異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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34皿目 パエリア

「世界樹を救うため……」

 

「はい。私は違いますが、アイリスは頑張ってます」

 

ユーと冥王の話を聞いた店長は、二人の背後に居るアイリス達を見た。

様々な見た目と年齢が居る。

そして何より、全員が美女美少女だ。

 

(ハーレムかな?)

 

「明久さん、変なこと考えてませんか?」

 

「……ソンナコトナイヨ」

 

「カタコトな時点で怪しいです」

 

明久の返答に、早希は溜め息混じりに言うしかなかった。

 

「それで今日は、実は学園の食堂のキッチンが壊れてしまいまして……」

 

「直すには、時間が掛かると……」

 

ユーの言葉を引き継ぐように店長が言うと、冥王は頷いた。育ち盛りの少女が居ることも考えると、昼食を食べないのは辛いだろう。

 

「それじゃあ、料理はこちらにお任せ……で、構いませんね?」

 

店長の言葉に冥王とユーは頷き、それを見た店長は

 

「明久! 明久の得意料理を出してやれ!」

 

と言った。

 

「分かりました!」

 

「……明久さんの、得意料理?」

 

店長の指示を受けて、明久はその得意料理の調理を始めた。

バランス良く食べられる料理。

 

「パエリアだよ」

 

そして、数十分後。

 

「大変お待たせしました。パエリアです」

 

と各机に、一つずつ鍋ごと置いた。

専用の浅い鍋の底に敷き詰められているご飯は黄色に染まり、その上には魚介類、野菜、肉がバランス良く乗せられていて、香ばしい匂いが鼻腔を刺激し、空腹をより刺激してくる。

 

「お皿にお取りになって、お召し上がりください。では、ごゆっくり」

 

アレッタがそう言って下がると、人一倍幼い印象のファムが

 

「めーおー様! 食べていいですか!?」

 

と冥王に問い掛けた。

その目は、キラキラと輝いている。すると、隣に座っていた巨乳画伯のエルミナが

 

「はーい、よそってあげますねー」

 

とよそおうとした。だが先に、ラディスが

 

「やめろ、このロリコン画伯。変なモンを盛ろうとするな」

 

と制止した。

 

「いやですよぉ。普通によそおうとしたのにぃ」

 

「じゃあ、その手の小瓶はなんだ」

 

ラディスが指摘したのは、エルミナの袖口に隠れている小瓶。エルミナはそれをササッと奥に仕舞い込み

 

「……ただの栄養材ですよ?」

 

「その間はなんだ、おい」

 

ラディスの突っ込みに、エルミナは目を泳がせた。

 

「事案はやめてください」

 

ユーの突っ込みが、切実だった。

確かに、事案はやめてほしい。なお、ファムの分はソフィーがよそった。

そして、冥王が最初の一口を食べて

 

「ん、美味い!」

 

と驚いた声を上げると、各々が食べ始めた。

口の中に広がる様々な味が凝縮された、濃厚な味。それと調和している肉や野菜、魚介類。

だが濃厚な中にあるさっぱりとした、不思議な風味。それが、味を飽きさせない。

 

「おいしいです! お肉も、お野菜も!」

 

「良かったですね、ファム殿」

 

ファムがモグモグと食べていると、それをイリーナがフォローに回っている。気付けば、席替えしたようだ。

 

「むむ……これは、初めて食べました……しかし、この味は……」

 

ソフィーは慎重に一口ずつ食べながら、どうやら味の探求をしているようだ。そして、それにクレアが

 

「お? これで、新しい料理が食堂に増えるかな?」

 

と期待した表情で、ソフィーを見ながら一口食べた。

どうやら、ソフィーが料理番のようだ。

その目は鋭く、僅かな味の変化すら見逃すつもりは無いようだ。

 

「ご主人様、私にも料理を作る許可を」

 

「魔女の釜を作らせる趣味は無いから」

 

そして冥王は、隣に座っていたベアトリーチェの進言に、真顔で答えた。どうやら、料理が下手というレベルではないらしい。

話から察するに、魔女の釜を彷彿させるらしい。それを思い出したらしいユーが

 

「あれは勘弁してください」

 

と頭を下げた。何があったのかは、聞かない方が華か。

それが聞こえた明久は、ブルリと体を震わせた。その脳裏には、かつての同級生の姿が。

しかし、やはり年頃の少女が多いからか賑やかである。

その様相は、まさに女子学園のようだ。

 

「いやぁ……これが、噂に聞く女子校の雰囲気かね?」

 

「叔父さん……」

 

その光景を見ながら呟いた店長の言葉に、早希は白い目を向けていた。なお明久は、失言をしないように無言で新たに注文されたオムライスの大盛りを作っている最中である。注文したのは、ファムとアシュリーだ。

ファムは幼い見た目からは予想出来ない大食いだった。

そうして、全員が食べ終わり

 

「では、お勘定ですが……」

 

「はいよ……」

 

「やっぱり、24人分は凄い金額ですね……」

 

冥王が払った金額を見て、ユーはそう呟いた。

具体的には、金貨二枚と銀貨三枚になる。

そうして、ベアトリーチェがドアを開けて一人ずつ退店していき、最後まで居た冥王に

 

「ここは、一週間に一度開きますので、またいらしてください」

 

と明久と店長は頭を下げた。

そうして、冥王一行は退店。イリーナはキッチンの修理に向かい、ソフィーは真剣な表情で何やらメモに書き始めた。

そして冥王は、消えていくドアを見ながら

 

「まあ……たまには、贅沢させてやるか」

 

と頭を掻いたのだった。

そうして彼女達は、世界樹を復活させるための旅を続ける。

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