短いです、ごめんなさい
年末の午後10時。
全ての業務が終わり、一同はフロアに集まっていた。これから、一年の締めくくりをするために。
「全員、今年一年間お疲れさん」
『お疲れ様でした!』
店長の言葉の後に、明久達の言葉が続いた。先ほど最後の客が帰っていった。
「しかし、この一年は一気に変わったな……」
「ですね……新しい世界に繋がったりしましたね」
店長の言葉に、明久は同意するように頷いた。異世界食堂と呼ばれるねこやだが、最近は一つの世界だけでなく、次々と新たな世界に繋がるようになってきた。
それを受けて店長と明久は、更なる新たなメニューの開発に力を入れている。
「さてと……年末と言ったら」
「アレ、ですね」
二人はそう会話すると、キッチンに向かった。これから、一年最後の賄いを作るのだ。そして、年末は決まっている。それは
「はい、お待たせ」
「年越しそばだ」
二人がキッチンに入って、数十分後。二人は計5つの丼を持ってフロアに来た。
「年越しそば?」
「一年の締めに食べる料理で、来年も健やかに過ごせますようにって意味が有るんだよ」
アレッタが首を掲げると、早希が説明した。
蕎麦は同じ商店街の老舗の蕎麦屋からの貰い物だが、出汁と具は二人で作った物だ。
出汁は鰹と昆布の合わせ出汁。具は海老の天ぷらと特製のタレに浸したお揚げだ。
それを全員の前に置き
「んじゃ、来年も頑張っていこうってのと」
「今年一年間、お疲れ様でした」
『いただきます!』
クロが箸に四苦八苦したが、全員で蕎麦を食べ始めた。
すると、アレッタが
「このお蕎麦というのは、独特な風味がするんですね」
と少し不思議そうにしていた。
「前に食べたラーメンというのに似てますが、色も味も全然違います」
「あー、うん。あっちは小麦粉。こっちは、そば粉を使って作られてる。材料から違うけど、そば粉は独特な風味が特徴と言えるね」
アレッタの疑問に、明久が説明した。
小麦粉は黄色主体になるが、そば粉は灰色主体だ。そこからも、全然違うだろう。
《このお揚げというのは、甘いのにしょっぱい。けど、美味しい》
「それはな、ウチ特製のタレに浸けておいたお揚げだ。好評で何よりだ」
店長はそう言いながら、未だに箸の扱いに苦労してるクロに、箸の使い方を教えている。早希は早希で、海老の天ぷらを食べて
「……出汁の基本は、鰹と昆布だけど……他に何か隠し味が……」
と出汁が気になるようで、何やらブツブツと呟いている。そして、そんな早希の呟きを聞いた明久は
(さて、早希ちゃんは、干しシイタケと乾燥したホタテ貝柱に気付くかな?)
と観察していた。実は今回の出汁に関しては、店長から明久に一任されており、早希の料理人への試験の一つのような扱いになっていた。それはさておき、蕎麦を食べ終えると
「さて、繰り返しになるが、これで今年一年は終わりだ」
「また来年も、皆無事に集まって頑張りましょう」
と店長と明久の言葉があり、一年最後のねこやは幕を下ろしたのであった。