異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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52皿目 大学芋

「……む?」

 

その日、セレナは一年経った訳ではないのに目覚めた。最初はその理由が分からなかったが、直ぐに察した。

 

「この感じ……火事か……」

 

皮膚がひりつくように痛い。火事だと分かったセレナは、魔法でその場所を見つけると、ゴーレムを伴いその場所に向かった。

 

「これは……落雷か」

 

そこでは、一本の太い木が縦に引き裂かれるようにして燃えていた。土台、人間には出来ない(魔法は別)ことで、今日はどうやら朝から雨が降っているようだ。魔物なら可能だろうが、この森には魔物が簡単には入れないように結界が張られていて、もし入られてもゴーレムが居る。

とりあえずセレナは、魔法で消火してからゴーレムに後処理を命じた。

 

(さて、落雷対策も考えねば……)

 

ゴーレムが無造作に木を引っこ抜いたのを見たセレナは、何時もの場所に戻って眠ろうとした。だが

 

「……そうか、今日はドヨウだったか」

 

セレナの振り向いた先、ある大きな木の根元にねこやのドアが現れていた。

 

「……ふむ……行くか」

 

お正月ではないため、お汁粉は無いだろうと予想しながらも、セレナはドアを潜った。

 

「おや……珍しいですね、セレナさん。お正月でもないのに……」

 

そんなセレナを出迎えたのは、明久だった。視線だけで見ると、客入りも疎らだ。

 

「店長殿の姿が無いようだが……」

 

「店長でしたら、少し前に用事で出掛けました」

 

セレナの問い掛けに、明久はそう答えた。今から約一時間程前に自治会から電話があり、出掛けた。なんでも、ねこやビルも一応商店街の端にあるので、定期的に集まっていると言っていた。

 

「生憎ですが、お汁粉は無いんですが……」

 

「構わない。代わりに、何か甘いものを頼む」

 

「承りました。少々お待ちください」

 

セレナの注文を受けて、明久は厨房に入った。その間にセレナは、手近な空いてる席に座り、出された水を飲んだ。

そうして、数分後

 

「お待たせしました、大学芋です」

 

セレナの前に、一つの皿が置かれた。

 

「これは……」

 

それは、セレナからしたら、不思議なモノだった。三角形に切られた食材に黄金色に近い色のドロッとした液体が掛けられていた食べ物だったからだ。

 

「では、ごゆっくり」

 

一礼してから去る早希を見送り、セレナは大学芋を見た。

 

(ダイガクイモ……と言ったか? ダンシャクを使ったものか? しかし、ダンシャクはあまり甘いのには向かない味だったと思うが……)

 

セレナでも、ダンシャク(ジャガイモ)のことは知っている。今や帝国を代表する食材で、一度だけ食べたことがある。

 

(あれは確かに、美味しかったが……あれはどっちかと言うと塩味が有る方に向いていたが……)

 

セレナはそう思いながら、フォークで大学芋を割った。最初は堅かったが、割ってみると

 

「む、この芋のほうが黄色が濃いな……それに、この匂いは……」

 

中の芋は、セレナが知るダンシャクより黄色く、更に甘い匂いがした。そうしてセレナは、フォークで刺してから口に運んだ。

 

「ん! これは、確かに甘い! 外のは、ハチミツか!」

 

甘いハチミツは、セレナ達の世界では非常に高級で、貴族しか買えない代物だ。それを、贅沢に使っている。

 

「芋自体もほのかに甘い……なるほど、このような料理が有るのだな」

 

新たな発見だ、とセレナは思った。お汁粉以外にも、自分が食べられる甘い料理が有るのだな、と。

 

「ふむ……異世界食堂……素晴らしいな……」

 

セレナはそう結論付けると、残っている大学芋を一口サイズに割って食べていく。

口の中に広がる甘さはしつこくなく、幾つでも食べられそうだ。

 

(なるほど……貴族連中が、よくハチミツを買うわけだ)

 

そう納得しながら、セレナは大学芋を完食。退店した。そうして、ゴーレム達の作業の進捗具合を確認しながら、セレナは

 

「さて、新しく考えた落雷対策の魔法を使うか」

 

と呟いてから、対落雷魔法を発動。効果を確認するためにわざと一発落雷を誘導し、効果を確認し終わると

 

「……たまには起きて、行ってみるか」

 

と呟いてから、何時もの場所に戻っていったのだった。

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