異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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105皿目 肉うどん

 

 

 

土曜日の朝、明久と店長。早希の三人がホールの掃除をしていると

 

「おはようございます!」

 

「おはようございます」

 

「おはようございます」

 

ほぼ同時に、アレッタ、霊夢、妖夢の三人が入ってきて、僅かに遅れて

 

《おはようございます》

 

とクロも現れた。のだが

 

「ねえ、霊夢ちゃん……頭の上の線……何?」

 

と早希が指摘した。

すると、ハッとした表情をした霊夢が頭上を見て

 

「ごめんなさい……朝食の量、増えそうよ……」

 

と言った。その直後、その線がまるでジッパーのように開いて三人現れた。

二人は尻尾から狐と猫に関係していると分かり、最後の一人は紫色を基調とした服を着た妖艶な雰囲気の美女だった。

 

「勢ぞろいじゃない。(ゆかり)(らん)(チェン)

 

「ふふ……」

 

「えっと……?」

 

突如現れた三人に、霊夢と妖夢以外が呆然としていた。すると、気付いた霊夢が

 

「まず、この紫色は八雲紫(やくもゆかり)。幻想郷の三大老と呼ばれる存在の一人よ」

 

「ご紹介された八雲紫よ。よろしくね」

 

霊夢が軽く紹介すると、優雅に紫は会釈した。

 

「三大老?」

 

「幻想郷を創る際の要となった三人の事です」

 

明久が首を傾げると、妖夢が軽く説明した。

 

「紫はスキマ妖怪よ」

 

「スキマ妖怪……」

 

「ああ、なるほど。だからか」

 

霊夢の説明に、明久は納得した。スキマ妖怪という事は、空間を操るという事。先程のは空間を操って出来た。それで紫は、恐らく自宅と霊夢の頭上を繋げて現れたのだ。

 

「んでこっちは、紫の使い魔の九尾の狐。八雲藍(やくもらん)

 

「藍と申します」

 

九尾の狐という言葉に、店長、明久、早希の三人は驚いた。

日本人ならば、ほぼ知らぬ者は居ないと言える大妖怪の一体。それが、九尾の狐。

よく見れば、確かに尻尾が9本あるのが分かる。

 

「それで最後に、猫又の(チェン)よ」

 

「橙と言います!」

 

二本の尻尾の橙は、幼い見た目の通りに子供みたいに元気だ。猫又は、長い間生きた猫が成るとされる妖怪だ。

 

「それで、紫。なんで来たのよ」

 

「最近、霊夢が健康的に成長してるって聞いたから、原因を見に来たのよ」

 

霊夢の問い掛けに、紫は冷静に返した。

確かに最近の霊夢は、働き始めに比べたら大分健康的に肉付きが良くなっている。

余談だが、時々一緒に着替える早希は霊夢の胸が大きくなっている事にも気付いている。

 

「まあ、ウチで1日3食と翌朝に賄いを出してますから……」

 

「そうみたいね……親代わりとして、感謝するわ。私も、霊夢が痩せてたのは心配してたのよ。これでもね……」

 

紫はそう言いながら、霊夢の頭に手を置いた。

先代博麗の巫女が亡くなった時、まだ幼かった霊夢の面倒を見たのが、紫と藍の二人だった。

そんな二人からしたら、痩せていた霊夢は心配だったのだ。

 

「それで、ここは……」

 

「通称、異世界食堂と呼ばれてます」

 

「洋食のねこや、です」

 

藍の問い掛けに、店長と明久が説明した。

その時、腹の鳴る音が聞こえた。全員の視線が、橙に向いた。

 

「すいません。朝食がまだでして」

 

藍がそう言いながら、橙の頭を撫でた。

 

「自分達の賄いがまだなので、一緒になりますが、構いませんか?」

 

「大丈夫ですが、よろしいので?」

 

「流石に、空腹の子供を放置は出来ませんよ」

 

藍の問い掛けに、明久は橙に木製の玩具を差し出しながら告げた。玩具だが、時々来る幼い子供用に用意したものだ。

 

「……じゃあ、お願いしても?」

 

「お任せを」

 

紫の一言に、店長は頷いた。その後、アレッタ達は一度着替える為に裏に下がり、早希が紫達用の席を用意した。

 

「こちらでお待ちください」

 

「ありがとう」

 

席に座ってから、藍は周囲を見回した。

幻想郷には無い調度品に、電気が珍しいからか。

 

「紫様……この店、凄まじい力が満ちています」

 

「ええ……それに、さっきは一切喋らなかったあの黒髪の人も、凄い力を感じたわ……なるほどね。道理で、直接繋げられなかった訳ね」

 

どうやら、赤と黒の力に気付いたらしい。そしてどうやら、何回か直接ねこやに空間を繋げようとしたが、失敗していたようだ。

橙は玩具で遊んでいる。

そして、十数分後。

 

「お待たせしました」

 

「今回は肉うどんです」

 

と店長と明久、妖夢が肉うどんを置いていった。

琥珀色の出汁に沈む太いうどんの上に、タマネギとエリンギと一緒に牛肉が乗っている。

 

「こちらの一味と七味、卵はお好きに使ってください。それでは」

 

最後に早希が、紫達の前に一味と七味と卵が入れられた器と殻入れを置いて自分の席に座った。

まず紫は、匂いを嗅いだ。その匂いから、丁寧に出汁が取られた事が分かる。次に、うどんを一口啜った。

こちらも、ちょうど良い歯応えに喉越しが堪らない。

次に牛肉やタマネギ、エリンギは甘辛く調理されている。

 

「……美味しいですね……」

 

普段から紫の家の調理を担っている藍が、素直に感嘆している。九尾の狐の藍は、やはり狐だからか油揚げを使った料理が好きで、特にうどんはよく食べるから少々うるさい。しかし、そんな藍ですら素直に認めている事から、味の良さが伺える。

次に紫は、七味を僅かに振りかけて食べた。

口に広がる七味特有の風味と辛さ。しかし、一緒に食べた牛肉が味を和らげる。

藍は一味を、橙は卵を落として食べている。

数分後、綺麗に食べ終わり

 

「賄いで、申し訳ありませんね」

 

「いえ、いきなり来たのはこちらなので」

 

店長が頭を下げると、藍も頭を下げた。

すると、明久が紙の箱を持ってきて

 

「こちら、サービスのおにぎりです。良かったらどうぞ」

 

と手渡してきた。

 

「ありがとうございます。お代は……」

 

「1950円になります」

 

店長から値段を聞いた紫は、財布からお金を取り出して支払った。

そして、退店した紫達は霊夢の神社に戻ってくると

 

「ふふ……ウチにも、扉を呼べるようにしてみましょうか」

 

「次は、普通にお客として行ってみたいですね」

 

「満足です!」

 

と談笑しながら、空間操作で自宅へと戻った。

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