東方時哀録   作:シェイン

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どうも、シェインです!

いやぁ、ご無沙汰してしまいまして...ごめんなさい!まだまだ始まったばかりですからね!立ち止まってはいられない!!

今回は、物語の重要な部分が見え隠れ...?それでは第8話、どうぞ!!


第8話 ~永遠の切り札~

「また行方不明事件かぁ...怪物たちの事といい、最近は物騒だね。」

 

慧音と巧が青龍の人里で戦いを繰り広げていた頃、寺子屋から下校中の少女たちの一人が、隣りで歩く大妖精に溜め息混じりに呟いた。不安そうな表情を浮かべる彼女は、妖蟲の妖怪であるリグル・ナイトバグ。だが"妖蟲"というのはかなりアバウトな認識で、実際の所、彼女は妖蟲の中でも蛍に属する種族だ。彼女の近くには4人の少女たちが居り、その中にはルーミアとチルノも含まれている。大妖精は、リグルの言葉に小さく頷く。

 

「そうだね。リグルちゃんも気をつけてね?」

「うん...最近は蛍狩りも減って、安心できるかと思ったんだけどなぁ...」

 

再び溜め息をつくリグル。彼女が口にした「蛍狩り」というのは、金目当ての人間が蛍に属する妖怪を狙って襲撃するというものだ。これは蛍に限ったことではなく、その他の妖怪たちが狙われた事例も多々ある。妖怪特有の羽や毛皮は貴重な素材として裏で取り引きされたり、人間よりも強力な妖怪を奴隷として利用しようとする権力者たちの参加する、闇オークションが開かれることさえあるという噂だ。だが、ここ最近は怪物たちが暴れ出した影響で妖怪狩りも減ってきている。

 

「みすちーも、屋台はしばらくお休みにしたら?」

 

リグルに"みすちー"という愛称で呼ばれる桃色の髪の少女は、ミスティア・ローレライ。彼女は背中に一対の翼を持ち、禍々しい衣装に身を包んでいる。夜雀の妖怪であり、八目鰻を主とした飲み屋台を経営している。他にも、妖怪の友人とバンド活動を行うなど多方面で活躍している。そのため妖怪であるにも関わらず、人里の中でも小さな人気者となっている少女だ。リグルの気遣う言葉を聞いたミスティアは、少しばかり渋い顔をする。

 

「やっぱりその方がいいかなぁ?怪物のせいでお客さんも減ってきてるし。せっかく軌道に乗って来たのになぁ...」

「うんうん!そういうことなら、心配は要らない!幻想郷サイキョーであるこのアタイが、友を守ってあげよう!」

 

腕組みをしながらドヤ顔を披露するチルノに、ミスティアたちは苦笑い。自称サイキョーであるチルノだが、その力量は辺境の妖怪相応だ。それに対して怪物たちは、幻想郷の中でも相当な実力を持つ"博霊の巫女"でさえ痛手を負う厄介な存在。一妖精であるチルノが太刀打ちできる相手ではないことは、火を見るより明らかだ。しかし、どんな相手にも変わらないチルノの前のめりな態度は、怪物たちの脅威を恐れる友を確かに励ましている。良くも悪くもムードメーカーなチルノの言葉で笑いに包まれた少女たち。そんなささやかな笑顔さえ──

 

「いやいや!行方不明事件の犯人ならともかく、怪物は無茶だよ~!」

「チルノは何も考えないで突っ込んじゃうしね~。」

「フッ、分かってないねぇ!言っておくが、アタイは全力の20割も出してないよ!」

「チルノちゃん、それを言うなら20%でしょ?」

 

──ヤツらは残酷に踏みにじる。

 

「キシャァァァァッ!!」

 

身の毛もよだつような謎の奇声を聞きつけたチルノたち5人は警戒態勢に入り、周辺を見回すがそれらしい者の姿はない。気のせいかと皆が思った瞬間、ミスティアは空に浮かぶ影に気づいた。その影の動きを捉えたミスティアは、咄嗟に叫ぶ。

 

「リグル、よけて!!」

「えっ!?」

 

ミスティアの叫びを聞いたリグルは、動揺しながらも素早くその場を離れる。その刹那、リグルの立っていた場所に一匹の化け物が高速で飛び込んできた。黒いイナゴのような姿をしたその化け物は首をくるりと回し、自らの手から逃れたリグルを小さな緑の瞳で睨みつける。その視線には、憎しみなどない純粋な殺意が宿っていた。そんな殺気を向けられたリグルは、わなわなと震えながら声を漏らす。

 

「な...なに!?」

「へへん!みすみすアタイの前に姿を表すなんて、正に飛んで凍える冬の虫!覚悟しろー!氷剣【ブリザード・エッジ】!」

 

化け物を恐れるリグルとは対称的に、恐れも知らず大見得を切るチルノは自らの能力で氷の大剣を作り出す。その大剣を握ったチルノは、素振りをするかのように一振り。すると大剣の軌跡から強力な冷気が放たれ、瞬間的に足下の草が凍りついた。

 

「それを言うなら飛んで火に入る夏の虫...ってチルノちゃん!!?」

「オリャァァッ!」

 

大妖精の訂正も聞かず、チルノは氷の妖精という称号には程遠い熱い怒号と共に駆け出した。化け物はリグル以外には興味もないらしく、チルノの怒号にも動じずリグルを睨みつけている。それをチャンスと見たチルノは、すれ違いざまに大剣を振り抜いた。

 

「・・・あれ?」

 

だが、手応えは帰ってこない。その代わりにチルノが目にしたのは、目の前で屈む化け物の姿。そして次の瞬間、チルノの腹部に化け物の膝が思い切りめり込む。曲げていた脚で地面を蹴り出した化け物が高速で飛び上がり、チルノの腹に膝蹴りを叩き込んだのだ。

 

「チルノちゃん!」

「「「チルノ!」」」

「ぅぁ...」

 

小さくうめき声を上げたチルノは勢い良く吹き飛ばされ、かなり距離がある林の方向に姿を消す。その途中でチルノの手からは大剣が離れ、空中で回転して少し離れた場所に突き刺さった。荒々しく着地した化け物は、不気味なうなり声を上げながら再度リグルに向き直る。

 

「チルノちゃんッ!!」

 

チルノの名を叫んだ大妖精は背中の羽をはためかせ、林に消えたチルノを追いかける。大妖精が自分の攻撃圏内から外れたことなど気にもとめず、化け物はリグルを狙って駆け出す。

 

「ひぃっ...!」

 

仮にも最強を謳うチルノが、あんなにも簡単に倒された。圧倒的な化け物の力を見せ付けられたらリグルは、ふるふると震えながら腰を抜かした。リグルは尻餅をつきながらも、足をばたつかせて後ずさりする。惨めにも思えるような抵抗をするリグルをあざ笑うかのように、奇妙な鳴き声を上げる化け物。そんな化け物の背で、小さな氷塊が弾けた。

 

「キィッ...!!?」

 

前のめりな姿勢になった化け物の背後にいたのは、鋭い眼光で氷の大剣を振り抜いたミスティア。二度目の妨害に憤慨した化け物は、ミスティアを排除するべく振り向きざまに腕を振り回すが、ミスティアは翼で突風を起こしながら素早く後退してそれを回避した。着地したミスティアは、溶け出した水滴で大剣を滑り落とさぬように両手で握り直すと、怒りともどかしさでその身を奮わせる化け物に声を張り上げる。

 

「フンッ...悔しかったら、私を倒してみせなよ!」

「...シャァッ!」

 

ミスティアの挑発に乗ってきた化け物は、たまらずその場から駆け出す。その瞬間、ミスティアは大きな声で叫んだ。

 

「ルーミアッ!お願いッ!!」

「...そういうことね!りょーかいッ!!」

 

ミスティアの意図を読み取ったルーミアは小さく笑い、自身の能力で化け物を闇で包み込む。視界を奪われた化け物が闇の中でもがいている隙に、ルーミアとミスティアはリグルの下に駆けつける。

 

「リグル、逃げるよ!」

「う、うん!」

 

リグルの手を取ったルーミアは化け物から離れるように駆け出し、ミスティアもそれに続く。ルーミアが離れたことで包まれていた闇が消滅した化け物は逃げるリグルたちの背を探し出し、彼女たちを追いかける。

 

「ねぇルーミア!逃げるったって、どこに逃げるの?」

「"迷いの竹林"!あそこなら、あの化け物を振り切れるかもしれない!」

「アイツ...もう追って来てる!急いで!」

 

背後を確認したミスティアの言葉を聞いたルーミアたちは、迷いの竹林へと向けて速度を上げる。命懸けの逃走劇が、始まりを告げた。

 

 

「チルノちゃん!」

「う...あぁ...」

 

化け物に吹き飛ばされたチルノは、腹部に走る激痛に林の中で呻く。大妖精は涙目になりながら駆けつけるも、チルノの身体からは澄んだ氷のような水色の粒子が放出され始めた。自分の身体から発せられる粒子を見たチルノは、悔しそうな面持ちで大妖精の顔を見る。

 

「くっそ...ごめん、大ちゃん...アタイ、まだサイキョーになれないみたいだ...」

「...やだぁ...消えないで...いやっ...!」

 

途切れ途切れに紡がれるチルノの言葉に、大妖精は錯乱した様子で首を横に振りながら、ボロボロと涙を零してチルノの冷たい手を両手で包み込むように握る。チルノは大妖精の手の温もりを感じながら、気丈に笑って見せる。

 

「大丈夫...!アタイは...妖精は、自然がある限り蘇るって...大ちゃんも分かってるでしょ...?アタイより...頭、いいんだし...」

「でも...でもっ...!"ラミア"は...帰って来なかった...」

 

ラミアという名前を聞いたチルノの顔が一瞬曇ったが、すぐに笑顔を取り戻して大妖精に小指を差し出す。

 

「じゃ...約束する...!ぜっっったい...アタイは帰ってくる...!だから、待ってて...」

「ひっく...うん...」

 

大妖精は涙を流しながらチルノの指に小指を絡ませ、約束を結ぶ。指切りを果たしたチルノは満足そうに笑い──

 

 

 

 

 

──無数の粒子となって消えた。

 

「...あっ...あぁ...」

 

(「苦しいよ...大ちゃん...やだ...消えたくないよ!ねぇ...助けて、お願い!」)

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

遺された大妖精の空気を裂くような悲鳴が、澄み渡った青空に消えていく。虚ろな目で力無く座り込んだ大妖精を、"チルノと同じ姿をした存在"が眺めていたことは、まだ誰にも知り得ない事実である...

 

 

 

「うぅ...ん?」

 

俺は、静かな竹林の中で目を覚ました。笹の葉のこすれる心地よい音が、俺の耳を優しく包む。ゆっくりと立ち上がり、俺は寝ぼけ眼で辺りを見回した。倒れていた所のすぐそばには、俺の愛車であるバイク、"ブルースペイダー"が停められており、長い間連れ添ったマシンが手元にあることに安心感を覚える。周辺には無数の竹が高くまで伸びており、濃い霧が立ち込めている。その代わり映えのない景色は、どこも同じように見えてしまう。こんな場所に迷い込んだら、簡単には出られないだろう...ん?

 

「俺、出れるのか...?」

 

ふと不安がよぎったが、俺には時間がたっぷりある。それこそ、永遠とも言えるほどに。そのことを思い出し、冷静な心持ちになった俺はいくつかの違和感に気づいた。その違和感を確かめるため、精神を極限まで静めて、ゆっくりと両目を閉じた。

 

「アイツの気配も無いし、奴の声も聞こえない...一体どうなっているんだ...?」

 

目を開けた俺は、小さな声で呟いた。

 

あの瞬間からどんな時でも感じていた"アイツ"の気配は、消えている。

 

「(...お前は、人間たちの中で生き続けろ。)」

 

あの瞬間から耳に響き続けていた戦いを求める声は、聞こえなくなっている。

 

「(俺は運命と戦う...そして、勝ってみせる。)」

 

さっきとは違う不安が、俺の頭の中をよぎる。もしも、"最悪の事態"だったとしたら。なんとも言えない焦燥感に駆られる俺の耳に、パチンと指を鳴らす音が一つ聞こえた。乾いた音が静寂を保っていた竹林に響き渡る。霧の中で木霊する音は、少し不気味に聞こえてくる。やがて、音が聞こえなくなった瞬間──

 

 

 

 

 

 

 

 

──誰かが俺の肩を、二度叩いた。

 

 

 

「うわっ!?」

 

俺は驚嘆の声を上げ、肩に乗せられたら手を払いのけながら振り返った。そこにいた人物を一言で表せば、白い少年。金色のラインが入った白いズボンと白いシャツを着用し、厚地のケープを羽織っている。髪は美しい金色で、上品な白をベースに金の差し色が扱われたファッションをしている。

 

「あっ、驚かせてごめんね!」

 

白い少年は両手をひらひらと振りながら笑顔を見せる。ホラーチックな登場とは裏腹に、無邪気で眩しい笑顔を見せる少年に拍子抜けした俺は、できるだけ優しい声で問いかける。

 

「いや、気にしないでくれ。君は...迷子か?」

「現に迷ってる君が言う?」

「...うるさい。」

 

生意気な返しをしてきた白い少年に、俺は目を細めながら返事をする。そんな俺を見た少年はクスッと笑い、ブルースペイダーのシートに座った。

 

「僕はしがない旅人だよ。今日は君に伝えたいことがあって会いに来たんだ。」

「伝えたいこと...?」

 

俺の怪訝そうな表情も気にせず、白い少年は小さく頷く。彼が指を一つ鳴らすと、その指の間に一枚の写真が現れた。俺には裏側しか見えていなかった写真をくるりと反転させて、白い少年は写真を俺に見せる。そこに写っていたのは、艶やかな黒髪の少女。まるで、童話のかぐや姫のような少女だった。

 

「この子の名前は、蓬莱山輝夜。君の運命の相手さ。」

「なんだ?結婚占いならお断りだ!」

「ふふっ、そうじゃないよ。融合(シンクロ)のパートナーってこと。」

 

白い少年は肩をすくめて笑うと、懐から一枚の紙を取り出して俺に差し出す。その紙を受け取った俺は、書かれていた文章に目を通す。その内容は融合(シンクロ)という現象についての詳細で、俺が変身出来なくなっている事や、一つになることをイメージしながら相手に触れると融合することが可能であるという事や、融合を果たした相手にライダーの力を授けることが出来るという事が書かれている。普通の人間であれば戯れ言と一蹴しそうな内容だが、非現実的な戦いに身をおいていた俺にとっては、そこまで驚くことでは無い。俺は紙から目を上げ、白の少年に確認する。

 

「で、その相手っていうのが、写真の女の子だって言いたいんだな。」

「イエス!そーゆーこと!」

「こんな場所まで訪ねてきて生憎だが、俺はもう...」

「ウワァァァァァァ!!」

 

俺の言葉を遮るかのように、竹林に叫び声が響いた。その声は恐怖を滲ませており、確かに助けを求めている。

 

「あまり話している暇はなさそうだね...これを。」

 

その声を聞いた白い少年は大きく声色を変え、ブルースペイダーから降りつつ懐から取り出したある物を俺に差し出す。その手にあったのは、銀を基調とした正方体の機械"ブレイバックル"に、トランプのようなデザインの"ラウズカード"。どちらも、俺の仮面ライダーとしての戦いと共にあった物だ。

 

「お前、なんで...!?」

「それを知ったとしても、君が戦う理由は変わらない。そうでしょ?"剣崎一真"さん。」

「...あぁ!!」

 

白い少年の言葉で目の前の疑問を振り切った俺は、彼の両手からブレイバックルとラウズカードを引ったくり、ブルースペイダーに飛び乗る。素早くエンジンをかけ、スタンドを上げて発進する直前、俺は白い少年に声をかけた。

 

「誰だか知らないが、礼を言うよ。ありがとう!」

 

そう告げた俺は、白い少年の返事を待たずにブルースペイダーを急発進させる。霧のかかる竹林はバイクで走るには少しコンディションが悪いが、そんなことは関係ない。熱く燃える想いをたぎらせ、俺はブルースペイダーを全力で走らせた...

 

 

~数分前~

 

「キシャァァッ!」

「あぁもう!しつこいなぁ!」

 

迷いの竹林の中を走るルーミアは、背後から聞こえてくる奇声に愚痴をこぼした。霧の中を迷いなく進むルーミアの後ろには、死に物狂いな表情のリグルと、化け物の様子を伺いながら足を動かすミスティアが続く。執拗にリグルを狙う化け物は、背中の羽を鳴らし、飛びながら彼女たちを追いかけている。この逃走劇が始まって十分が経過した。妖怪と言えども、持久力に限界はある。化け物から全力で逃げ続けているルーミアたちの体力は、徐々に底をつき始めていた。

 

「ハァ...ハァ...なんでここまでして...!わたしを...!?」

「さぁね!でも...このままじゃらちがあかない!ハアッ!」

 

走りながら振り返ったミスティアは、化け物の羽めがけて氷の短剣をナイフ投げの要領で放つ。しかし化け物は、抵抗は無駄だといわんばかりに拳で短剣を叩く。すでにほとんどが溶けていた短剣は、パキッという音と共にあっさり砕け散ってしまった。

 

「チッ...!」

 

短剣を砕かれたミスティアは、小さく舌打ちをして前に向き直る。その瞬間、ルーミアが急に立ち止まった。その脇を駆け抜けてしまったミスティアとリグルは立ち止まり、ルーミアの背を見つめる。

 

「わたしがアイツを引きつける!その隙に、二人は逃げて!」

 

ルーミアは友の視線に振り返ることなく二人に告げると、猛然と化け物に向けて飛びかかった。霧の中で化け物につかみかかり、化け物の胸部に拳を打ち込む。だが化け物に大したダメージはなく、少し怯む程度。ルーミアに勝ち目がないことは、誰が見ても分かることだった。

 

「そんな...!一緒に逃げよう!ルーミア!」

 

ルーミアの捨て身な行動に、リグルは悲痛な叫びを上げる。だが、その叫びをルーミアが聞くことはなく、何度も攻撃を繰り返す。そんな中、余裕を示すかのようにルーミアの繰り出す攻撃を受けていた化け物が腕を振るい、弾かれたルーミアは地面に叩きつけられた。それでも立ち上がり、化け物に対して毅然と相対するルーミアは、ミスティアに小さく呟く。

 

「...みすちー、お願い。」

「...分かった。」

 

ルーミアの思惑を察したミスティアは静かに頷き、その場で動けなくなってしまったリグルの手を引いて逃走を再開する。ミスティアたちを後目で見届けたルーミアは派手な装飾の付いた御札、言霊札(ことだまふだ)を取り出すと、それに向けて小さく囁く。

 

「雄介...!聞こえる...?」

「うん、聞こえるよ。どうしたの?」

 

すると、返事が返ってくるかのように言霊札から雄介の声が流れ、声のタイミングに合わせて言霊札の文字が赤く発光する。

 

「怪物だよ!でも、グロンギじゃないみたい...とにかく、こっちに来て!ぶら下がってる装飾が示す方に、わたしがいるはずだから!」

「分かった!」

 

言霊札の発光は雄介の声を最後に収まり、通話を終えたルーミアは言霊札をしまう。その時、化け物はミスティアとリグルの背中に向かって猛進した。

 

「(攻撃が通じなくても、わたしはアークルのおかげで打たれ強くなってる。雄介が来るまで、わたし一人で耐え抜いてみせる!)」

 

そう心の内で覚悟を決めると、空中からミスティアたちを襲撃せんとしている化け物の足に飛びかかる。バランスを崩した化け物は鬱陶しそうにルーミアを睨みつけるが、それに対してルーミアはニヤリと笑う。

 

「キィ...!」

 

化け物がルーミアを振り払おうと腕を振るうと、足にしがみついていたルーミアは近くの竹に飛び移る。そのまま竹にぶら下がり、地面に足が着くか着かないかという辺りまで竹をしならせると、ルーミアは竹から手を離す。しなった竹が勢い良く放たれ、バランスを取り直していた化け物に直撃。反動がたっぷり付いた竹に空中で叩かれ、化け物は地面に叩きつけられる。土煙が上がる中、着地したルーミアはガッツポーズを決める。

 

「よしっ!上手くいったのだ~!」

「...キシャァァァッ!!」

 

ルーミアの歓喜も束の間、化け物は再び立ち上がり身体を奮わせる。堪忍袋の緒が切れた、ということだろうか。今まで以上に狂った奇声を上げ、殺意に満ち溢れた瞳の焦点はルーミアに合っている。しかし、化け物はリグルをターゲットから除外した訳ではなかった。次の瞬間、それをルーミアは思い知ることになる。

 

「ギィィィィィィッ!」

「えっ!?」

 

雄叫びを上げた化け物の身体から黒い霧のようなものが放出され、無数のイナゴへと変貌する。予想の範疇を超える光景に硬直してしまっていたルーミアの左右を、二つのイナゴの集団が通り抜けて行く。それに気を取られ、ルーミアは背後に振り向く。みすみすと、敵に背をさらしてしまったのだ。

 

「うっ...!」

 

ルーミアは化け物に蹴り飛ばされ、鈍い痛みと共にミシミシという嫌な音が背中から響く。吹き飛んだルーミアはイナゴの集団を追い越し、逃げていたリグルたちの近くの竹に引っかかって落下した。

 

「う...あぁ...!」

「ルーミア!?」

「大丈夫!?しっかりして!」

 

ルーミアが飛んできたことに気づいたリグルは、いち早くルーミアのそばに駆けつける。しかし、苦しそうに呻き声を上げるルーミアを介抱するリグルとミスティアに、イナゴの集団がそれぞれ襲いかかった。

 

「うわぁぁぁ!な、なにこれっ!?」

「くっ...リグル落ち着いて!これって、さっきの化け物の手下...?」

 

パニック状態に陥ってしまったリグルは、じたばたとイナゴの中でもがく。イナゴの集団を払いのけながらも、リグルを落ち着かせようとするミスティアだったが彼女の背後に化け物が降り立つ。

 

「ッ!」

「キシャァッ!!」

「きゃっ...!」

 

化け物の着地した音を聞いて振り返ったミスティアだったが、化け物に頬を殴りつけられ地面に倒れ込んでしまう。地に伏した二人の姿を見たリグルは、声さえ上げられず腰を抜かす。リグルを守っていたルーミアとミスティアを退けた化け物は、イナゴの集団を自らの肉体に帰化させ、リグルの反応を楽しむかのように一歩一歩、ゆっくりと迫っていく。

 

「ぁ...ぁ...ウワァァァァァァ!!」

 

絞り出したようなリグルの悲鳴を聞き、化け物はケタケタと奇妙な笑い声を上げながら彼女の首に手を伸ばす。リグルの首を片手で締め上げた化け物は、そのままリグルを自分の頭上に掲げる。

 

「かっ......うぁ...あぁっ...!」

 

リグルのもがく姿をしばらく眺めた化け物は、リグルの首をより一層強く締め上げていく。もはや声を上げることさえままならなくなったリグルの瞳に、傷ついてなお自分を救おうと手を伸ばすルーミアの姿が映る。近くに横たわるミスティアは気を失い、ルーミアも満身創痍。自らのために化け物に抗った二人が傷つき、自分は何も出来ずに怯えるだけ。自分の無力を目の当たりにしたリグルの頬に、恐怖と悲しみで涙が伝う。

 

「(ルーミア...みすちー...。守ろうとしてくれたのに...ごめんね...)」

 

その瞬間、竹林の間を縫って一つの光弾が飛来し、リグルを締め上げていた化け物の腕に炸裂。それと同時に光弾は眩い閃光を放ち、それに怯んだ化け物はリグルの首を離す。リグルが地面に倒れ込む中、竹林に上品な声が響き渡った。

 

「ちょっと暇だから散歩してたんだけど...なんだか面白いことになってるじゃない?」

 

竹林の霧から現れた少女は、楽しそうな笑みを扇子で隠しながらリグルたちの下に歩いてくる。少女はピンクを基調とした和風のドレスと赤いスカートを纏い、艶やかな黒髪を腰下辺りまで伸ばしている。化け物は彼女を認識するや否や、素早く跳躍して飛びかかるが、踊るように身を翻した少女にあっさりと回避される。閉じた扇子で化け物の背を叩きつけ、リグルのそばまでたどり着いた少女は静かに手を差し伸べる。

 

「立てる?」

「けほっ...けほっ...は、はい。あなたは確か...」

「"蓬莱山輝夜"。月のお姫様ってとこかしら。」

 

咳き込みながらもその手を握って立ち上がったリグルに、輝夜は柔和な笑みを浮かべながら自己紹介を済ませる。一方、輝夜にいなされた化け物は怒り狂い、辺りの竹を爪で切りつけながら立ち上がると、もはや聞き慣れた奇声を上げる。

 

「キイィィッッッッ!!」

「あらあら...ずいぶんお怒りね。あなた、友だちを連れて早く逃げなさい。」

「でっ、でも輝夜さんは...?」

 

輝夜はリグルを庇うように立つと、ルーミアとミスティアを連れて逃げるように手で示すが、化け物の蹂躙を見てきたリグルは輝夜の身を案じる。だが輝夜の表情からは余裕が滲み出ており、不敵な笑みを浮かべている。

 

「私なら大丈夫...命を粗末にしちゃだめよ。さぁ、逃げなさい。」

「キシャァッ!」

「っ!」

 

再びリグルに避難を促す輝夜を狙うべく、化け物は脚を人間に近いものからバッタやイナゴの形状に変化させる。一つ増えた関節を思い切り曲げ、通常よりも高めた跳躍力を活かして化け物は輝夜に飛びかかる。輝夜がリグルの盾になるようにしながら受け身の構えを取った瞬間──

 

「はぁぁ...ウェイッ!」

 

──竹林から飛び出してきたブルースペイダーが、化け物の脇腹に激突した。充分なスピードを持っていたブルースペイダーに弾き飛ばされた化け物は、体勢を崩しながら離れた場所に転がる。着地した一真は急ブレーキをかけて停車し、颯爽とブルースペイダーから降りると輝夜たちの下に向かう。

 

「怪我はないか?ここは危険だ、早く...ってあんたは!」

「...?」

 

一真は輝夜を見るやいなや写真の少女であることに気づき、少年が言っていた運命の相手というのも、あながち間違いではなかったのだなと納得する。一方の輝夜はいきなり声を上げた一真を静かに眺め、記憶の中を探る中で、一真と同じ顔を探し当てる。

 

「...どこかで見た顔だと思ったら、あなた"仮面ライダー"とやらの内の一人ね。名前は...剣崎一真だったかしら?」

「あぁ...あんたは、蓬莱山輝夜だよな?」

 

リグルは変動する状況について行けずにおどおどし、ルーミアは仮面ライダーというワードに反応し、はっと二人のことを見上げる。しばらく向き合っていた輝夜と一真だったが、化け物が転がっていった方からガサガサという音が聞こえ、同時にそこへ顔を向ける。

 

「...剣崎、その子たちを連れて逃げて。あの化け物は私が相手をするわ。」

 

しばらく音の方を注視していた輝夜は、一真の前に進み出ながら静かに呟いた。輝夜の無謀な言葉を聞いた一真は、彼女に詰め寄りながら声を上げた。

 

「なっ...!"アンデット"を相手に戦うなんて、本気で言ってるのか!?」

「ふ~ん...あれ、アンデットって言うのね。まぁ何であれ、"不老不死"の蓬莱人に心配は無用よ。さっさと行きなさい。」

 

化け物のアンデットという俗称に反応しつつ、輝夜は一真に催促するかのように扇子で払う仕草をする。だがそれを送られた張本人である一真は、まるで輝夜の仕草に気づかず呆けていた。

 

「...不老不死...?」

 

目を見開きながら輝夜の言葉を繰り返した一真は、どこか嬉しそうに小さく微笑んだ。その瞬間、竹林からイナゴの特性を持つアンデット──ローカストアンデットが立ち上がり、緑の双眼で一真と輝夜を睨みつける。その眼光に怯むことなく輝夜の隣に並んだ一真は、高らかに宣言した。

 

「断る!例えあんたが不老不死だとしても、誰かが傷つくのは見たくない!あんたが本気で戦うのなら、俺があんたの切り札になる!!」

 

一真の唐突な叫びに輝夜はしばらく目を丸くしていたが、やがてクスッと笑いながら自分より少し背の高い一真を見上げる。その目には、月のような優しい輝きが宿っていた。

 

「まったく...しょうがないわね。私の永遠について来れるかしら?」

「あぁ!任せろ!!」

 

輝夜に力強く頷き返した一真は、大きく深呼吸をする。たっぷりと息を吐き出すと、一真の身体は蒼い光球に変化し、輝夜の胸元に吸い込まれていった。シンクロを果たした輝夜は、全身から放出される淡い輝きをヴェールのように纏いながら、ブレイバックルを手にした。

 

「おぉっ!こ、これがシンクロか!本当に出来た...!」

「さぁ、始めましょう...」

 

蒼い光を放ちながら騒ぐ一真をよそに不敵な笑みを浮かべた輝夜は、ヘラクレスオオカブトの描かれたスペードのカテゴリーAに属する"チェンジビートル"のラウズカードを取り出し、ブレイバックル正面のラウズリーダーに差し込んで腰に据える。すると、ラウズカードを読み取ったブレイバックルの右サイドから、連なったトランプが射出される。そのトランプの帯は輝夜の腰を一周してバックルの左サイドに接続され、一瞬の内に赤いベルトへと変化した。ブレイバックルから待機音が鳴り響く中、輝夜は腰の左右に両手を構える。そして手の甲を外側へと向けて人差し指を伸ばした右手を、ゆっくりと斜めに伸ばしていく。

 

「変身。」「変身ッ!」

 

輝夜は伸ばした右手を返すと勢い良くブレイバックルのハンドルを引き、腰に添えていた左手を目の前で円を描くように動かす。ハンドルと連動してラウズリーダーが反転し、赤のベースの内に金色のスペードマークがあしらわれた面が露わになる。

 

『Trun up』

 

電子音声と共にラウズリーダーに青白い光が満ちていき、オリハルコンエレメントと呼ばれる青い光のゲートとなって輝夜の眼前に放出された。ゆっくりと迫ってくるオリハルコンエレメントに対し、輝夜も一歩ずつ歩み寄る。やがてオリハルコンエレメントを抜けた輝夜の身体は、大きく装いを変えていた。黒髪と洋服は紫紺に染まり、胸部と肩、そしてすねに対応するスカートの部位に銀のアーマーが装着されていた。瞳は赤く染まり、頭にはヘラクレスオオカブトの角を象った銀の兜飾りが付いている。輝夜は、運命を覆した切り札の戦士「仮面ライダーブレイド」を模した姿に変身したのだ。それと同時に、再び足の形状を変化させたローカストアンデットは輝夜に向けて飛び出す。

 

「キィッッ!」

「はぁっ!」

 

飛びかかって来たローカストアンデットに、輝夜はベルトの左側のホルスターから引き抜いた特殊な形状の剣、"醒剣ブレイラウザー"で斬撃を見舞う。胸部にブレイラウザーを受けたローカストアンデットは体勢を大きく崩し、飛び出した辺りに回転しながら墜落した。輝夜は右手に握ったブレイラウザーの切っ先をローカストアンデットに向け、気高く告げる。

 

「私と戦えることを光栄に思いなさい!」

「まずはお前を倒す!色々考えるのはそれからだ!!」

 

一真も戦う意志を固め、より一層輝きを強めた。それを挑発と捉え、憤慨したローカストアンデットは再び跳躍し、輝夜に向けて跳び蹴りを放つ。輝夜はバックステップで跳び蹴りを回避しつつ、背後のリグルを抱えて後方に下がる。

 

「剣崎さんが消えて...か、輝夜さんが...変身した...」

 

輝夜はそこでリグルを下ろすが彼女は完全にフリーズしており、白目を向いて口をパクパクと動かしながら直立していた。そんなリグルの後頭部に、先ほどまでダウンしていたルーミアの鋭いチョップが炸裂し、女子としては黒歴史な顔から正気に戻る。

 

「うぅ...痛い...!」

「もう!しっかりして、リグル!」

 

リグルを叱咤したルーミアは、ライダーに選ばれた者として、変身を果たした輝夜と向き合った。

 

「助かったのだ!わたしもクウガの力を持ってるんだけど、雄介と合流が間に合わなかったの。」

「そう...じゃあ貴方がルーミアなのね。」

「クウガ?そんなライダーシステム、聞いたことないぞ?」

 

輝夜はクウガという名前を聞き、ルーミアという妖怪が雄介の協力でクウガの力を得た、と紫から伝えられていた事を思い出し、一真はクウガという名前に対して首を傾げる。そんな時、背後から飛びかかったきたローカストアンデットを、輝夜は振り向きざまにブレイラウザーで切り払う。

 

「その化け物...え~っと、そう!アンデットは任せるね!わたしはリグルとみすちーを竹林の外に連れてく!」

「分かったわ。竹林の中で迷子にならないようにね?」

「うん!」

 

輝夜の冗談混じりの言葉に元気よく返事をしたルーミアは、リグルと共にミスティアに肩を貸して霧の中へと進んで行った。それを見届けた輝夜は優しく微笑んだが、ローカストアンデットに向き直った瞬間、その笑顔は戦慄を禁じ得ない戦姫の微笑へと変わった。

 

「ふふっ...もう手加減はなしよ。切り刻んであげる...!」

 

輝夜は静かに口角を上げるとローカストアンデットに急接近し、舞うようにブレイラウザーで斬撃を加えていく。右から左、左から右へと二度斬りつけ、ローカストアンデットの背後に回るべく軽く駆け出す。すれ違いざまに腹部を右薙ぎで斬りつけ、流れるようにして背中に袈裟切りを見舞う。翻弄されながらも標的を捉えようと振り返ったローカストアンデットの胸部に向けて、輝夜は一連の締めくくりとして突きを放つ。それを受けて火花を放ちながら吹き飛んだローカストアンデットの傷から、緑色の液体が飛び散った。

 

「ギッ...キィッ!」

「これは...アンデットの血液かしら?」

 

輝夜が頬にかかった緑色の血液を拭っている隙を突き、ローカストアンデットは背中の羽を開いて低空飛行を開始。そのまま輝夜のアーマーをひっつかんで上空へと引き上げていき、開いた片手で輝夜の顔を殴りつけようと腕を引く。

 

「ふふっ...無駄よ。」

「ギィシャァッ!!?」

 

輝夜は静かに囁くと、目にも留まらぬ早業でローカストアンデットの両羽を切り落とす。竹林に墜落したローカストアンデットは地面の上でもがき、輝夜は着地と共に前転をしながら落下の衝撃を緩和する。そしてブレイラウザーを素早く逆手に持ち替え、グリップの上部に備えられた十二枚のラウズカードトレイを扇状に展開した。ずらっと並んだ十二枚のラウズカードから二枚を選んだ輝夜は、それらをトレイから引き抜く。一枚は尾に鋭利な刃を持つトカゲの描かれた、スペードのカテゴリー2に属するラウズカード。もう一枚は巨大な角から雷を放出しているシカの描かれた、スペードのカテゴリー6に属するラウズカード。そして、シカの描かれた方のラウズカードをブレイラウザーの刀身に備えられたスリット──スラッシュ・リーダーに合わせ、切っ先の方に向けてスライドする。

 

『THUNDER』

 

ラウズカードがスラッシュ・リーダーを抜けた瞬間、ブレイラウザーがスキャンされたラウズカードを認識して電子音声を流す。輝夜は読み込ませたラウズカードを放り投げ、トカゲが描かれたもう一枚のラウズカードもブレイラウザーにスキャンする。

 

『SLASH』

 

再び輝夜がスキャンしたラウズカードを放り投げると、浮遊していた二枚のラウズカードが十倍程度の大きさに拡大して背後に静止する。すると巨大化したラウズカードのトカゲとシカ、「リザードアンデット」と「ディアーアンデット」の絵が青い光となってブレイラウザーに吸収された。

 

『LIGHTNING SLASH』

 

ブレイラウザーから追加音声が流れ、刀身が青白い輝きと雷電を纏ったブレイラウザーを順手に持ち直した輝夜は静かに構える。対するローカストアンデットも満身創痍ながらに立ち上がり、腰を落として荒々しく構える。睨み合う双方の間に静寂が流れ、次の瞬間、輝夜とローカストアンデットは同時に駆け出した。二人がすれ違う瞬間、輝夜の首をめがけてローカストアンデットが横薙ぎに腕を振り回す。輝夜はその腕ををブレイラウザーで弾き、流れるようにローカストアンデットの腹部に雷電を纏った刀身で深く切りつけた。

 

「はあっ!」「ウェェェイッ!!」

「キィィィッ!!」

 

輝夜は小さな叫びと共にブレイラウザーを振り抜き、"ライトニングスラッシュ"を受けたローカストアンデットは腹部から放電しながら踊るようにフラフラと回る。そんなダンスが長く続くはずもなく、ローカストアンデットは蓄積されたダメージに耐えかね、背中から地面に倒れ込む。その数刻後、ローカストアンデットの腰に巻かれていたベルトのバックルが中央から二つに裂け、隠れていた5というナンバーが露わになった。

 

「あら...そこまで大したことなかったわね。この程度なら妹紅の方が骨があるわ。」

「油断しない方がいいぞ。アンデットもあんたと同じく死なない。今は疲弊しているが、少ししたらすぐに復活する。バックルが開いている内に、何もかかれてないラウズカードを奴に投げろ!」

 

輝夜は一真の言葉に従ってブレイラウザーのトレイを展開し、何も描かれていないラウズカード──コモンブランクを抜き取ると、ローカストアンデットに向けて素早く投げる。空気を切って飛んで行ったコモンブランクがローカストアンデットの肉体に突き刺さると、その身体が緑の光になってコモンブランクに吸収されていく。やがてローカストアンデットの身体を完全に吸収したコモンブランクにはローカストアンデットの絵柄と、左上と右下の角にスペードマークと5という数字、左上のマークの下にKICKの文字が刻まれた。ローカストアンデットを封印したことにより、コモンブランクはスペードのカテゴリー5に属する"キックローカスト"のラウズカードへと変化して、輝夜の手に帰っていく。戻ってきたラウズカードをキャッチした輝夜は、再度ブレイバックルのハンドルを引いた。するとラウズリーダーが反転し、ラウズカードを挿入した面に戻ると同時にオリハルコンエレメントが放出される。輝夜がそれをくぐり抜けると変身が解除され、彼女は元の姿に戻り、一真も輝夜の身体から抜け出した。

 

「ふぅ...戻れた。怪我はないか?」

「不老不死の相手に対してそんな心配するなんて...変わってるわね。」

「あぁ、よく言われるよ。」

 

戦いを共に切り抜けた一真と輝夜は互いに小さく笑い合う。まだ出会って間もないが、それでも共に戦いを越えるという過程は、人の絆を強くさせるのには打ってつけのようだ。

 

「さて、とりあえず永遠亭に来なさい。そこで色々と話を聞かせて頂戴。」

「永遠亭?」

「私の家みたいなものよ。いくつか同居人もいるから、後で紹介してあげるわ。さぁ、行きましょう。」

「あぁ...分かった。」

 

軽く返事をした一真は、ブルースペイダーを押しながら先導する輝夜の後ろについて行く。そうして帰路についた輝夜たちは、永遠亭へと向かった。その数時間後、迷いの竹林に「迷子なのだぁぁぁ!!」という声が響いたのは、また別の話である。

 

 

 

そんな輝夜たちの戦いを、白の少年は霧の中から見届けていた。彼の手には黒い懐中時計のようなデバイスが握られている。やがてその前面の上に時計の針が現れ、時計回りに回転する。一周した瞬間、デバイスが強い輝きを放ち、ベースは紫紺に、前面のパーツと天面のボタンは銀に染まった。

 

『ブレイド』

 

変貌したデバイスから発せられた音声を聞いた白の少年は満足げに微笑むと、目の前に手をかざす。すると白い少年の正面に青い時計盤のようなものが現れ、その枠を縁取りとしたゲートが形成される。白い少年はスキップ交じりにゲートに入り、漆黒の中に水色の幾何学的な模様が浮かぶ謎の空間に進んでいく。それと同時に謎の空間に続くゲートは消滅し、辺りは何の変哲もない竹林に戻ったのだった...

 

 

~次回予告~

 

「力を失ったアイコンは近しい人物に惹かれるのかもしれませんね!」

 

「ひぃっ...!オ、オバケッ!!?」

 

「お前のアイコンを寄越せ。それが"あの方"の望みなのでな...!」

 

「人の想いに限界なんて無い!諦めない限り、どこまでだっていけるんだ!!」

 

『決闘!ズバッと!超剣豪!!』

 

第9話 ~研鑽!双剣の想い~

 

 

キャラクター・アイテム紹介コーナー!

 

~蓬莱山輝夜~

 

迷いの竹林にある永遠亭に住む、上品な立ち振る舞いと黒髪が特徴的な月のお姫様。永遠と須臾を操る程度の能力の持ち主。以前は月にある都に住んでいたが、蓬莱の薬を呑んで不老不死になったことにより地上への流刑を受けた過去を持つ。普段は姫の肩書きに相応しい気品だが、戦闘の際に楽しそうな笑みを浮かべるなど、少し危険な一面もある。

 

~剣崎一真~

 

人を疑うことができない性格のお人好しな青年。仮面ライダーブレイドとして、アンデットと戦っていた。相棒であるブルースペイダーと共に幻想郷に訪れ、輝夜との出会いの後に彼女の切り札、そしてパートナーとなる決意を決めてシンクロを果たした。他のライダーたちと同様、輝夜からの提案で永遠亭に居候することになる。

 

~ブレイド(輝夜)~

 

一真とシンクロを果たした輝夜が、ブレイバックルと"チェンジビートル"のラウズカードを使用して変身した姿。ブレイラウザーを使用した近接戦闘を主とし、アンデットを封印したラウズカードを使うことで様々な特殊能力を発揮する。ラウズカードを二枚以上組み合わせて発動する必殺技はコンボと呼ばれ、雷電を纏う斬撃を放つ「ライトニングスラッシュ」などがある。

 

~言霊札~

 

藍が作製した妖魔道具であり、妖力や神力、霊力などを蓄積させておくことで、一枚につき固定された一人の相手と交信が可能になる。また、下部からぶら下がっている装飾は所持者の念やオーラのようなものを感じ取り、交信可能な言霊札のある場所を指し示す能力がある。今回出てきたのは、藍がルーミアと雄介に臨時の連絡のためにと譲渡したもの。




第8話、楽しんで頂けましたでしょうか?

1話での描写が少なかったので、念のため補足しておきますと、1話のラストシーンに登場した少年と今回の白い少年は同一人物です。彼の持っていたデバイスとは...皆さんもうお分かりですね?

その答えは1章のラストまで引っ張ることに致しまして、次回はまさかのゴースト編2回目です!実は1章のゴースト編は次回を含めてあと三回ある予定なんですが、意外な役割を果たすかも...?なので、ゴーストだけ多いわ!っていうツッコミは、どうか胸の内にしまってお許しください!

それでは、チャオ!
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