「新年明けましておめでとうごさいます」
「明けましておめでとう」
年が明けて、本来はまだ休みの期間中のねこや。そこに、ねこやの一同は集まっていた。
とは言うものの、ドアはこちらの世間一般では休み期間中だろうが関係なく、七日毎に開くので明久と店長からしたら、最早慣れている。
「さて、何時もより早くに来てもらったのには、理由がある」
「それが、これだよ……おせち料理だ」
「おせち……料理?」
実は七日前、次に来る日は何時もより少し早目に来てほしい、とアレッタやクロには言ってあったのだ。
明久があるテーブルに掛けられていた大きな布を取ると、その下から重箱が出てきた。
「おせち料理って言うのはね、私達の世界で年が明けてから七日間だけ食べられる料理でね。いろんな願掛けがされてるの」
「願掛け……」
「そ。例えば、一年間元気で過ごせますように、とかね」
「なるほど……」
アレッタとクロが首を傾げると、明久がそう説明した。そうして、5人は座り
『いただきます』
と丸い箸を使って、食べ始めた。
「この丸い箸にも、意味があるんですか?」
「そうだよ、確か……カドが立たないように……だったかな?」
アレッタの問い掛けに、早希は少し思い出すように答えた。
(このお雑煮という料理、様々な味が染みだしていて、美味しい……このお餅というやつは、ライスの風味がする……)
「うん、お雑煮って言うのは、様々な素材を雑多に煮たって言うところから来てるって聞くね。それでお餅は、もち米を捏ねて作ってあるんだ。だから、お米の味がするんだよ」
クロの感想を聞いて、店長がそう教えた。
「この黄色いの……凄い甘いです」
「あ、栗きんとんだね。栗を煮てから磨り潰して裏ごしし、甘く味付けしたものだよ」
アレッタが食べたのは栗きんとんのようで、明久が簡単にその説明をした。
(この黒い豆も美味しい……)
「それを美味しく煮るの、差し水のタイミングが大切なんだよねぇ」
「クロだけに黒豆……」
「お、叔父さん……?」
明久は煮てる時の事を思い出していて、早希は店長のオヤジギャグに困惑していた。そして重箱を食べ終わると、店長と明久が少し大きめのお鍋を持ってきて、蓋を開けた。
中には、幾つかの野菜を一緒に煮たお粥が
「本当はまだ先なんだがな」
「七草粥って言ってね、一年間の健康を祈って食べるんだ」
店長と明久はそう説明しながら、五人分を器によそっていく。そして、行き渡ったのを確認して
「よし、食べようか」
「熱いから、気をつけてね」
二人の言葉を聞いて、三人はお粥を食べ始めた。お粥自体に味付けがされてないため、醤油や塩で軽く味付けして食べた。
食べ終わると
「それじゃあ、今年も頑張っていくぞ!」
『はい!!』
店長の掛け声に、元気よく返答した。
こうして、異世界食堂の新しい一年間が始まった。