異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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コロナから復活しましたが、後遺症が辛い
コロナを只の風邪とか言った奴、出てこい
殴ってやりたい


77皿目 マカロニグラタン

とある小さな国の小さな町。そこの小さな宿兼料理店は、その日も大忙しだった。

 

「おーい! こっち、騎士のシチュー追加だ!」

 

「こっちも、二皿頼む! ついでに、パンとビールもだ!」

 

「はーい! 少々お待ちください!」

 

その宿兼料理店の看板娘、マイラは目が回るような忙しさの中でも、確実に業務をこなしていた。

注文を聞き、お金を貰い、料理を出して、お客が帰った後には卓を片付ける。

一応店主の父親の考えで新しく人を雇ってはいるが、それでも手が回っていなかった。

騎士のシチューを出すまでは、行商人や旅人位しか来なくて暇だったが、今では陽が登り始めた時間に開店し、陽が沈みきって月が出てくる時間まで、ずっとお客がひっきりなしにやってくる町一番の人気店になった。

聞いた話では、首都に到着するのが遅れてまで寄ってくれる人も居るのだとか。

騎士のシチューを出すきっかけになったのは、今から一年前になる。

当時父親は、何とか店の経営を盛り上げたいと考えていたが、中々良い案が出なかった。その時に出会ったのが、偶々その町に来ていた旅小人の夫婦が作った騎士のシチューだった。

その夫婦は旅先で料理を出して路銀を稼いでいたらしく、その時小腹が空いていた父親はさほど期待しないで騎士のシチューを食べてその美味しさに驚き、これだ、と思って、その夫婦にレシピを教えてほしいと頼み込んだのだ。

夫婦は父親の熱意に負けて、銀貨100枚でレシピを教えてくれた。その金額を聞いたマイラは、目眩を覚えた。何せその金額は、当時の1ヶ月の売り上げの半分の金額だったからだ。

料理一つで、経営が良くなる訳がないとマイラは詰め寄ったが、父親は大丈夫、絶対に売れると自信満々だった。

最初は然程売れなかったが、一人から一気に話が広がり、今や当時の四倍近い売り上げを叩き出し、その殆どが騎士のシチューになるのだから、父親の商人としての勘もバカに出来ない。

 

「うし……今はこんなもんか……マイラ、夕方まで休んでいいぞ」

 

「はーい」

 

騎士のシチューを煮込んでいた二つの大鍋と材料が無くなったのを確認した父親は、マイラに休憩に入るように促した。

他にも豚の腸詰めの煮込みやダンシャクを煮たのや、簡単なスープや酒も出しているが、やはり今の売りは騎士のシチューだ。それが無くなったと知ると、一気に客足は鈍る。

母親が病気で早くに亡くなった為に一人娘のマイラは、厳しくも経営を教えられながら、大事に育てられた。

何れは婿を取り、店を継ぐのだから、倒れられたら店が無くなってしまう。

 

「忙し過ぎるのも、考えものだよねぇ……」

 

娯楽の無い田舎町では、休憩に入っても部屋でボーっとすることしか出来ない。

疲れた体でベッドに横たわると、マイラは以前の暇だった時を思い出した。

以前までは本当に暇な時は暇で、なんなら朝から夕方まで寝ている事もあった。

しかし、父親と二人で帳簿を見てはため息を吐いていた時に戻ってしまうのも、ごめん被るのだが。

 

(少し寝ようかな)

 

と思った時

 

「おーい、マイラ。居るか?」

 

と窓から、一人の青年が声を掛けてきた。体を起こして見ると、窓枠に両腕を乗せる格好で、隣のパン屋の次男坊で幼馴染みのヨハンが居た。パン屋の次男坊だが、自警団に所属しており、腰には少々古い剣を差している。

 

「なによ、ヨハン。どうかした?」

 

「実はさ、この前すっごいメシ屋見つけたんだけどさ……一緒に行かないか?」

 

マイラが問い掛けると、ヨハンは即座に要件を告げた。しかしマイラは、ヨハンが告げたすっごいメシ屋、というは聞いた事が無かった。小さな田舎町なので、ちょっとした噂も即座に町全体に伝わる。

 

「すっごいメシ屋?」

 

「おう! まあちょっと変わった店だけど、滅茶苦茶メシが旨いんだ! どうだ?」

 

「滅茶苦茶旨いメシ屋……聞いた事ないけど、嘘言ってる様子も無いし……行くわ」

 

マイラはそう言って、自身の財布を取ってから父親に少し出掛ける事を告げてから外に出た。

そして昔みたいに、二人は手を繋いで歩き始めた。

それから、しばらくして

 

「ねぇ、ヨハン……もしかして、私騙されてる?」

 

「いやいや! 騙してなんかないって!?」

 

「じゃあなんで、メシ屋に行くのに森の中を歩いてるのよ」

 

先導しているヨハンを軽く睨みながら、マイラは問い掛けた。今二人が居るのは、町に近い山の中である。

 

「だから、変わった店だって言っただろ?」

 

「……で、なんでこんな山の中にその旨いメシ屋があるって知ったの?」

 

マイラが問い掛けると、ヨハンはマイラを指差し

 

「一年前なんだがな、お前の店に騎士のシチューを教えてくれたハーフリングの夫婦が居たろ? 先輩から聞いたんだが、あのハーフリングの夫婦、妙な歌を歌いながらこの山に入っていったんだと。んで俺も確認したのは、町に来たハーフリングは、全員この山に入っていったんだ」

 

「ハーフリングが、全員?」

 

ヨハンは自警団な為に、町の主要な出入口に立っている事が多く、その際に確認したのだろう。

しかし、マイラには俄には信じられなかった。

只の偶然では? そう思ったのだ。

 

「そう。全員、同じ歌を歌いながらな……今日はドヨウの日。異世界食堂に行こうってな」

 

ヨハンがそこまで言って、山頂付近の高い巨木がある開けた場所に出た時、マイラはその巨木の根元にそのドアを見つけた。

黒猫の彫刻が彫られ、東大陸語で洋食のねこや、と書かれた看板が掛けられた黒いドアだ。

 

「……なんで、こんな場所にドアが……」

 

「通称、異世界食堂って言うんだと。ほら、入るぞ。今日は朝食ってないから、腹ペコペコなんだ!」

 

ヨハンはそう言って、マイラの手を引きながらドアを開けた。カウベルが鳴ると

 

「いらっしゃいませ、洋食のねこやにようこそ」

 

二人を霊夢が出迎えた。二人は霊夢に案内されて、近くの席に座り

 

「注文が決まりましたら、お呼びください。それでは」

 

「……なに、あれ……」

 

霊夢が去ると、マイラが思わずという風に呟いた。

するとヨハンが

 

「なんでも、異世界の衣装らしいぞ? 異世界食堂(ここ)じゃ、普通なんだと。少し恥ずかしいみたいだけど」

 

マイラの疑問の意味を察して、ヨハンは以前に店員(アレッタ)から聞いた話をした。

 

 

「異世界……? ここ、異世界なの?」

 

「そうだぞ? あれ、言ってなかったっけか?」

 

「聞いてないわよ……」

 

昔から少々抜けてる幼馴染みにマイラはため息を吐きつつ、店内を見回した。

 

「……なんかおかしいわね、ここ」

 

そして見回して、客筋が(マイラからしたら)おかしいことに気付いた。

少々めかし込んでいるが、普通の家族に、マイラからしたら一生縁の無さそうな上等な服を着た貴族らしい人物に、長い杖を持った老人。若い女性の司祭のグループに、ヨハンの100倍は強そうな剣士。

挙げ句の果てには、明らかに人間ではない存在。

小さい小人や妖精。二足歩行の蜥蜴人や翼の生えた二人の少女達や下半身が蛇の女性。

客筋が読めなさすぎた。

しかし、その光景に間違いなく異世界なんだな、と妙に納得したマイラは、(メニュー)を開き、綺麗なサマナーク語で書かれた説明文を読み始めた。

そして、軽く見てからマイラは

 

「値段は、ウチより少しだけ高い位かしら……」

 

と呟いた。すると、ヨハンが

 

「値段はそうかもだが、例えば……あ、この料理に付く白パン。食べ放題なんだと。しかも、値段変わらず」

 

「なにそれ!?」

 

ヨハンが写真を指差しながら説明すると、マイラは驚愕した。隣がパン屋な為に、白パンの値段は知っている。

それを、一切お金を取らずに食べ放題というのは利益にならない、とマイラは思った。

 

「この店の方針なんだと。パンと日替わりのスープ。後、ライスってやつはお代わりし放題なんだとよ」

 

ヨハンが告げたその言葉に、マイラは何故か敗北感を覚えた。

マイラが頭を抱えていると、ヨハンが一つのメニューを指差して

 

「オレのオススメはこれだな。マカロニグラタン」

 

「マカロニグラタン……?」

 

説明文には、騎士のソースにチーズを乗せて焼いた料理と書かれてある料理だった。とりあえず、その料理を早希に注文し、待つこと十数分後

 

「お待たせしました。お熱いので、気をつけてください」

 

と明久が料理を持ってきた。その格好から料理人だと検討を付けつつ、マイラは運ばれてきた料理。マカロニグラタンを見た。

楕円形の器一杯に満たされた騎士のソース(ホワイトソース)に、見事な焼き目が付いた薄いチーズから漂う芳ばしい匂いが、マイラの食欲を刺激する。

 

「さて、食べようぜ! これは、熱いうちに食べるのが旨いんだ!」

 

ヨハンはそう言って、熱っ、と何回も言いながら食べ始めた。そうしてマイラも、フォークをマカロニグラタンに差した。

チーズの下から出てきたのは、真っ白な騎士のソースが絡まった様々な具材。マイラは息を吹いて少し冷ましてから、食べた。

最初は熱さに驚いたが、すぐに美味しさに目を見開いた。マイラの店で出すよりも濃厚な味が口一杯に広がり、具材の味と合わさってフォークが止まらない。

時々間に挟む白パンや野菜スープで口の中をリフレッシュして、またグラタンを口に運ぶ。

そのサイクルが止まらなくなる。

途中で白パンと野菜スープが無くなったので、思わずお代わりし、完食した。

 

(チーズと騎士のソースって、合うのね……)

 

マイラは味の分析をしながら、ある事を考えていた。

 

(この料理を再現すれば、更に売り上げ上がるかも……)

 

やはり、マイラも商人なんだろう。そんな考えが浮かび上がった。しかし、流石に料理店に対してレシピを教えてほしいというのは失礼だというのはマイラにも分かる。

旅小人は、旅の路銀稼ぎだった為に教えてくれたのかもしれない。だからマイラは、マカロニグラタンを出来うる限り分析し、再現しようと考えた。

幸いにも、マイラも店を継ぐのと嫁修行で料理は問題なく出来るようになっている。

出来る筈だ、とマイラは考えた。

 

「もし、マイラの店で出せるようになったら、毎日行くな、これは」

 

「ふふ、頑張ってみるわね」

 

その会話を最後に、二人は会計して退店した。

その後マイラは、一人でも度々来て味を分析。

暫くしてから、店に新たな料理。マカロニグラタンが出されて、更に売り上げが上がったのであった。

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