あの茜色の空を見上げて   作:イズナ/泉中

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このサイトでも何番煎じかわからない沙綾と紗夜、日菜がメインの小説。
これは完全に息抜きに投稿する予定なので、いつ更新されるかわかりません。
それでも良ければ、是非覗いていってください。


Eins

 

 「駄目っ!あなた、この子に何をするつもりなの!?」

 「どけっ!こいつがいるから、俺は…!」

 

 ここはとある山の奥地にある川の橋の上。目の前でお父さんとお母さんが言い争っている。お父さんが縋り付くお母さんを振り払い、怒りの表情を浮かべながら大股で私の元へ歩いてくる。

 

 「お前なんて、いなければ…!」

 

 そう言って、強い力で私の腕を掴み橋の手すりまで引き摺っていく。

 

 「お父さん!もうやめて!」

 「そんなに喧嘩しないでぇ!」

 

 私の二人の姉がそう言ってお父さんに縋り付く。それを無理矢理引き剥がしたお父さんは私の身体を持ち上げ──────

 

 

 橋の上から私を放り投げた(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 「…え?」

 

 少しの浮遊感の後落下の感覚が私を襲い、橋から身を乗り出した家族の姿が急速に遠くなっていく。

 

 そして——私は激しく流れる川へと落下した。落下の衝撃を感じたと思ったら、次の瞬間には莫大な水が私を飲み込んだ。

 

 「がほっ…!た、たすけ…」

 

 溺れまいと必死に水を搔き、水面へ顔を出す。が、周りに流れている水によって直ぐに水中へと引き戻される。

 

 もはや自分の身に何が起きているかもわからない。わかるのは、自分が水の中にいること。そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が、捨てられたという事。

 

 

 

 

 

 

 その事実を認識した瞬間、私は絶望した。

 

 溺れまいと必死に動かしていた手足の動きが止まる。それと同時に、さらに激しくなった水の流れが容赦なく私の身体を沈めていく。

 

 このままいけば私は溺れ死ぬだろう。生きるために少しでも水面に上がらなければならないのに、私の身体は動いてくれない…いや、動かせないというべきか。

 

 薄れ始める意識。それと同時に浮かんできたのは、大切な姉たちの笑顔。

 

 (ごめんね…姉さん達)

 

 二人の姉の笑顔を思い出しながら、私は静かに目を閉じる。

 

 

 

 

 

 薄れゆく視界の中、最後に見えたモノは激しく流れる水のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「母さん、今日のご飯なにー?」

 

 「今日のご飯は…沙綾の好きなチーズをハンバーグに乗せよっか」

 

 「やったー!」

 

 嬉しそうにはしゃぐ自分の娘を見ながら、私は空を見上げる。

 

 時刻は夕方、天気は快晴。今まさに沈み続けている夕日が、空を茜色に染め上げている。オレンジ色の夕日が作り出す影を眺めながら、ふと川岸へと目を向けて──────私は目を疑った。

 

 突然歩みを止めた私を不思議に思ったのか、沙綾が私を首を傾げている。だがそれも意識に入らないくらい、私は驚愕していた。

 

 川の中央、小さな中洲が存在するその場所に人が倒れている。

 

 それが少女であると認識した瞬間、私は沙綾を置いて走り出していた。

 

 「母さん!?」

 

 私は土手を駆け下り、川の中へ躊躇迷い無く入っていく。ここら辺一体の川は浅いと知っているからだ。

 

 川の中に踏み込んだ私の靴やスカートの裾が水に濡れていくが、そんな事気にしていられない。

 

 中州にたどり着き、少女の側に駆け寄る。抱き起した少女は気を失っているようだ。

 

 「沙綾、救急車呼べる!?」

 

 「わ、わかった!」

 

 川岸まで追いかけてきた沙綾に救急車を呼ぶよう頼み、私は少女を見る。

 

 歳は沙綾と同じくらいだろうか?アイスグリーンの髪に、端整な顔立ち。身長はおそらく沙綾より少し低い。顔色はかなり悪く、呼吸はしているものの苦しそうだ。

 

 「大丈夫!?しっかりして!」

 

 少女に声をかけ続けるが、目を覚ます様子はない。早く病院に連れて行ってあげたいのだが、いかんせん私は身体が弱く、ここから少し距離のある病院まで運んであげられるほど体力が無いのだ。

 

 (とにかく、川岸まで運ばないと…)

 

 私は意識の無い少女を背負い、再び川を渡る。

 

 「母さん、その子は…」

 

 「呼吸はしているわ。でも意識は無いし、ずっと水に浸かってたみたいで体も冷たいから、早く病院に運ばないと…」

 

 沙綾がしっかりと呼んでくれたのだろう。遠くから救急車のサイレンが聞こえてくるのを感じながら、私は少女が無事であることを願い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

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