「……これで、合ってる……よな」
「多分……大丈夫だと思いますが……」
土曜日の早朝、店長と明久はドアに新しく掛けた看板を見ながら不安そうにしていた。ねこやのドアに掛けられている看板は、実は交換出来るようになっているのだ。
そこに新しく掛けたのは、異世界の言葉。東大陸語と日本語、英語が彫られた看板だった。
それぞれで、洋食のねこや、と彫られている。
「いや、本当に不安になるな……向こうの言葉」
「そうですよね、僕達には全く読めない文字ですから、確認のしようが無いですし……」
店長の言葉に同意しながら、明久は看板を見た。
以前より少し大きくなっていて、上から日本語、英語、東大陸語で彫られている。いるのだが、東大陸語は二人からしたら、何らかの記号のようにしか見えないので、どう彫られているかの確認など、到底出来なかった。
そして、二人がフロアに戻ると、直ぐにドアが開き
「おはようございます! 看板、変わりましたね!」
とアレッタが入ってきた。
アレッタは東大陸語の世界の住人だが、彼女は読み書きが出来ないが、看板が変わったことには気付いたようだ。その直ぐ後に、再びドアが開き
(おはようございます……私たちの世界の言語の看板、作ってくれたんですね)
クロが入ってきて、そう告げた。彼女は基本念話だが、文字は分かるらしい。そのクロが言うのだから、問題無いようだ。店長と明久が安堵していると、早希がキッチン側からフロアに入ってきて
「おはようございます! 何かあったんですか?」
と首を傾げた。すると明久が、一度ドアを開けて
「ほら、この看板。異世界の言葉に対応したのを作ってもらったんだ」
と早希に説明しながら、見えるようにした。そして、看板を見た早希が
「あ、本当ですね! お知り合いに頼んだんですか?」
「まあ、そうだな。ウチの机や椅子とか作ってくれた知り合いの会社だ。じいさんの時からの付き合いだ」
早希の問い掛けに、店長はそう答えた。
なにせ、机や椅子は人間用にしか考えて作っていないので、時々耐久的に使えなくなる時がくる。
しかも、人間が普通に使ったのなら長く使える椅子や机が、早く摩耗するのだから、気付くのもやむ無し。
そこで、先代が知り合いの家具製造の一人を抱き込み、そこを懇意にするようにした。おかげで、格安で机や椅子が仕入れられるようになった。
「おはようございます」
そして最後に、霊夢がやってきて
「看板、変わったのね」
と言った。やはり気付いたようだ。
「おう。前々から考えててな。ようやくだ」
店長はそう言って、既に用意していた賄いの朝食を並べ
「さて、皆……今日から心機一転、頑張っていくぞ!」
と意気込んだのであった。
洋食のねこや、新装開店である。