これが最後かな?
皆さん、よいお年を
「さて……今年も終わりだな」
「ですね」
明久と店長は、最後の客の見送ってから毎年恒例の年越しそばの準備を始めた。
蕎麦は商店街の老舗蕎麦店から貰った物で、味は保証済み。ならば、それを活かすも殺すも自分達次第である。
「今年は、色々と良い素材も集まったしな」
「ですね。今年は、ちょっと豪華に出来そうですね」
そしてキッチンには、年越しそばに乗せるネタ用のエビの他に様々な素材がある。それらを見て、明久と店長は袖捲りし
「さてと……俺は蕎麦を茹でながらかき揚げを作るが……」
「僕は出汁を作りながら、エビの天ぷら、大葉の天ぷら、シイタケの天ぷらを作りますね」
役割分担し、調理を始めた。
例年は年越しそばの具は、エビの天ぷらとかまぼこ位だが、今年は色々な業者から様々な物が入手出来たのだ。
店長は丁寧に蕎麦を茹でながら、かき揚げを作り始め、明久は出汁を作りながら三種の天ぷらを作り始めた。
とはいっても、出汁は前日から準備を進めていて、後は最後の仕上げとして合わせてから熱する位である。
つまりは、天ぷら位だ。
エビは下ごしらえとして、殻を剥いてから内臓を取り出し、水洗いしてから少し茹でてから水で冷やして絞める。次にシイタケも傘の根っこ部分で切り離しておく。
大葉は水洗いして、キッチンペーパーで拭いておく。
そして、衣用に小麦粉を水と山芋で溶いたのを用意し、エビ、シイタケ、大葉に薄く着けていく。
厚く着けると、揚げるのに時間がかかってしまい、下手したら中の具に影響が出てしまうし、かさ増しになる。
それを適温に温めておいた油が入った鍋に、丁寧に入れていく。
その後は、各種に合わせて揚げていく。
そして、後は店長が茹でた蕎麦を入れた器に明久が作った出汁を掛け、かき揚げ、エビ、シイタケ、大葉の天ぷらを別のお皿に乗せておく。天ぷらは各自好きなように食べる形にし、蕎麦の上にはかまぼことネギ。ほうれん草のお浸しを添えておく。
そうして出来たのを、店長、明久、早希の三人でフロアーまで運び
「さて皆……今年一年、お疲れ様」
「年越しそば作ったから、食べようか」
と言って、全員の前に置いた。
年越しそばを見て、霊夢が
「こんなに豪華なの……中々無いわね……」
と感嘆していた。幻想郷でも年越しそばは食べられるが、特に霊夢はいつも質素な物になる。
「うわぁ……衣サクサク……これは、水だけじゃない……」
早希は大葉の天ぷらを出汁に浸けてから食べたが、その衣のサクサク具合に驚いていた。霊夢は蕎麦を一口すすり
「蕎麦もだけど、出汁も凄い美味しいわ……店長さん達、凄いわね……」
と素直に感嘆していた。
幻想郷の食生活は、和食が大半な為に蕎麦や出汁には慣れている霊夢でも、その美味しさに驚いていた。
そこから少しの間、蕎麦を啜る音だけが店内に響いた。そして食べ終わると、店長が立ち上がり
「さて皆、今年一年お疲れ様。特に問題もなく、今年を無事に越せたのは皆の協力あってこそだ。来年も、よろしくお願いする」
『よろしくお願いします!』
店長に続いて、全員が頭を下げた。
こうして、ねこやの一年は幕を下ろした。