いろいろさん、ありがとうございます!
喫茶鉄血
https://syosetu.org/novel/178267/
なお、コラボの場合は交○皿目と書きます
「今日も、無事閉店ですね」
「トラブル込みで、無事だね。Oちゃん」
そう会話しているのは、双子と思える程に瓜二つの二人の女性。しかし、彼女達は人間ではなく、戦術人形と呼ばれる人間サイズのロボットである。
鉄血工造製ハイエンド人形。代理人である。二人とも代理人だが、識別のためにここ、喫茶鉄血に来る客やスタッフはDとOと呼んでいる。それぞれ、ダミー、オリジナルを意味している。とは言え、仕草等で十分に見分けられるが、今は割愛する。
「さて……店内の清掃は、サボった二人に任せるとして」
代理人はそう言って、モップを持っているこれまたハイエンド人形の二人。マヌスクリプトとゲッコーの二人をキッと、鋭く睨んだ。睨まれた二人は、首から
《私は仕事中に女性客を口説きました》
《私は仕事中に無駄話をしました》
と書かれた札を下げている。
良い子の皆は、決して仕事はサボらないように。作者との約束だ。
代理人は、Dを伴ってスタッフ用休憩室に入った。たまにだが、ここに物が残っていることがあるからだ。
そして二人は、異質な物を見つけた。
「D?」
「私も知らない」
二人の視線の先にあったのは、一つの黒いドアだった。猫の彫刻がある黒いドア。看板には、洋食のねこやと日本語で書かれてある。
「……開けてみましょう」
「本当に!?」
今まで
「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ!」
と金髪の少女、アレッタに出迎えられた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……未来……ですか」
「貴方達からしたら、そうなりますね。私は、鉄血工造製ハイエンド戦術人形の代理人です。こちらは、私のダミー人形の」
「代理人・ダミーです! Dって呼んでください!」
店長が目を点にしていると、代理人とDは軽く自己紹介した。すると、明久が
「はあ……未来じゃあ、完全に人間にしか見えないロボットが作れるんだ……凄いなあ……」
と素直に、感嘆していた。明久が知っているロボットは、高さが腰辺りまでで、脚部がタイヤになっているもので、応答は定型文でしか出来ない。
しかし目の前に居る代理人達は、言われなければ戦術人形とは分からないだろう程に、人間にしか見えなかった。唯一かなり色白なのが気になるが、そう言う種族も居ることを知っているために、それほど気にならない。
「いやぁ……技術の進歩って凄いんだな……人間にしか見えん……もしかして、料理も食べられるので?」
「ええ。可能な限り、人間に近い形に造られています」
店長の問い掛けに、代理人は頷きながら答えた。
「凄い……」
まさか料理も食べられるとは思ってなかったらしく、早希が驚いた表情で言葉を漏らした。すると、店長と明久は顔を見合せて
「でしたら、何か食べますか?」
「料理屋に来たのに、何も食べさせないで帰らせたとあったら、じいさんにどやされる」
と代理人とDに問い掛けた。
「しかし」
「私達、お金が」
と二人が迷っていると
「でしたら、次来た時で構いませんよ」
「ツケにしときます」
明久と店長のその言葉に、代理人とDは顔を見合せた。そして
「でしたら……」
「お願いします」
と頭を下げた。
「では、ご注文は何になさいますか?」
「メニューに無いものも、ある程度なら出せますよ」
店長と明久がそう言うと、代理人は
(この後の事を考えれば、あまり本格的に食べるのはいただけないですね……)
と考え始めた。代理人達は自分の店、喫茶鉄血の閉店作業中に来ていて、それが終わったら夕飯になる。それを考えると、ガッツリと本格的に食べるのは躊躇われる。
では、何を頼むか。そう考えていた時、代理人の(電)脳裏に、ある料理が浮かんだ。
「では……オニオングラタンスープを二つお願いします」
「分かりました」
「少々お待ちください」
代理人から注文を聞いた明久と店長は、キッチンに入っていった。すると、Dが
「Oちゃん。私、その料理知らない」
「私も、データで知っているのみです。上手くいけば、食べたデータから再現出来るかもしれませんよ」
代理人が明久と店長に、敢えて話していない事項として第三次世界大戦があり、人の住める地域が減少。それに伴って食糧生産も落ちていて、更に言えばIT関連にも大打撃を受けて、一部のデータは失われている。
そして、十数分後
「お待たせしました。オニオングラタンスープです」
と早希が、二人の前に器を置いた。
そして、パンの乗せられたお皿を置いて
「こちらのパンを浸して食べるのも美味しいですよ。それと、パンのお代わりは自由ですので、お気軽に声をお掛けください」
と説明し、離れた。
「これが、オニオングラタンスープ……」
器の上面には、きつね色になっているチーズ。それをスプーンで割ると、その先に茶色いスープが見えた。割ったチーズも一緒に混ざり、香ばしい匂いが二人の嗅覚をくすぐった。
「では」
最初に代理人が、スプーンでスープを口に運んだ。すると、口の中に豊かな風味が広がった。
「これは……」
「うわっ、美味しいっ」
Dは素直に感想を口にするが、代理人はその味の秘訣に気づいた。飴色になるまで炒められた玉葱とコンソメスープ。この二つが軸で、そこにチーズの風味が混ざっている。料理としては、かなりシンプルな部類だろう。しかし、だからこそ料理人の腕が如実に出る。
店長はまだしも、明久はまだかなり若かった。だというのに、その腕が分かる。正に、プロの料理人。
そして代理人は、早希が言ったようにパンを千切って浸してみた。すると、みるみるとパンがスープを吸収して重くなる。それを口にすると、一気に口の中にスープの味とパンの味が広がる。
「……なるほど」
代理人は満足そうに頷くと、食べることに意識を集中させた。そして、食べ終わると
「Oちゃん、美味しかったね!」
「ええ」
Dが目をキラキラと輝かせていた。そこに、明久が現れて
「こちらをどうぞ」
と紙の箱を差し出した。
「これは……」
「サービスのサンドイッチです。お疲れのご様子でしたので」
代理人が受け取ると、明久はそう説明した。先にも説明したが、代理人達は戦術人形。人間より遥かに頑丈だ。それに伴い、様々な面で耐久も高い。
しかし、気付いてないだけでメンタル的に疲れていて、明久がそれに気付いたのかもしれない。
「……ありがたく、貰います」
代理人が受け取ると、明久が
「当店は、七日に一度開いておりますので、またお越しください」
と言いながら、頭を下げた。退店すると、ドアはゆっくりと消えていく。それを見ながらDが
「本当に、異世界というか……過去なんだ」
と驚いていた。その時、ドタドタと騒がしい足音がして
「居た! 代理人、D!」
「二人とも、何処に行ってたんだ!?」
「探しましたよ!?」
と喫茶鉄血のスタッフ達が、休憩室に駆け込んできた。どうやら、二人のIFFが消えたことで慌てて探していたらしい。
すると二人は、顔を見合せと
「信じられないかもしれませんが」
「異世界に、行ってたんだ」
と告げた。
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