異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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79皿目 ハンバーガーセット

「へへっ! ようやく手に入ったぜ、銅貨9枚!」

 

ある小さな国のとある山間部の小さな村。そこで、ジャックと呼ばれる少年が懐から財布を取り出して、中のお金を見ては嬉しそうにしていた。

ジャックはある店に行く為に、薪割りしたり、家にあった鉈で巨大鼠退治をしたりと、七日間掛けてお金を貯めたのだ。

そして、ある場所に到着すると

 

「お、ようやく来たな」

 

「もう少し遅かったら、先に入る所だったよ」

 

三人では一番年上のテリーと村で唯一の魔術師の息子のケントの二人が、一番最後に来たテリーを出迎えた。どうやら、もう少し遅かったら先に入っていたようだ。

 

「おっと。それは、危なかった」

 

「それじゃ、入ろうか」

 

テリーとケントの言葉に頷き、三人は森の中のある小屋の近くにある枯れ井戸の底にあるねこやのドアを開けた。

 

「いらっしゃいませ。洋食のねこやにようこそ」

 

そんな三人を、霊夢が出迎えた。

 

「お好きな席へ、どうぞ」

 

「ああ」

 

「おう」

 

「うん」

 

霊夢に促されて、三人は空いていた近くの席に座った。

すると霊夢が、三人分のおしぼりとお冷やを持ってきて

 

「注文は、なんでしょうか」

 

『ハンバーガーセット! 飲み物はコーラで!』

 

霊夢が問い掛けると、三人は揃って同じ注文をした。

霊夢がキッチンの方に行くと、三人は

 

「楽しみだな」

 

「だな。村で食べる料理とは、比べ物にならないからな」

 

「うん。僕の家でも、ここみたいな料理は無いからね」

 

とウキウキしていた。そして、軽く周囲を見てから

 

「にしても、この店って亜人多いよな」

 

「確かにね……あの扉から来てるのは分かるけど、何処から来てるんだろうね」

 

「不思議だよな。俺達の世界には、この店でしか見ない亜人がうじゃうじゃ居るってことだよな」

 

と会話した。三人は未だに村から出たことが無い為に、村の外の世界を一切知らないのだ。だから、ねこやに来る度に世界の広さを感じていた。

異世界食堂の所は、彼らの世界の色々な所に現れては、その扉を利用して客が来る。

しかし、何も使うのは三人のような人間だけではなく、亜人。魔族や半魔族も居るのだ。

 

腐った豆のソースをかけたパスタを食べるエルフに、毎回プリンだけを食べるハーフエルフ。そして、酒を浴びるように飲みながら魚料理をたらふく食べている二人のドワーフ。

来る頻度は少ないが、ガヤガヤと騒ぎながら大量の料理を食べるハーフリング(旅小人)とここまでは、まだ三人にとっても常識的な範囲だ。

 

話では聞いてるが、旅人や冒険者はたまに村にやってきては、泊まったり、村で依頼を果たしていく。

しかし、異世界食堂には三人の常識外れの客がゴロゴロとやってきては、各々が好きな料理を頼んで食べる。

 

「どうなってんだろうな、この店」

 

「さあなあ……」

 

「まったく分からないね……」

 

と三人が首を傾げていると、アレッタと早希がやってきて

 

「お待たせしました」

 

「コーラのハンバーガーセットです」

 

と三人の前に、二枚ずつお皿を置いた。

 

「おお!」

 

「待ってました!」

 

「美味そう!」

 

アレッタと早希の二人が離れると、三人は改めて自分たちの前に置かれた二枚の皿とコップを見た。

揃って右側の皿は、ダンシャクを細い棒状に切って揚げた後に塩で軽く味付けした料理。フライドポテトが大量に盛られていて、皿の端にはトロっとした赤いソースが少量ある。

次に、三人の左手側には黒くてシュワシュワと泡が発生する飲み物。コーラが注がれた大きめのコップがある。

ケントはコーラを見ながら

 

(どうやって出来てるんだろ、この飲み物……火山地帯でたまに見つかる水と関係してるのかな?)

 

と内心で首を傾げた。

そして最後に、三人の正面の皿にメイン料理のハンバーガーがある。

二枚の円形に整えられた白パンで、塩胡椒で味付けされた肉と新鮮な野菜、チーズ。そしてチーズの上にマルメットを使った赤いソースが掛かっているのを挟んでいる。

 

「そんじゃあ」

 

「食べますか!」

 

「だね!」

 

そして三人は、ハンバーガーセットを食べ始めた。

 

「うむ。やっぱり、ここの揚げ物は良い油を使ってるんだな」

 

テリーはフライドポテトを食べると、確信した様子で頷きながら言った。

食べるとホクホクとした食感を残しながらも、ホロホロと崩れるフライドポテト。

テリーが家庭教師から聞いた話では、遠く離れた帝国では一般的に食されている料理のようだが、店によっては

油臭かったり色が違うらしい。

考えてみたら、ねこやは田舎の少年達から見たら遥か雲の上の存在の人達に満足してもらう料理を、非常に手頃な値段で提供してくれている。

それでよく商いが回るな、とケントは思った。

そして三人は、あっという間にハンバーガーセットを食べ終わると、コーラを飲む。

三人だが、ハンバーガーセットを食べ終わっても追加を注文するのが大抵の流れだ。

 

「すいません。フライドポテトを追加で」

 

「僕は、コーラをお願いします」

 

「俺、ハンバーガー追加!」

 

テリーは口元に付着していたソースを拭きながら、ケントは空になったコップを持ちながら、ジャックは指に付着していたソースを舐めながら追加注文した。

 

「はいよ」

 

そしてその注文を、たまたま出ていた店長が聞いた。三人を見ながら、店長は以前にホットドッグを食べに来ていたカップルを思い出していた。

そして、少しして

 

「ふう……食った食った」

 

「美味しかったね」

 

「うむ。やはり、ここの料理は他とは一味違うな」

 

三人は満足そうに頷きながら、財布を取り出した。

 

「お金、ここに置いておきますね!」

 

「美味かったよ!」

 

「満足した!」

 

「はーい! 分かりました!」

 

キッチンの方から明久の声が聞こえて、三人は財布から出したお金を机の上に置いて退店した。

そして、枯れ井戸の底に戻ると

 

「よしっ! 戻って、特訓するか!」

 

「うん、そうだね」

 

「うむ。旅立ちも近いからな!」

 

実は三人は、15歳になって村の掟で大人と認められたら、冒険者になろうと約束していたのだ。その為に、それぞれ剣や魔術の特訓をしていた。

 

「けどそうなったら、ハンバーガー食べられなくなるな……」

 

「ああ、そうだね……」

 

「確かにそうだな。しかし、世界は広いんだ。他に美味い料理があるかもしれんぞ?」

 

ジャックとケントは少し残念そうにするが、テリーはそんな二人の背中を叩いた。

この三人が大人と認められて、村を離れるのはもう少し先の話。

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