異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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35皿目 クリームソーダ

「ふう……今日も暑い……」

 

彼女、ラナーはそう言いながら、ラクダに繋がる紐を近くの木に縛った。

今日彼女は、一人で異世界食堂の入り口に来ていた。

兄のシャリーフは今現在、帝国と外交のために奔走している最中だ。

帝国との外交は、兄に任せるしかない。砂の国の発展と兄の恋路のためにも。

 

「さてと……」

 

紐を結び終えたラナーは、ゆっくりとドアを開けた。

 

(いらっしゃいませ)

 

そんなラナーを一番に出迎えたのは、クロだった。クロはラナーを見ながら、軽く一礼し

 

(空いているお席に座って、お待ちください。すぐにメニューをお持ちいたします)

 

と念話で言ってきた。

言われた通りにラナーは、空いている席。アーデルハイドの隣に座り

 

「久方ぶりです、アーデルハイド樣」

 

とアーデルハイドに挨拶した。

すると、アーデルハイドは微笑みを浮かべて

 

「お久し振りです、ラナー樣。一月振りですね」

 

と言ってきた。

この一ヶ月、ラナーは国内の魔法技術発展のために奮闘し続けてきたために、一ヶ月振りの来店だった。

 

「メニューです。決まりましたら、お呼びください」

 

早希がメニューを手渡し、離れた。

とはいえ、注文する商品は決まっている。しかし

 

「ん、どれにしよう……」

 

ラナーが注文しようとしているのは、クリームソーダだ。しかし、飲み物に使う炭酸が色々とあり悩んでいた。

 

(前回は確か、シンプルにサイダーだったか……うーむ、悩む……)

 

サイダーの他に、メロンソーダ、コカ・コーラ、ジンジャーエール、グレープソーダ、オレンジソーダと、様々にある。

 

(……よし、タンサンはメロンソーダにしよう……上に乗せるのは……)

 

クリームソーダの上に乗せるのも、また複数ある。

ノーマルなミルク、チョコレート、オレンジ、メロン、ソフトクリームと用意してある。

 

「すいません、クリームソーダで、メロンソーダとソフトクリームの組み合わせでお願いします」

 

「はい、わかりました!」

 

注文を受けて、アレッタが奥へと入っていった。店長か明久に注文を言いに向かったのだ。

それを見送り

 

「既に話は聞いてると思いますが、兄君はそちらの帝国との国交をより緊密にするために努力しています」

 

「はい。最近会いました、叔父から聞きました。そちらの国から、魔法技術と幾らかの魔道具の技術を提供してもらい、此方からはダンシャクの栽培法と……その、そちらのお兄さんと私の婚約……と」

 

ラナーが両国の話題を切り出すと、アーデルハイドはそう語りながら、最後は頬を朱に染めた。

 

(兄さん、ようやく切り出せたか……長かったな)

 

アーデルハイドの様子から、ようやくシャリーフが好意を告げられたと察した。

しかも、アーデルハイドの様子から見ても、まんざらではないらしい。

 

「少し研究熱心で、恥ずかしがりやな兄君ですが、よろしくお願いします」

 

「い、いえ! こちらこそ……確かに帝国の王女ですが、私は末席の一人……政略結婚も考えていましたが……」

 

「まあ、それが普通ですね」

 

アーデルハイドの話に、ラナーは納得したように頷いた。

政略結婚は、王公貴族ならば離すことが出来ないことである。

実際問題、ラナーにも国外から様々な婚約が申し込まれてきているが、現国王たる父親が見事に断っている。

ラナーだが、その魔法技術は王一族の中では突出しており、魔法技術で発展してきた砂の国からしたら、正しく代えがたい人材なのだ。

それを知ってからかラナーは最近、自ら相手を見つけるべきだろうか。と考えて、最近は意識して女性らしいしゃべり方をしている。

そこに

 

「お待たせしました。メロンソーダとソフトクリームのクリームソーダです」

 

と明久が、ラナーの前にクリームソーダを置いた。

 

「ありがとうございます」

 

「どうぞ、ごゆっくり」

 

明久は一礼すると、すぐに奥へと消えた。

それを見送った後、ラナーは置かれたクリームソーダを見た。

大きなコップに注がれたメロンソーダの上に、螺旋を描きながら乗っているソフトクリーム。

 

「相変わらず、綺麗……」

 

クリームソーダを見たラナーは、そう呟いた。

メロンソーダもそうだが、ソフトクリームがラナーには宝石のように見えたのだ。

薄く緑色の染まる炭酸に、その上に乗っている純白のソフトクリーム。

その二つが調和し、ラナーを魅了してくる。

実は最近、ラナーとシャリーフの技術が合わさり、アイスクリームの再現に成功した。

そうして次に、ソフトクリームの再現をしようとしたが、どうも上手くいかなかった。

柔らかさと冷たさを両立させたアイスクリーム。

色々と試行錯誤してみたが、今は無理と分かっているので、ソフトクリームはねこやで楽しむことに決めた。

 

(さて、最初はクリームから……)

 

ラナーは自ら決めた順番に従い、最初はソフトクリームを口に含んだ。

そうして口に広がる、濃厚なミルクの味。

 

(まだ、諦めてないからな……)

 

ラナーは何時かソフトクリームの再現を誓い、また一口ソフトクリームを口に運んだ。

すると、アーデルハイドが

 

「そういえば、砂の国でアイスクリームを再現したと伺いましたが……」

 

「はい。兄君と私の研究結果です。恐らく、帝国にも作り方は伝えられるかと」

 

アーデルハイドの問い掛けにラナーが答えると、アーデルハイドは嬉しそうに笑みを浮かべた。

アーデルハイドはソフトクリームを含めた冷たい菓子が好きなので、アイスクリームが再現されたことが嬉しいのだ。

それを見ながらラナーは、続いてメロンソーダを飲んだ。口の中に広がるシュワシュワとした炭酸の不思議な感覚と、果物の風味がする甘味。

 

(どうやって、作ってるんだろうか……気になる)

 

ラナーはそう思いながら、更にメロンソーダを飲んだ。

そして、パフェを食べていたアーデルハイドに

 

「では、私はこれにて……」

 

「はい、また」

 

そしてラナーは机の上に、お金を置いた。

そして、去り際に

 

「またお会いしましょう、未来の義姉樣」

 

と言って、アーデルハイドの顔を真っ赤にさせた。

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