異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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98皿目  お好み焼き

東大陸の中、独自の文化を形成する諸島郡国家の一つ。山国。

その山国にて、近衛侍の地位に就いているソウエモンが異世界食堂に行くようになったのは、今から約五年程前になる。

五年前、ある偶然からソウエモンは、一人の旅小人族を助けた。その旅小人は吟遊詩人で、旅をしながら歌を考えては娯楽に飢えた小さな村で披露しては路銀にしていた。

そしてその旅小人から、助けた礼にと異世界食堂の扉の一つを教えてもらい、言われた日に行った。

当初は半信半疑……否、疑の方が割合は大きかった。そんな扉の事など、聞いた事が無かったからなのが大きい。しかし、実際に扉を発見して信じた。

そして初めて来た時から、高い確率で嫌いな相手と出会うのも始まった。

ソウエモンが入った直後、背後で来客を示す鈴の音が聞こえ、見知った気配を感じた。

振り向いた背後に居たのは、間違いなく海国の狐面の陰陽師。ドウシュンだった。

 

「ほぼ毎回、何故同じ時間に来るのだ。うりなら陰陽師め」

 

「それは此方の台詞です。剣しか能のない山猿……失礼、山国の緒武家殿」

 

開口一番、二人は喧嘩腰だった。

ここまで仲が悪いのは、両国の文化にある。

まず海国はその名前の通り海に面した国であり、それに伴って海運業による輸出入が盛んな国だ。それにより、海に住む魔物との戦いに遠距離の武器と陰陽道が大きく発達してきた。それが理由で、海国では剣は軽視され、遠距離武器と陰陽道が重視されていた。

そして山国は、山に囲まれた国で、こちらは海国と違って遠距離や陰陽道よりも剣が重視された。

これは山林の戦いでは、遠距離武器は木々に邪魔され、陰陽道は山火事等の災害を引き起こしかねないのが大きな理由となる。

そこに更に、海国と山国は双方の土地を狙っており、時々国境付近で戦いが起こってるのだ。

以上の理由により、海国と山国の住民は非常に仲が悪いのだ。

実は互いに初めてねこやに来た時、あわや店内で戦いになりそうだったが、それは店内に先に居た猛者(アルトリウス)達により制圧されていた。

それ以来、二人はねこやに来る時は武器たる刀や札等を持ってこないようにした。これは互いに売り言葉に買い言葉で戦いに発展しないようにした為だ。

実は今も、カウンター席に座っているアルトリウスとタツゴロウの二人が、それぞれドウシュンとソウエモンの二人に圧を放って制止していたりする。

 

「いらっしゃいませ! 空いてる席にお座りどうぞ!」

 

「……ふん」

 

「ふんっ!」

 

両手にお皿を乗せたトレイを持ったアレッタの言葉で、二人は背中合わせで座った。

そして、それぞれ早希と霊夢が注文を聞きに行くと

 

「豚のお好み焼きを! そぉす多めで!」

 

「海鮮お好み焼きを。かつお節多め」

 

と二人同時に、ほぼ同じ料理を注文した。

そして二人は、その状態で会話する。

勿論、ただの会話ではない。互いの国の情報収集も兼ねている。実はこの二人、互いに知らなかったが嫌戦派であり、何とか戦争を回避し、同盟か国交を開こうと考えていたのだ。

 

「ほう……海国は帝国との交易を強化か……ということは、噂に聞く砂の国との共同開発の魔道具も……」

 

「どわぁふの鍛冶師を誘致……ということは、こちらの術を斬る剣を作って……」

 

二人は互いに会話しながら、王に対してどう訴状するか考えていた。一度開戦したら最後、互いに大きく犠牲者が出る戦争を何とか回避する為に。

しかし、そんな二人の会話と考えも、不意に止まる。

 

「お待たせしました。豚のお好み焼き、ソース多めです!」

 

「シーフードお好み焼きのかつお節多め、お待たせしました。お熱いので、お気をつけください」

 

アレッタと妖夢の二人が、ほぼ同時に二人の前に料理を置いたからだ。

お好み焼きの始まりは、第二次世界大戦の終戦直後にまで遡る。第二次世界大戦終結直後の日本では、あらゆる物資が少なかった。そんな中の闇市で、提供された小麦粉を薄く水で解かしたのを焼いたのが始まりとされている。そこから、もんじゃ焼きやお好み焼き、たこ焼きに進化していった、とされている。

それはさておき、二人の前に置かれたお好み焼きはまだ熱く熱された鉄板の上でジュージューと音を立てている。

表面にはソースとマヨネーズにより模様が出来ていて、その上ではかつお節がまるで踊っているようにも見える。そして、まだらに見える青のり。それらがコントラストを奏でている。

二人はまず、用意されていたヘラでお好み焼きを半分に切り、更に半分、半分と食べやすい大きさにした。

切った際に流れたソースとマヨネーズが鉄板に滴り、匂いが一気に空腹感を刺激してくる。

二人は逸る気持ちを押さえつけ、ヘラから箸に持ち替えて一つを皿に取った。

断面図からは、キャベツに紅しょうが、揚げ玉が見えて、ソウエモンは表面に豚のバラ肉。ドウシュンはイカとエビが見えた。

そして、念入りに冷ましてから、口に入れた。

最初は熱さが勝つが、少しすれば旨味が口の中で弾けて広がる。

 

(旨い……同じ猪肉の筈なのに、生臭さが無く柔らかい……どう処理したらこうなるのか)

 

ソウエモンは豚肉の味に驚き

 

(相も変わらず、見事な下処理が去れた海の幸……しかしこのかつお節とやら……どうやって作っているのか……材料もまだ分からぬ……漁師達と色々とやってみてはいるが……)

 

ドウシュンはかつお節に関して考えていた。

ちなみにねこやのお好み焼きは、薄力粉だけでなく、知り合いの八百屋が厳選した自然薯も混ぜているので、フワフワの生地となっている。

二人は豚肉と海鮮の味を楽しみながらも、揚げ玉のサクサクとした食感や、キャベツの甘さ、紅しょうがの辛味が時々口の中をリフレッシュしていく。

最初は毎回違う料理を頼んでいた二人だが、ある時にお好み焼きを見つけ食べてからは、ずっとお好み焼きを食べ続けている。

それ程に飽きが来ないのだ。

そうして、それぞれ食べ終わると

 

「すいません、お代わりを頼みます」

 

「すまんが、お代わりを!」

 

と二人は、同じタイミングで声を挙げた。

 

「はい、味は何にしますか?」

 

(味は何でしょうか?)

 

早希とクロが問い掛けると、二人は僅かに互いの顔を見てから

 

「……次は海鮮を頼む!」

 

「私は、豚たまとやらをお願いします……」

 

と互いが食べていたお好み焼きを注文した。

そうして二人はまた、二枚目のお好み焼きが来るまでの間に情報交換をし、戦争を回避する為に試行錯誤していく。

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