異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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気付けば、霊夢の朝昼晩と、中華やん


66皿目 天津飯

「ではな、また来るぞ」

 

「はい、またのお越しをお待ちしてます」

 

最後の客たる赤の女王を見送りすると、店長は手を叩いて全員呼び

 

「はい、全員お疲れ様だ」

 

『お疲れ様でした』

 

労うと、全員は返答しつつ頭を下げた。そうして、明久が

 

「それで、どうだったかな、霊夢ちゃん?」

 

と霊夢を見た。すると霊夢、今日1日のことを振り返っていく。最初は、神社の敷地内に出たドアの確実から始まった。そこからあれよあれよと、気付けば働くことになった。

 

「最初は驚いて、緊張して……まあ、いい勉強になったわ……まあ、疲れたけど……」

 

「その気持ち、分かります」

 

霊夢の言葉を聞いて、アレッタは同意するように頷いた。どうやら、初めて働いた時を思い出したようだ。

 

(咲夜がどういう仕事してるか、何となく分かったわ……今なら、素直に称賛出来そうよ……)

 

霊夢が思った咲夜というのは、幻想郷に住む人間の一人なのだが、吸血鬼が当主を務める紅間館という建物のメイド長をしている女性だ。能力もあるだろうが、その全てをそつなくこなす完璧なメイドである。

 

「さて、俺と明久で賄いを作るから、そっちでフロアの掃除を頼んだ」

 

「分かりました」

 

早希の指示で掃除が始まり、明久と店長はキッチンに入った。

 

「さて、何を作りましょうか……」

 

「それなんだがな、これを倉庫で見つけたんだ……使わないとな」

 

明久が腕組みすると、店長が棚から缶詰めを取り出した。それを見て、明久は

 

「店長、それはどうしたんです?」

 

「確か、レオンハートの店長からお裾分けって貰ったやつだ。使わないと、もったいないだろ。高そうなやつだしな」

 

確かに、金色に輝く缶詰めは高そうに見える。

 

「んじゃあ、メインは俺が作るから……」

 

「付け合わせは、僕がやりますね」

 

二人は分担して、料理を始めた。店長は卵と野菜を幾つか取り出し、明久は肉と野菜を取り出し、作り始めた。フロアの方からは、何やら楽しそうな会話が聞こえてくる。やはり、同年代が集まると会話は弾むようだ。

それを聞き流しながら、二人は手早く料理を作っていく。

店長は中華鍋を手慣れた感じで、振るいながら

 

(この鍋も、長いよなぁ……よく壊れない)

 

と思っていた。その中華鍋は、店長が笑龍で修行している時から使っており、約20年近くになる。キチンと手入れもしながら使っているために、愛着もある。

 

(まあ、使える内は使い続けるか……)

 

店長はそう考えながらも、手を止めずに調理を続けた。そして、約一時間後

 

「はい、お待たせ。天津飯」

 

「それと、回鍋肉だよ」

 

早希も一緒に、夜の賄いを持ってきた。

 

「天津飯……」

 

「なんていうか、不思議な見た目の料理ね」

 

アレッタと霊夢は、天津飯を興味深い様子で見ていた。確かに、初めて見たらかなり不思議な見た目だろう。茶色の餡が掛かった黄色い料理だ。

 

「そして、この料理だが……」

 

店長はそう言って、スプーンを入れた。すると、餡が掛かった卵の下から、ご飯が見えた。

 

「餡が熱いから、気をつけてくれな」

 

『いただきます』

 

店長の言葉に頷いてから、全員で食べ始めた。霊夢は、最初にスプーンでよそった天津飯を見て

 

(外の世界じゃあ、こんな料理も考えられてるのね……)

 

と思った。トロリとした餡もだが、卵には何か入っているのが分かる。

 

(と、見てるだけじゃなくて、食べないと……勿体ないし……)

 

霊夢はそう思って、口に運んだ。次の瞬間、予想を上回った熱が一気に口の中に広がり驚いたが、すぐに対処。すると今度は、餡の味付けに使ったのだろう醤油と酢の風味が広がる。それだけでなく、卵の中から感じる蟹の確かな味わいとご飯から感じる出汁。それらが見事に調和し、疲れた体に染み渡る。

 

「……美味しい」

 

「それは良かった」

 

「良かったら、こっちも食べてね」

 

霊夢の呟きを聞いた店長は笑みを浮かべ、明久は回鍋肉を薦めた。先に食べていたアレッタが

 

「回鍋肉の濃厚な味と、天津飯の少し酸っぱい味がよく合います!」

 

と興奮していた。遅れて食べた霊夢も、アレッタと同じことを思った。

 

(本当に、この2つはよく合うわ……回鍋肉って料理は、凄く味が濃い……それに対して、天津飯は僅かな酸味……食べる手が、止まらなくなる……)

 

2つの料理の熱で汗が出るが、それも気にならない程に美味しい料理に霊夢は夢中になった。そして気付けば、天津飯も回鍋肉も無くなり、満足感だけが満たしていた。

 

(こんなに満足感を覚えるの、何時以来かしら……)

 

霊夢がそう思っていると、明久が

 

「霊夢ちゃん、今日泊まっていったら?」

 

と提案してきた。

 

「え……」

 

「いや実は、アレッタちゃんがそこの休憩室で一晩寝泊まりして、朝食を食べてから帰るんだ。だったら、ついでに霊夢ちゃんもどうかなって。一人増えるなんて、大差ないから。あ、朝食も出すよ」

 

霊夢が驚きで固まると、明久は説明しながら休憩室を指差した。確かに、早希も一緒に準備している。しかも、朝食も出すという魅力的過ぎる提案に

 

「……分かったわ、ありがたく泊まらせてもらうわ」

 

と提案に乗った。明久は頷くと、早希とアレッタに霊夢も休憩室で寝ることを知らせ、もう一組分布団を用意。

 

「それじゃあ、おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

店長や明久、早希は自分達の部屋の階に行き、それを見送った霊夢とアレッタは

 

「え、えっと……ちょっと五月蝿いかもしれませんが、よろしくお願いしますね」

 

「ええ……よろしくね」

 

二人は、一緒に寝たのだった。

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