良太郎を介してモモタロスを憑依させる方法を理解した聖は、デンオウベルトのバックルに備えられた四色のスイッチの内、赤いスイッチに手を添える。だが、そこで動きを止めてしまった。

 

モモタロス「おいっ!なにやってんだ!?」

アンブレラ「おいお~い、仲間割れかぁ?それじゃあ、あの世で仲直りするこったなぁ!!」

モモタロス「チッ...やべぇ!!」

 

隙を見たアンブレライマジンは胸部の瞳に多量のエネルギーを蓄積させ、一気に放出する。無数の光線が無差別に撒き散らされ、辺りは一挙に爆煙に包まれたのだった...

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?何があった!?」

 

良太郎たちがデンライナーを飛び出して行った直後、騒ぎを聞きつけた青年──"野上(のがみ)幸太郎(こうたろう)"と紺色の鬼のようなイマジン──"テディ"が、慌てた様子で運転室の方から現れた。

 

テディ「なにやら悲鳴のようなものが聞こえましたが!?」

キンタロス「幸太郎!良太郎たちはもう出て行ってしもうた!俺らも追いかけるで!」

幸太郎「分かった!」

 

すぐさまウラタロス、キンタロス、リュウタロス、テディを先導してデンライナーを出ようする幸太郎だったが、その足は食堂車の片隅に座っていた一輪の言葉に引き止められた。

 

一輪「お待ち下さい!私たちも参ります!聖様を追いかけなくては!」

幸太郎「えっと...誰だか知らないけど、止めといた方がいいと思うよ?俺たちが相手にするのは、あんたより強いイマジンかもしれないから、さ。」

一輪「それでも行きます!魑魅魍魎の化け物など、恐るるに足りません!行きましょう、雲山!」

雲山「承知!」

幸太郎「あっ、ちょっと!」

 

幸太郎の忠告を完全に振り切った一輪は、雲山を引き連れてデンライナーを飛び出していく。それに追随するように他の妙蓮寺の面々も立ち上がり、一輪を追いかけていく。

 

星「さすがは一輪ですね!私たちも行きますよ、ナズ!」

ナズーリン「はいはい、分かりましたよ...しょうがないなぁ、ご主人は。」

村沙「ストレスも溜まってたし、丁度いいか!少し体を動かしたかったんだ!」

幸太郎「...なんなんだよ、あの人たち。」

ウラタロス「聞く耳持たず、って感じだね...放っておく訳にもいかないし、僕たちも行こうか。」

 

ウラタロスの言葉に頷いた幸太郎は、彼女たちを追ってデンライナーを降車する。悲鳴の聞こえた方角を頼りに駆け出した一輪たち、幸太郎たちの前に立ちふさがるように、海賊のような格好をした金髪の少女が木の陰から躍り出た。

 

「おっと...悪いけど、お前らを行かせる訳にはいかないんだよね。大人しく帰れば、無事に帰してあげるけど...」

一輪「何者ですか...?我々の道を邪魔するのなら、容赦はしませんよ!」

 

勇ましく告げる一輪の言葉に、金髪の少女は一つ溜め息をついた。

 

シーラ「ま、そうなるよね。オレ...ボクの名は"シーラ"!お前ら、喰われなきゃ分からないらしいね!」

リュウタロス「あっ!あのベルト!!」

 

名乗りを上げたシーラは、黒いデンオウベルトのようなベルト──"ガオウベルト"を取り出し、腰に巻きつける。その特徴的なバックルに備えられた銀のスイッチをシーラが押すと、パイプオルガンのような音楽が荘厳に響き渡る。摘まむようにライダーパスを取り出したシーラは、力強く声を上げながらライダーパスをバックルにセタッチした。

 

シーラ「変身ッ!!」

『GA-O FORM』

 

バックルから橙のフリーエネルギーが放出され、シーラの全身を包み込む。服が漆黒に染まると、周囲に牙のデザインが目立つ銅色の鎧が形成され、肩と胸部に装着される。さらに、二つの顎が繋がったような複雑な形状の兜が額に装着された。時間を喰らう"仮面ライダーガオウ"の力を纏ったシーラは、ベルトに提げられている4つのツール──"ガオウガッシャー"の二本線、三本線の記された二つを上下に接続し、その両端に一本線、四本線の記された二つを接続する。鋸のような橙の刃が伸びたガオウガッシャーのソードモードを軽く振りかざし、獲物を前にしたシーラはニヤリと笑う。

 

シーラ「さぁて、お前らの歯応えはどんなもんかな?ボクはハードが好みだからね、楽しませてくれよ?」

 

 

 

~次回予告~

 

「あなたは、私が護ります...!」

 

「あの時、なんで俺を呼ばなかった!?」

 

「情けないですね...」

 

「ケッハハァ!そろそろ仕上げといくかぁっ!!」

 

「行きますよ、モモタロス!」

 

『SWORD FORM』

 

「俺、参上ッ!!」

 

第15話 ~ガンガン・クライマックス~

 

 

 

アイテム・キャラクター紹介コーナー!

 

~聖白蓮~

 

命蓮寺の住職を務める温厚な女性で、誰にでも慈悲深く、すべての絶対平等を理想に掲げている。"魔法を使う程度の能力"の持ち主。元は人間だったものの、弟の死をきっかけに死を極端に恐れるようになり、不老長寿を得るために魔法使いになる道を選んだ。しかし、魔力を得るために妖怪を助けるうちに、不当な迫害を受ける妖怪を守りたいと考えるようになり、それが原因で人間から魔界に封じられた過去を持つ。皆を母親のように優しく見守っているが、どこか天然で抜けている部分があり、たまに周囲を振り回すことも。

 

~野上良太郎~

 

驚くほどの不幸体質を持ち合わせる青年。自分が不幸に見舞われまくっているため、他人の不幸や悲しみには敏感な、優しい性格の持ち主。基本的には気弱だが、決して譲らない頑固な一面もあり、クセの強い仲間のイマジンたちをまとめ上げている。ある事件によって、デンライナーごと幻想郷に送り込まれた。優しくておっとりしている聖には、姉である愛理の姿を重ねていたりする。

 

~電王 プラットフォーム(聖)~

 

電王のベースとなる、戦闘力の低いフォーム。しかし、聖の卓越した格闘能力によって爆発的な強さを見せていたが、良太郎の身体がついていかなくなってしまったために窮地に陥ってしまう。




第14話、閲覧頂きありがとうございました!いかがでしたでしょうか?

遂に、主役以外のライダー(の力)が本格登場しました!1章も後半に入りましたので、少しづつ盛り上げて行きますよ~!次回、絶対絶命の聖たちの運命や如何に...!?そして、小傘の願いとは!?

また、投稿頻度を上げるため、次回からいくつかにパート分けして投稿することになると思います。重ね重ね変更してしまって申し訳ありませんが、ご了承下さい!

それでは、チャオ~!
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