霊夢が二人の少女に押し倒された日から、少々時間を遡り幻想郷の魔女の森。その中にある一軒の家にて
「なあ、妖夢。最近霊夢が丸一日居ない日があるの、気付いてるか?」
とんがり帽子を被った金髪の少女。
「それは、霊夢だって出掛けてる時はあるから仕方ないと思うけど……」
妖夢の言葉に、魔理沙は机を叩いて
「だからって、丸一日は気にならないか?」
「うーん……」
魔理沙の言葉に、妖夢は唸った。すると魔理沙は、そんな妖夢の手を掴み
「2日後の早朝! 博麗神社に集合だ!」
「……大丈夫かなぁ……」
魔理沙の提案に、妖夢は不安な表情を浮かべた。
それから二日後、二日はまだ日が登りきる前に博麗神社の霊夢の部屋が見える位置に隠れていた。
「あふ……眠い……」
「我慢しろ、あたしだって眠いんだ……」
妖夢が欠伸をしていると、魔理沙はそんな妖夢の頬をグニグニと引っ張った。恐らく、眠気覚ましだろうか。
かくいう魔理沙も、眠そうな表情である。
その時、霊夢が部屋から出てきた。
「お、出てきた」
「流石霊夢、しゃっきりしてる」
霊夢は二人と違い、目はぱっちり開いている。完全に目が覚めているようだ。そのまま霊夢は縁側に座り、靴を履いて移動を始めた。
「よし、追うぞ!」
「うん」
二人は霊夢に気付かれないようにと、茂みに隠れながら、霊夢を追い掛けた。
霊夢は何時もと同じように、箒が仕舞われている小屋に向かっていく。
それを見た妖夢は
「今日は、普通に掃除するみたいだよ? ほら、戻ろう」
と魔理沙に提案した。しかし魔理沙は
「いや、待て……あの小屋から、妙な魔力の流れを感じる……何かあるぞ」
と小屋を睨んだ。
魔理沙が気付いたのは、魔理沙が魔法使いだからだろう。それに対して、妖夢は剣士。
分野が違うのである。
魔理沙は霊夢が小屋に入ると、茂みから飛び出して小屋に近付いた。それを見て、妖夢も魔理沙に続いて小屋に近付いた。
そして魔理沙が扉を静かに開けると、中では霊夢が見慣れぬ扉を開けようとしていた。それを見た魔理沙は
「その扉かぁ!!」
と霊夢に飛び掛かった。
「え! 魔理沙!? それに、妖夢!?」
妖夢は半ば暴走してる魔理沙を止めようと、魔理沙に飛び付いていた。結果、霊夢に二人分の体重も掛かり、霊夢は二人に押し倒されるように扉を開けてねこやに入った。
「え、何事?」
「……ごめんなさい……騒がしく来ちゃって……」
近くに居た明久が覗いてきた事に気付き、霊夢は魔理沙と妖夢に一発ずつ拳骨を落としながら謝罪した。
それから数分後、仕事着に着替えた霊夢と魔理沙、妖夢は机に座っていた。
その対面には、明久と店長の二人が席に座り、その後ろには早希の姿もある。
「つまり……その二人は霊夢ちゃんの知り合いってこと?」
「ええ……こっちが霧雨魔理沙。もう一人が、魂魄妖夢よ」
「霧雨魔理沙だ! よろしくな!」
「魂魄妖夢です」
霊夢が軽く紹介すると、魔理沙は快活に、妖夢は礼儀正しく挨拶した。
「どうやら、私が一日居ない事を不思議に思って見張られてたみたいなのよ……」
「それで、ドアを開けるタイミングで飛び付かれて、あんな風に入ったって訳か……」
店長の言葉に、霊夢が申し訳なさそうに頷いた。すると、魔理沙が
「だってよ、気になったんだよ」
「もう少し、節度を持ちなさいってことよ……まったく……妖夢まで一緒になって……」
「ご、ごめんね、霊夢……」
霊夢が軽く睨むと、妖夢は頭を下げた。
「一応説明すると、ここは洋食のねこやって名前のお店」
「そのドアは、様々な異世界に様々な場所に出るんだ」
「つまり、ここは異世界って訳ですか……」
「すげぇ魔道具だぜ……」
店長と明久の言葉に、妖夢は感心し、魔理沙は驚いていた。特に魔理沙は、魔道具販売店を営んでいるから、尚更だろう。
「魔理沙、一応忠告しておくけど……」
「なんだよ」
「あの鈴を持っていこう、なんて考えないようにね……ここのお客……猛者揃いだから」
「え、そんなに?」
魔理沙がドアの鈴を見ていた事に気付いた霊夢は、魔理沙に忠告し、魔理沙は固まった。
「ええ……私が知る限り、魔理沙より格上の魔法使いが数人。それと、妖夢より強い剣士も居たわ……それに……紫達、五大老並みかそれ以上の力を持つ人も居る……」
「やめとく」
「懸命ね」
実は魔理沙は、自身が興味を持った物を勝手に持っていくという悪癖があった。それを霊夢が先に牽制し、止めたのである。
「ねぇ、霊夢……そんなに凄い剣士が居るの?」
「ええ……大分おじさんなんだけど、あの圧は凄いわよ……」
「……会ってみたい……」
妖夢は妖夢で、どうやらその
やはり、剣士としたら強い剣士と会ってみたいのだろう。その時、明久が腕時計を見て
「あ、そろそろ朝の賄いを作らないと」
「そうだな……君たちも食べるかい? 多分、まだ朝食食べてないんだろ?」
店長が問い掛けると、妖夢の方から腹の音が聞こえた。それを聞いて、店長は
「最初はサービスにしておくよ。食べていきな」
と言って、キッチンに入った。