異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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61皿目 シーフードピラフ

帝国出身の雇われ従者のアルフレッドは、一人の見目麗しい少女を伴って、帝都の市街地を歩いていた。

 

「本当なんでしょうね……アルフレッド?」

 

「本当ですよ、お嬢様」

 

今のアルフレッドの雇い主たる少女、アイーシャにアルフレッドは微笑みながら答えた。

アイーシャだが、帝国産まれの貴族ではなく、今居る帝国より遥か西方、砂の国の産まれの貴族の少女だ。

その証拠に、肌は褐色だ。

そのアイーシャが帝国に居る理由は、砂の国の次期国王たるシャリーフが帝国の姫と婚姻を結び、正式に国交を樹立したことで交易だけでなく、様々な分野で人の行き来が増えた。

アイーシャはそんな帝国と交易を始めた砂の国の貴族の娘で、帝国に来たのは本人の意思とは関係無い。父親が、世界を知るべきだと連れてきたのだ。

アイーシャからしたら、帝国は下に見ていた。

今の帝国は、はっきり言ってまだ歴史的には若い国になる。一度は滅んだ旧帝国の生き残りのヴィルヘイムが一代で帝国を建国・拡大し、今の規模になって、漸く50年である。

確かに栄えてはいるが、一部の分野ではまだ荒削りな分野が目立つのは事実。そんな面に、アイーシャは帝国を下に見ていた。

 

「こんな国に、私の食べたい料理があるとは思えないんだけど……」

 

「まあ、確かにそう思えるでしょうが、事実でして……こちらです」

 

そう言ってアルフレッドは、アイーシャの手を握って大通りから路地に入った。大通りに比べたら狭く暗い道を、二人は進んでいく。

 

「……こんな道の先に、店が有るとは思えないわ……それに、本当に食べられるの? 米と海の幸を使った料理が……」

 

砂の国では一般的な穀物の米と、砂の国の港町で取れる海の幸。砂の食べたでは魔道具開発が盛んなために、海の幸を塩漬けにせずとも内陸部に運べるが、帝国ではそういった魔道具が無い為に塩漬けにするしかなく、アイーシャは帝国に来てから食べた魚料理が信じられなかった。

 

「ええ、既に確認済みですから、大丈夫ですよ……ああ、見えました」

 

アルフレッドがそう言った時、確かに道の先にその扉はあった。猫の彫刻が目立つ、黒い扉。

 

「……なんで、こんな所に扉が?」

 

「そういう扉らしいのです」

 

アルフレッドがねこやの扉を見つけられたのは、本当に偶然だった。今から14日前、アルフレッドは、偶々個人的な買い物に出ていて、その帰りだった。

帝都ではまず見ないハーフリングを見たアルフレッドは、そのハーフリングが路地から出てきたことに疑問に思い、なんとか捕まえるとどうして路地から出てきたのか問い掛けた。

そして、ねこやのことを聞いたのだ。7日に一度だけ出てくる、秘密の扉のことを。

その時は胡散臭いと思ったアルフレッドだったが、7日後に行ってみると、確かに有ったのだ。

 

「では、入りましょう」

 

アルフレッドはそう言って、扉を開けた。すると

 

「いらっしゃいませ! 洋食のねこやにようこそ!」

 

とアレッタが出迎えた。そのアレッタを見て、アイーシャは

 

「……魔族が働いてるの? このお店は?」

 

と信じられない、という表情を浮かべた。砂の国ではあまり魔族は居ないために、アイーシャは魔族に対する偏見のようなものがあった。

 

「彼女は、半魔族ですよ……それに聞いた話では、魔物も来るそうです」

 

「は? 魔物も? そんな訳……」

 

アイーシャがそこまで言った時、二人の背後の扉が開き

 

「ム、ジャマダ」

 

ガガンポが現れ、アイーシャは固まった。アルフレッドが素早くアイーシャの手を引き道を譲ると、ガガンポは慣れた様子で椅子に座り、注文した。

それを見たアイーシャは

 

「このお店、正気なの!? 魔物まで来るなんて!?」

 

とアルフレッドに詰め寄った。

 

「前回来たのは夕方で、見てませんでしたが……凄いですね」

 

アルフレッドも驚いた表情を浮かべながらも、空いている席にアイーシャと一緒に座った。すると、早希と一緒に霊夢が来て

 

「お、お冷やです……こちらメニューになります……お客様は、東大陸語は読めますか?」

 

と少したどたどしいが問い掛けてきた。すると、アルフレッドが

 

「私が読めるが、大丈夫。既に注文は決まっている。シーフードピラフを二人分。それと、カッファ……じゃなくて、コーヒー2つを食後に」

 

と注文した。それを聞いた霊夢は、メニューを脇に挟み

 

「承りました」

 

と言って、下がっていった。

それから、少しして

 

「お待たせしました、シーフードピラフです」

 

と霊夢が、二人の前にシーフードピラフを置いた。

 

「では、ごゆっくり」

 

そう言って下がっていった霊夢を見送り、アイーシャはお皿に盛られたシーフードピラフを見た。砂の国で見た米とは形が違うが、白い米に、丸まった赤いシュライプ(エビ)に、格子状に切れ目が入れられたクラーコ(イカ)、そして剥き身の貝が乗っていて、よく見ると米の中に様々な色の野菜が細かく刻まれて混ざっている。

 

「わあ……」

 

初めて見た料理に、アイーシャは声を漏らした。そして、スプーンを持ったアルフレッドが

 

「お嬢様、冷める前に早く食べましょう」

 

「わ、分かってるわよ!」

 

アルフレッドの言葉で我に帰ったアイーシャは、スプーンでよそうと口に運んだ。その直後、口の中に一気に海の幸の風味が広がった。それだけでなく、バターの風味と帝国では貴重な香辛料の風味も広がる。

その中でも、ちゃんと主張してくる米の味。その米の味が懐かしくて、アイーシャは思わず涙を溢した。

小ぶりながらも、プリっとしたシュライプに食べやすいようにと格子状に切れ目が入れられたクラーコ。そして、アイーシャも知らない貝から出た旨味が米に染み込んでいて、スプーンが止まらない。

気づけば、アイーシャの前にあった皿は空になっていて、満足感があった。

その後、二人はカッファを飲んでから、お金を払って退店。消えていく扉を見ながら

 

「不思議なお店ね……」

 

「別名で、異世界食堂と言われてるようですからね……私達には、わからない法則かと」

 

と話、二人は住んでいるホテルに向かったのだった。

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