異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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少し原作と違うのは、気にしないでねっ


サイコロ、コロコロ

ある世界にては、全てはサイコロで決められていた

生きるも死ぬも

奇跡が起きるか、不幸が起きるのか

神々が振るったサイコロの出目により、その世界に生きる人々の運命は決められていた

しかし、何事にも例外は存在する

西の辺境の街に、ある一人の冒険者の男が居た

通称、ゴブリンスレイヤー

西方では、最優の冒険者と呼ばれる冒険者だ

最優たる理由は、その名前の由来となる魔物

ゴブリンを優先的に討つからだ

故に、ゴブリンスレイヤー

魔物としては最弱だが、数が増えやすく、それ故に防衛能力が無い小さな農村や開拓村にとっては災害に等しい存在だ

しかし、そんなゴブリン討伐依頼が出されても、好き好んで受ける冒険者は少ない

その理由が、報酬が安いからだ

ゴブリン討伐はよく出されるが、報酬が安いために率先して受けたがらないのだ

そんなゴブリン討伐を率先して受けるゴブリンスレイヤーは、村々にとっては有難い存在だ

なぜ、ゴブリン討伐の依頼を率先して受けるのか

その理由は、今は語らないでおく

そんなゴブリンスレイヤーは、少し前まで単独(ソロ)でゴブリン討伐に赴いていたが、あるゴブリン討伐の時から一人ではなくなった

しかも最近では、更に人数が増えた

 

「……珍しいな」

 

「あ、やっほー」

 

ゴブリン討伐から帰ったゴブリンスレイヤーは、冒険者組合(ギルド)に報告しようとした

その矢先に、彼が下宿している牧場に居る幼馴染みの少女

牛飼娘が居た

短く切った赤い髪に、快活そうな笑顔が特徴だ

 

「うん。ちょうど搬入に来てたんだ」

 

ゴブリンスレイヤーの言葉に、牛飼娘はそう言った

どうやら、牧場で作ったチーズや牛乳を納めにきたようだ

 

「……すまんな、離れていて」

 

「いいよー。ご指名の依頼だったんでしょ?」

 

実はゴブリンスレイヤーは、離れた水の都から名指しの依頼を受けて、離れていたのだ

そしてゴブリンスレイヤーは

 

「……報告書だ」

 

と受付に出した

すると、笑みを浮かべて立っていた受付嬢が

 

「お疲れ様でした、ゴブリンスレイヤーさん。どうでしたか?」

 

とゴブリンスレイヤーに問い掛けた

その問い掛けに、ゴブリンスレイヤーは

 

「……多少イレギュラーは有ったが、問題は無かった」

 

と報告した

その直後、ゴブリンスレイヤーの後ろに居た神官少女が

 

「何言ってるんですか!? 危うく死ぬところだったじゃないですか!」

 

と怒った

それを聞いた受付嬢と牛飼娘が

 

「ええ!?」

 

「だ、大丈夫だったの!?」

 

とゴブリンスレイヤーに問い掛けた

すると、手甲と脚甲を着けた格闘娘と魔法使い娘が

 

「本当に、間一髪でした」

 

「剣舞者が介入してなかったら、間違いなく致命傷(クリティカル)入ってたわね」

 

と言った

そこに、腰に二本の刀を差した剣舞者が

 

「……間に合っただけだ」

 

と端的に言った

しかし、僧侶蜥蜴人が

 

「いや、貴殿の見事な踏み込みと剣捌きがあったからこそ、誰一人欠けることなく帰還出来たのだ」

 

と両手を合わせながら言った

それに同意するように、上妖精族が

 

「格闘娘と合わせて、今回の立役者よ。あれだけの数のゴブリンと戦って、前衛が瓦解しなかったの」

 

と疲れた様で言った

最後に、鉱人術士

 

「本当じゃわい。今回ばかりは、肝が冷えたわ」

 

と言った

 

「しかも、胸糞悪い物まで出てきて……あんなのを考えた奴、火矢で撃ってやりたいわ……」

 

魔法使い娘は吐き捨てるように、そう呟いた

どうやら、相当な戦いがあったようだ

その後、ゴブリンスレイヤー一党プラス受付嬢と牛飼娘は歩いていた

ゴブリンスレイヤー達は今回の依頼で使った消耗品の発注

受付嬢と牛飼娘は、帰る前の買い物だ

そして、護衛次いでに受付嬢を冒険者組合の寮に送っていた時だった

 

「……ん」

 

とゴブリンスレイヤーが、ある方向を見て

 

「受付嬢……あそこに、あんな扉は有ったか?」

 

と問い掛けながら、ある方向を指差した

問われた受付嬢だけでなく、全員はゴブリンスレイヤーが指差した方向を見た

その先には、街を囲う巨大か壁が有るだけのはずだったが

 

「……いえ、無かったはずです……」

 

その一ヶ所に、ネコの絵が描かれた木製の扉が有った

すると剣舞者が

 

「……凄まじい魔力だな……何らかの魔道具のようだが……」

 

と軽く表面を触りながら言った

するとゴブリンスレイヤーは

 

「……念のために調べる……」

 

と言って、腰の剣帯に手を伸ばしつつ、ドアの取っ手を掴んだ

そして、神官少女が3、2、1と指折りカウントしてから、ゴブリンスレイヤーはドアを開けた

その直後

 

「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ!」

 

と明るい声で、歓迎された


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