異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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京アニの方々のご冥福をお祈りします……
……もしかしたら、友人の一人が……


アレッタの一日 後

「ふう……大分、片付きましたかね……」

 

「みたいね……」

 

アレッタの呟きに、サラは同意するように頷いた。

片付け始めて、早数時間。部屋の外にまで溢れてきていた荷物は無くなり、サラの部屋の隅に纏めてある。

廊下にまで溢れた物の片付け(というより、集積)はサラがやり、件の物置部屋の中はアレッタが片付けた。

サラが適当に放り込んでたと言った通り、雑多に物が散乱していて、当初は足の踏み場すらなかったが、数時間の悪戦苦闘の末に、なんとかなった。

 

「サラ様……もう少し、整理整頓しましょう……」

 

「素直に、ごめん」

 

アレッタの苦言に、サラは頭を下げた。

今回は、サラが適当に物を放り込んでいたのが原因だから、仕方ないだろう。

 

「では、少し遅くなりましたが……お昼にしましょうか」

 

「賛成、お腹空いたわ」

 

アレッタの提案に、サラは素直に賛同した。朝からずっと片付けしていて、今は普段のお昼より遅い時間(大体午後2時)だ。

お腹が空くのも、仕方ないことだ。

サラの住む別荘には、他の一般家庭には無い食材を長期保存出来る魔法の箱がある。

それは、サラの実家がある国の王女から高く買い取ったものを回した物で、アレッタも重宝している。

それがあることにより、食材を腐らせることも無くなった。

アレッタはその箱を開けて、中を確認した。

サラとアレッタは二人共、料理はそれほど得意ではない。しかしアレッタは、サラの家政婦をするようになってからは、少しずつだが料理が出来るようになってきていた。

 

「ん……ダンシャクしかありませんね……」

 

箱の中には、生憎とダンシャク(じゃがいも)しかなかった。

近くの棚には、サラがよくかじる保存用ベーコンと塩、香辛料。そして、チーズがある。

 

「……あ」

 

それを見たアレッタは、以前に明久から教わった一つの料理を思い出した。それなら、今の食材とアレッタの腕でも作れる料理だ。

 

「……よしっ」

 

そうと決めたアレッタは、まず手を洗った。

明久と店長は料理をする前に、必ずと言って手を洗っていた。聞いたら、食中毒を未然に防ぐためだと言っていた。

そして、数十分後

 

「サラ様、お待たせしました」

 

とアレッタは、その料理を机に置いた。

 

「これって……」

 

「本当は、じゃがバターって料理なんですが、少し違います……言うなら、じゃがチーズ……でしょうか?」

 

サラの問い掛けに、アレッタは首を傾げながら答えた。

それは去る日、明久に教わった料理だった。サラは日夜お宝捜しに奔走しており、アレッタが寝ている間も地図の暗号を解いたりしている。しかもその間に小腹が空くと、保存用ベーコンを千切っては食べているのが殆どだ。それを知ったアレッタは、一度明久と店長に相談。その時に教えてもらったのが、じゃがバターだったのだ。

しかし、ダンシャクと塩、香辛料はあったものの、バターは無かった。だからアレッタは機転を効かせて、チーズを使って作ったのが、じゃがチーズであった。

 

「すいません、食材があまり無かったので、これだけですが……」

 

「それは、私が昨日買ってなかったから仕方ないけど……あ」

 

そこまで言ったサラは、アレッタの手にうっすらと傷痕があることに気付いた。

実はアレッタは、じゃがバターの調理の練習を、ねこやで何回かしていたのだ。もちろん、店長か明久、早希が見ている時に限ってだ。その時に何回か怪我をしており、その度にクロが魔法で治してくれた。(クロはかなり難しそうな表情をしていたが……)

それを察したのか、サラは涙を流しそうになるが堪えて

 

「よし、食べましょう!」

 

と机に座って、フォークを掴んだ。

そして

 

『いただきます!』

 

二人で、一緒に食べ始めた。

アレッタは内心

 

(うぅ、大丈夫かな。美味しく出来てるかなぁ)

 

と心配しながら、サラが食べるのを見ていた。

 

「あ……はふはふっ」

 

サラは熱さから直ぐには口に入れられなかったが、目を見開いた。

口の中に広がるのは、確かにダンシャクの味。しかし、同時にほんの少しの塩味。それだけでなく、香辛料の風味にチーズの濃厚な風味も口の中に広がった。

 

「これ……! ダンシャクって、こんなに美味しくなるの!?」

 

サラが知っているダンシャクの料理は、どうにも味気ないのが多かった。

しかし、アレッタが作ってくれたダンシャク料理は今まで食べた中で上位に入る美味しさだった。

 

「美味しいわ、アレッタ!」

 

「よ、良かったです! まだまだありますから、食べてください!」

 

サラの言葉に嬉しくなったのか、アレッタは笑みを浮かべて促した。

そうして、食べ終わり

 

「ふぅ……ありがとう、アレッタ……本当、貴女を雇って正解だったわ……」

 

「ありがとうございます、サラ様……」

 

サラの称賛を受けて、アレッタは顔を赤くした。褒められることに慣れていなかったのが大きいだろう。

 

「さてと……片付け再開しましょうか!」

 

「はい!」

 

片付けも終わると、二人は片付けを再開。夕方まで掛けて、物置まで片付けを完了。物置部屋が手狭になっていることに気付いたサラは

 

「んー……新しく物置小屋作ろうかしら」

 

と呟いていた。

サラの財力ならば、簡単に出来ることだから恐ろしい。

一段落したのを確認したアレッタは、夕食の買い出しに出掛けた。

そして夕食を共にし、二人の片付けの一日は終わった。


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