異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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26皿目 チーズフォンデュ

「……冒険者……」

 

「はい」

 

受付嬢の説明を聞いて、明久は受付嬢の後ろに居る一同を見た

受付嬢の説明通り、全員の首もとにタグがある

 

(こっちで言う、ドッグタグってやつか……)

 

神官娘、魔法使い娘、格闘家娘の三人は黒曜のタグを着けていて、剣舞者が鋼鉄、他の全員は銀のタグを着けている

 

「アレッタちゃん。アレッタちゃんの世界にも、冒険者って居るの?」

 

「はい。最も有名なのは、魔族との戦争を終わらせた四英雄でしょうか?」

 

明久の問い掛けに、アレッタはそう答えた

明久は知らないが、その内の二人は異世界食堂の常連客である

 

「しかし、まさか異世界に繋がるドアなんて……」

 

「まあ、僕や店長も原理は把握してないんですよ……まあ、どうやら人がよく居る場所の近くに出る。というのは分かってるんですが」

 

受付嬢が驚いていると、明久はそう言いながらドアを見た

そして

 

「では、何か食べますか?」

 

と問い掛けた

それを聞いて、ゴブリンスレイヤーが何か言おうとした

すると、牛飼娘が思い出したように

 

「あ、今日叔父さんね、牧場仲間と街で飲んで帰るって言ってたよ」

 

とゴブリンスレイヤーに言った

叔父さんというのは、彼女の叔父であり、牧場の主である男性だ

今や、牛飼娘の唯一の親族になる

 

「……そうか……」

 

牛飼娘の話を聞いて、ゴブリンスレイヤーは短くそう言った

それを聞きつつ、明久は

 

「それで、何か食べられない食材はありますか?」

 

と問い掛けた

やはり、宗教等で食べられない物が有るだろうと、予想したからだ

 

「儂らは、基本的に何でも食べるわい。のう、鱗の」

 

「然り。拙僧は好き嫌いはせぬ。ただ、チーズを使った料理を所望する」

 

最初にそう言ったのは、鉱人術師と蜥蜴僧侶だった

もはや、料理に興味津々のようだ

 

「……何か、食べたいのはあるか?」

 

「んー……私は大丈夫かなぁ? 君は?」

 

「……俺も、大丈夫だ」

 

ゴブリンスレイヤーは、幼馴染みである牛飼娘に問い掛けるもそう返され、当たり障りの無い程度にそう答えた

ゴブリンスレイヤーはある料理が好きだが、場を乱すような発言は控えようと思ったようだ

すると、三人娘が

 

「私も、基本的には好き嫌いは無いですね……」

 

「私もだ」

 

「私もね」

 

と言った

そして、上妖精と剣舞者が

 

「んー、アタシは肉はちよっとねぇ」

 

「俺は、好き嫌いは無い」

 

と言った

すると、鉱人術師が

 

「耳長の。お前さんは、肉を食え! そんなんだから、何時まで経っても、金床のままなんじゃろうが」 

 

「うっさい、ドワーフ! 樽のあんたに言われたくないわよっ!」

 

鉱人術師の言葉に、上妖精は反論した

それはどうやら、何時ものやり取りらしく、殆どのメンバーは苦笑いを浮かべながらも放置している

そして最後に、受付嬢が

 

「私も、特に好き嫌いは無いですね」

 

と微笑みながら答えた

それを聞いた明久は、少し悩んだ

 

(ゴブリンスレイヤーさんは食べたいものが有るみたいだけど、それはあの牛飼娘さんが作るのがいいっぽいし……エルフも食べられるのか……)

 

 

「あの、エルフさんに質問ですが」

 

「ん? なにかしら?」

 

明久が呼び掛けると、上妖精は首を傾げた

 

「チーズは、大丈夫ですか?」

 

「ええ、私は平気よ。中には、食べないって同族も居るけど」

 

明久の問い掛けに、上妖精はそう答えた

それを聞いた明久は、少し考えてから

 

「それでは、こちらにお任せで宜しいですね?」

 

と一同に問い掛けた

そして、全員が頷いたのを見た明久は

 

「承りました。少々お待ちください」

 

と言って、キッチンに消えた

そして、早希にボンベ式のコンロを机に置かせた

どうやらそれは初めて見たらしく、一同は興味深く見ている

そして、数十分後

 

「大変お待たせしました。チーズフォンデュです」

 

とまず、コンロの上にチーズがたっぷりと入った鍋を置き、更には野菜や肉、魚を一口サイズに切って串に刺してあるのを幾つかの皿に分けて置いた

 

「ほおっ!」

 

「こりゃ、初めて見たわい!」

 

蜥蜴僧侶は眼を輝かせ、鉱人術師は驚き

 

「こんなにチーズを使う料理が有るんだ!」

 

「……ほお」

 

牛飼娘とゴブリンスレイヤーは、素直に驚いている

そして

 

「美味しそうです!」

 

「本当」

 

「面白いわね……」

 

三人娘は、三者三様の反応

剣舞者は無表情故に分からないが、受付嬢が

 

「この匂い……チーズだけでなく、葡萄酒ですか?」

 

と明久に問い掛けた

 

「はい。固まるのと焦げ付きを防ぐために、葡萄酒を混ぜてあります」

 

受付嬢の問い掛けに、明久はそう答えた

すると、上妖精が

 

「もしかして、この串の食材にチーズを付けて、食べるのかしら?」

 

と問い掛けてきた

 

「はい、その通りです。お好みの食材を付けて、食べてください」

 

明久がそう言うと、最初に蜥蜴僧侶が豚肉の串をチーズの中に浸した

そして、一口で食べると

 

「甘露!! 甘露!!」

 

と歓喜の声を上げた

それを皮切りに、全員は各々好きな食材をチーズの中に通して、食べ始めた

それを、カウンター越しに見ていた明久と店長は

 

「ゴブリンスレイヤーだっけか……兜被ったままなのに、器用に食べるな……」

 

「ですねぇ……」

 

と言葉を漏らした

何故ならば、その言葉の通り、ゴブリンスレイヤーは兜を外さずに、器用に隙間から食材を食べているからだ

一同がそれを指摘しないので、どうやら何時ものことのようだ

その後、鉱人術師と蜥蜴僧侶が酒と一緒によく食べ、食材の追加注文をした

そして食べ終わると、全員が銀貨を出して勘定を済ませた

そこに、店長が

 

「この店は、七日に一度開いてますので、またいらしてください」

 

と言って、退店する全員を見送った

そして、消えるドアを見ながら受付嬢が

 

「異世界食堂ですか……今度は……」

 

と頬を染めながら、寮に戻っていったのだった

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