異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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104皿目 ホットサンド

 

 

 

「ああ……朝か……」

 

魔術師のゴードンは、朝焼けを見ながら呟いた。

彼は師匠のアルトリウスから、ある半魔族の少女。アレッタの護衛を指示されて廃墟の教会を見張っていた。

サラがシアからの話を聞いて、アルトリウスに頼んだのだ。

そして何故ゴードンなのかと言うと、彼もまた半魔族だからだ。

彼は、ある都市の貧困街の娼館の娼婦が産んだ捨て子だった。

魔王が討たれ、魔国が出来てから魔族は一部の最前線に派遣されるようになったが、ゴードンが産まれた時はまだ差別意識が強かった。

その時ゴードンの父親は、人間に変身し性欲解消に娼婦を抱いた。その結果、産まれたのがゴードンだった。

しかし、まだ差別意識が強かった当時、ゴードンは捨てられて、明久達の世界で言うストリートチルドレンとして育ち、産まれながらに強い魔力持ちだった為にストリートチルドレン達をまとめ上げ、所謂ギャング化した。

そんなゴードンのもとにやってきたのが、領主に泣き付かれてやってきたアルトリウスだった。

アルトリウスはストリートチルドレン達を容赦なく叩きのめし、ゴードンを含めた一部を弟子に迎え入れ、残った殆ども領主に紹介して仕事を宛てがった。

中には冒険者になった者も居たようだが、そこは適性だろう。

それはさておき、ゴードンが廃教会に派遣された理由は魔族狩りが理由である。

最近では魔国も本腰を入れて、魔族狩りを討伐するようだが、大抵が単独か少数で居て誘拐されている事が分かっている。

そこでシアから話を聞いたサラが、同じ常連のアルトリウスに頼んで派遣してもらったのだ。

勿論アルトリウスはゴードンが半魔族と知っており、同族ならば緊張しないだろうと選んだのだ。

 

(次からは、近くの宿で夜明けまで待とうかな……)

 

眠気を堪えながら、ゴードンがそう考えているとドアが開いてアレッタが出てきた。

 

(さて、後は例のお嬢様の家まで彼女を護衛すればいいな)

 

ゴードンはそう判断し、一定の距離を保って移動しようとした。だが

 

「あの、ゴードンさん! いらっしゃいますか!?」

 

とアレッタに呼ばれ、ゴードンは動揺で自身に掛けていた隠形の魔法が解けた。まさか、呼ばれるとは思っていなかったゴードンを、アレッタは見つけて近寄り

 

「ゴードンさんで合っていますか?」

 

「ああ、そうだが……何故……」

 

「昨日、ロースカツさん……アルトリウスさんから話を聞きまして、朝食を持っていってあげてくれ、と頼まれたんです」

 

先日、アルトリウスは退店間際にアレッタにゴードン用に朝食を頼んでいたのだ。

 

「あ、お代はアルトリウスさんから頂いてますから、大丈夫です!」

 

アレッタはそう言って、ゴードンに銀色に輝く物を差し出した。

 

「コレは、銀か?」

 

「いえ。確か、アルミホイルという金属の幕のようです」

 

ゴードンの問い掛けにアレッタは答えながら、アルミホイルを開いた。その中に有ったのは、こんがりと焼かれた四つのホットサンドだった。

 

「コレは……」

 

「ホットサンドと言うそうです。片手で食べられる料理を頼みました」

 

アレッタはゴードンが忙しいと考えて、片手で食べられるようにと考慮したのだ。

そしてゴードンは、ホットサンドを見ながら

 

(どうやら、上質なパンを使っているのは分かるが……それに、中に何か入ってるな……)

 

ホットサンドを持ったゴードンは、中に何か入っている事に気付いたが、二枚の食パンがくっついて中は見えない。

 

「では、いただく……」

 

「はい! どうぞ!」

 

アレッタに一言断ったゴードンは、一つ目を口に運んだ。一つ目はゴードンは食べた事のない味だった。

まろやかさを感じる白い液体、細かい何かを中心にオラニエ(タマネギ)キューレ(キュウリ)の味を感じる。

 

(なんだ、これは!? 初めて食べたぞ!)

 

初めての味に、ゴードンは驚愕した。自分が食べた断面からは、中の具材が見えるが、分かるのはオラニエとキューレが使われているという事のみだった。

すると、アレッタが

 

「あ、それはツナマヨネーズですね」

 

「ツナマヨネーズ?」

 

「はい。魚を使った料理です。異世界食堂では、割と定番の料理の一つです」

 

アレッタの説明に、ゴードンは改めて中を見た。

 

「これが魚本来の味か……」

 

ゴードンが知る魚の味は、かなりしょっぱい物しか知らない。しかしツナマヨネーズは、まろやかさすら感じた。

 

「私も、異世界食堂で初めて魚の味を知りました。美味しいですよね」

 

アレッタも賄いで出されるまでは、魚はしょっぱい物という認識だった。

そして、一つ目を食べ終わると、迷ったが二つ目を取った。

 

「あ。ホットサンドですが、中は全部違うそうです」

 

「ほう。そうなのか」

 

アレッタの説明を聞くまでは、全部同じだとゴードンは思っていた。持った感覚では分からないが、二つ目に齧り付いた。

二つ目の中には、赤い肉の味が強いソースが入っていて、半球型の肉と外側にはチーズがあった。

 

「あ、それはミートボールとチーズですね」

 

「ミートボール?」

 

「はい。お肉を小さなボールの形にした料理です」

 

アレッタの説明を聞いて、ゴードンは気付いた。半球型だが、本来は球形なのだと。

そして、外側のチーズは赤いソースを逃さない為の工夫と気付いた。

ゴードンは二つ目も食べ終わると、ワクワクしながら三つ目に手を伸ばした。

三つ目の中身は、燻製肉と野菜を塩胡椒で炒めた物だった。アレッタ曰く、肉野菜炒めらしい。

食べやすいように、野菜は細かく切ってある。

最後の一つは、卵と燻製肉を使った料理。アレッタ曰く、ベーコンエッグとの事だった。

全て食べたゴードンに、アレッタは魔法瓶から紙コップにお茶を注ぎ

 

「どうぞ。温かいですよ」

 

「……感謝する」

 

アレッタからお茶を貰ったゴードンは、ゆっくりとお茶を飲んだ。一般に普及しているハック茶とは違うが、落ち着く味わいのお茶(ウーロン茶)だった。

 

「ここ一ヶ月位、見守ってくださってましたよね?」

 

「……気付いていたのか」

 

「はい。これでも給仕ですから」

 

異世界食堂には、様々なお客が来る。中には小さいから声より視線で呼びたい事が分かる客も居る。それが、隠形で隠れていたゴードンに気付いた理由だ。

 

「私、アレッタと言います。見守ってくださって、ありがとうございます」

 

「……ゴードンだ。気にするな……師匠からの指示だからな」

 

落ち着いた二人は、歩いてサラの家まで向かっていった。

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