異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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44皿目 カレーパン

それは、ある日のお昼のことだった。

 

「試供品?」

 

「ああ、ベーカリーきむらの新作の試供品でな。発案は将太くんだそうだ」

 

そう言いながら店長は、休憩フロアの机の上に少し大きめの皿を置いた。その上にあったのは、揚げたてと分かる一つの食べ物。

 

「これは……カレーパン?」

 

「ああ、それも、チキンカレーのカレーパンだそうだ」

 

チキンカレーのカレーパンと聞いて、クロの耳がピコピコと動いた。どうやら、興味津々らしい。

 

「元々、ベーカリーきむらにはカレーパンはあるんだが、ある日に将太くんが思い付いたらしいんだ。チキンカレーを使ったカレーパンを作ったら、どうなるんだろうってな。後はまあ、俺と向こうで擦り合わせて出来たのが、これだ」

 

店長はそう説明しながら、皿に盛られたカレーパンを指差した。つまり、ねこやとベーカリーきむらの合作ということなのだろう。

 

「一応、これが完成予定品になる。食べてみてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

店長に言われて、四人はそのカレーパンを手に取った。見た目は、普通のカレーパンと同じ楕円形になっていて、表面はカリカリに揚げられている。

最初に中身を見たのは、アレッタだった。

 

「わあ……」

 

中を見たアレッタは、感嘆の声を漏らした。その間に、クロは既にカレーパンを黙々と食べており、耳がピコピコと動いていることから、美味しいらしいことが分かる。

 

「何時もより、少し固形気味なんですね」

 

「ああ、でないと、パン生地に染みちまうからな」

 

早希の言葉に、店長は頷きながらそう答えた。確かに、割ったパンの中のカレーのルーは、かなり固まっている。

 

「それに、チキンも小さめなんですね……ああ、食べやすいようにですか」

 

「その通り。苦労したよ、そのサイズに決めるまでな」

 

明久の言葉を聞いた店長は、試作を繰り返していた時を思い出したのか、腕組みしながら何回も頷いている。どうやら、チキンのサイズを苦労したらしい。

 

「それに、回りのパンも……少し、甘さが強いような……」

 

「お、アレッタちゃん。よく気付いたな。チキンカレーの辛さに合わせて、少し砂糖を加えたらしい。おかげで、チキンカレーの辛さに負けないパンにしたんだと。ベーカリーきむらの親父さんも、苦労したみたいだぞ」

 

確かに、チキンカレーは普通のカレーよりも辛い。普通のパンじゃ、辛さに負けてしまうかもしれなかった。しかし、今度は甘過ぎたらせっかくのチキンカレーの辛さが死んでしまう。確かに、それを考えると非常に難しかっただろう。

 

「んー……店長、これにチーズも合いそうですよね」

 

「と言うと思ってな、もう1パターン作ってあるんだよ」

 

明久の言葉に、店長はもう1皿カレーパンが盛られた皿を置いた。見た目で分かりやすくするためか、こちらは四角形に作られてある。

 

「食ってみな」

 

(これ……チーズが濃厚で、カレーの辛さを程よく抑えてる……)

 

いの一番にそのカレーパンを食べたのは、クロだった。どうやらお気に召したらしく、眼を輝かせている。

 

「そりゃよかった。チーズの量に苦労したもんさ。多すぎると、重くなるし、チーズにカレーが負けるからな」

 

クロの念話が嬉しかったのか、店長は笑みを浮かべた。確かに、チーズで辛さを抑えるのも大事だが、抑え過ぎるのも問題点だろう。それらを考えると、一体何回試作を繰り返してきたのか。その苦労は想像出来なかった。

だが、四人はその二種類のカレーパンを食べて

 

「最初のは、少し辛いかもしれないけど、充分美味しかったです」

 

「うん。パンの甘さと合って、凄く美味しかった」

 

最初に感想を言ったのは、アレッタと早希だった。二人の言葉を、店長はサラサラとメモに書いている。

そこに

 

「この、チーズ入りも凄く美味しかったです。チーズも有るから、結構お腹に来ますね」

 

(チキンカレーの美味しさが、充分に伝わる)

 

次に、明久とクロの感想。それもまた、店長はメモに書いていく。四人からは、概ね好評価だった。

それを書き終わると、店長は

 

「OK、ありがとうな。これなら、製品として出せるだろうな」

 

と述べて、そのメモをポケットに仕舞った。

そして店長も、カレーパンを食べ始めた。これから約1ヶ月後、ベーカリーきむらに新しい商品が並び、大ヒット商品となって、将太のお小遣いが上がることになるのは、全くの余談だ。

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