異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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42皿目 カキフライ

「えっと……これで、大丈夫のはず……」

 

「だよな……一応、パソコンにあったのを、そのまま出力したからな……」

 

明久と店長が見ているのは、一枚の張り紙。明久と店長には読めないが、ある世界の言語でこう書かれている。

 

《カキフライ、始めました》

 

カキフライ。それはねこやに於いては、先代から続く冬季限定人気メニューである。月曜日に張り出してからは、注文が殺到している。特に、古馴染みの客はよく注文する。

 

「あのドワーフ達は、確実に注文するな」

 

「多目に用意しましょう」

 

二人はそう会話すると、キッチンに入っていった。それから、約一時間後。

 

「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ! あ、ハインリヒさん」

 

「おお、アレッタ嬢。注文は……」

 

出迎えたアレッタに注文を言おうとしたが

 

「おーう! 来たぞ!」

 

「おおっと、邪魔じゃい! どけい!」

 

とハインリヒの背後から、騒がしい声。振り向けば、二人のドワーフが居た。

 

「お前達か……」

 

「おう、騎士か! 退いてくれるかの?」

 

ギレムに言われて、ハインリヒは二人に道を譲るために半身になった。その際に、ギレムはハインリヒに隠れて見えなかった張り紙に気づいて

 

「おお!? 今日からカキフライが食えるんか!!」

 

と興奮し始めた。

 

(カキフライ? フライと言うからには、エビフライと同じあげた料理なのだろうが……)

 

「ギレムよ、カキフライとはなんじゃ?」

 

「冬の間に出される料理での、これもまた美味いんじゃ! 酒によく合うんじゃ!」

 

ガルドの問い掛けに、ギレムはそう言いながら椅子に座って

 

「嬢ちゃん! 何時ものシーフードフライの盛り合わせとビールの大ジョッキ、それとカキフライを頼むわい!」

 

「はい! 分かりました!」

 

(ほう、冬にしか出されない料理か……)

 

ギレムの説明を聞きながらハインリヒは、椅子に座った。最初はエビフライを頼もうと思っていたハインリヒだったが、少し悩んでから

 

「すまぬが、私もカキフライとやらを頼む」

 

「はい、分かりました」

 

注文を聞いて、早希はキッチンに入っていった。

 

(カキフライ……どのような料理なのだろうか……)

 

初めて食べるカキフライを、ハインリヒは期待しながら待つこと数分後

 

「お待たせしました、カキフライです」

 

とハインリヒの前に、お皿が置かれた。

 

「ほお、これがカキフライっちゅうやつか……」

 

「おうよ! 独特の風味がたまらんのじゃ!!」

 

どうやらギレム達にも出されたらしく、ガルドは何やら興味深く見ていて、ギレムはフォークで突き刺すとタルタルソースを着けていた。

ハインリヒもフォークで刺すと

 

(ふむ……一口で食べられる大きさだな……)

 

最初の一個目は、なにも着けないで口に運んだ。

 

(むっ!? こ、これは!?)

 

「っほおー! これは美味いわい!」

 

「そうじゃろ、そうじゃろ! 少し苦味はあるが、それがまた美味いんじゃ!」

 

ガルドの言った通り、ほんの少し苦味がある。しかし、濃厚でクリーミーな味が口の中に広がっていく。

次にハインリヒは、タルタルソースを着けて食べた。

 

(やはり、フライはタルタルソースとよく合う!)

 

タルタルソースを着けたカキフライを食べたハインリヒは、そう確信した。タルタルソースにより、フライのサクサクとした衣がいくらか柔らかくなり、更にはその衣にタルタルソースの味が絡まり、口の中でカキの独特な味と複雑に絡まる。

 

(素晴らしい! まさか、エビフライ以外にこのような料理に出会えるとは!!)

 

ハインリヒは新たな料理に出会えたことに感謝しつつ、更にカキフライを食べた。カキフライを一皿食べた後は、何時ものエビフライを注文。食べ終わり

 

(カキフライか……惜しむらくは冬にしか食べられないということだが……しかし、むしろそれが楽しみになる……一年間、必ずや生きようと)

 

最近、ハインリヒが指揮官の砦の近くに、魔物の群の巣があることが判明し、度々襲撃してくる。今はなんとか撃退しているが、近い内に増援がその砦に入ってくることになっている。

そして、その魔物の巣を撃滅する。それが何時になるかは不明だが、必ず為し遂げる。ハインリヒはそう気合いを入れて、退店した。

また必ず、カキフライを食べるために。

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