妖夢が作り始めて、十数分後。
「お、お待たせしました……」
「今日はかき揚げうどんよ」
「どうぞ」
妖夢を先頭に、霊夢と早希が人数分の料理を持ってフロアに現れた。どうやら、今回妖夢が作ったのはかき揚げうどんだったようだ。
見事な黄金色の汁に、白いうどん。そして、大きめのかき揚げが乗っている。
かき揚げはニンジン、ゴボウ、タマネギ、エビ、三つ葉を使った、オーソドックスな物だ。
そのかき揚げも綺麗に纏まり、きつね色に揚がっている事から、妖夢の料理の腕前が伺える。
「さて」
「じゃあ、いただきます」
店長と明久の言葉の後に、全員も食べ始めたのだが、妖夢は店長と明久がどう反応するのかが気になり、ソワソワしている。
それに気付いてる二人は、微笑ましい気持ちを覚えながら、それぞれ食べ始めた。
店長はかき揚げを一口食べて
「うん……しっかり火が通っていて、かつ綺麗に纏まってるね……具材はオーソドックスだから、料理人の腕が問われるけど……うん、十分に美味しい」
と評価。そして、汁を飲んだ明久は
「出汁はカツオと昆布の合わせ出汁だね……比率も見事。これは、旅館とかで出されてるのと遜色無いレベルだ」
と評価した。それに安堵する妖夢だったが
「だけど……うん。君の主人が言いたい事が、何となく分かったかも」
という店長の言葉。
「それは、一体……」
「一言で言うと、教科書通り過ぎるんだね」
妖夢の問い掛けに、明久が答えた。
「あ、勘違いしないでね? 間違いなく、妖夢ちゃんの料理は凄く美味しい。それこそ、旅館やお店で出せるレベルだよ」
妖夢の顔が不安そうになったからか、明久は少し慌てた様子で語る。
「うん。出汁の比率や取り方も丁寧。かき揚げも、綺麗に纏まって均一に揚がっている」
「ちょっと待っててね」
明久はそう言って、キッチンに消えた。
そして、十数分後
「はい」
と妖夢と同じ、かき揚げうどんを持ってきた。
見た目は、妖夢のと変わらない。
「食べてみて」
明久に促されて、妖夢はまず出汁を一口飲んで驚いた。
「これ……私のより、味が深い……カツオと昆布……それに、椎茸?」
「正解」
三種の合わせ出汁。ちょっとしたアレンジだ。
「基本的な出汁は、妖夢ちゃんの残ってたやつを使って、椎茸の出汁を合わせた。そして、かき揚げ」
妖夢はかき揚げを一口食べて、目を見開き
「此方は、椎茸が増えて……それに、とうもろこし?」
と自分が食べて出来た断面図を見た。
確かに気付きにくいが、トウモロコシも追加されている。
「その椎茸は、出汁を取った後に切って入れたんだ。それに、衣にも出汁を少し混ぜて、衣に味を着けた。やったのは、それだけ……けど、どうかな?」
「凄く、美味しいです……」
ちょっとした追加で、大きく変わった味に、妖夢は衝撃を受けていた。すると、店長が
「確かに、教科書通りに作るのも大切だ。それが、最初の一歩で、最初を固めれば、応用が出来るようになるからね」
「けどそこで立ち止まらずに、一歩踏み出して、自分の味を追求する。そうすれば、味も変わっていく……」
店長と明久の言葉に、妖夢は感銘を受けていた。
確かに、今まで出してきた料理は教わったそのままの料理だった。
そこから発展させる、という考えが浮かばなかったのだ。
「けど、妖夢ちゃんは凄いね」
「だな。基礎だけで、ここまで美味しく出来てるんだから、料理に真摯に向き合ってきた証拠だ。十分に誇っていいよ」
明久の言葉に同意してから、店長が称賛した。
「あ、ありがとうございます」
「多分、基礎に関しては教えられる事は無いかな」
「ですね。後は本当にちょっとした発想が鍵になるかと思います」
発想。それが、自分に足りなかったモノだと、妖夢は二人の言葉から察した。
すると、店長が
「とりあえず、君の料理の腕前は十分に分かった……だから君を、料理補佐として雇う」
と告げた。
「料理補佐?」
「基本的には、僕達の手伝いだね。時々、フロアの方も手伝ってもらうよ。時々、四人でも回らない事があるからね」
明久と店長の補助。つまりは、二人がどのように調理しているか間近で見る事が出来る。調理という教えながらやるには難しい事なので、間近で見た方が早いと考えたのだろう。
「勿論、三食付き」
「それで良かったら、どうかな?」
妖夢には、迷う理由は無かった。
「未熟者ですが……お願いします」
こうして、新しく仲間が増えた。