異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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17皿目 キーマカレー

(いらっしゃいませ。洋食のねこやに、ようこそ)

 

店に入ったシロエ達全員の頭の中に、声が聞こえた

 

「今のは……」

 

とアカツキが呟いた直後に、全員の前にアレッタが現れて

 

「いらっしゃいませ!」

 

と快活な笑みを浮かべた

すると、シロエが

 

「あの、ここは……」

 

と言葉を漏らした

すると、アレッタが

 

「ここは、洋食のねこやと言いまして、別名は異世界食堂ですよ!」

 

と告げた

それを聞いたミノリが

 

「異世界食堂……」

 

と呟いた

すると、トウヤが

 

「異世界って……どういうことだ……?」

 

と首を傾げた

その時

 

「なにかあった?」

 

とキッチンから、明久が出てきた

その明久を見て、にゃんた班長が

 

(この青年は、確か……)

 

と顎に手を当てて、黙考していた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「ゲームに閉じ込められる、大災害……」

 

「はい……日本だけで、推定三万人が閉じ込められました」

 

フロアの一角で、明久はシロエからシロエ達の状況を聞いた

シロエ達が居るのは、ある老舗MMORPGの世界らしい

 

「んー……ニュースでは、そんな話は聞かないですから……やはり、別の地球なんでしょうね……」

 

「なるほど……確かに、異世界ですね」

 

明久の話を聞いて、シロエはそう結論付けた

しかし、頭の中では

 

(やっぱり、あのドアが異世界に繋がってる……つまり、あのドアの仕組みを解明すれば……)

 

と考えていた

その時、不意にキュルル……と音が聞こえた

それを聞いた明久は

 

「何か食べますか? 大抵のものなら、提供出来ますよ?」

 

と笑顔で言った

それを聞いたシロエは、少し驚いた表情で

 

「え、でも……お金は……」

 

と言い澱んだ

シロエ達が使うお金は、そのゲーム世界で使うお金だ

一応、現実たるこの異世界食堂で使えるとは、思っていなかった

すると、明久が

 

「まあ、現実と行き来出きるようになったら、払ってもらいますよ。それまでは、ツケでどうですか?」

 

と提案した

どうやら、シロエがゲーム世界と現実世界の往来する方法を探してることに、気付いたようだ

明久の提案を聞いて、暫く黙考すると

 

「わかりました……ありがたく、その案に乗らせてもらいます」

 

と頭を下げた

それを聞いた明久は、アレッタに

 

「アレッタちゃん、奥の休憩部屋に置いてある黄色の箱から何冊か茶色のメニューを持ってきて。クロさんは、人数分のお冷やを」

 

と指示を出した

そして明久は、キッチンへと入っていった

それを見送った後、先にクロが来て

 

(どうぞ)

 

と人数分の水を、置いていった

その後、アレッタが

 

「お待たせしました。メニューです」

 

とメニューを数冊、机の上に置いていった

それを持ったメンバーは、メニューを見ながら

 

「どれがいいかなぁ」

 

「迷うなぁ」

 

と話していた

そんな中で、にゃんた班長は

 

(我が輩が伺った時より、メニューが増えてますにゃ……やはり、彼の恩恵ですかにゃ?)

 

と考えていた

すると、シロエが

 

「あの、すいません」

 

とクロに視線を向けた

 

(なんでしょうか?)

 

クロが顔を向けると、シロエは

 

「このメニューに無いのも、頼めるんでしょうか?」

 

とクロに問い掛けた

すると、クロは

 

(少々お待ちください)

 

と言って、キッチンに入っていった

少しすると、明久が出てきて

 

「何をご注文で? 物によっては、お断りすることになりますが……」

 

と告げた

すると、シロエが

 

「えっと……キーマカレーなんですが……大丈夫ですか?」

 

と問い掛けた

それを聞いて、明久は

 

「ああ……運がいいですね、お客さん……試作品になりますが、ありますよ」

 

と言った

そして続けて

 

「それで良ければ、お出しすることが出来ます。あ、その場合はお代は頂きません」

 

と言って、頭を下げた

それを聞いたシロエは

 

「では、お願いします」

 

と言った

それを聞いて、明久は

 

「承りました」

 

と頷いた

他のメンバーは、それぞれ好きな料理を注文

そして、暫くして

 

「お待たせしました! キーマカレーです!」

 

シロエの前に、そのカレーが置かれた

キーマカレー

細かく刻まれた具材によって作られた、カレーである

そもそもキーマというのは、タイの言葉で細かくという意味らしい

なぜ、キーマカレーを注文したのか

それは、シロエが幼い頃によく行っていたカレー屋で食べていたカレーの一種類だったからだ

その店の名前は、生憎と覚えていない

一度死んだことで、記憶の一部を失ってしまったからだ

だが、味は覚えているつもりである

そしてシロエは、キーマカレーを一口食べた

口の中に広がるのは、細かく刻まれた具材の風味

それらと香辛料が合わさり、非常に深い味わいが口の中に広がっていく

 

(久しぶりに食べたな、キーマカレー……)

 

そもそも、キーマカレーは日本では余り食べられないカレーだ

日本で一般的なのは、アルフォンスが食べているカレーだ

だが、シロエにとっては慣れ親しんだ味

だから気が付けば、我無捨羅に口に運んでいた

そもそも、シロエはカレーが好きなのだ

そういう意味では、アルフォンスと気が合うのかもしれない

そしてシロエは、食べ終わると水を飲みながら

 

(今度、にゃんた班長に作ってもらおうかな……)

 

と考えていた

にゃんた班長が、彼のギルドの料理長なのだ

にゃんた班長の腕前ならば、遜色無いキーマカレーを作ってくれるだろう

とシロエが思っていると、明久が近寄り

 

「どうでしたか?」

 

と問い掛けた

すると、シロエは

 

「はい、美味しかったです。また食べたいですよ」

 

と答えた

それを聞いた明久は

 

「それは良かった。だったら、メニュー入りは決まりですね」

 

と頷いた

その後シロエは、もう一杯キーマカレーを食べて退店

そして、消えていくドアを見ながら

 

(あのドアの仕組み、研究してみよう……そうすれば、往来の方法が確立しそうだ)

 

と頷いた

そうして、近くに居るメンバーに

 

「また来週、行こう」

 

と宣言したのだった


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