異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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戦姫絶唱シンフォギアになります


112皿目 ボルシチ

 

 

 

「戻ったわ、司令」

 

「おう! 三人共、無事で何よりだ!」

 

超常現象対策機関、SONGの移動拠点の潜水艦にて、ニ人の少女と一人の女性が帰還報告(デブリーフィング)をしていた。

マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁切歌(あかつききりか)月読調(つくよみしらべ)の三人は、ある小国で軍によるクーデターが発生し、しかもその軍は民衆に対して漏洩した錬金術の技術を使って開発した兵器を投入し、虐殺を始めた。三人はその虐殺を阻止する指示を受けて投入された。

三人の活躍により、虐殺は阻止されてクーデターを引き起こした首魁は逮捕。それにより、三人は帰還する事が出来た。

因みに、立花響、風鳴翼、雪音クリス、小日向未来は入れ替わりに現地での錬金術関連の回収任務に行っている。

 

「そういえば、前に翼から、異世界食堂に行ったって聞いたわ」

 

「デース! 私達も行ってみたいデス!」

 

「うん。美味しい料理って聞いた」

 

マリアの言葉に、切歌と調も同意した。

確かに、今任務に就いている四人と弦十郎と慎次の計六人で向かった。

確かに美味しい料理だった事は、弦十郎も覚えている。そして弦十郎は、そういえばと気付いた。

 

(今日だったな)

 

とそこに

 

「お疲れ様です、皆さん」

 

と新たな声。小柄だが優秀な錬金術師のエルフナインが入ってきた。

丁度良いと判断して、弦十郎は

 

「エルフナイン君も付いてきなさい。異世界食堂に連れて行こう」

 

と告げた。

そして弦十郎は、四人を引き連れながら異世界食堂の扉がある会議室に向かう。

 

「異世界食堂って、前に響さんから聞いた美味しい料理が出される場所ですか?」

 

「ああ。前回、エルフナイン君は各国への危険技術の説明中だったから連れていけなかったから、丁度良いと思ってな」

 

前に六人で行った時、エルフナインは映像会議で錬金術関連で危険技術の説明をしていた為に来れなかったから、弦十郎は次には連れて行こうと決めていたのだ。

そうして会議室に入ると、壁際にその黒い扉はあった。

 

「これが、異世界食堂の……」

 

「ああ。本来の名前は、洋食のねこやだ。入るぞ」

 

エルフナインが興味深く見ていると、弦十郎が扉を開けた。

 

「おや、いらっしゃいませ」

 

そうして一行を出迎えたのは、両手で大きなオムレツを持った店長だった。他に、霊夢と早希の姿もある。

 

「五人だが、席は空いているか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。空いている席でお待ちを」

 

店長に促され、五人は空いている席を見つけて座った。すると、エルフナインが扉の上部にあるカウベルを見つめて

 

「なるほど……あの鈴が、空間を繋げるアイテムなんですね」

 

と呟いた。やはり、優秀な錬金術師なだけあり、解析能力が高いようだ。

一目で、異世界食堂の根幹アイテムに気付いた。

 

「ああ。前に聞いたが、アレがこの店と異世界を繋いでいるらしい」

 

「本当ね……あの蜥蜴人もそうだけど、角があったり、翼がある人も居るわ……」

 

「デース……初めて見たデス……」

 

マリアの言葉に、切歌と調が頷いている。

そこへ

 

「お待たせしました。お冷です! それと、メニュー表です! お決まりになりましたら、近くのウェイトレスにお伝え下さい! ある程度でしたら、メニューに無い料理も注文可能ですよ!」

 

とアレッタが、人数分の水とメニューを持ってきた。

メニューを受け取った一行は、各々メニューを見て何を注文しようか、と悩み始めた。

それはマリアも一緒で、パラパラとページを捲りながら何にしようかな、と考えていた。

その時、ある料理が目に入った。新しくメニュー入り、と書かれたマリアの母国の料理だ。

その時、一行も決まったからか、弦十郎が妖夢を呼んだ。

 

「俺はローストビーフを」

 

「ボクはエビフライをお願いします」

 

「アタシはカレーライスをお願いするデス!」

 

「わたしはシーフードスパゲッティをお願いします」

 

弦十郎を筆頭に、次々と頼む一行。最後にマリアが

 

「私はボルシチをお願いするわ」

 

と注文した。

 

「承りました。少々お待ちくださいませ」

 

妖夢が下がると、調が気になった様子で

 

「マリア。ボルシチって名前しか知らないんだけど、何処の料理なの?」

 

「私の母国。ウクライナを含めた東欧の料理よ」

 

ボルシチ

東欧を中心に、一部西アジアでは一般的な家庭料理に挙げられる。

ビーツを使った赤いスープ料理で、地域毎に違いはあるが、大体は酸味があるが甘みも感じられる料理となっている。

軽く説明している間に、クロ、早希、妖夢の三人が料理を運んできた。

料理を各々の前に置いていき、早希が

 

「こちら、ボルシチになります。お熱いので、お気をつけてください。こちらのサワークリームはご自由にお使いください。それと、パンはお代わり自由となっておりますので、お代わりの際には近くの者にお声がけください。それでは」

 

とマリアに説明し、離れた。

マリアの目の前には、深紅のスープ料理。ボルシチが湯気を立てている。

日本ではトマトを使ったタイプが主流だが、出されたのは間違いなく東欧主流のビーツを使ったものだ。

 

(懐かしいわね……)

 

彼女が生まれた年にウクライナは、ロシアから侵攻を受けて戦争に突入。彼女が物心つく前に彼女の母親はウクライナから離れていて、マリアとセレナは長年アメリカに居た。

何時しかウクライナとロシアの戦争は、ロシアの戦力維持が困難になったのと、内戦が勃発した事で、ロシア軍がウクライナから撤退して終戦していた。

だが彼女と妹のセレナは、訳あってアメリカに居続け、今に至る。

最後にボルシチを食べたのは、何時だったのか、それすら曖昧な位だ。

弦十郎や切歌達は既に食べ始めているが、調が興味深そうに

 

「それが、ボルシチ?」

 

「ええ。それも、本格的なボルシチよ。日本式のトマトじゃなく、ビーツを使ったタイプ……」

 

マリアは別けてあった僅かな量のサワークリームを、ボルシチに乗せた。恐らく別けてあったのは、好みに対応する為だろう。

そしてマリアは、ライ麦パンを千切り、スープに浸して口に運んだ。

少し酸味がありつつも、ビーツの甘さが口の中に広がる。ビーツだけでなく、一緒に煮込まれた野菜と肉の旨みも調和して、マリアを魅了した。

そしてマリアは、一口サイズにライ麦パンを千切ってスープに浸してから、用意されていた取り皿に置いて、調に差し出した。

 

「いいの?」

 

「調なら、再現出来るかもしれないわね」

 

調は彼女達の中で一番料理上手で、様々な料理を研究しているから、もしかしたら再現出来るかも、とマリアは考えたようだ。

マリアの言葉を聞いた調は、頷いて

 

「うん。頑張る」

 

と一言言って、小さい口で食べた。

それを見たマリアは、次に肉をスプーンで取り出し、スープに浸したパンに乗せて食べた。

肉にもビーツを含めた野菜の旨みが染み込んでいて、肉も柔らかくなっている。

 

「本当、このお店は美味しいわね」

 

「まだ食べたいなら、俺が出すから、遠慮なく頼め!」

 

「相変わらずの大人デス!」

 

弦十郎の言葉に切歌が反応し、笑いが溢れた。

その後、心ゆくまで料理を堪能し、サンドイッチとおにぎりのサービスを受け取り、退店したのだった。

 

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