異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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新たな始まり

「いやあ、先週は助かった」

 

「いえいえ、お客様があまり来なかったので、大丈夫でしたよ」

 

二人はそう言いながら、エレベーターに乗った

そして、ねこやの階に止まり

 

「さて、予定通りなら、先に来てる筈だが……」

 

「ああ、彼女ですか?」

 

と二人が、ホールに出た

すると、ウェイトレス姿の早希が居て

 

「今日から、お世話になります」

 

と頭を下げた

すると、二人は

 

「よろしくな、早希ちゃん」

 

「これからは、仲間だね」

 

と言った

その直後、ドアが開き

 

「おはようございます!」

 

とアレッタが現れた

そして、ドアが閉まった直後にまたドアが開き

 

(おはようございます)

 

とクロが入ってきた

 

「おう、おはようさん」

 

「おはよう、クロさん」

 

「クロさん、おはようございます!」

 

と店長、明久、アレッタの三人が挨拶した

そして店長と明久は

 

「さてと、二人に紹介するか」

 

「今日から、一緒に働くことになった」

 

と早希に視線を向けた

すると、早希は

 

「山方早希です。よろしくお願いします」

 

と無難に、挨拶した

そこから全員で、掃除をしていると

 

「アレッタちゃん、表情よくなったね?」

 

と明久が、アレッタに問い掛けた

すると、アレッタは

 

「はい! 新しい仕事、見つかりました!」

 

と笑顔で言った

 

「お、それは良かったな。何処だ?」

 

アレッタの話を聞いた店長が、そう問い掛けると

 

「はい。メンチカツさん……サラ様の家のハウスキーパーです!」

 

と言った

サラの家

ゴールド家は、長い歴史を誇る大陸に誇る大商家である

サラはその家の長女なのだが、ある情熱に突き動かされて、実家を飛び出して、別荘の一つに住んでいるのだ

その別荘に住んでいるサラだが、家事が苦手で、掃除や洗濯が出来ないでいた

そのためにサラは、斡旋所にハウスキーパーの募集を頼んだのだ

その募集に、アレッタが来た

正に、サラにとっては運命だっただろう

サラは半魔族に対する差別感は無く、アレッタに対する印象は良かった

それに何より、アレッタは働き者である

賃金も良好で何より、その別荘に住めることになった

廃墟の教会より、遥かにマシな条件である

 

「なるほどねぇ……」

 

「良かったな、頑張れよ」

 

「はい!」

 

アレッタの話を聞いた店長と明久は、そう言ってアレッタの頭を撫でた

そして、アレッタとクロを見た早希は

 

「本当に……異世界に繋がってるんだ……」

 

とドアを見た

それは、つい先日のこと

早希の祖母から、話を聞いたのだ

異世界食堂

今から、約三十年前に始まった店

先代店長とそのウェイターの二人で、始めた小さな店

最初はまったく客が来なかったが、ドアが増えていき、風の噂を聞き付けてか、少しずつ異世界からの客は増えた

今の店長はまだ独身で、跡取りはどうするのかは未定

だが、将来有望な料理人が来た

しかし、先は分からない

 

「うん、頑張ろう……慣れることから」

 

早希はそう呟きながら、机を拭いた

そして、掃除が終わるとドアが開き

 

「いらっしゃいませ、洋食のねこやにようこそ!」

 

入ってきた客を、全員で出迎えた


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