異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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22皿目 プリン・アラモード

東大陸において、帝国と大陸を二分する大国

公国には、ある一人の有名な王女が居た

その名は、ヴィクトリア

彼女は、ハーフエルフだった

しかし、直近にエルフの親は居ない

それは、隔世遺伝と呼ばれる現象だった

何代も前の先祖の遺伝子が、何らかの要因で強く現れるのだ

しかし、隔世遺伝とは言えども彼女はハーフエルフ

そして王女と言えども、ハーフエルフには王位継承権は与えられない

その理由が、今のではなく嘗ての帝国にあった

今から約60年程昔、帝国は一度亡んだ

その理由となったのが、旧帝国最後の王だった

旧帝国最後の王は、ハーフエルフだった

その旧王は、常人よりも遥かに永い時の間政務に付いた

その統治は優秀で、旧王は国民に慕われた

しかしある日、その旧王は自分の命が尽きることを察した

故に旧王は、当時最も信頼していた同じハーフエルフの宰相にある指示を下した

それは、古代エルフが編み出した大禁呪の復活

それによる不死を願ったのだ

だが、それがいけなかった

考えるべきだったのだ

なぜ、古代エルフ達は編み出したその術を、大禁呪にしたのか

その大禁呪を使えば、使用者と対象者は(ことわり)から外れた存在

死者王(リッチ)になるのだ

死者王となった二人は、理性を失い暴走を始めた

そして最悪なことに、旧王と宰相はそれぞれ、剣と魔法の高い使い手でもあった

その二人を止めるために、旧帝国軍は全軍で交戦を開始した

だが、奮戦虚しく全滅

せめてもの救いは、後の新帝国の開祖にして王

ヴィルヘイムを含めた数多くの民間人を、逃がせたことだっただろう

そして数十年後、場所は変わったが帝国は復活を果たした

そしてヴィルヘイムは、ダンシャクを帝国中に広めた後に引退した

公国ではそれを教訓として、ハーフエルフが政治に深く関わることを禁止した

第二の旧帝国にならないために

だがヴィクトリアは、そのことを別段気にしなかった

ヴィクトリアは、自分の感性が普通の人間たる他の親族と違うことを自覚していたから

 

(まだかしら……)

 

そんな彼女は、与えられた西の離れの塔の研究室で、床に書かれた魔法陣を見ていた

ヴィクトリアだが、エルフの血故か魔法に高い適性を示した

魔法の修行を始めて約三ヶ月で、宮廷魔法使いの腕を越えた

その後ヴィクトリアは、約三年で師匠たる四英雄の一人にして、異世界食堂の常連

アルトリウスに一人立ちすることを許された

その後ヴィクトリアは、塔で魔法の研究をしながら、ある魔法陣を作り出した

それが、異世界食堂のドアを呼び出す魔法陣だ

その魔法陣を編み出したのは、アルトリウスだった

そしてヴィクトリアは、そのアルトリウスに連れられて異世界食堂を知ったのだ

 

「ようやくね……」

 

現れた扉を見て、ヴィクトリアは腰を上げた

そしてヴィクトリアは、扉を開けた

 

「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ!」

 

「……新しい子?」

 

「あ、はい。新しく給士となりました早希と言います」

 

ヴィクトリアが首を傾げると、早希は名乗った

それを聞いたヴィクトリアは、近くの席に腰掛けながら

 

「そう……頑張ってね」

 

と応援した

 

「ありがとうございます」

 

早希はお礼を言いながら、メニューを渡そうとした

だが、ヴィクトリアは首を左右に振って

 

「プリン・アラモードをお願いするわ」

 

と注文した

 

「はい、承りました」

 

注文を受けた早希は、そう言ってキッチンに消えた

そして、数分後

 

「お待たせしました、プリン・アラモードです! どうぞ、ごゆっくり」

 

とアレッタが、料理を持ってきた

底が高く広い透明の器に、震える黄色い食べ物

プリンを中心に、様々なフルーツや生クリームがふんだんに使われている

もし同じ物を公国や帝国で作ろうとした場合、一体どれ程の金額になるのか、ヴィクトリアにも予想出来ない

ヴィクトリアが知る限り、最近異世界食堂が発祥だと思われる食べ物が色々と出てきている

アルフェイド商会が出したピザや、ドワーフの国で作られ始めたウィスキー等が、その一例だろう

 

「……さて」

 

脇に逸れた思考を戻し、ヴィクトリアはスプーンを持って、まず生クリームを口に運んだ

まず感じたのは、柔らかさ

そしてほぼ同時に、仄かな甘さが口の中に広がった

帝国や公国では、お菓子は甘ければ甘いほど良いと考えられていて、かなりしつこい甘さで、金額も高くなる

しかし、異世界食堂は違った

控え目な甘さだが、それがフルーツや主役たるプリンと調和する

使用されるフルーツも、時季により変わる

今は柑橘とイチゴ、生成り色の果物(バナナ)のようだ

柑橘は酸っぱく、生クリームで甘くなった口の中を爽やかにしてくれる

生成り色の果物は、まったりと甘いが、しつこくない

そしてイチゴは、一つ一つで味が僅かに異なる

甘かったり、酸っぱかったりと、味に変化があって、飽きない

そしていよいよ、主役

プリンに差し掛かった

プリンにスプーンを刺すと、僅かな抵抗の直後に掬えた

プリンはかなり柔らかく、簡単にスプーンで掬える

そしてそのプリンを、口に運んだ

すると、プリンに使われている卵の風味と甘さ

そして、キャラメルソースとやらのほろ苦くも甘い味が、一気に口の中に広がる

ヴィクトリアは、このプリンに夢中だった

初めて異世界食堂に来たのは、今から数年前

まだアルトリウスに師事していた時だった

ある日アルトリウスは、ヴィクトリアを連れて異世界に向かった

その理由が、メニュー作りの為だった

異世界食堂のメニュー表

それは、約30年の間に一部常連客と共に作り上げた物なのだ

ヴィクトリアが担当したのは、デザート類

店長が代替わりした際、新しくデザート類が追加された

しかし、常連客の殆どが甘いことに苦手意識が強かった

その際にアルトリウスが、ヴィクトリアを連れてきて、デザート類のメニュー作りを手伝わせたのだ

その一番最初に食べたのが、プリン・アラモードだった

 

(私が書いたのは、一枚だけの筈だけれど……)

 

ヴィクトリアはそう思いながら、早希やアレッタが持っているメニューを見た

ヴィクトリアが書いたのは、一枚ずつ

しかし、ここは異世界食堂

同じ物を作り出す技術が有っても、不思議ではない

ヴィクトリアはそう結論着けると、プリン・アラモードを食べ終わった

そこに、明久が現れて

 

「どうぞ、ヴィクトリアさん。何時ものです。分かってるとは思いますが、お早めに食べてください」

 

とヴィクトリアの前に、一つの紙箱を置いた

それを見たヴィクトリアは、確認のために蓋を開けた

中に入っていたのは、ヴィクトリアが愛して止まぬプリンだ

4個入っている

 

「ありがとうね」

 

ヴィクトリアはそう言うと、胸元からお金を取り出して、明久に手渡した

その枚数を確認すると、明久は

 

「確かに……またのお越しをお待ちしてます」

 

と頭を下げた

その後ヴィクトリアは、扉を潜って帰宅

部屋のある小さい卓の上の豪奢な装飾が施された、宝石箱を開けた

すると中から、冷気を示す白い空気が漏れた

それは、ヴィクトリアが魔法を使って作り出した、自家製の冷蔵庫だ

ヴィクトリアはその中に、プリンを大事に仕舞った

 

「さて……研究を再開しましょうか」

 

それは、公国に深く関わる研究だが、同時に、自身のための研究

より、プリンを仕舞える箱を作る

その為に、ヴィクトリアは研究を続ける

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