異世界食堂 おバカな料理人   作:京勇樹

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71皿目 スコーン

「おーす」

 

「あ? なんだ、珍しい……って、ああ……あの時期か」

 

ある朝、キムラベーカリーからパンを受け取った後、フライングパピーの店主が現れ、店長は珍しそうにしてから、すぐに気付いた。

 

「ああ……イチゴフェアの時期ですか」

 

「おうよ!」

 

明久が言った後、店主は脇に抱えていた紙袋からイチゴジャムが詰められた瓶を幾つか取り出して、近くの机に置いた。そして、近くに停めていたゴンドラの上に置いてあったケースから、キツネ色に焼かれた丸いパン。

スコーンを取り出して、机に残っていた皿に幾つか置いた。

 

「スコーンってことは、試食か」

 

「ああ! 今年はいいイチゴを入手出来てな、試しに作ってみたらめっちゃ旨く出来たんだ! まあ、量は少ないが、味で勝負よ!」

 

店主は元気よく言いながら、スコーンとジャムをアレッタやクロ、早希と霊夢の方に差し出した。

店主が焼いたらしいスコーンは、全くのプレーンの物で味は素材と僅かに使ったバター位だろう。だが、それ故に味付けとなるジャムの味わいが遺憾なく発揮される。

 

「という訳でだ……味見頼むわ! 俺も味見したが、やっぱりお前らの方が正しいからな!」

 

「お前な……少しは自信を持ってやれよ……」

 

店主の言葉に、店長は半ば呆れた様子で立ち上がって店主が置いたジャムとスコーンを見た。

スコーンの形は少し歪だが、そもそもスコーンに定形は無いから問題にはならない。だが、イチゴジャム。

店主はよほど特殊な物以外は、自分で作って店で販売している。イチゴジャムは、一年中販売しているジャムの定番だが、イチゴフェアの時は更によりを掛けて選んだイチゴをじっくりと煮込んで作るのだ。

 

「ふむ……砂糖自体は控えめにしてるな……」

 

「ですね……それによって、イチゴ自体の甘さと酸っぱさが際立ってます……」

 

「流石、分かるか」

 

店長と明久は、一口サイズに切ったスコーンにジャムを塗り食べてから、自分達の評価を口にした。少し遅れて、早希とアレッタ、クロと霊夢も食べて

 

「これは……そもそもの素材のイチゴが凄い甘いんですね……砂糖の甘さが、そんなに感じられない……」

 

「ふわぁ……お砂糖を使わないで、こんな甘さが出せるんですね……」

 

(甘くて、クセになる……)

 

と三人は、概ね好評価だった。

そして霊夢は

 

「へえ……洋菓子ってこんな味わいなのね……不思議……」

 

と不思議そうにしながらも、更にスコーンを食べた。霊夢は休憩時間には、基本的に紅茶しか飲まないため、クッキーは食べず洋菓子分野の味は知らなかったようだ。

しかし、そんな霊夢も毛嫌いせずに食べていることから良い評価と判断した店主は

 

「うしっ……明日から、このイチゴジャムを売り出すか……っと、アレッタちゃん」

 

「はい、なんでしょうか」

 

アレッタが振り向くと、店主はゴンドラの下から別の紙袋を取り出し

 

「ほい、これ」

 

とアレッタに差し出した。そのサイズから、渡したのはアレッタが定期的に買うようになったクッキーの最大サイズの缶なのは確かだが、アレッタは少し首を傾げながら中を確認して

 

「て、店主さん! これって!?」

 

と中から、イチゴジャムの瓶を二つ取り出した。

 

「おうよ! アレッタちゃんはウチの常連さんだからな! 何時ものクッキー缶二つ。そして、100ポイントとして今回はジャムをプレゼントだ! 一応長期保存用に砂糖は少し多めにしてあるが、早めに食ってくれな」

 

「ありがとうございます!」

 

店主の言葉に、アレッタは頭を下げてからロッカールームに入った。恐らく、帰りに持って帰るために仕舞っておくのだろう。

それを見てから店主は、多少世間話をしてから自分の店の仕込みのために戻っていき、ねこやは開店のためにキッチンに向かったのだった。

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