「お腹空いたよー、
そう力無く言ったのは、机にうつ伏せになったショートカットの茶髪が特徴の少女。
「気持ちは分かるけど、今の時間じゃあ、ここの食堂はやってないし、例え上陸しててもスーパーもやってないから、ご飯も作れないよ?」
そして、そんな響を嗜めたのは、響の真正面に座っていた黒髪が特徴の少女。
「そこに居るのは、小日向と立花か」
「バカは……ああ、空腹か。分かりやすい」
そこに現れたのは、長い青髪が特徴の少女の
「皆さん、お疲れ様です」
「すまんな、あんな時間に招集してしまって」
更に現れたのは、ショートカットにした金髪に小柄な少女のエルフナインと赤髪の大柄な男性。風鳴弦十郎である。そして風鳴弦十郎が、このSONGの最高責任者だ。
「いえ、非常時に動くのが、防人の務めなれば」
「まあ、それが仕事だしな」
「助けを求める人が居るなら、何処にでも行きますよ!」
「私達に出来ることを、やるだけです」
弦十郎の言葉に、翼、クリス、響、未来はそれぞれ答えた。しかし、すぐに響は机にうつ伏せになり
「あぅー……やっぱり、お腹空いたよー……」
と漏らした。
「すまんな、まだ食堂が開いてないからな……」
響の言葉に、弦十郎は申し訳なさそうにそう答えた。只今の時間は、日本時間にして午前6時40分。響達は朝とも呼べない時間の午前3時頃に呼び出され、大規模火山噴火が起きたある島への救助活動に向かったのだ。
彼女達の活躍の甲斐あり、被害は最小限に留められ、無事に避難は完了。後はその国に任せて、帰還したのがつい十数分前なのだ。
「それに、マリア君たちが別件で離れていたから救助が間に合うかが懸念だったが、よくやってくれた」
実を言えば、他にも仲間が三人居るのだ。マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁切歌、月読調の三人だ。しかしその三人は、数日前からある遺跡調査団の護衛として同行していて、今は不在だったのだ。予定では、あと三日ほどで帰ってくることになっている。
「そのマリアさん達は、どうなんですか?」
「ああ、三人共に大丈夫だそうだ。予定通り、後二日程で帰還するようだ」
未来の問い掛けに、弦十郎は朗らかにそう答えて、懐から出した端末を未来に見せた。確かに、任務継続中、問題なし。今のところ予定通り。と書いてある。
それに安堵した直後、響の豪快な腹の音だけでなく、未来の慎ましやかな腹の音まで、弦十郎の耳に入った。
もちろん、未来本人は顏を赤くして俯いている。やはり、恥ずかしいようだ。
(うーむ……食堂が開く迄、最短で約一時間……流石に、育ち盛りの少女達を空腹のまま居させるのはな……只でさえ、深夜に出動させたんだからな……今度から、カップ麺でも常備するべきか……しかしあれは、栄養が偏り易い……)
弦十郎はどうするべきかと考えながら、腕を組んだ。その直後、弦十郎の背後に一人のスーツ姿の男性。緒川慎二が現れて
「司令、あちらを」
とある方向を指差した。潜水艦故に限られたスペース。彼が指差した先は、普通に壁の筈だったが、見てみれば一つの黒いドアが有った。木製で大きく黒猫が彫られた看板があり、日本語で
《洋食のねこや》
と書かれてある。
「これは……」
「なんだ? さっきまでは無かったろ、こんなドア」
素早く、翼とクリスが警戒してかそのドアの前に立った。すると、弦十郎が
「このドアは……」
とゆっくりと歩み寄った。
「司令、知っているのですか?」
「……昔、仕事の時にな……」
今や国際機関の最高責任者という立場の弦十郎だが、以前は公安に務めていて、その関係で色々な所を巡ったりもした。その中で、子供達に料理をよく振る舞う料理屋が有ると聞いた。その名前が確か
(洋食のねこや……だったか)
弦十郎がゆっくりとドアを開けると
「おや、お早いお客さまだ」
「いらっしゃいませ、洋食のねこやにようこそ」
と一行を、二人の男が出迎えた。