異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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明久が異世界食堂を知った理由です


知った理由

明久がねこやで働き始めて、暫くが経った

ある土曜日、明久は買い物に出ていた

この頃の明久は、店長から聞いた土日は休みという言葉を聞いていて、その土日は料理研究に費やしていた

自費で食材と調味料を買い、部屋に備え付けられているキッチンで料理研究をしていた

もちろん、その日もそうだった

 

「うーん……全体的に上手くいってるんだけど……何かが足りない気がするんだよなぁ……」

 

自分が作った料理を味見した明久は、そう言って腕組みしながら首を傾げた

 

「うーん………確実に、何かが足りないんだよなぁ」

 

明久は再びそう言うと、うーんと唸りだした

そして、数分後

 

「ダメだ……これだっていうのが、浮かばない……」

 

と明久は、項垂れた

そして明久は、溜め息混じりに

 

「仕方ない……店長にアドバイスを貰おう」

 

と言って、部屋を出た

今明久が住んでいるのは、ねこやのあるねこやビルの上の階の一部屋だ

同じ階に、店長の部屋もある

 

「店長! 居ますかぁ?」

 

店長の部屋の前に行くと、明久はノックしながら店長を呼んだ

しかし、返事は無い

すると明久は、首を傾げて

 

「留守かな……あ、でも……店長も日頃から料理の研究してるみたいだし……お店のほうかな?」

 

と言って、エレベーターで下に降りていった

そして、店に入ると

 

「ん……賑やかだ……」

 

と店内が、かなり賑やかなことに気づいた

するとそこに、店長が現れて

 

「んなっ!? 明久!?」

 

と驚きの声を上げた

その直後

 

「店主! カツ丼お代わりだ!!」

 

「ワシはロースカツをお代わりじゃ!」

 

と注文が、ひっきりなしに聞こえてきた

それを聞いた店長は

 

「あ、はい! わかりました!」

 

と返答した

すると、明久は

 

「店長……もしかしなくとも、かなり忙しいですね?」

 

と問い掛けた

すると店長は

 

「あ、ああ……そうだが……」

 

と言った

すると明久は、エレベーターのスイッチを押して

 

「ちょっと待っててください……」

 

と言って、エレベーターに乗った

そして、数分後

 

「手伝います」

 

と明久は、洗濯して乾かしたばかりのコック服を着て現れた

すると店長は

 

「い、いや。別に無理しなくても……」

 

と止めようとした

しかし明久は

 

「無理ではありませんよ。それに、待ってるお客さんを待たせるほうが、悪いですよ」

 

と言った

それを聞いた店長は、少し考えると

 

「すまん……手伝ってくれ……今日は、かなり忙しいんだ」

 

と明久に言った

それを聞いて、明久は

 

「お任せください」

 

と答えて、キッチンに立った

それから二人は、怒濤のような注文をこなし続けた

そして、数時間後

 

「ありがとうございました!」

 

「またお越しくださいませ!」

 

と、その時の最後の客を見送った

その後二人は、一旦休憩フロアにまで下がった

そして、明久は

 

「で、この営業はなんです?」

 

と店長に問い掛けた

すると店長は、苦い表情を浮かべながら

 

「……特別営業だ」

 

と語りだした

それは、七日に一度だけ開く異世界食堂

ドアの向こうがどうなっているのかは、店長は知らない

だが、店に来るお客達は異世界食堂こと、ねこやの料理を楽しみに来る

店長は今まで、一人で料理を提供してきた

それを聞いた明久は

 

「店長、今日から僕も手伝いますね」

 

と提案した

それを聞いた店長は

 

「いや、それは……」

 

と明久を止めようとした

すると明久は

 

「未熟者ですが、僕だってねこやの料理人です。それに、僕が手伝いたいのと……やっぱり、誰でもいい……お客さんの笑顔が見たいんです」

 

と言った

それを聞いた店長は、少しの間悩んだ

そして

 

「……分かった。頼んだぞ」

 

と明久に言った

それを聞いた明久は

 

「はい! お任せください!」

 

と言ったのだった

この日から異世界食堂は、二人態勢になったのだった


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