異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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30皿目 シーフードドリア

「魔物と人間が共存する国……」

 

「まあ、俺がその国。ジュラ・テンペスト連邦の主なんですが」

 

明久にそう説明しながら、リムルは人間の姿からスライムの姿になった。それを見た早希が

 

「ねえ、アレッタちゃんの世界にもスライムって居るの?」

 

「居ますけど、狂暴な魔物なんです。内部に取り込んだ獲物を、溶かすみたいで……」

 

「うわ……」

 

アレッタの話を聞いて、早希は体を震わせた。

確かに、そんなことにはなりたくないだろう。

 

「まあ、俺はそんなことをしないから。大丈夫だよ」

 

リムルはそう言いながら、人間の姿に変身した。

そして

 

「シオン、シュナ。ここで飯にするぞ」

 

「リムル樣の判断なら、従いますが……」

 

「ここで、ですか?」

 

リムルの言葉に、二人は首を傾げた。

恐らくだが、味に疑問を覚えているのかもしれない。だが、リムルが

 

「大丈夫。ここの味は、保障するさ」

 

と二人に伝えた。

それを聞いた店長は

 

(ウチのことを知ってるのか?)

 

と片眉を上げた。

そしてリムル達は、アレッタに促されて机に座った。そこに、早希がメニューを人数分持っていったのだが、それをリムルは

 

「ああ、二人分だけでいい。俺は決まってるから」

 

と告げた。

それを聞いた早希は、少し驚いた表情を浮かべつつも、リムルに言われた通り、シオンとシュナの二人の前にメニューを置いた。

そして数分後、シオンとシュナの二人は料理が決まったらしく、メニューを閉じた。それを確認したリムルは、片手を上げてたまたま近くに来たクロを呼んだ。

 

(御注文は、お決まりですか?)

 

三人は頭の中に響いた声に一瞬驚くが、すぐに気を取り直し

 

「私は、トンカツとやらをください」

 

「私は、このカレーライスとやらを」

 

とシオンとシュナは、それぞれ注文した。

そして、最後にリムルが

 

「俺は、シーフードドリア。付け合わせのサラダなんだが、シーザーサラダで頼む」

 

と細かく注文した。

 

(畏まりました)

 

注文を聞いたクロは、頷いた後にメニューを回収して離れた。

それを三人は

 

「あの方……とてつもない魔力です……」

 

「A……いえ、Sすら越えてる……」

 

「体感的には、ミリムに近い強さだな……」

 

と漏らした。

そして、十数分後

 

「お待たせしました、シーフードドリアとシーザーサラダです」

 

とアレッタが、リムルの前に料理を置いた。

料理が届けられた順番としては、リムルが一番最後なのだが、シオンとシュナの二人はまだ料理を食べていなかった。

 

「ったく、俺を待たなくてよかったんだぞ?」

 

「いえ、リムル樣」

 

「リムル樣を待たずに食べれる訳がありません」

 

リムルの苦言に、シオンとシュナの二人は笑みを浮かべながらそう答えた。

そして、三人は

 

『いただきます』

 

と揃って食べ始めた。

そしてリムルが、最初の一口を口に運び

 

「うん、美味い……」

 

と呟くと、シオンとシュナも食べ始めた。

 

(懐かしいなあ……会社で働いてた時は、昼休みとかに来たな……)

 

リムルは懐かしみながら、一口ずつ食べていた。

元人間だったリムルは、ねこやビルの近くにあったある会社で働いていて、昼休みの時はよく後輩と一緒に食べに来ていたのだ。

しかし、訳あって今居る世界に転生。

それ以来、食べていなかったのが、今食べているシーフードドリアだった。

耐熱性の器の底にご飯を敷き詰めて、その上にねこや特製のデミグラスソースとホワイトソースを掛けて、その上にイカや魚の切り身、タコを乗せてから、チーズをまぶして焼いてある料理だ。

人間だった頃は一人暮らしだったために、どうにも簡単なご飯しか食べておらず、ねこやでのお昼が数少ない楽しみだと言っても過言ではなかった。

 

(また、食べられるとはなぁ……)

 

とリムルが食べていると、それをたまたま見た店長が

 

(ん?)

 

リムルの姿に、別の人間の姿が重なった。

大柄な体格に、少し無愛想ながらも後輩の面倒見が良かった一人の男性。

 

(まさか……な)

 

と店長は首を傾げながらも、新たな料理を作るのに意識を戻した。

そして、食べ終わると

 

「いいか、シオン。料理ってのは、これを言うんだ。見た目と味の両立……それこそが、料理だ」

 

「はい、勉強になります……」

 

とリムルは、シオンに教えていた。

その光景に明久は、何故か悪寒が走った。

 

「明久さん? どうかしたんですか?」

 

身震いした明久を見て、早希が問い掛けると

 

「大丈夫、高校時代を思い出しただけだから」

 

と明久は答えて、調理に意識を戻した。

そして、三人は立ち上がると

 

「すいません、お代なんですが……」

 

とリムルが、金貨を取り出した。

それを見た明久が

 

「えっと、金貨と銀貨、銅貨のレートは、どうなってますかね?」

 

とリムルに問い掛けた。

それにリムルが答えると

 

「うん、同じですね」

 

とおつりを返した。そして

 

「ここは、七日に一度開いてますので、またお越しください」

 

と頭を下げた。

退店したリムルは、消えていくドアを見ながら

 

「また行けるようになるとはな……」

 

と呟いたのだった。

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