異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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113皿目 照り焼きバーガー

 

 

 

タツゴロウがその場所に居たのは、本当に偶然だった。

タツゴロウは村から山賊を討伐してくれと頼まれて、山の中腹辺りにあった山賊の砦に突撃し、山賊達を全員斬り捨てた。

他に残党が隠れてないか確認する為に歩いていたら、三人の少年冒険者達がレイスに追いかけられている処に遭遇。

三人にレイスに対処する反撃方法が無いと察したタツゴロウは、行き掛けの駄賃だとレイスを一刀両断した。

 

「ふむ……無事か、若人達よ」

 

タツゴロウはレイスが復活しないか確認してから、助けた三人に問い掛けた。

すると三人は

 

「た、助かりました……」

 

「まさか、あの死霊術師がレイスを召喚出来る奴だったなんてな……」

 

「死霊術師は先に倒せたんだけど、レイスは倒せなくて、逃げるしかありませんでした……」

 

息も絶え絶えだったが、タツゴロウは三人の無事を確認した。そして話を聞くと、山賊の砦から少し離れた位置に死霊術師が潜伏していた洞窟が有ったらしく、三人はギルドで死霊術師を倒す依頼を受注し、来ていたらしい。

三人の案内でその洞窟に向かい、確かに死霊術師の遺体を確認した。

調べてみたら、その死霊術師は山賊達と結託し、大量の死体を集め、何らかの大規模な計画を考えていたようだ。三人は、その計画が発動する直前に来て、死霊術師を撃破した形らしい。

 

「ふむ、間一髪というところか……大手柄だ、お主達。ギルドには、拙者から口添えしよう」

 

タツゴロウの言葉に、三人は歓声を挙げた。

そんな三人を見ていたタツゴロウは、ある事に気付いた。

 

「……もしやお主達は、以前に異世界食堂に来て、はんばーがーなる料理を食べていた三人か?」

 

そう、この三人は、以前にハンバーガーを食べに来店していた少年達だった。少年達は故郷を飛び出し、冒険者として旅をしていたのだ。

 

「え? おっさん、異世界食堂を知ってんのか? あだっ!?」

 

「待ってください……その東方の服装に、片刃の剣……まさか、貴方はタツゴロウ殿ですか!?」

 

失礼な口を聞いたジャックの頭にテリーが拳を振り下ろし、タツゴロウに気付いたケントが問い掛けた。

その問い掛けに、タツゴロウは名乗っていなかった事に気付いた。

 

「そういえば、名乗っていなかったな。拙者はタツゴロウだ」

 

タツゴロウが名乗ると、三人は驚きの声を挙げた。

まだまだ冒険者としては下位の三人からしたら、タツゴロウは遥か高みの冒険者。

そんなタツゴロウと偶然出会い、しかも助けてもらったというのは奇跡に等しかった。

その後、タツゴロウと三人は近くのギルドに向かい、詳細を報告。ギルドは至急調査隊と教会と共同で浄化に当る事を確約。

ギルドから臨時報酬も含めた報酬を貰って、また旅に出る事にした。

そしてタツゴロウは、先達として色々教えながら

 

「そういえば、お主達。あれから、異世界食堂には行けているのか?」

 

と三人に問い掛けた。

 

「あ、いや……」

 

「実は、もと居た村のしか扉を知らなくて……」

 

「だから、行けてないんです……」

 

三人は苦い表情を浮かべながら、そう返した。

 

(ふむ……)

 

タツゴロウは少し考えると

 

「この先の村で、今日は休もう……明日、この付近にある扉の場所を教えよう」

 

と告げた。

翌日、タツゴロウは約束通りに三人を近くの扉に案内した。

川辺の窪みの中にある扉。

 

「異世界食堂の扉は、注意深く探すと見つかる。もし道中で旅小人を見つけたら、尾行か少々値は張るが、金銭で教えてくれる事もある」

 

タツゴロウは探すコツを教えると、扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ!」

 

アレッタの元気な声が出迎え

 

「おや、タツゴロウさんが誰がと一緒とは珍しいですね」

 

「まあ、そういう時もある」

 

明久の言葉に、タツゴロウはそう返した。

そしてタツゴロウは、三人を伴って一つの机に座り、何時もの照り焼きチキンを注文しようとした。

その時、入り口のメニュー看板に《新メニュー 照り焼きバーガー》と書いてある事に気付き

 

「すまぬ。照り焼きバーガーとは?」

 

と早希に問い掛けた。

 

「はい。新しいメニューでして、甘辛い醤油ダレをパティという牛肉と豚肉を混ぜたお肉に絡めて焼いてます。そのパティと野菜、マヨネーズを一緒にパンで挟んだ料理になります」

 

「ふむ……確か、照り焼きは普段食べている料理と同じ名前か……中々旨そうな料理だ。ではそれと、飲み物によく冷えた茶を頼む」

 

早希の説明を聞いたタツゴロウは、気になって注文。すると

 

「なんか、話聞いたら食いたくなってきたから、俺も!」

 

「僕も同じものをお願いします。飲み物はコーラで」

 

「僕も同じものをお願いします」

 

タツゴロウに釣られたのか、立て続けに三人も注文した。

その後は料理が来るまで、主に雑談に興じていた。

その中でタツゴロウが異議を唱えたかったのは、吟遊詩人が紡いでいた詩なのだが、タツゴロウが一人で20体のオークの群れを斬り捨てた、という詩があった。のだが、実際にタツゴロウが一人で斬り捨てたオークの群れは、8体だった。

とは言え、一人で8体も十分凄い事ではある。

オークは力と防御が高い魔物で、一体を倒すには最低三人必要とされる魔物だ。

間違っても、一人で同時に複数体相手に戦える魔物ではない。

その時

 

「お待たせしました、照り焼きバーガーです」

 

と霊夢と妖夢が、四人の前に料理を置いた。

真っ白な皿の上に、付け合わせのポテトと共に一つのバーガーがあった。

そして、飲み物を置いて霊夢と妖夢が離れると

 

「若人達よ。此度は私の奢りだ。遠慮なく食べよ」

 

タツゴロウはそう言うと、まずは観察した。

確かに、漂ってくる匂いはタツゴロウがよく食べている照り焼きチキンと同じ匂い。

持ち上げて見ると、下からパン、肉、黄色いソース(マヨネーズ)緑色の野菜(キャベツ)赤い野菜(トマト)が見える。

 

(さて、味は……)

 

そしていよいよ、タツゴロウは一口食べた。

その直後、まず口の中に広がったのは、慣れ親しんだ照り焼きチキンと同じ甘辛い醤油ダレ。だが同時に、チキンとは違う肉汁と肉々しさも感じる。

この肉々しさの秘訣は、普通のハンバーグやハンバーガーとは違い、牛肉と豚肉の挽き肉が普段より荒いのが混ざっている点にある。

それにより、パティとしての柔らかさと肉々しさを両立させた。

次に感じたのは、マヨネーズのまろやかさと軽い酸味と、瑞々しい野菜の調和。

それらにより、少々しつこさすら感じた照り焼きソースと肉汁が、さっぱりと洗い流される。

気付けば口の中にあったのが無くなると同時に、タツゴロウは二口目を口にしていた。

そこからは早かった。

あっと言う間にバーガーを食べ終え、付け合わせのフライドポテトも食べ終わった。

気付けば三人も食べ終わっていて

 

「うーん……僕は、こっちの方が好きかなぁ」

 

「確かにこれも旨いけどさ、俺はやっぱりハンバーガーの方が好きだな」

 

「もうこの肉だけでも、ご馳走だ。この肉だけでも食べたい」

 

と感想を述べていた。

それを見聞きしていたタツゴロウは

 

(ふむ、こういうのも良いな……次はライスバーガーとやらで作ってもらうよう頼んでみるかな)

 

タツゴロウはそう思いながら、冒険者としても未来ある三人を見ていた。

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