「魔法を使った人型兵器か……」
「はい。僕はその幻晶騎士の騎操士にして騎士団の団長兼設計をしています。エルネスティ・エチェバルリアと言います」
「私はその副官で奥さんのアデルトルート・オルターです!」
店長の問い掛けに二人が続けて答えると、明久が思わずといった様子で
「……随分と、若い夫婦で……」
と呟いた。まあ、見た目は二人とも、完全に十代前半だからしょうがない。
しかし、彼等の世界では何ら珍しいことではない。彼等の世界では、魔物や戦争で何時死ぬか分からない。
その為に、早期の結婚が求められているのだ。
「まあ、僕達が結婚する時は国を挙げてになりましたがね」
「本当に凄かったよねぇ!」
エルネスティの言葉で思い出したのか、アデルトルートは興奮していた。
それを決めた先代国王達からしたら、少しは大人しくなることを期待してのことだったのだが、それを本人は知らない。
「うーむ……」
「叔父……店長?」
「いや、なにな……ロボットを動かすのは、ロマンだな……と」
早希の問い掛けに、店長は小声でそう言った。それは、明久にも分かる。明久も昔は、様々なゲームをプレイしたが、その中でもロボットに関するゲームは多数プレイした。
それはさておき
「それでは、何か食べますか? 大抵の料理はお出し出来ますよ?」
明久がそう言うと、エルネスティはフムと腕組みした。
彼は趣味に関することならかなりの知識を誇るが、それ以外となるとあまり自信が無い。それは、家事も含まれている。
つまりは、料理に関する知識もそれほどであり、普段は騎士団の食堂で適当に頼んでいるのだ。
その時
「それじゃあ……野菜を多く使った料理をお願いします!」
とアデルトルートが、エルネスティの代わりに注文した。
「アディ?」
「エル君、食堂の人から相談されてたんだよ? エル君の栄養が心配だって」
アディの言葉に、エルは僅かに視線をそらした。
多少だが、自覚があったらしい。
「では、野菜を多く使った料理……つまり、私達にお任せ……で、よろしいですね?」
店長のその問い掛けに、エルネスティとアデルトルートの二人は無言で頷いた。
それを聞いた明久と店長はキッチンに向かい、アレッタが
「お冷やです」
とエルネスティ達の前に、水の入ったコップを置いた。
そうして、十数分後。
「お待たせしました、
と二人の前に、皿を置いた。
「これは……」
「見た目は凄いけど……いい匂い……」
そして二人は顔を見合わせると
『いただきます』
と同時に言ってから、青椒肉絲を一口食べた。すると、アデルトルートの目が見開かれて
「何これ!? 凄く美味しい!」
「そうですね……素材もですが、このソースが非常に素晴らしいです……何らかの素材の味が凝縮されているようです」
と興奮した様子で、語った。
洋食のねこやという名前だが、何も出すのは洋食だけではない。これは先代店長の考えで、元々日本に無かった料理も洋食に当たるというものだ。だから、カツ丼や照り焼きチキン。ロースカツという料理が出されるのだ。
他にも、親子丼、牛丼、中華料理も出すのだ。
中華料理に関しては、店長が子供の頃から行き着けの店で一時期修業していたことで会得したのだ。
そこは今も経営していて、店長にとっては第二の家のような場所だ。
「野菜がシャキシャキしてるのに、凄く美味しいね!」
「そうですね、アディ」
仲睦まじい二人を見て、早希が
「結婚……かぁ……」
と呟いてから、早希は料理を作っている明久へと視線を向けた。そして少しすると、顔を赤くして目を反らした。
それを見ていた店長は、小声で
「命短し、恋せよ乙女……だったか?」
と言ってから、調理に戻った。
そして、十数分後
「ごちそうさまでした」
「凄く美味しかったです!」
二人はそう言って、反射的に懐に手を入れた。
が
「あ、エル君! 私達、財布持ってきてない!」
「……そのようですね……これは、失態です」
アデルトルートの指摘に、エルネスティは額に手を当てた。そこに、店長と明久が
「それでしたら、次に来た時で構いませんよ」
「あのドアは、七日に一度開きますから」
と説明した。それを聞いた二人は、顔を見合わせてから
「すいません」
「次来た時、一緒に払いますね」
と頭をを下げて、退店した。そして退店した二人は、消えていくドアを見ながら
「異世界食堂かあ……また来たいね、エル君!」
「そうですね。次は、財布を持っていきましょう」
と会話して、自分達の仕事に戻ったのだった。