「さて……賄いはどうするか……」
午前中の客がハケた為、従業員の為のお昼を考えていた店長。そこに、妖夢が来て
「えっと、お皿は食器洗浄機に入れました」
と報告してきた。
「あいよ。あ、これで休憩室の机を拭いてきてくれ」
「はい、わかりました」
店長から渡された布巾を持って、休憩室に向かう妖夢。そこに、明久が
「店長、これ使いません?」
と出したのは、トマト缶。見れば、賞味期限ギリギリだった。
「あら? そんなに古いのがあったか」
「はい。今見つけました」
明久は棚の奥から見つけたらしい。トマト缶が三個。
それと幾つかの材料を見て
「うし。メインは俺が作る。明久、スープを頼んだ」
「わかりました」
そこから二人は、調理を開始した。
そして、暫くして
「すまんな、遅くなった」
「はい、どうぞ」
「はい、順番に取って」
と店長、明久、早希が料理を運んできた。
「これは……」
「トマトリゾットとコンソメ冷製スープだよ」
トマトリゾットとコンソメ冷製スープ。
それが、店長と明久が作った賄いだった。
「トマトリゾットは熱いから、気をつけてな」
「こっちは冷たいから、トマトリゾットが熱かったら、こっちを飲んでもいいよ」
トマトリゾットはイタリア地方の料理で、生米から作る料理だ。そして明久が作ったコンソメ冷製スープは、夏向けに考えた試作料理だ。
「え、このスープ……細かく凍ってる!」
「実は、一度作ったのを製氷皿に入れて、凍らせたのを砕いたんだ。一応味見はしたけど、皆の意見も聞きたくて出したんだ」
今回の冷製スープは、明久の完全な思い付きの料理で、オリジナルという訳でもない。一部では氷結スープとも呼ばれている。
「じゃあ……いただきます」
『いただきます』
何時ものやり取りを合図に、お昼が始まった。
「ん! このリゾットってご飯、マルメットの味が凄いです!」
「だろ? 生米の段階から、一緒に煮込んでるからな。中にまで染み込んでるのさ。勿論、他の素材の味も染み込んでるから、栄養満点だ」
先にトマトリゾットを食べたアレッタは、驚いていた。すると、クロも
(……様々な味がライスとスープの中で混ざり合って、お互いの味を引き出してる……凄く美味しい……)
と評価している。クロは忌憚なく味を評価するので、貴重な意見だ。
それを聞いた店長は
「よしよし、好感触だな。ほぼメニュー入りだな」
と何やら、メモ帳に書いていた。
そして、早希達の方は
「このスープ……凍らせてる事で、より素材の味を感じますね……」
「本当……繊細な味が、より感じられるわ」
「スープって、暖かいだけじゃないんですね……美味しい……」
と感嘆していた。妖夢は冷たいスープに驚いているようだ。しかし、全員から中々高評価を得ている。
「良かった……一応、もう少し改良してみようかな」
明久はそう言いながら、自身が作った冷製スープを口に運んだ。
こうして、ねこやのお昼休憩は過ぎていく。